2015.10.25

日本センチュリー交響楽団/交響ファンタジー『ゴジラVSキングギドラ』

 10月3日に、いずみホールで行われた日本センチュリー交響楽団の四季コンサートに行ってきました。演奏内容は「戦後のスクリーンを支えた日本の名作曲家たち」と題して戦後日本の映画音楽。指揮は伊福部作品の演奏で定評のある本名徹次で期待していたのだけど、体調不良とかで現田茂夫とかいう人に変わってたのが少し残念でした。

 演奏作品は以下の通り。

1.斎藤高順:『東京物語』より
   主題曲、夜想曲

2.芥川也寸志:『八甲田山』より
   八甲田山、徳島隊銀山に向かう、棺桶の神田大尉、終焉

3.早坂文雄(松木敏晃編曲):交響組曲『七人の侍』
   Ⅰ.怯える村~練達の士
   Ⅱ.美しい村 美しい娘
   Ⅲ.合戦そして襲撃

4.池辺晋一郎:『春を背負って』より
   メインテーマ、滑落、菫小屋そして遺灰、たくさんの酸素を、
   ゴロさん倒れる、歯を食いしばって、山も笑顔

5.伊福部昭:交響ファンタジー『ゴジラVSキングギドラ』
   Ⅰ.前奏曲
   Ⅱ.ディノザウルス
   Ⅲ.ラゴス
   Ⅳ.エミー
   Ⅴ.キングギドラ
   Ⅵ.行進曲
   Ⅶ.ゴジラ

EC.山本直純:『男はつらいよ』より
   男はつらいよ

 4だけ去年の映画だけど、あとは作曲者がすでに物故してる古い作品です。


 小津安二郎監督の『東京物語』は見たこと無いのですが、どっちかというと室内楽的な音楽イメージかなと思ったら、意外に雄大なオーケストラ曲でした。まぁ、当時は映画会社が専用の楽団抱えてたような時代ですから。
 斎藤高順はあまり知らない人かと思ったら、空自の行進曲「ブルー・インパルス」の作曲者でしたか。

 芥川也寸志は伊福部昭の弟子として土俗的な音楽を書く一方で、非常にメロディーメーカー的な側面も持ってるんですが、『八甲田山』の音楽は意外と後者のイメージがある感じです。監督が『日本沈没』の森谷司郎だから、佐藤勝と同じような音楽を求めたのか知りませんが。

 早坂文雄の『七人の侍』は、流石にちゃんばら映画だから激しい曲が多いけど、この荒々しさは黒澤明の趣向なのでしょうか。早坂は早くに亡くなったからその後の黒澤映画は(早坂の弟子の)佐藤優とか武満徹とか池辺晋一郎が担ってるけど、ここまでの荒々しさは早坂だけの気がします。

 『春を背負って』は立山でのロケが話題になってた映画だけど、それぐらいしか知りません。池辺晋一郎はNHKのクラシック番組の解説とか『題名のない音楽会』とかでよく見るから、クラシック音楽界の大御所っぽいイメージがあったけど、あの頭髪の割に意外と若いんですね。音楽の方は、普通の映画とかドラマの音楽っぽい感じです。

 最後は伊福部昭の『ゴジラVSキングギドラ』。日本センチュリー交響楽団といえば(まだ大阪センチュリー交響楽団だった)昔『ゴジラVSビオランテ』を演奏したりしてたから、これも映画のオリジナルサントラのセレクトかと思ったりしたけど、普通に伊福部先生のまとめた「交響ファンタジー」のままです。
 『七人の侍』が相当荒々しい音を出してたけど、さすがに伊福部昭はそんなもんじゃ収まりません。金管が倍近く増員されてる時点で音が全然違うんですね。冒頭の第一音、フォルテでも何でもない出だしの低音が鳴っただけで完全に別世界の音楽です。やがてゆったりと、徐々に大きくキングギドラのモチーフが現れた後で、ゴジラのモチーフが来て、圧巻です。
 本来、この曲は喜寿記念コンサートの演奏曲の1曲として作られただけなので、映画の主なモチーフを集めてるけど、各章は比較的短かくまとめられています。でも、映画の冒頭部はサントラそのままのサイズだし、中盤の「エミー」に至ってはサントラより長めに作られてる感じです。1曲の構成として怪獣のモチーフばかりだと緩急がつかないと思ったのでしょうか。
 途中で「怪獣大戦争マーチ」(というよりアレンジとしては『ロンド・イン・ブーレスク』の短縮のような感じ)が入ってるのは、1回きりのコンサートしか想定してなかったからでしょうけど、本来なら映画で使われた「怪獣総進撃マーチ」風の曲とか「ラドン追撃せよ」とかが入ってて欲しいところです。最後はゴジラの出現モチーフとメインタイトルをつなげたお馴染みの平成ゴジラのテーマ曲。

 ずいぶん久しぶりに生オーケストラで伊福部音楽を聴きましたが、毎度ながらのこの高揚感は何とも言えませんね。

     ☆ ☆ ☆

《交響ファンタジー『ゴジラVSキングギドラ』》の最近の収録CD等。

伊福部昭の芸術 20周年記念BOX
伊福部昭
B00XWH7R40

DISC 7の『幻 わんぱく王子の大蛇退治』に本名徹次指揮によるホール録音で収録されています。

伊福部昭の芸術(7)
本名徹次
B0000DJW9X

これは単品。

第3回伊福部昭音楽祭ライヴ!
伊福部昭
B00KLOZ1VI

伊福部昭生誕100年を記念したコンサートの一つ。これは堀井友徳編曲による吹奏楽版が演奏されています。

伊福部昭百年紀Vol.1
伊福部昭
B00KTRXQXW

初期の伊福部映画音楽を組曲化したオーケストラ演奏のライブ録音。そのおまけみたいな感じかな。

伊福部昭の自画像 [DVD]
黛敏郎
B00NJ1MOJ2

この曲が初演された喜寿記念コンサートを収録したライブビデオ。以前にLDで出てたもののDVDによる復刻版です。CDの方(『伊福部昭の世界』)は現在では入手困難かと

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2012.06.05

宮川彬良&大阪市音楽団/『宇宙戦艦ヤマト』宮川音楽大勉強会

 5月26日に三田市総合文化センター・郷の音ホールで行われた宮川彬良&大阪市音楽団のコンサートに行ってきました。
 橋本改革の荒波に直面してる大阪市音楽団ですが、そういう政治の話は置いといて、最近は5日の大阪城野外音楽堂にも聞きに行きましたが、実に充実した音を聴かせてくれます。
 今年になってリメイクされた『宇宙戦艦ヤマト2199』の音楽を手掛けるのが宮川彬良ですが、そんな市音の音でヤマトをどう聴かせてくれるのかというのが楽しみなコンサートでした。

 演奏曲はだいたい次の通り

 1.宮川 泰『宇宙戦艦ヤマト』より
  01. ファンファーレ(「エンディング各種・1」)
  02. サスペンスA
  03. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「序曲」
  04. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「宇宙戦艦ヤマト」
  05. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「出撃」
  06. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「大いなる愛」
  07. 艦隊集結
  08. 探索艇
  09. 無限に広がる大宇宙
  10. ワープ
  11. 地球を飛び立つヤマト
  12. コスモタイガー2199
  13. 艦隊集結(リズムのみ)

 2.萩原哲晶『クレイジー・キャッツ・メドレー』
 3.宮川 泰『ゲバゲバ90分』

 4.宮川彬良『バレエ音楽「欲望という名の電車」』
  Ⅰ.鏡~回想
  Ⅱ.街
  Ⅲ.孤独
  Ⅳ.博奕
  Ⅴ.少年
  Ⅵ.愛欲
  Ⅶ.迷宮
  Ⅷ.幻

 5.いずみたく『見上げてごらん 夜の星を』
 6.宮川彬良『マツケンサンバⅡ』
 EC.宮川 泰『ゲバゲバ90分』


 いつもなら定番のファンファーレなりオープニング曲があるわけですが、今回はいきなりヤマトから始まってます。


『宇宙戦艦ヤマト』より

 ファンファーレとして用いられてるのはBGM集のレコードで「エンディング各種」に含められていたメインテーマのアレンジ曲。5曲ぐらい入ってた中の1曲目だったかな。劇中ではAパートの終わりだとか、ラストの次回に続くというような場面で使われる曲です。
 そんな音楽を背負って、宮川彬良が登場します。

 「サスペンスA」は未知の宇宙を進むようなミステリアスなサスペンス曲。アルバム『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の「序曲」冒頭で使われているモチーフなので、ここでもそのイメージで挟み込んだのでしょう。
 吹奏楽だと弦楽器が無くブラスばかりになるので、音が重厚になってる印象です。

 そして吹奏楽での定番レパートリーである「組曲・宇宙戦艦ヤマト」が続きます。
 ヤマトの印象的なスキャットのフレーズがサックスをメインにバラード風に始まる「序曲」は、ムード音楽的なアレンジです。鉄琴やトライアングルのアクセントが印象的。
 中盤の盛り上がり部分は低音が生えていて、クライマックスの太鼓とシンバルがよく響いています。

 今回は実にストレートな演奏の「宇宙戦艦ヤマト」は、イントロからパワー全開な感じです。アルバム『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の「誕生」のメインテーマ部分をそのまま忠実に再現してるかのような演奏は、「宇宙戦艦ヤマト」のインストゥルメンタルはこうでなくてはという自分のイメージを十分に満足させてくれる素晴らしい演奏でした。
 相変わらず、ここで拍手が入って中断というのが不満と言えば不満なんですが。

 続いて「出撃」というか「ブラックタイガー」のテーマ。赤いライトで雰囲気出していましたが、迫力全開の戦闘音楽です。全般的に分厚い音が特徴ですが、中間あたりでやや緩急をつけた演奏になってるのが印象的です。ラスト2音のアクセントもなかなか耳を離れません。

 どこかジャズっぽく始まる「大いなる愛」は、第1主題をサックスがしっとりと歌い上げていきます。
 第2主題は最初から太鼓とか入ってて盛り上がったところから始まってるイメージで、そのまま堂々とクライマックスに突入し、ヤマトのメインテーマによるフィナーレのTUTTIで締めくくられます。

 ここからは『宮川音楽大勉強会』と題して、ヤマトの劇伴音楽をめぐる蘊蓄を交えた演奏になります。

 まずは「艦隊集結」です。その名の示す通り、ドメル艦隊の集結シーンの印象が強い曲ですが、まさにオーケストラよりもビッグバンド向きの音楽。ブラスとリズムがすべてって感じの重厚な曲です。
 この演奏に合わせ、ピアノを艦隊に見立ててステージに運び込んでるというのが洒落っ気のあるところですね。

 ヤマトの音楽の特徴として最初に挙げられたのは【ヤマトは意外とロックである】というところです。
 本格的に音楽を意識したのが『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のアルバムだったり、『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の作品だったりすると、ヤマトの音楽はクラシックに近いシンフォニックサウンドというイメージを持ったりするのですが、第1作の劇伴音楽は演奏がオーケストラじゃなくビッグバンド形式だったりして、ジャズっぽい印象を受けるのは確かなんですが、そこからリズムに注目してロックという言葉を持ってきたようです。

 第1作当時の社会風潮として、若者と言えばヒッピーやらパンクやらの印象が合って、そこから若者をイメージする音楽としてロックのリズムを持ち出して来たという解釈のようです。
 とはいえ、何がロックかというのは解釈の分かれるところ。極端な話、リズムセクションの入った音楽は何でもロックだとか言い出せばキリが無かったりしますから。

 そんなロックな曲の代表として演奏されたのが「探索艇」です。ま、確かに軽快なロック系のナンバーですが……マラカス振って踊りますか。

 そして、「序曲」とかだと美しいクラシカルなイメージのある曲なのに、同じメロディーが実はロックだったという演奏の「無限に広がる大宇宙」。でも、これ、伴奏が張り切り過ぎてメロディーが埋没しちゃってますけど。(ピアノを弾いてるのかと思ったらキーボードだったので、イメージが違ったからかも知れません)

 2つ目の特徴として取り上げられたのは【プロデューサーの無理難題】というところ。タイトルじゃ意味不明ってのも取り上げられてますが、それよりも先行するイメージが無いから未知の音楽というので取り上げられたのが「ワープ」ですね。これはほとんどシンセのみの曲だから、ブラスの出番がありません。

 そんな音楽もプロデューサーに既製の曲のイメージがあるものはベタにそのまんまの音楽になっちゃってるみたいで、「艦隊集結」が『ベン・ハー』だってのは録音テープの冒頭に宮川泰の声で「ベン・ハー・ヤマト」ってタイトルが付いてたって話が伝わってるぐらい有名なところなんですが……(昔のニフティのヤマト会議室限定だったかもしれないけど)
 その路線でもう一つ挙げられたのが「美しい大海を渡る」……イスカンダルのテーマ曲ですね。当時、どうやって作ったのかと尋ねても「あれはたいしたことないんだよ」と帰ってくるだけだったのが、38年目にしてようやく『オズの魔法使い』の「虹の彼方に」が元ネタだったと気付いたとか言ってました。ま、あちこちからあまりにも褒められるから宮川泰もなかなか言い出せなかったのでしょうね。

 コーナーの締めくくりに2曲。まずは「地球を飛び立つヤマト」。文字通り、ヤマトが巨大ミサイルを撃破し、地球を出発していくシーンの音楽です。
 太鼓のイントロに始まり、盛り上がっていくファンファーレと印象的な出だしです。リズムに乗ってパワフルな前半に、バラード調の後半が対称的に続き、余韻を引きながら終わります。

 唯一新曲的なのが「コスモタイガー2199」。旧作では『新たなる旅立ち』以降に用いられたコスモタイガーのテーマを、『2199』用にアレンジした曲です。
 リズム系のイントロからまったく新しいイメージですが、全般的にリズムがリニューアルされてる感じですね。華やかなファンファーレ風のAメロの後、ゆったりとしたBメロの部分に反発するサブメロが入ってくるのは、今では封印されてしまったみたいな『交響組曲 新宇宙戦艦ヤマト』に入ってた「コスモタイガー」と同じ趣向のようです。
 原曲はディスコ風のライトなイメージなのですが、それに比べると重くエキサイティングな曲に仕上がっています。

 そして、今度は「艦隊集結(リズムのみ)」に乗ってピアノが撤去されていきました。

 『クレイジー・キャッツ・メドレー』
 クレイジー・キャッツの代表曲のメドレーってことですが、「スーダラ節」ぐらいしか知らないので何とも……
 華々しいブラスのファンファーレから始まって、やがて軽快な行進曲に続いていきますが、これが「ホンダラ行進曲」なのかなぁ。中間部でなぜか「鉄腕アトム」のイントロのフレーズが入ってたりしますが……
 しばらくバラード風の演奏が続いた後、派手で華々しい「スーダラ節」のメロディー。サックスのソロパートを挟んで、最後は軽快なスウィング調にテンポアップして締めくくられます。

 『ゲバゲバ90分』
 今や市音の顔ともなってる代表曲。この前(5月5日)の大阪城野外音楽堂でのコンサートでは楽器が横向くと音の大きさが変わってしまったりしていましたが、屋内のホールだと音が反射するので、そういうこともありません。
 演奏中に動くのは、そういう演奏スタイルとして有りなのでしょうけど、演奏終わったところでそのままポーズで止まってたり、トロンボーンの人が頭の上に乗っけたまま退場してるのは、一度や二度ならネタで良いけど、市音のキャラじゃないから、数を見ると痛いですね。

 『バレエ音楽「欲望という名の電車」』

 休憩を挿んで、後半のメインはこの曲。「欲望という名の電車」はテネシー・ウィリアムズによる戯曲で、映画を始めオペラや舞台などで数々展開されていますが、これを大正時代を舞台にした日本舞踊に置き換えた公演の音楽を担当したのが宮川彬良で、それをさらに吹奏楽の演奏用にアレンジしたのがこの作品ということです。
(以下、各曲の区切りは必ずしも明確じゃないので、印象によって判断した区切りに従っています)

  「Ⅰ.鏡~回想」
 ゆっくりとピアノを叩く音から始まり、フルートとオーボエによる木管のフレーズが続きます。そしてスローなスパイ音楽風のフレーズから、アンニュイなサックスが古い時代の黄昏時のイメージを、ややサスペンス掛かったイメージで奏でます。
 小刻みなリズムで全体に盛り上がっていく一大序曲の展開で、アクション音楽風のフィナーレを迎えます。

  「Ⅱ.街」
 テンポの良いスウィング風の曲。低音中心に展開していき、鉄琴などによるリズムの刻み方が印象的です。
 ややスローダウンして、フルートとホルンによる優雅な展開。
 軽快なピアノとピッコロのリズムが奏でられ、低音が分厚く盛り上がっていきます。

  「Ⅲ.孤独」
 アルトサックスのソロによる寂しげなフレーズから始まり、ピアノの伴奏を伴ったしっとりとしたバラードが展開されます。
 せつないピアノのセレナーデに、寂しげなサックスのフレーズが奏でられ、最後はドラマチックに盛り上がっていきます。

  「Ⅳ.博奕」
 アダルトタッチでテンポの良いフレーズ。アップテンポで派手に盛り上がっていき、パーカッションが映えています。
 ラテン風のリズムで展開していき、華やかなアクション音楽が奏でられます。最後はおどろおどろしい雰囲気で終わります。

  「Ⅴ.少年」
 もやもやとしたサスペンスタッチの夜明け時の雰囲気から、華々しく盛り上がる日の出のような始まり。ピュアな少年らしいイメージで歌い上げるフレーズが続きますが、やがてアダルトな混沌とした香りに包まれていき、派手な大人のイメージで終わります。

  「Ⅵ.愛欲」
 サスペンス風のフレーズから始まり、軽快でやや大人びたイメージのスウィング。
 やがて繰り広げられる驀進してる列車のようなリズミカルなスケルツォ風の展開は、どこかショスタコーヴィチ風で、どんどんエスカレートしていきます。

  「Ⅶ.迷宮」
 テナーサックスのソロによって寂しげなフレーズが奏でられ、ピアノがしっとりと歌い上げていく様子は「Ⅲ.孤独」の再現を感じさせます。今度はソロパートがアルトサックスとテナーサックスのデュオになり、やがて全体に盛り上がり、ピアノとブラスのせめぎ合いが始まります。
 優雅で穏やかな盛り上がりでクライマックスを迎えると、今度は宮川彬良によるアコーディオンのソロが交わり、ワルツ風のメロディーで大団円のフィナーレを迎えます。

  「Ⅷ.幻」
 流れるようなフルートのソロから始まり、ハープの伴奏とクラリネットが重なり、ピアノが穏やかにソナタを奏で始めます。
 やがて全体で盛り上がり、大きく歌い上げていきます。いったんスローダウンした後、チャイムの音とともに堂々と盛り上がり、TUTTIで締めくくります。

 バレエ音楽と題売ってるから、全体で単一の表題曲というわけではなく、あくまで個々の曲を寄せ集めたという形なのですが、それでも一曲一曲、序奏から展開し盛り上がって終わるというパターンが繰り返されるので、全体を通して聴くと食傷気味に疲れてしまう印象を受けたのは少し残念でしょうか。
 作品そのものの背景を知らないので、それを知った上で聴けばまた印象は違うのでしょうけど。

 『見上げてごらん 夜の星を』
 派手なアップテンポのマーチ風に始まり、バリトンサックスのソロを交えて奏でていきます。ソロパートはテナーサックスに交代し、続いてアルトサックスがチンドン風のフレーズを奏で、そしてバラードに転じます。
 アドリブ風のフレーズが挿まれた後、小刻みなリズムで盛り上がり、最後はソプラノサックスと派手なパーカッションが締めくくります。

 『マツケンサンバⅡ』
 締めくくり(プログラム上のアンコール)はこの曲。市音の演奏を聴くと、もう他の演奏は聴けません。とはいえ、5月5日のコンサートの反応を見て前曲と順番を入れ替えたとのこと。確かにあの時の演奏はまるで神がかってましたからね。
 今回も引けを取らない演奏ですが、さすがに屋内ホールではパワーがあり過ぎるように感じます。
 ノリノリのパーカッションもさるものながら、やはりこの曲の聴きどころはフルートのトリオのところと、サックスのカルテットのところでしょうね。

 で、本当のアンコールは『ゲバゲバ90分』をリピート。

     ☆ ☆ ☆

 『宇宙戦艦ヤマト』の劇伴音楽そのものの演奏とか、音楽に対する解説があったのがいつもの大阪市音楽団のコンサートとの大きな違いですが、先行きに危機感の積もる中、1人でも多くの客層を呼び込みたいという現れの企画でしょうか。どう考えても『宇宙戦艦ヤマト2199』とのタイアップなんかじゃないですからね。
 ま、滅多に聴けないものを聴けたということで、なかなかお得なコンサートだったと思いますので、今後とも続けて欲しいように思います。

     ☆ ☆ ☆

 とりあえず今回演奏された『宇宙戦艦ヤマト』の劇伴音楽が収録されたもの。新録された『宇宙戦艦ヤマト2199』のサントラは発売予定がまだ無いので、旧作の音源です。

 7月から2年に渡って発売される「YAMATO SOUND ALMANAC」のシリーズから。

YAMATO SOUND ALMANAC 1974-I 「宇宙戦艦ヤマト BGM集」
YAMATO SOUND ALMANAC  1974-I  「宇宙戦艦ヤマト BGM集」


 これは『宇宙戦艦ヤマト2199』に合わせて再発売されたもの。最初に出た時はNo.0とセットだったんですけどねぇ……

ETERNAL EDITION File No.1 「宇宙戦艦ヤマト」
ETERNAL EDITION File No.1 「宇宙戦艦ヤマト」


 LP時代のBGM集をデジタルリマスタリングでCD化したもの。

オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト Part1
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト Part1


 ついでに大阪市音楽団による「欲望という名の電車」が収録されたアルバム。

欲望という名の電車
欲望という名の電車

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2011.12.07

片山杜秀と聴く「わんぱく王子の大蛇退治」

 11月26日にザ・フェニックスホールで催されたレクチャーコンサート、「映画は音楽に嫉妬する」の第1弾である『片山杜秀と聴く「わんぱく王子の大蛇退治」』に行ってきました。
 このシリーズは講師のレクチャーを受けながら映画音楽という視点から映画を掘り下げていこうというようなもののようですが、その第1回として取り上げられたのが、伊福部昭の音楽で知られる東映の長編アニメ映画『わんぱく王子の大蛇退治』です。
 講師は音楽評論家として知られる片山杜秀、映画の合間のコンサートパートのピアノ演奏は高良仁美。片山氏はCDとかの解説文から思ってたイメージよりは意外と若いというのが印象でした。
 ザ・フェニックスホールは初めてだけど、超高層ビルの中にあるこじんまりとしたコンサートホールで、せいぜい室内楽ぐらいのためのホールですね。客席も少なくステージに近いから、こういうレクチャーコンサートには便利な場所かもしれません。

 内容は次のような感じです。(順番は違ってたかもしれません)


 1.映画「わんぱく王子の大蛇退治」
    冒頭部

 2.映画「わんぱく王子の大蛇退治」
    アメノウズメの踊り

 3.伊福部昭『日本組曲(ピアノ組曲)』
    第1曲「盆踊」
    第2曲「七夕」
    第3曲「演伶」
    第4曲「佞武多」

 4.伊福部昭『SF交響ファンタジー第1番』(ピアノ独奏版)

 5.映画「わんぱく王子の大蛇退治」
    大蛇退治~終幕

 EC.伊福部昭『日本組曲』
    第4曲「佞武多」


 なにぶん著作権のまだ生きてる映画なので、映画自身を全編上映というわけにはいかなかったようですが、重要なポイントは押さえています。
 作曲家が実写じゃなくアニメ映画を担当するメリットとして、映画の音楽部分をより存分にコントロールできる、その一つに効果音も作曲家が担当する(現在のアニメじゃそういうことはほとんどないけど)ということが挙げられているのだけど、なるほど、映画の冒頭の動物たちのシーンはまるでディズニーの『ファンタジア』をもろに意識したような作りになってます。

 しかし、伊福部先生の本領が発揮するのは「アメノウズメの踊り」の部分。かつて黛敏郎が『題名のない音楽会』で邦画の映画音楽を特集した時、代表作を求められた伊福部先生が挙げて演奏されたのが、この「アメノウズメの踊り」の音楽。
 以前に「第1回伊福部昭音楽祭」でこの曲をスクリーンに合わせて生演奏するなんて嗜好をやっていましたが、さすがに映像とぴったり演奏するなんてのは無謀だったようです。このシーン、映画の方は音楽が先で、それに合わせて映像を作ってるわけですが、それこそ音楽が映像を従えてるという感じで、実写映画にはありえない、作曲家にとってこの上も無い快感なのでしょうか。


『日本組曲(ピアノ組曲)』

第1曲「盆踊」
 力強く律動的な演奏で、かつ高音の部分は軽やかです。ラストのフォルテッシモも壮大に響きます。

第2曲「七夕」
 ちょうど『わんぱく王子の大蛇退治』の「母のない子の子守歌」に似たわらべ歌の主題が印象的に聞こえました。
 交響曲なら緩徐楽章ってところで、精霊流しをイメージさせる鎮魂的なバラード。律動的だけど柔らかく、高音が映える演奏です。

第3曲「演伶」
 躍動的な導入から、ゆっくりとした民謡風の主題。跳ねるような律動的なフレーズとの緩急の繰り返しが特徴的です。
 雑踏の中を練り歩き、やがて遠ざかっていく余韻を感じさせます。

第4曲「佞武多」
 次第に力強くエスカレートしながら踊り歩いていくような土俗的舞曲。執拗なオスティネートと、祭囃子を思わせる小刻みの高音フレーズがとても印象的です。


『SF交響ファンタジー第1番』(ピアノ独奏版)

 力強い「ゴジラの恐怖」、ピアノならではの雰囲気がオーケストラに遜色のない導入を盛り上げます。ややテンポの速い間奏を経て、軽やかでリズミカルな「ゴジラのタイトルテーマ」。強弱と緩急の機微が独奏曲ならではの味ですね。
 やや滑らかな印象の「巨大なる魔神」ですが、こちらはもうちょっと緩急のアクセントが欲しいところ。あと、高音のパートが目立っていて、ちょっと印象が違って聞こえてる感じです。
 続く『宇宙大戦争』のセレナーデはしっとりと穏やかにロマンチックな調べが、次第に心もち力強くなっていきます。
 サスペンスタッチで力強い「バラゴン出現」は後段の繰り返しのフレーズが印象的に響きます。
 やや音に乱れが見られた「ゴジラ対ラドン」は、ラドンのモチーフがサスペンスタッチで力強く、対称的にゴジラのモチーフがリズミカルに奏でられます。
 クライマックスのマーチメドレー。冒頭のファンファーレはピアノではちょっと苦しい感じがしますが、『宇宙大戦争』の「タイトルマーチ」は軽やかで力強く、「怪獣総進撃マーチ」が軽快でリズミカルに続きます。これは独奏による限界なのか、マーチの切り替わり部分がオーケストラ版に比べると切ってつなげた感じのアレンジで、何となくぎこちなく感じられます。
 終盤の「宇宙大戦争マーチ」は力強く躍動感あふれる演奏で、優雅に奏でられていますが、最後の「怪獣総進撃マーチ」になると興奮がエスカレートし過ぎてメロディが崩れちゃってるぐらいに盛り上がって終わります。


 ピアノの高良仁美は、主に沖縄関係の音楽を弾いてる方だそうですが、沖縄とは反対にある北海道出身で、ドロドロとした土俗的なイメージのある伊福部先生の音楽を奏でてるというのは何かアンビバレンツな感じで興味深いものがあります。
 以前にキングで出してた『伊福部昭の芸術』シリーズのCDでピアノを担当したことがあって、その時に肘で鍵盤を叩いたりしてたら伊福部先生が気遣ってくれたのが印象に残ってるとのことです。終わったら肘に無出血してたとかいうから、大変な演奏だったんでしょうね。
 でも、そういう経験を経ているからか、パワーを要求される伊福部先生の曲を十分に奏でられているのでしょう。

 片山氏によれば、『日本組曲』は戦前から海外で多く演奏されて来たけど、日本国内では外国人の演奏家ばかりで日本人が演奏することは少なく、それはあまりに激しい演奏を要求されるから、体力の乏しい日本人の演奏家からは避けられていたのだろうということです。
 これがピアノだけじゃなく金管楽器にも言え、日本のオーケストラだと思うようなブラスの音が出ないから、それを補うために最初からブラスの数を多く書く習慣が出来たという話。結果として伊福部先生の曲は低音の分厚い曲になり、この低音の迫力ある曲を要求する怪獣映画なんかには不可欠になっていったとのことです。

 今回の『わんぱく王子の大蛇退治』でも、絵で描いたヤマタノオロチをいかに映画として存在感あるキャラクターにするかということになった時、伊福部先生の音楽と結び付くのは必然だったのでしょうか。

 片山氏は伊福部先生が音楽家として最も満足した映画作品が『わんぱく王子の大蛇退治』だと言ってるわけですが、それとは裏腹に、伊福部先生のアニメ作品は後にも先にもこれ一本なのです。(『鉄人28号 白昼の残月』その他の既製楽曲の流用作品は除く)
 ま、思うに東映動画もこの作品を作ってみたら音楽を前提に作品を作るのが意外と面倒だと分かって、そういう作り方の映画はそれっきりになったのと、やっぱりアニメで怪獣出しても東宝特撮には対抗できないと思って、伊福部先生に依頼する作品は出て来なかったんでしょうねぇ。
 そういうところから考えると、この『わんぱく王子の大蛇退治』は日本映画がまだ娯楽の主役だった時代だからこそ生まれた、奇跡の1本と言えるのかもしれません。

     ☆ ☆ ☆

 ピアノ独奏版の『SF交響ファンタジー第1番』が目当てで聴きに行ったコンサートだったけど、『わんぱく王子の大蛇退治』や伊福部先生の映画音楽についての解説とか、とても充実していて楽しめました。
 企画としては面白いシリーズなんだけど、どうせ2回目以降は洋画の名作とかそんなあたりが続くだろうから、現役の映画音楽作家の作品とかでやってほしいと期待しても無理なんでしょうねぇ。興味ある作曲家が取り上げられたりしたら、また聴きに行ってみたいと思いますが。

     ☆ ☆ ☆

取りあえず今回のお題の映画
わんぱく王子の大蛇退治 [DVD]
わんぱく王子の大蛇退治 [DVD]

サントラそのものは入手困難でしょうが、近年になって交響組曲化されたもの
伊福部昭の芸術(7)
伊福部昭の芸術(7)

高良仁美さんがピアノを担当してる1枚(当然ながらオーケストラ版です)
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー

ピアノ版の『日本組曲』はこのあたり
伊福部昭ピアノ作品集 第一集
伊福部昭ピアノ作品集 第一集

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2010.06.05

西宮交響楽団/『交響譚詩』

 5月30日に西宮市民会館アミティホールで行われた西宮交響楽団の第96回定期演奏会を聴きに行ってきました。目的は言うまでもなく伊福部先生の『交響譚詩』。客演指揮者の橘直貴が北海道出身なのと、5月31日の伊福部先生の誕生日の前日というあたりが選曲の理由なのでしょうか。

 西宮交響楽団は甲子園球場とか『涼宮ハルヒ』にお舞台でお馴染みの西宮市に本拠を持つアマチュア楽団です。主な演奏会場となってるアミティホールは阪神・西宮駅の駅前にあるので、もっぱら阪急沿線が中心の『ハルヒ』の世界とは雰囲気が違うかもしれませんが……
 指揮の橘直貴は良く知りませんが、ググってみたら『ブラバン!甲子園2』の指揮者だとか。確かこれは「宇宙戦艦ヤマト」が入っていたと思うから、聴いてみようかな……とか思ったりしたところです。

 さて、演奏曲は以下の通り

01. フェリックス・メンデルスゾーン
     劇音楽「アタリー」序曲

02. 伊福部 昭
     交響譚詩

03. カール・ニールセン
     交響曲第4番「不滅」

EC. セルゲイ・ラフマニノフ
     ヴォカリーズ

 プレトークで指揮者があまり知られていない曲ばかりと言ってたけど、伊福部先生の『交響譚詩』、そんなにマイナーですか。伊福部先生の曲の中では演奏機会は割と多い曲だと思うのですが……


劇音楽「アタリー」序曲
 メンデルスゾーンの中ではあまり有名じゃない曲だという話ですが、メンデルスゾーンと言っても「結婚行進曲」ぐらいしか頭の浮かんで来ない人にはあまり関係ありませんねぇ。
 これは旧約聖書に原典をとったラシーヌの戯曲に音楽を付けたものですが、この物語自体も日本人にはあまり馴染みのないものですね。同じ聖書を原典にした戯曲なら『サロメ』の方がまだ物語的にも受け入れやすいのですが……

 穏やかなトランペットの音色から始まり、滑らかなストリングスが入り、やがて柔らかな木管の音色に繋がっていく冒頭部。
 中盤はややマイナーがかったショッキングなフレーズや、断続的でシリアスな曲想が激しく盛り上がり、穏やかなフレーズとともに交互に展開されて行きます。途中、トランペットの華麗なフレーズの後、低音のブラスがリフレインし、やがて美しくも悲しげなストリングスとハープの音色が空気を支配します。
 終盤はゆっくりと堂々とした盛り上がりで締めくくられます。劇音楽の序曲にふさわしい、ダイナミックな展開で大団円に収束する心地よいコンパクトな大曲という感じですね。


交響譚詩
 第1の譚詩
 お馴染みの華々しい第1主題の出だしだけど、どこかワンテンポずれてる感じ。トランペットの音が裏返ってて、他のパートもばらばらな感じ。
 第2主題がやや穏やかに入ってくるところは、ちょっとティンパニーが目立ち過ぎかな。強弱の差が滑らかじゃなく、チューバがちょっと外してる感じ。ホルンが遅れ気味ってところかな。
 後半になって演奏も滑らかになってきたけど、ぎこちなさは最後まで残ってるように感じました。

 第2の譚詩
 導入部はまだぎこちなさが残ってる感じ。ボレロ風に盛り上がるところはきれいにまとまってきていて、木管のソロが入るあたりはなかなかな感じ。
 中盤の静寂なとところの間の取り方はかなり上手い。先程は遅れ気味だったホルンはこれくらいが良い感じかな。
 終盤の盛り上がりはやはりティンパニーが目立ってる様子。ラストの徐々に静寂に帰るところもきれいに終われてないのが残念。

 全体的に指揮者の緩急の取り方は的を得た感じなんだけど、オケの演奏がついてこれてないって感じですね。伊福部音楽ってそんなに難しいですか。


交響曲第4番「不滅」
 ニールセンはデンマークの近代音楽作家だそうですが、いうまでもなく初めて聞く名前です。この交響曲第4番は「不滅」と翻訳されていますが、けっして負けないとかいう力強い意味ではなく、クスクスとしぶとく消えずに残り続けてるって感じみたいですね。
 各楽章は途中で区切られず、連続して演奏されますが、曲調ははっきりと分かれています。

 第1楽章 Allegro
 スリリングで激しい導入から、華やかな盛り上がりと緊迫感。一転してバラード風の展開。再びスリリングに盛り上がった後は、ティンパニーの小刻みな余韻を残していったん静寂に帰ります。続いてバイオリンのピチカートがサスペンス感を与え、また激しく盛り上がっていく感じです。

 第2楽章 Poco Allegretto
 クラリネット主体で奏でられる穏やかな牧歌的なフレーズです。

 第3楽章 Poco Adagio Quasi Andante
 スリリングなストリングスとティンパニーの響き。やがてショッキングなフレーズがファンファーレ風に奏でられ、それがリフレインのように展開されていき、シリアスなバラード風の展開に繋がっていきます。

 第4楽章 Con anima. Allegro
 一転して華々しい盛り上がりで始まり、2組のティンパニーの乱打が響きます。余韻を奏でるトロンボーンが印象的。マイナーに転じながらも、必死で消えゆく生命を盛り返そうとしている様子が繰り返されます。そして、静寂の中からティンパニーの響きとともにクライマックスに盛り上がります。
 ラストはゆったりと堂々としたフレーズで盛り上がって大団円。最高に盛り上がったところですぱっと終わって気持ちいいですね。


ヴォカリーズ
 アンコールはラフマニノフのこの曲。曲名が語るように本来は声楽曲ですが、声楽が無いのしか聴いたことありませんねぇ。
 ストリングスの美しくもどこか寂しげなフレーズ。それを反復していくクラリネット。ストリングスと木管による展開が繰り広げられます。やがて、やや沈痛な趣きの盛り上がりを見せ、クラリネットのソロがやや情緒的に奏でます。

   ☆ ☆ ☆

 伊福部先生といえば、幻の作品と言われた『寒帯林』の楽譜が遺品の中から発見されたとかで関東で初演されるみたいですが、聴きに行くお金が無いです。是非、CDで出してほしいですね。『プロメテの火』の復元も進められているそうだから、こちらも期待したいところですが……

 6月11日に関西フィルの定期演奏会で、大友直人指揮で『ヴァイオリン協奏曲第2番』が演奏されるみたいなので、こちらは聴きに行く予定です。


譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽
譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽

伊福部昭:管弦楽選集
伊福部昭:管弦楽選集

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2009.05.23

東京交響楽団/交響曲「宇宙戦艦ヤマト」

 5月16日に東京芸術劇場で催された大友直人指揮・東京交響楽団の東京芸術劇場シリーズ第100回のコンサートに行ってきました。
 目的は言うまでも無く25年ぶりに再演される羽田健太郎作曲の『交響曲「宇宙戦艦ヤマト」』です。この曲自体についてはハネケンの追悼記事として以前に書いてますので、楽曲に関する詳細はそちらをご参照ください。(羽田健太郎『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』

 初演の時は聴けなかった(というか、レコードが出てから初めて知った)貴重なヤマトの演奏会用の音楽ですので、万難を排して聴きに行くことにしました。しかし、3月の『ウルトラセブン』4月の『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』と、3ヶ月連続の東下りはさすがに懐的に辛いですね。いつもは年1回ぐらいに抑えてるものですが。

 会場には西崎プロデューサーからの花が飾られていましたが、ご健在そうで何よりです。おりしも『ヤマト』の新作が動き出してるみたいなので、期待したいものですね。

 さて、コンサートの演奏曲目は以下の通りです。

 01. 坂本龍一
    映画『戦場のメリークリスマス』テーマ曲
 02. 三枝成彰
    NHK大河ドラマ『太平記』から
    「はかなくも美しく燃え」(藤夜叉のテーマ)
 03. 三枝成彰
    映画『優駿 ORACION』から“誕生”
 04. 服部隆之
    TBS日曜劇場『華麗なる一族』からメイン・テーマ(原典版)
 05. 羽田健太郎(テーマ・モチーフ:宮川泰)
    交響曲『宇宙戦艦ヤマト』
 EC. 冨田勲
    NHK『新日本紀行』テーマ曲

 それでは、順番に印象などを……

坂本龍一
 映画『戦場のメリークリスマス』テーマ曲

 坂本龍一といえばYMOの坂本教授ってイメージでしたが、それを一新して世界的な映画音楽作家として印象付けたのが、この『戦場のメリークリスマス』ですね。シンプルで覚えやすいフレーズの繰り返しによるこのテーマ曲は、いまなお色々なところで耳にします。
 鉄琴の序奏から始まり、ストリングスが伴奏を重ねます。次いで木琴とベル、そしてピアノが主題のフレーズを奏でていき、徐々にストリングスが加わってきます。
 次第にオーケストラ全体で優雅に、そして壮麗に奏でられていきますが、終始ベルが響いてるのが印象的です。

三枝成彰
 NHK大河ドラマ『太平記』から
 「はかなくも美しく燃え」(藤夜叉のテーマ)

 三枝成彰といえば、個人的には『機動戦士Zガンダム』の音楽の人ってイメージですが、透き通った流れるようなストリングスを多用するオーケストレーションの印象が強い作曲家ですね。
 木管のフレーズから始まり、次第にストリングスが重なってきますが、この辺りが実に三枝成彰らしい作りです。
 やがて哀愁的なヴァイオリンのソロが響いてきますが、これは劇伴の原曲では胡弓によるものだという話。もっとも、ヴァイオリンも胡弓と呼ばれたりする場合がありますが……
 マイナー気味の沈滞したようなフレーズがしばらく続き、全体で華々しく盛り上がっていきます。再びヴァイオリンのソロが入り、穏やかな伴奏と共に締めくくられていきます。

三枝成彰
 映画『優駿 ORACION』から“誕生”

 波打つような独特のヴァイオリンとフルートによる序奏。ベル(トライアングル?)とストリングス、そしてブラス、パーカッション、コーラスが加わって大きく盛り上がっていきます。
 マイナーなストリングスのフレーズが続いた後、ストリングスにコーラスが加わって優雅に展開されます。全体で壮大に盛り上がり、堂々とした主題が奏でられます。その後、清らかなコーラスと美しいストリングスのフレーズが展開され、安らぎと清浄なイメージが広げられます。
 最後は全体で壮大に盛り上がって、太古の連打と共に堂々のクライマックスを迎えます。

服部隆之
 TBS日曜劇場『華麗なる一族』からメイン・テーマ(原典版)

 服部隆之というと『劇場版スレイヤーズ』とか『機動戦艦ナデシコ』の作曲家というイメージですが、音楽的にはストリングスとブラスを調和させた豊かで華やかなオーケストレーションの印象が強い人です。
 原典版とあるのは、実際にレコーディングに用いられた作曲家手書きのスコアを用いての演奏とのことみたいです。
 力強いブラスとストリングスから始まり、徐々にスローダウンしていきます。哀愁漂うマイナーなストリングスと低音のコーラスのフレーズが続きます。やがて叙情的にオーケストラが展開していきますが、この辺りが実に服部隆之らしい深みのあるオーケストレーションです。
 ピッコロとハープが間奏的なフレーズを奏でた後、全体で盛り上がると、今度はトランペットやホルンが哀愁的なフレーズを印象深く重ねます。
 ピアノのソロからストリングスの穏やかにフレーズに続き、徐々に全体で盛り上がり勇壮に展開していきます。その後の余韻に響くホルンが印象的。
 スタッカート気味にテンポ良く盛り上がり、行進曲風に勇壮に展開していきます。やがて大きくコーラスが入り、壮大に響き渡ります。まるで交響曲の終楽章のような堂々たるフィナーレを迎えます。


羽田健太郎(テーマ・モチーフ:宮川泰)
 交響曲『宇宙戦艦ヤマト』

 第一楽章「誕生」

 低音から始まる幻想的な序奏。CDでは数え切れないくらい繰り返し聴いてる冒頭部ですが、生で聴くブラスの響きはとっても豊かに感じられます。
 可変的なテンポで奏でられる第1主題のメインテーマが壮大に展開されていきます。オーケストラの音がとにかく豊か。こればかりはレコードでは味わえない醍醐味です。ホルンによる間奏を経て第2主題の「イスカンダル」が奏でられます。華麗な木管がメインのフレーズから始まり、美しいストリングスに引き継がれていきます。
 展開部の第1主題はどこか不安定な雰囲気で始まります。危うくも派手な展開が繰り広げられますが、途中に入るティンパニーの響きが印象的。
 再提示部になると第1主題は安定し、勇壮かつ堂々とした展開で盛り上がります。そして静寂に帰って第2主題。雄々しく優雅な雰囲気で、曲全体は穏やかに流れていく感じです。

 第二楽章「闘い」

 流れるようなストリングスによる第1主題の「神殿部の斗い」に、トランペットによる「FIGHTコスモタイガー」が絡み、華々しい盛り上がりから始まっていきます。重低音の「ウルクの歴史」はコントラバスがメインで旋律を奏でてるのが実に印象的です。
 こうして生で聴くと、ストリングス主体の第1主題のフレーズと、重低音の「ウルクの歴史」のフレーズ、そしてブラス中心の展開音楽が三者互いに対峙してるイメージが強く感じられます。
 中間部に流れるストリングス主体の第2主題は、激しいスケルツォに挟まってとても優雅に感じられます。
 終盤はより力強い「FIGHTコスモタイガー」から始まって展開されます。

 第三楽章「祈り」

 ストリングスで優雅に奏でられる第1主題。そして清らかな第2主題の「無限に広がる大宇宙」が木管中心で奏で始められます。
 中間部では第1主題が展開的に奏でられていきます。美しくも不安げな感じから、熱情的なブラスの展開に移り、最後は雄々しく堂々とした形になっていきます。
 終盤はスキャット(ヴォカリーズ)とハープを加えた第2主題。ヴォカリーズは安井陽子というソプラノ歌手の人ですが、初演の川島和子に比べると声が野太い感じがします。川島和子のスキャットが割りとフラットで頭にアクセントがあるのに対し、声の半ばに重みを置いた歌い方です。ま、以前に聴いたセントラル愛知交響楽団のコンサートの時の人みたいに、おもいっきり声を震わせたソプラノそのものの歌い方ほどじゃないにしても、やはりどこか違うような気がします。

 第四楽章「明日への希望」

 ピアノとヴァイオリンによるドッペルコンチェルト。今回はピアノが若林顕、ヴァイオリンがコンマスの大谷康子ということです。
 オケは力強い第1主題のユニゾンで始まりますが、ブラスの出だしが少し弱いかなという感じ。続いて入ってくるピアノは確かに力強くはあるけど、軽やかさが足りず、テンポを維持するのにいっぱいで、少し音が濁ってる気がします。初演のハネケンのピアノと比べるのも無理があるのだけど、どうしてもあれが基本に感じてしまいますからね。
 そして第2主題の「大いなる愛」をピアノが奏で始めますが、ハネケンとも宮川泰とも違う、まったく別の味わいです。一方、ヴァイオリン・ソロは表現豊かな演奏なのですが、ちょっと弱々しい感じが否めません。
 中盤、第三楽章の第1主題が現れる辺りはオケの演奏が豊かに響いてます。ヴァイオリン・ソロの歌い上げていく部分はかなり見事に聴かせてくれます。しかし、そこに加わってくるピアノが何かもたついて感じられます。そして、オケの方もそれに引っ張られてるのか、少し乱れを見せてる感じです。
 終盤近くのピアノとヴァイオリンの掛け合いは音がかみ合ってないというか、初演のハネケンと徳永二男の阿吽の呼吸のようなものはここには存在してないのでしょう。それを望むのは無理な注文とはわかるのですが……
 それでも、ラストの盛り上がりは格別の味わい。堂々としたメインテーマを用いたコーダがフィナーレを飾ります。

冨田勲
 NHK『新日本紀行』テーマ曲

 冨田勲といえば、このブログ的には『ジャングル大帝』の人なのですが、どちらかというとクラシック音楽の演奏にシンセサイザーを用いた旗手の人という感じですか。もっとも、バッハの楽曲を使ったアルバムしか聞いたことはありませんが。
 この『新日本紀行』の曲は、途中に拍子木とか木魚とか笛の音という和風テイストを入れることで日本をめぐってるって雰囲気を出してる感じですが、曲そのものの作りはあんまし和風の感じはしないので、狙いどころは良くわかりません。ま、オケで和楽器そのものを使ってたとは思わないから、クラヴェスやウッドブロック、フルート等で代用してるんでしょうが、席が前の方だと演奏してるところが見えないので、よくわかりません。

     ☆ ☆ ☆

 これまで音源が初演版しか無かったから、どうしてもそれをスタンダードとして比較してしまいます。特にソリストの方たちにはきつい感想になってしまいがちです。こういうのも比較対象が多くなれば、それなりにきちんとした評価が出てくるのでしょうが。
 これを機会に、多く演奏されるようになってくれたらと思います。大友氏も語ってられましたが、羽田健太郎が残した貴重な大作なのですから。本当の意味での音楽的な評価がなされていって欲しいものです。

(とか言ってるけど、現在では頻繁に演奏されてる伊福部先生の『SF交響ファンタジー第1番』だって、未だに頭の中には日比谷公会堂初演版がスタンダードとして居付いてますからねぇ……。最初にレコードとしてリリースされた演奏の影響は大きいです)

     ☆ ☆ ☆

 第三楽章の女声ソロのパート、初演のレコード等じゃ「スキャット」の記述なのに今回のコンサートでは「ヴォカリーズ」との表記です。「スキャット」とは誤用で音楽的には「ヴォカリーズ」の方が正しいってことのようですが……おおっぴらにそんなこと書いてるの、Wikipediaの「宇宙戦艦ヤマト」の項目でのこの「交響曲宇宙戦艦ヤマト」に対する記事でしか見たことありません。
 ま、Wikipediaの記載自体、出典を示して書かれてるわけじゃないから、誰が言い出したことかわからないので今回の表記との関連性は不明なのですが、どうなんでしょうね。
 音楽的に「ヴォカリーズ」が正しいにしても、その当時「ヴォカリーズ」でググっても(Wikipediaの「ヴォカリーズ」の項目も含めて)音楽用語として有用な記述への検索結果が出て来なかったから、どこまで一般に認知されてる(さらに1984年当時に遡って、当時に認知されてた)言葉かはわかりません。

 この「ヴォカリーズ」を正しいとする根拠の1つとしてジャズ用語である「スキャット」の誤用が挙げられてるわけですが、そもそもこの指摘自体がおかしい気がします。
 『宇宙戦艦ヤマト』の音楽でこれを「スキャット」と称しているのは第1作目の音楽(少なくとも『交響組曲』のアルバム)から始まっていますが、そもそもこれを「スキャット」と呼んでいるのは(根源的にはジャズ由来なのでしょうが)日本の歌謡曲での習慣からなのですね。少なくとも由紀さおりの「夜明けのスキャット」に遡る流れです。
 「夜明けのスキャット」は「ルールルルー」の子音の連続だから「スキャット」で、『ヤマト』のは「アーアーアアアー」の母音の連続だから「ヴォカリーズ」というのは、そりゃ子音と母音が明確に区分されてる西洋言語の音楽なら正しいのでしょうが、共に音節をはっきりと出している日本語の音楽では区別する意味がありません。
 つまりのところ、日本の歌謡曲における「スキャット」としては『ヤマト』の川島和子の歌も「スキャット」として間違いではなく、大元のジャズの定義を持ってきて誤りだというのはふさわしくないのではないでしょうか。歌謡曲の「スキャット」とジャズの「スキャット」は別物だと考えた方が良いと思います。

 クラシック音楽として「スキャット」という概念が無いから「ヴォカリーズ」と表すというのなら、それはそれで正しいと思いますが、別のところからジャズの定義を持ってきて「スキャット」は誤りだというのは違うのではないでしょうか。

     ☆ ☆ ☆

 相変わらず商品欠乏状態ですね。リンクを貼っておくけど、取扱いがあるかどうかは運次第だと思ってください。(メーカー在庫が無いからマーケットプレイス次第)

 まずは滅多に出て来ない単品CD。それでもジャケ写はある。

交響曲 「宇宙戦艦ヤマト」~ライブ~
交響曲 「宇宙戦艦ヤマト」~ライブ~


 DVDの方はたまには出て来るみたいです。

交響曲 宇宙戦艦ヤマト ライブ [DVD]
交響曲 宇宙戦艦ヤマト ライブ [DVD]


 左サイドにも貼ってある特典ディスクに『交響曲』が付いてるBOX版。2年前にはまだまだ現行商品で在庫があったのに、これも今では……

生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX
生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX


 これはアナログ盤といえどもヤマト末期の商品だからヤフオクで探しても『交響組曲』ほど手軽に手に入らないと思います。むしろ商品期間の長かったCDの方が多く出てるかも。(ま、イージーリスニングシリーズとか、『宮川泰の世界』ほどのレア物じゃないでしょうが)

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2009.04.28

日本フィル/『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』

 4月19日に東京芸術劇場で催された宮川彬良指揮・日本フィルハーモニー交響楽団の《第184回サンデーコンサート》に行って来ました。忘れもしない3年前、宮川泰先生が他界された直後に行なわれたコンサート以来ですね。(『宮川泰追悼、日本フィル・サンデーコンサート』参照)

 いうまでもなく目的は3年前のコンサートで彬良氏が公言された『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の復元演奏です。といっても、とりあえずA面曲だけというのが少し残念なところですが。

 演奏曲目は以下の通りです。

 01. イスカンダル(宮川 泰)
 02. 見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
 03. 深い河(黒人霊歌)
 04. ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)
 05. オー・ソレ・ミオ(カプア)
 06. 空のわすれもの(宮川彬良)
 07. あの宇宙を、征け(高取ヒデアキ)

 08. 交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川 泰)
    1:序曲
    2:誕生
    3:サーシャ
    4:試練
    5:出発
    6:追憶
 09. 真赤なスカーフ(宮川 泰)
 10. 宇宙戦艦ヤマト(宮川 泰)
 EC. ゲバゲバ90分(宮川 泰)


 今回のコンサートは星がモチーフということで、星とか宇宙に関係する曲がラインナップされています。
 それでは順番にいきましょう。


イスカンダル(宮川 泰)
 いきなり空想上の星ですが、14万8千光年彼方の大マゼラン雲にあるという、女王スターシャの住む星です。いうまでもなく、これも『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のB面に収録されてる曲なのですが、当時のスコアで現存してるのはこれだけだという話です。
 もっとも、いきなり冒頭のバスフルートのソロのところから彬良氏自身によるピアノが入ってる時点でオリジナルとは違ってるんですが……
 やがて、ストリングスが中心となり、ホルン等も加わってきたところでようやくピアノが抜けます。そこからパーカッション等も入ってオーケストラ全体で奏でられていきます。
 後半はレコードではシンセによるSE的なアクセントをピアノが奏でています。この辺り、オーケストラの演奏が非常に豊かな印象で、そのままレコード通りに終わります。

見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
 今度は漠然とした夜空の星。地上から見た宇宙の光景ですね。これもこの手のコンサートでは定番曲の一つ。いきなり『E.T.』のイントロから始まってる辺りがなんとも。何か原曲部分が普通のインストなのに、そうじゃないとこだけ派手に盛り上がってる感じで、原曲の好きな人はどうなのかな?

深い河(黒人霊歌)
 河の向こうに空があるというところから持ってきたらしいですが、よくわかりません。彬良氏は三途の川の向こうにあの世があるという例えを挙げてらっしゃいましたけど、イメージが曖昧ですね。後で錦織健が言ってたように、天の川とかの方が具体的な気がします。
 豊かなメロディーでかつ、しっとりとした雰囲気の演奏です。

ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)
 いうまでもなく月ですね。元がジャズバンドの曲ですから、メインを奏でるのはサックスなのですが、それをピアノに置き換えての演奏とのことです。しっとりとした感じに仕上がっています。

オー・ソレ・ミオ(カプア)
 太陽です。雰囲気的にスペインとかの方が似合いそうですが、元はイタリアのナポリ民謡とのことですね。
 ここから登場の錦織健のテノールが見事に歌い上げてくれます。さすがに本職、マイクなんか使いません。途中に入る、クラリネットだかイングリッシュホルンだかのソロがなかなかでした。

 毎度のことだけど、オケのコンサートで曲の演奏中に拍手を入れるのはやめてほしいです。ポピュラー歌手のコンサートじゃないんだから。
(ベートーヴェンの『第九』でも第4楽章でソロ歌手が入ったところで拍手するやつがいるから、それを嫌う指揮者の中にはソロ歌手を第1楽章から出させてる人もいるって話もありますし。もちろんコーラスも)

空のわすれもの(宮川彬良)
 元はコーラス曲とのことですが、今回は彬良氏のピアノ伴奏による錦織健の独唱。歌詞や曲調が平易なので、聴いた感じ、『みんなのうた』みたいな趣きのの曲ですね。

あの宇宙を、征け(高取ヒデアキ)
 これはNHKアニメ『タイタニア』の主題歌です。オケとテノールが張り合ってるような感じの曲ですね。聴いた位置の関係もあるのか知らないけど、もう少しオケとテノールの配分を考えないと、少しお互いの音を殺しあってるような感じがします。
 錦織健でアニメの主題歌というと「未完成協奏曲」なんかも聴いてみたい気がするのですが、今回のテーマとは合いませんね。


交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川 泰)

 1:序曲
 近年演奏の多い『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』では頭と後半部分がぶつ切りされてる「序曲」ですが、レコード通りに冒頭の「サスペンスA」のフレーズから始まります。
 やがてメインの主題として現れるのは「無限に広がる大宇宙」のモチーフ。ここで川島和子がいないからと、なんと錦織健がスキャットをやっているのですが、意外にもちゃんと聴けるのですね。恐るべし、錦織健。
 リズムボックスがテンポを奏で始めストリングスが主題のモチーフを盛り上げていきます。中間部で木琴が目立ってるのが少し印象的です。バイオリンのグリッサンドとティンパニーが絡み、演奏が盛り上がり、シンバルが鳴り響きます。フォルテの部分はかなりのパワーを感じますね。
 終盤はオーケストラ全体で主題を優雅に奏で上げ、ホルンと共に盛り上がるラストを迎えます。『組曲』では中盤で切られてしまうから、最後まできちんと聴けるのは嬉しいですね。

 2:誕生
 重厚な「悲愴ななヤマト」のフレーズで始まっていきます。コントラバスがなかなか響いてるのが印象的。そしてミステリックな雰囲気の「宇宙の静寂」のフレーズ。
 間奏部のファンファーレ的なフレーズから「ヤマト乗組員の行進」への盛り上がりが最高です。やはりここが一番の聴き所でしょうね。原曲よりはかなり軽めでポップな感じの演奏ですが、そのぶんノリは良いです。
 その行進曲からメインテーマのイントロに繋がるところ、原曲はそのままの音程で繋がってるのですが、今回はささきいさおのボーカルのキーに合わせたのか、イントロ部分に入るところで音程がどんと下がってしまってるのが気になりました。
 例のごとくボーカルが入るところでささきいさおが入ってくるので、演奏中に関わらず拍手が入ってしまうのが非常に残念ですね。だいたい原曲はボーカル無しだし、ボーカルのキーに合わせれば音程が変わるし、拍手は入れられるし、メリットがあるとも思えないので、ちゃんとレコード通りにインストゥルメンタルだけで演奏して欲しかったところです。(ささきいさおによる主題歌はちゃんと後のプログラムに入ってるわけだし)

 3:サーシャ
 大曲が続いたのでちょっと一息といったところの曲です。ミステリアスっぽい「イスカンダルの女」のフレーズを、木管から始まって、ハープのアクセントを経て、ストリングスに繋いでいきます。
 聴いてた場所によるのかもしれないけど、ちょっとコントラバスが強過ぎかな。

 4:試練
 緊迫感あふれる「サスペンスB」のフレーズで始まります。さすがに原曲にあったシンセの効果音はいっさい入っていません。
 中間の「探索艇」のモチーフはただただ軽快に奏でられます。
 終盤は「サスペンスB」のフレーズが少し入った後、じわりじわりと「ヤマトのボレロ」が奏でられていきます。スネアのリズムが本家ラヴェルの『ボレロ』並みに響きまくってるのが印象的。

 5:出発
 中間部のフレーズをカノン風にアレンジし、ボリュームアップした「地球に飛び立つヤマト」です。
 木管がリズムをリードしてる感じなのが印象的ですね。ストリングスはスタッカート気味の部分が多くて大変そうです。ラストのスローテンポの部分は優雅に奏でられてて、余韻に浸れます。

 6:追憶
 A面の最後は「宇宙戦艦ヤマト」のメインテーマをバラード風にアレンジしたイージーリスニング風の曲です。劇伴曲の「哀しみのヤマト」とは趣きが違うアレンジなんですね。
 ギターソロから始まり、ストリングスと木管がややしんみりと引き継ぎます。中盤になってトランペットが哀愁漂うバラードを奏でるのがとても印象的です。最後、ストリングスが余韻を奏でる中、鉄琴の短いフレーズで終わるのが、けっこう特徴的なんですね。

 本来、B面に続くためのインターミッション的な意味合いの曲ですから、ここで終わってしまうのは非常にフラストレーションが溜まるのですが、とにもかくにもようやくA面だけ復元できたということですから仕方がありません。


真赤なスカーフ(宮川 泰)
 これは『宇宙戦艦ヤマト』のエンディング曲。シングル盤バージョンで、ささきいさおのボーカルです。この曲、アニメのEDで使われたのはアレンジが違うんですけど、たまにはそっちを聴きたいとか思ったりしますが、どうなんでしょう。
 B面が復元されたらその1曲目が「真赤なスカーフ」になるのですが、『交響組曲』のこれは宮川泰先生らしい、ごっちゃ煮のアレンジメドレーになってて、聴ければなかなか楽しめるので大いに期待したいところです。(さすがに、これをボーカル入りでやったりは出来ないでしょうね)
 それにしても、ささきいさおの歌は全然変わりませんね。

宇宙戦艦ヤマト(宮川 泰)
 フルコーラスの主題歌ですが、「序曲」に引き続き錦織健のスキャット付です。やはりオケメインの「誕生」に無理やりボーカルを入れるよりは、ボーカル用の単独曲の方が映えて聴こえますね。
 錦織健のスキャットは、スキャット単独で聴くと悪くはないのですが、やはりささきいさおのボーカルと組ませると、ちょっと違和感があります。これをやるくらいなら「真赤なスカーフ」のバックコーラスをやって欲しかったところですが……

ゲバゲバ90分(宮川 泰)
 アンコール曲はトークでも触れられていた「ゲバゲバ90分」です。吹奏楽版は前に大阪市音楽団の演奏で聴いたことがありますが、オーケストラ版を生で聴くのは初めてかな。途中、トロンボーン隊が立って演奏してましたが、オーケストラじゃそれがせいぜいのパフォーマンスみたいですね。

     ☆ ☆ ☆

 何年後になるのかわかりませんが、引き続いてB面の復元を期待したいところです。
 B面6曲と言っても、「イスカンダル」は現存してるわけです。3年前のコンサートでは「明日への希望」が演奏されていましたが、あれのスコアはどうなってるのでしょうかねぇ。もっとも、この曲はスコアの復元以上に、コーラスを調達しないといけないという難問があるのですが。
 残るは「真赤なスカーフ」「決戦」「回想」「スターシャ」というところですが、「真赤なスカーフ」を原曲通りにやるとするとエレキギターとかも持ち込まないといけないし、いろいろとオケで生演奏するには面倒ですね。
 今回のA面ではその辺で妥協してる部分がけっこうあったように思いますけど、これもいつかもっと完全に近い形でやり直して欲しいですね。

     ☆ ☆ ☆

 アニメ音楽史上屈指の名盤とはいえ、単独の現行商品が無いんですね。次のは中古でプレムアム価格が付いてるから注意。(アナログ盤ならヤフオクに行けばいくらでも安く手に入りそうですけど)

交響組曲 宇宙戦艦ヤマト Symphonic Suite Yamato
交響組曲 宇宙戦艦ヤマト Symphonic Suite Yamato

 左サイドに張ってある30周年記念のCD-BOXもすでに在庫切れみたいですね。
 いよいよ『復活編』を作るとか言ってるから、便乗して過去の音源も復刻して欲しいものです。(個人的には『ヤマト』の音楽CDは全部押さえてるから、むしろ『オーディーン』のCDを出して欲しいんですが)

 これだけじゃ何だから、宮川彬良関連のCDでも。

 これは大阪市音楽団の演奏で吹奏楽版の『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』が収録されていますが、以前に記事で取り上げたアルバムとは違い、とくに平原まことの名前がクレジットされてないから市販されてるスコアに準じたスタンダードなアレンジの演奏かと思います。(レコード屋で現物を見掛けたこと無いので未入手)

ブラック・ジャック&宇宙戦艦ヤマト 宮川彬良&大阪市音楽団
ブラック・ジャック&宇宙戦艦ヤマト 宮川彬良&大阪市音楽団


 こちらは同じ大阪市音楽団の演奏ですが、以前の記事で紹介している平原まことのサックスをメインにフィーチャーされたアレンジの吹奏楽版『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』が収録されています。

ブラスバンド・バラエティ 宮川彬良&大阪市音楽団 痛快ライヴ!マツケンサンバII!!
ブラスバンド・バラエティ 宮川彬良&大阪市音楽団 痛快ライヴ!マツケンサンバII!!


 吹奏楽版『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』とか「ゲバゲバ90分」とかは宮川泰先生の生前に出てる次のCDでも聴けますが。

THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa
THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa


 なぜか未だにオーケストラ版の『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』はCDになっていないのですが、いいかげんどこかの演奏を出してくれないかな。いや、別に川島和子のスキャットが必要だとか言いませんから。(そういえばスキャットをフィーチャーした「大いなる愛」って『幻想軌道』のライブ盤辺りで出てたっけ?)

 『交響組曲』やら『組曲』やらややこしいですが、さらに来月は待望の『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』の再演ですね。

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2009.04.09

六甲フィル/『SF交響ファンタジー第1番』

 少し古い話ですが、2月15に神戸文化ホールで開かれた六甲フィルハーモニー管弦楽団の第27回定期演奏会を聴きに行って来ました。

 六甲フィルハーモニー管弦楽団というのは、阪神大震災の後に神戸大学交響楽団のOBを中心として集まって結成された、主に神戸で活動しているアマチュアオーケストラのようです。指揮は客演の遠藤浩史。

 演奏曲目は以下の通りです。

 01. モーツァルト
   交響曲第35番ニ短調 K.385「ハフナー」
 02. 伊福部 昭
   SF交響ファンタジー第1番
 03. ブラームス
   交響曲第1番ハ短調 Op.68
 EC. ブラームス
   ハンガリー舞曲第6番ニ長調

 それでは、順番に印象などを……


モーツァルト
交響曲第35番ニ短調 K.385「ハフナー」

 ハフナーというのはザルツブルグの大富豪のこと。クラシック音楽(とくに交響曲)はベートーヴェンの時代からは市民社会での芸術音楽という側面を大きくしていきますが、モーツァルトの当時はまだ宮廷貴族や富豪向けのステータスシンボルとしての量産音楽という意味合いが大きかったので、これもそんな1つとしてハフナー家に献呈された作品ですね。

  第1楽章 Allegro con spirito

 雄々しいオーケストラで始まるソナタ形式の第1楽章。冒頭からの音の豊かさは古典時代ならではの曲って感じがしますが、どうなんでしょう。ブラスとストリングスのハーモニーが味わい深い印象です。
 主題展開部はややスローダウンしてマイナー気味に落ち込んだ感じですが、主題再提示部で再び華々しさが復活してきます。

  第2楽章 Andante

 優雅なセレナーデ風の緩徐楽章。そういえばこの曲は元はセレナードとして作られていた曲を交響曲に改作したものみたいですね。
 美しいストリングスにブラスのアクセントが入るという感じです。ストリングスの響きは非常に豊かな印象です。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが対向配置になっているので、それが効果的にハーモニーを響かせてる感じです。

  第3楽章 Menuetto

 華々しい序奏で始めるメヌエット。華々しいフレーズとおとなしめの静かに抑えたフレーズの繰り返しによる派手な主部が展開した後、ゆっくりと優雅な中間部が奏でられるのが印象的です。

  第4楽章 Finale:Presto

 出だしから華々しく派手なプレスト。ストリングスが主体でブラスは添え物って感じがモーツァルト的な感じかな。打楽器はティンパニーが目立つ程度。スピーディーながらも美しいストリングスの響き。少し控えめって感じもするけど、大きく盛り上がって終わります。


伊福部 昭
SF交響ファンタジー第1番

 オーケストラの編成が前曲から一気に大増員です。とくにコントラバスが倍増してるのって凄いですね。期待が高まります。

 冒頭、ゴジラの出現モチーフの重低音は抜群。ティンパニーとシンバルが目立ち過ぎって感じかな。続く間奏部は2拍子部分の溜めと7拍子部分のテンポアップがうまく出ています。
 「ゴジラ・タイトル」は少しテンポが速過ぎかな。原曲は速めなんだけど、この『SF交響ファンタジー』ではそれよりゆっくり気味の指定のはず。打楽器やブラスが強くてストリングス(とくにヴァイオリン)が弱い気がします。
 「巨大なる魔神」は上手く緩急が出ていますね。タムタムが強過ぎって感じだけど、逆にティンパニーはもうちょっと頑張った方が良かったですね。これ、ティンパニーの一番の聴かせどころのはずですから。
 「セレナーデ」はちょっとテンポが一定過ぎる感じ。ハープも伴奏に隠れてる感じだから、もうちょっと表に出て来た方が良いかな。全体的には音が豊かですね。
 「地底怪獣出現」はブラスの重低音が凄いですね。中盤の部分が少しテンポが速過ぎで、もう少し溜めが欲しいところです。
 「ゴジラ対ラドン」はラドンのモチーフの入るタイミングが絶妙。これ、ちゃんとスコアに書いてあるはずなのに、演奏しなれてないオケとかだと微妙に違うんですね。でも、太鼓が強過ぎって気がするし、繰り返しはちょっと拙速な感じですね。
 「宇宙大戦争タイトルマーチ」はファンファーレのテンポは良いんだけど、その後がいきなりテンポアップし過ぎ。かなり早過ぎる感じですね。でも、シンバルのタイミングがちゃんとちゃんと追い付いていってるのは良いです。
 この曲と「怪獣総進撃マーチ」は若干テンポを変えた方がメリハリが付いて良いのですが、そのまま突っ走ってる感じです。
 マーチの2回目は音がかなりボリュームアップした感じになります。「怪獣総進撃マーチ」の2回目のところでトランペットがミスっちゃってるのが残念。ま、ここの部分はとくにブラス系は過酷で、プロオケでも繰り返しを端折っちゃってる演奏がしばしばありますからね。
 クライマックスの「宇宙大戦争マーチ」はちゃんと盛り上げどころが分かってるって演奏で嬉しいです。結部の「怪獣総進撃マーチ」の締めも上手いですね。

 全体的にけっこう聴き応えのある演奏ですね。


ブラームス
交響曲第1番ハ短調 Op.68

 ブラームスは初めてですのでよくわかりません。この交響曲第1番は21年掛けて作ったということですが、これをもってチェレプニンが伊福部先生に交響曲を作り急ぐなと言ったお陰で、伊福部先生は生涯に『シンフォニア・タプカーラ』しか交響曲を作らなかったみたいですから、何とも罪作りな人です。

  第1楽章 Un poco sosutenuto-Allegro

 深刻そうなマイナー気味の出だし。沈んでいくようなストリングスのハーモニー。よく見ればコントラバスがオケの最後列で一直線に並んでるのが珍しいですね。
 哀歌のような沈痛な展開。まるで悩み深さを表すようなゆっくりとした展開。ちょっと『ゴジラ』のタイトルモチーフに似たフレーズが現れたかと思うと、大いなる苦悩って感じの激しい展開。
 ブラームスは苦悩の音楽ですか……と思ったら、後半はメジャー気味に豊かに展開していきます。

  第2楽章 Andante sosutenuto

 ゆっくりと優雅なストリングスで始まる緩徐楽章。木管のフレーズから始まる壮麗なセレナーデ風。そして、ストリングス主体でやや静かでおとなしめのバラード風に奏でられていきます。

  第3楽章 Un poco allegretto e grazioso

 ゆったりとした4拍子の舞曲風の始まり。普通、第3楽章にはメヌエットなりスケルツォなりの3拍子の舞曲が入るのですが、ブラームスはそうではないみたいです。
 徐々に盛り上がって、ファンファーレを伴った主題が現れますが、これがまた2+2+4拍子でかなり変則的ですね。

  第4楽章 Adagio-Piu andante-Allegro non troppo, ma con brio

 重々しい沈痛なストリングス。第1楽章を引いて苦悩の音楽って感じです。低音のピチカートでの盛り上がりが印象的。
 ゆっくりとした大きなブラスの大きなフレーズから、心が洗われるようなフルートの響き。非常にゆったりとした夜明けのようなイメージから、ベートーヴェンの『第九』に似たフレーズの優雅なセレナーデをストリングスが奏でます。そこから木管、さらに全体へと広がり、華々しく派手に展開していきます。
 延々と続く派手で激しい展開部。途中、ややゆっくりと優雅な部分が挿入され、単調さを避けてる感じかな。
 苦悩から歓喜や祝福へ昇華されて終わってるって感じですね。

 このブラームスの交響曲第1番は俗に「ベートーヴェンの第10番」とも呼ばれてるらしいですが、第4楽章の展開を見れば『第九』との関連性は伺えますね。ただし、ベートーヴェンの音楽はこんなに難解じゃないと思うんですけど。


ブラームス
ハンガリー舞曲第6番ニ長調

 元はピアノ曲のようですが、アンコール曲なのでプログラムには無く、誰による編曲のものなのかはわかりません。
 主部はゆったりとしたストリングス主体のワルツ風のフレーズと、派手なテンポアップのオーケストラのフレーズが繰り返されますが、このギャップが印象的です。ここがハンガリー舞曲の特徴的な部分なんでしょうか。
 中間部は堂々と大きく勇壮なフレーズと、ストリングスの小刻みなフレーズが奏でられ、最後に主部が繰り返されます。

     ☆ ☆ ☆

 かなり聴き応えのあるコンサートだったので、良かったですね。こういうのを聴くと日本のアマチュアオーケストラのレベルの高さが実感できます。逆に、下手なプロオケの演奏を聴いたら金を返せとか言いたくなりますが……プロはプロで年間何十曲とか数をこなさなければいけないから、一曲一曲に割けられるエネルギーはどうしても違ってくるんですね。

 配布されてたプログラム本体にも一般的な解説風の楽曲紹介は載っているのですが、それとは別に、ペラ紙に簡易印刷されたチラシ風の簡単なオーケストラの紹介とか演奏曲の紹介が書かれた物も挟み込まれてたのは気が利いてると思いました。
 ま、関西で無料のコンサートだから、どんな客層が来るかわかったものじゃないからでしょうが、初心者が興味を持てるレベルでの紹介というのも、客の演奏に対する集中力を喚起する上では良いと思われます。

     ☆ ☆ ☆

『SF交響ファンタジー』なんて頻繁に書いてるし、最近新譜が出たりしてるわけでもないので、CDは別に良いかとも思ったのですが、とりあえずはオーソドックスなのを。

宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー


こちらはユーズド価格がおもいっきし高くてぶっ飛びました。買うのはいろいろと冒険ですね。ま、手元に持ってるから、是非とのリクエストがあればレビューは書けますけど。

おもしろオーケストラ1/オーケストラ・イン・スクリーン~SFファンタジーの世界@〔「2001年宇宙の旅」~タイトル・テーマ(R.シュトラウス)/「スタートレック」~メイン・テーマ(J.ゴールドミスミ,編曲和田薫/他〕石丸寛/新星日本o.
おもしろオーケストラ1/オーケストラ・イン・スクリーン~SFファンタジーの世界@〔「2001年宇宙の旅」~タイトル・テーマ(R.シュトラウス)/「スタートレック」~メイン・テーマ(J.ゴールドミスミ,編曲和田薫/他〕石丸寛/新星日本o.

     ☆ ☆ ☆

 3月に引越ししたのが全然片付かないから、しばらくCDを聴いたりできません。根本的に荷解きしてCDを取り出す空間的余裕が無い……手元ですぐ取り出せるのが10年以上も前のCDばかりってのが……

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2009.03.20

冬木透 CONDUCTS ウルトラセブン

 3月13日に東京オペラシティで催された『ウルトラセブンの音楽を創った男・冬木透 CONDUCTS ウルトラセブン』のコンサートに行ってきました。

 あすかはアニメや東宝特撮映画の音楽は好んで聴いていますが、テレビの特撮番組はその対象じゃないのだけど、昔から『ウルトラセブン』だけは何か魅かれるものを感じて、キングから出ていた『ウルトラセブン総音楽集』とか、90年前後にCD化された『交響詩ウルトラセブン』とかは聴いていました。

 思えば幼少の頃にしばしば再放送されていて、ちゃぶ台の前で胡坐を組むメトロン星人とか、何か口の中で飴のようなものを鳴らしながら語ってる第四惑星のロボット長官とかの光景が記憶の奥底に染み付いているんですね。
 カラータイマーが無かったり、カプセル怪獣を使ったりすることが他のウルトラ兄弟と一線を画してるところもセブンを特に印象付けた要素でもあったでしょう。
 そんな『ウルトラセブン』のオーケストラコンサートがあると聞けば、たとえ日本の東の果てであろうとも、万難を排して聴きに行かなければなりません。

 演奏は東京交響楽団。前身の東宝交響楽団の時代から映画音楽等のレコーディングの多いオーケストラですが、『ウルトラセブン』の音楽も当時の東京交響楽団の手でレコーディングされたものらしいですね。
 しかし、1500円もする有料のパンフレットに肝心の当日の演奏の主役であるオーケストラの構成メンバーに関する記述が何も無いのは頂けません。
 指揮は作曲者の冬木透本人というのが、今回のコンサートの目玉でもあるでしょう。

 演奏曲目は以下の通り

 01. 交響曲「ウルトラコスモ」
    第1楽章 太陽をこえて
         Allegro con brio, ma non troppo presto.
    第2楽章 光をあびて
         Moderato―Andante
    第3楽章 暗黒の淵から
         Lento misterioso―Moderato―Allegro barbaro
    第4楽章 輝きの環を…
         Finale:Allegro brillante
 02. 交響詩「ウルトラセブン」
    第1楽章 ウルトラセブン
    第2楽章 怪獣出現
    第3楽章 ウルトラホーク発進
    第4楽章 侵略者の魔手
    第5楽章 さよならウルトラセブン
 03. ウルトラ警備隊の歌
 04. ワンダバメドレー
 EC. ウルトラセブンの歌


 それでは演奏の印象などを。

交響曲「ウルトラコスモ」

 この曲は円谷プロの創立30周年記念の祝典曲として委嘱されて作曲された曲とのことです。セブンに限らず、『ウルトラマン』に始まるウルトラヒーローの音楽がモチーフとして組み込まれた本格的な交響曲です。

 第1楽章 太陽をこえて
      Allegro con brio, ma non troppo presto.

 「Allegro con brio」は「生気に満ちた」、「ma non troppo presto」は「しかし急速過ぎないように」という意味です。
 スタッカート気味のバイオリンとホルンの響きから始まります。勇壮な『ウルトラマン』のモチーフが現れ、やがてブラス主体の主題が奏でられていきます。穏やかなストリングスの調べに転じ、静かな『ウルトラセブン』のモチーフが現れ、やがてシンバルの鳴動と共に激しく勇壮に展開していきます。
 最後はホルンのファンファーレに始まる勇壮な後奏で終わる感じです。

 席が左前の方だったのですが、その近くにドラがあって、それがあまり他では見られないくらいコンサートを通じてしばしば使われてるから、なんかドラばかりがやかましい感じがしたのは否めません。
 それにしても、楽章の間で拍手をするなよ。

 第2楽章 光をあびて
      Moderato―Andante

 「Moderato」は「中くらいの速さで」、「Andante」は「歩くような速さで」という意味です。
 ブラスに始まるマイナーなバラード曲。ハープの伴奏を伴ったトランペットのソロが高らかに鳴り響きます。そこにストリングスが重なってきて、やがて懐かしい感じの穏やかなメロディーが流れてきます。そして、ストリングスが、継いでブラスがバラードを大きく歌い上げていきます。
 再びマイナーに転じて不安な感じのフレーズが続きます。
 ハープとホルンが穏やかなフレーズを奏で始め、ストリングスに展開していきます。そしてトランペットのソロを挟み、ゆっくりと穏やかに、やがて大きく盛り上がって収束していきます。

 第3楽章 暗黒の淵から
      Lento misterioso―Moderato―Allegro barbaro

 「Lento misterioso」は「遅く神秘的に」、「Allegro barbaro」は「快活に競うように」という感じの意味です。
 木管と鉄琴から始まる不安でミステリアスなサスペンスモチーフ。鉄琴とストリングスがスリリングで不気味な雰囲気を盛り上げていき、ショッキングなコードが緊張を打ち破ります。
 小刻みなストリングスがスリリングな主題を奏で、そしてティンパニーとドラとブラスの不協和音が不安を煽っていきます。さらにティンパニーの連打がサスペンス感を高め、ドラが緊迫感を煽ります。
 この辺りは次第に激しくなってくる怪獣の襲撃って感じですね。

 第4楽章 輝きの環を…
      Finale:Allegro brillante

 「Allegro brillante」は「快活に輝かしく」という意味です。
 ゆっくりとしたトランペットのファンファーレに始まります。低音のストリングスから次第に盛り上がって華々しく奏でられる『ウルトラマン』のモチーフ。『ウルトラセブン』の戦闘モチーフを挟んで、再び『ウルトラマン』が奏でられます。
 ドラの連打とティンパニーの乱打から一転してピンチの音楽。そして、確かヤプール辺りの襲撃のテーマかな。静寂からミステリアスでスリリングな展開。鉄琴と小刻みなストリングス、ホルンの響きが印象的です。
 やがて『ウルトラセブン』のモチーフが復活し、低音から盛り上がるように「ウルトラセブンの歌PART2」が奏でられていきます。
 最後はいったんスローテンポに転じて穏やかな収束を見せた後、勇壮で堂々とした演奏で「ウルトラマンの歌」と「ウルトラセブンの歌PART2」が奏でられて終わります。


交響詩「ウルトラセブン」

 これは『宇宙戦艦ヤマト』から始まる70年代のアニメブームの頃にアニメ音楽の商品化が進んだ頃、過去の特撮作品の音楽にも日が当たり、『交響詩ウルトラマン』とセットで新規にレコード化されたものです。90年前後にCD化されましたが、その後は入手困難になっていたのを、昨年だか一昨年だか辺りに復刻されてたように思います。
 自分は最初にCD化された時に買って聴いたものですが、今は部屋の奥底にしまいこんでしまってるので、掘り出してくるのが困難なので、コンサートの予習とかで聴き返したりはしてません。
 これは「交響詩」とか名乗ってるけど、独立した標題曲ということではなく、当時のアニメでよく出てたシンフォニー盤とかのように、原曲をほとんどそのままオーケストレーションしてメドレーで繋いだような形の作品です。

 第1楽章 ウルトラセブン

 ティンパニーとコントラバスの重低音、鉄琴のアクセントで始まるサスペンス曲。バイオリンのグリッサンドがスリリングさを醸し出してきます。
 バイオリンのポルタメントから曲調が一転し、ウルトラセブンのOP冒頭のファンファーレが鳴り響き、メインの「ウルトラセブンの歌」が始まります。とにかくホルンが目立つ曲ですが、隠し味でマラカスが使われてたのが印象的です。

 第2楽章 怪獣出現

 フルートで始まる穏やかなセレナーデ。日常の安息という感じです。
 一転して激しいサスペンス曲。ティンパニーとドラがメインという感じで、そこにブラスの不協和音が被ってきます。この辺りは『交響曲「ウルトラコスモ」』の第3楽章でも使われてた曲ですね。
 やがてチェロとコントラバスの低音から始まるサスペンス曲に移り、バイオリンのグリッサンドが不安を煽ります。そして、次第に激しさを増していきます。

 第3楽章 ウルトラホーク発進

 華やかな「ウルトラ警備隊の歌」から始まりますが、一転してゆっくりと低音で不気味なサスペンス曲に転じます。
 ティンパニーとスネアドラムがリズミカルなスリリングなピンチの音楽が奏でられ、やがて「ウルトラ警備隊の歌」のマイナーアレンジによる寂しげな哀歌が流れてきます。そして最後は再び勇壮な「ウルトラ警備隊の歌」で幕を引きます。

 第4楽章 侵略者の魔手

 パイプオルガンをバックに、ゆっくりと幻想的に始まるミステリアスなサスペンス曲。鉄琴のアクセントと、小さく鳴り続けてるドラが印象的です。
 やがてドラをベースに、バイオリンの胴打ちがリズムを奏で始めます。そして、小刻みなストリングスが鬼気迫る激しいサスペンス曲を奏でていきます。

 第5楽章 さよならウルトラセブン

 ブラスとティンパニーから始まるゆっくりとしたバラード調の「ウルトラセブンの歌」のマイナーアレンジ。哀愁漂うストリングスによる、穏やかでもの悲しいレクイエム。
 ゆっくりとしたバラードで始まる「ULTRA SEVEN」のフレーズから、「ウルトラセブンの歌」のマイナーアレンジが続き、やがて徐々にメジャーに転じていきます。途中に挟まれるストリングスの美しいフレーズが印象的です。


ウルトラ警備隊の歌

 『大怪獣バトルNEO』のテーマ曲を歌ってる中西圭三のリードボーカルに、サウンド・アンビション合唱団のコーラスを加えての演奏ですが……やっぱし、この曲は男声コーラスでやって欲しかったですね。


ワンダバメドレー

 冬木透といえばワンダバ!……ということで『セブン』とは違うけどプログラムに入ってました。
 最初が『帰ってきたウルトラマン』のMATのテーマで、元祖ワンダバ。意外とテンポがゆっくりだったのと、木琴が使われてたのが印象的。
 続いて『ウルトラマンA』の「TACの歌」。さすがにこの曲は児童コーラスが活きてる感じです。でも、ワンダバというからには歌詞入りの歌の方じゃなくて、男声コーラス入りの劇伴の方じゃないと……
 あと1曲ぐらいあったけど、知らない曲でした。『ウルトラマンマックス』辺りだとまだ記憶にあると思うから、『ザ・ウルトラマン』とか『ウルトラマン80』辺りの曲でしょうか?

     ☆ ☆ ☆

 『ウルトラコスモ』は初めて聴いたけど、本格的な作りの曲だったので、またじっくりと聴いてみたい気がします。幸い、6月にライブ盤がでるみたいですし。それまでには『交響詩ウルトラセブン』のCDも部屋から発掘しておきたいけど、さて。そういえば数年前にでた『ウルトラセブン』の全曲CDも未開封でどこかに転がってるはずです。

 ゲストトークのところでせっかく「ULTRA SEVEN」の話題が振られていたのに、アンコールでの演奏も無かったのがちょっと残念でした。

     ☆ ☆ ☆

Amazonで取扱中の『交響曲「ウルトラコスモ」』収録のアルバム。中古品を手に入れるしかないようですが。(今回のライブ盤が出るまで待つという手もありますね)

円谷英二生誕100周年記念CD BOX - Music from the works of EIJI TSUBURAYA -
円谷英二生誕100周年記念CD BOX - Music from the works of EIJI TSUBURAYA -


近年復刻された『交響詩「ウルトラセブン」』収録のCD。残念ながらジャケットは変更されてるようですが。

交響詩「ウルトラマン」「ウルトラセブン」
交響詩「ウルトラマン」「ウルトラセブン」


原曲の劇伴をコンプリートしたアルバムはこちら

ウルトラセブン コンプリート・コレクション
ウルトラセブン コンプリート・コレクション


「ウルトラセブンの歌」とか「ウルトラ警備隊の歌」のレコードバージョンはいろいろ出てると思うから、自分で探してください。

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2009.01.12

大阪センチュリー交響楽団/『ゴジラ』

 12月20日にいずみホールで催された堀俊輔指揮・大阪センチュリー交響楽団による《シネマでXmas》に行ってきました。
 大阪センチュリーというと以前に《のだめカンタービレの音楽会》を聴いて以来、それ以外というと数年前に『SF交響ファンタジー第1番』と『ゴジラVSビオランテ』その他の演奏を聴いたくらいですね。
 いうまでもなく、音楽でクリスマス気分を味わいたいとかじゃなくて、演奏曲目に『ゴジラ』とあったから、また『ゴジラVSビオランテ』みたいに珍しいものを聴かせてくれるのかと期待していたのですが、指揮者が《第2回伊福部昭音楽祭》の時の人だったのでまさかとか思ってたら、やはり《第2回伊福部昭音楽祭》で演奏されてたオリジナル版の演奏でした。

 演奏曲は次の通り。

 01. R.シュトラウス
   『交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》』冒頭
    (2001年宇宙の旅)
 02. J.シュトラウス2世
   『美しく青きドナウ』
    (2001年宇宙の旅)
 03. F.シューベルト
   『未完成交響曲』より 第1楽章
    (マイノリティ・リポート)
 04. W.A.モーツァルト
   『クラリネット協奏曲 イ長調 K.622』より 第2楽章
    (愛と哀しみの果て)
 05. W.A.モーツァルト
   『交響曲 第41番「ジュピター」』より 第4楽章
    (アニー・ホール)
 
 06. ヘンリー・マンシーニ
   『ムーン・リバー』
    (ティファニーで朝食を)
 07. 伊福部昭
   『ゴジラ』テーマ
    (ゴジラ)
 08. ハワード・ショア
   『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』メドレー
    (ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間)
 09. ジョン・ウィリアムズ
   『シンドラーのリスト』テーマ
    (シンドラーのリスト)
 10. アンドリュー・ロイド=ウェバー
   『オペラ座の怪人』
    (オペラ座の怪人)
 
 EC. ルロイ・アンダーソン
   『そりすべり』
    (ホーム・アローン)

 前半は映画に使われた既成のクラシック曲、後半は映画のために作られた音楽という構成ですね。

『交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》』冒頭

 お約束といえばお約束みたいなファンファーレ的な選曲。冒頭だけというのもよくある演奏です。ベートーヴェンの『運命』なんかも出だしだけ使われることが極端に多いですが、あれはちゃんと通して聴く人もそれなりに多いのだけど、この曲は果たしてフルで聴いたことある人どれだけいるんでしょうか。
 レコードとかではよく聴くけど、生で聴いたのは以前に『幻想軌道』のコンサートでアレンジされてたものぐらいだから初めてのようなものです。終始鳴り響いてる重低音って、ティンパニーが鳴りっぱなしなんですね。演奏中は気付かなかったけど、後でパイプオルガンの人が紹介されてたからパイプオルガンも使われてたようです。

『美しく青きドナウ』

 『2001年宇宙の旅』としてはこっちがメインの扱いですね。これもホルンの響く出だしのフレーズは馴染みがあるけどフルで聴くことはあまりないので、新鮮でした。確かCDでは持ってたと思いますが。
 様々なフレーズが展開されていきますが、ホルンが雄大に奏でた後、ゆったりと滑らかなストリングス主体に移って、最後は全体で華々しく盛り上がっていくというパターンの繰り返しみたいな感じですか。

『未完成交響曲』より 第1楽章

 シューベルトの『未完成』といえば、昔はベートーヴェンの『運命』のレコードのB面によく入ってた曲ですが、CD時代になってからはそういうカップリングはあまり見なくなりましたね。かくいう自分もレコード時代に何度か聴いてるはずですが、『運命』のインパクトの方があまりにも大きいためか、すっかり記憶がありません。最近は春に関西フィルの大阪市中央公会堂でのコンサートで聴いたばかりですが。
 割とスリリングでサスペンス的な曲調が特徴的な曲ですね。映画向きといえば映画向きかもしれません。演奏で印象的だったのは、非常にゆっくりした部分でストリングスのピチカートが入ったりしてるところ。ふつうピチカートってテンポの歯切れをよくするような効果で使われてる感じですから。

『クラリネット協奏曲 イ長調 K.622』より 第2楽章

 モーツァルトは自分にとって鬼門なのであまり知りません。
 クラリネット協奏曲と言っても、対するオーケストラは管楽器も打楽器もごっそり抜けて、ほとんどストリングスだけの小編成ですね。

『交響曲 第41番「ジュピター」』より 第4楽章

 管楽器や打楽器が戻ってきたけど、ブラスが少ない印象は変わりません。ベートーヴェンなんかと比べるとモーツァルトの作品ってストリングス中心で、ブラスがあまり使われてないって印象があるのですが、ものの本によれば当時はまだ金管楽器が未発達で自由に音を出せなかったから、オーケストラで積極的にブラスを使うというものではなかったようですね。
 それでもラストの盛り上がりにはホルンとかが重要に関わってる感じです。

『ムーン・リバー』

 これも映画音楽コンサートとかでは定番曲の一つかな。以前に関西フィルのコンサートでも聴きました。
 指揮者の人は映画好きということですが、ニューヨークに行った時にティファニーでパンを食べてきたとかとか言ってましたが、どこまで本当なのでしょうか。

『ゴジラ』テーマ

 いよいよメインの『ゴジラ』です。

  「メインタイトル」(M1)
 ストリングスが硬くてティンパニーが必要以上に規則的な印象で、全体的にオーケストラが奏でてるというより、サンプリング音源を叩いてるという感じに聴こえました。ま、演奏の幅を持たせた『SF交響ファンタジー』なんかと比べるとサントラ本来の演奏はこういう感じなのでしょうが、《第2回伊福部昭音楽祭》での演奏と比べても何か角ばってたように感じます。

  「フリゲートマーチ」(M11)
 映画ではブラスバンドの現実音楽。後に『怪獣大戦争マーチ』とかに発展していく伊福部マーチの原型ですが、小編成のブラスと打楽器による素朴だけど映えるメロディーです。

  「ゴジラの猛威」(MA')
 チューバの重低音とピアノのリズムが印象的な曲です。しかし、見てたらバイオリンの出番がありませんね。チェロやコントラバスは低音を奏でるのに使われてるからけっして弦楽器が無いわけではないのですが、それでいてバイオリンが使われてないというのは珍しいです。
 演奏中にゴジラの鳴き声を入れるのはやめて欲しかったです。

  「エンディング」(M23)
 2曲連続休みで満を持したバイオリンが「平和への祈り」のモチーフを厳かに奏でていき、全体で大きく盛り上がって終わります。オキジェンデストロイヤーによって葬られたゴジラと芹沢博士へのレクイエムでもあり、往年の日本映画的なラストシーン音楽です。

『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』メドレー

 BSで特別版だかなんだか劇場公開版よりも長いのをやってたのを1度みただけなので音楽はあまり印象に残ってませんが、旅立ちのあたりの雰囲気は聴き覚えを感じました。ただ。文字通りのメドレーらしく様々なモチーフが小刻みに繋がれてるって感じで、慌しいというか、取り留めが無い印象です。テーマを絞ってじっくり聴かせてくれた方が良かったですね。

『シンドラーのリスト』テーマ

 バイオリンのソロから始まって切ない感じの調べ。オケが控えめな分、ハープの伴奏が目立ちます。アクセント的に使われてるチェレスタも印象的。やがてバイオリンが泣きの展開に入っていき、激しくも切ない哀しみの旋律を奏でていきます。

『オペラ座の怪人』

 パイプオルガンが奏でるテーマ曲。映画音楽というよりは劇団四季のミュージカルの宣伝でよく流れていたのが印象的なメロディーです。しかし、指揮者が怪人に扮して出てくるのはいいけど、オルガンの演奏中に拍手を求めるのはやめて欲しいですね。
 オルガンにオーケストラが被って大きく盛り上がったと思ったら、リズムが入り始めて別のテーマフレーズを奏で始めていきます。近年にミュージカルの作者自身の手によって映画化されたものの音楽みたいですが、なんか原曲をぶち壊しって感じです。
 それからいろいろと展開していきますが、なんかボリュームが大き過ぎてお腹いっぱいって感じの大曲ですね。

『そりすべり』

 クリスマスコンサートなのにクリスマスらしい曲が無いと、最後に追加の1曲。別に『ホーム・アローン』を出さなくてもクリスマス時期になると街中に流れまくってる曲のような気がしますが、あくまで映画音楽のコンサートというところでこじつけたのでしょうか。
 バックで鳴り捲ってるスレイベルがクリスマスの雰囲気をかもし出していますが、別にクリスマスじゃなくてもそりに付き物のベルの音みたいですね。日本では西洋のそりはサンタクロースとセットでしか馴染みがありませんが。
 トナカイを叩いてるイメージなのか、鞭を使ってるのが印象的だなとか思ってたら、本来はルーテ(これも日本語じゃ鞭になるけど、一般的な楽器の鞭じゃなく、叩くための本物の鞭のような形状の楽器)を使うところを、(一般的な楽器の方の)鞭を使ってた感じです。ルーテの代用なのでしょうけど。
 最後にトナカイの鳴き声みたいなのが入ってたけど、あれはクラリネット辺りが出してたのかなぁ? (Wikipediaで調べたらトランペットで馬の鳴き声を出してるってことみたい。曲そのものはサンタクロースのそりなんて意識してないんでしょうね)

   ☆ ☆ ☆

 大阪センチュリー交響楽団といえば在阪4オーケストラの中でも一番経営状態が危ぶまれてるみたいで、いつ大阪府の橋下改革でリストラされるかという心配をしたりもしてますが、今後も無事に演奏活動を続けられることを祈ってます。とりあえず次回の《のだめカンタービレの音楽会・ロシア音楽特集》のチケットはプレオーダーで手配済みですから……

   ☆ ☆ ☆

 関連CDを探したけど、初代ゴジラのサントラも今は手軽に入手できない感じですね。下記のものはデジタルリマスターで高音質化を図ったものですが、これも中古で値段が跳ね上がってますね。

ゴジラ+空の大怪獣ラドン
ゴジラ+空の大怪獣ラドン

 いっそ中古と割り切ればこの辺りのものがヤフオク等でも比較的手軽に手に入ると思います。

ゴジラ大全集(1)ゴジラ
ゴジラ大全集(1)ゴジラ


 東宝ミュージックのサイトにある50周年BOXなら新品で手に入りますが、なにぶん単価が高いのが……(これ、6巻目はいったいいつ出るのかな?)

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2008.08.06

関西フィル/組曲 宇宙戦艦ヤマト(2008 SUMMER)

 夏といえば関西フィルの《サマー・ポップス・コンサート》です。今年も8月3日にザ・シンフォニーホールで行われましたが、役に立たないチケット会社のメールマガジンはいつも聴きたいコンサートに限って何も教えてくれないので、気付いたときにはSOLD OUTという仕打ち。でも、何とかキャンセル分を確保して聴きに行ってきました。
 ザ・シンフォニーホールは去年の久石譲のジルベスターコンサート以来の久々って気がしますが、藤岡幸夫指揮の関西フィルは3月に大阪市中央公会堂での『運命』&『未完成』のコンサートを聴きに行って以来ですね。(自分への誕生日プレゼントと、あんなとこでオーケストラのコンサートなんかやるのかって興味で聴きに行ったものです)
 今回の目当ては言うまでもありませんが、『ヤマト』です。

 演奏曲は次の通り。

【第1部】
藤岡幸夫セレクト!真夏を彩る名ポップス
 01. ラ・クンパルシータ
 02. エーゲ海の真珠
 03. 雨にぬれても
 04. ひき潮
 05. 『ウェスト・サイド・ストーリー』より
 06. ひまわり
 07. ミッション・インポシブル
 08. 007メドレー

【第2部】
駆け巡る青春の日々
 09. 燃えよドラゴン
 10. 『ゴッドファーザー』より“愛のテーマ”
 11. 刑事コロンボ
 12. 刑事ドラマ・メドレー
    ~西部警察、太陽にほえろ、Gメン'75~
 13. 交響組曲『宇宙戦艦ヤマト』

 EC. オリーブの首飾り
 EC. ルンバ・キャリオカ

 ここ数年、文化パルク城陽とザ・シンフォニーホールのコンサートを聴き続けていたら同じような曲ばっかりという気がしないでもないですが、定番曲のついでに演奏される新曲が注目どころです。
 それでは、順番に。

「ラ・クンパルシータ」
 アルゼンチン・タンゴの名曲で、オープニングにふさわしい派手な曲。ピアノや鉄琴に加えてヴァイオリンのピチカートや小刻みなスピカートの連続でリズミカルに演奏される部分と、流れるようなストリングスの部分が交互に繰り返されるのが印象的。
 ところで、早々にタクトを落としてしまい、指で指揮を続けていた藤岡氏。何をそんなに緊張してるのかと思えば……

「エーゲ海の真珠」
 ポール・モーリアの演奏で有名な曲。トランペットのバラード風に始まり、ピアノの情緒的なメロディー。華々しいオーケストラからスローダウンしてララバイ風のストリングス。再びピアノのメロディーが流れてオーケストラに続きます。
 リズムマシンが響いてる辺り、クラシックではないポップスならではのサウンドですね。

「雨にぬれても」
 映画『明日に向って撃て!』の挿入歌ですが、チャイコフスキーやらショパンやらを使って大胆にアレンジしてるようです。
 チャイコフスキー風の序奏に始まり、アドリブ的なピアノのフレーズの後、小気味良いテンポでストリングスとフルートのメロディー。ブラスが加わって派手になりますが、鉄琴やウッドブロックのコミカルな味付けが印象的です。スローダウンにてショパン風にピアノが入り、徐々にテンポアップして派手に盛り上がっていきます。

「ひき潮」
 波の音のSEをバックに演奏開始。ゆったりとしたストリングス主体の部分とブラスが加わってテンポアップする部分が繰り返されるパターンの曲ですが、ストリングスにハープが絡んで来たり、ピアノとヴァイオリンのバラード風の部分があったりするところが印象的です。

「『ウェスト・サイド・ストーリー』より」
 ピッコロの高音から始まりブラスが順番に入ってきて、サスペンスタッチのストリートギャングのモチーフが奏でられます。続いてピアノのバラードからロマンチックに盛り上がっていき、リズムマシンが入って映画音楽風になってきます。
 ゆったりとしたストリングスで「TONIGHT」のメロディーが始まり、華々しく盛り上がります。そして2コーラス目からはリズミカルなピアノ主体のイージーリスニング風に展開し、最後はアレグロのアクション風に盛り上がります。
 『ウェスト・サイド・ストーリー』は「アメリカ」と「TONIGHT」ぐらいしか知らないけど、「TONIGHT」メインの演奏を生で聴いたのは初めてのような気がして、嬉しいですね。

「ひまわり」
 藤岡氏が好きだという同名映画の音楽。バラード風のピアノソロによるメランコリックな旋律から始まり、やがてリズムとストリングスが加わってやや柔らかに奏でられます。フルートが第2の旋律を奏でた後、ピアノとストリングスが最初の旋律を奏で、オーケストラがそれを繰り返します。
 ピアノソロの展開部からオーケストラ全体で盛り上がり、最後は穏やかに終わっていきます。

「ミッション・インポシブル」
 派手なTOTTIから始まる『スパイ大作戦』のテーマ。クラリネット主体のスリリングなフレーズをベースに展開していきますが、ブラスとパーカッションが全開でとにかくド派手です。最後までノリノリのテンポですね。

「007メドレー」
 ジェームズ・ボンドといえばロジャー・ムーアって辺りが藤岡氏が同じ世代であることを思い出させてくれますね。(往年の映画ファンだとまずショーン・コネリーが出て来ますから)
 低音のブラスと木琴から始まるテーマ音楽。ストリングス主体のスリリングな曲調に派手なブラスの展開。ティンパニーの乱打が印象的。
 小刻みでスピーディーなストリングスに絡む、ホルン主体の遠吠えのようなバックサウンド。
 最後に再びテーマ音楽を繰り返して終わります。

「燃えよドラゴン」
 いわゆるブルース・リーの奇声を指揮者自身が発してるという画期的な演奏です。いや、何も無理して再現する必要は無いような気がしますが……
 低音から始まるサスペンスタッチで派手なリズムのアクション曲。ウッドブロックの連打が印象的ですが、トランペットが高音で裏返ってるのも珍しいです。

「『ゴッドファーザー』より“愛のテーマ”」
 バラード風に始まるオーケストラ。ストリングス主体でテーマモチーフが奏でられ、トランペットのソロに続きます。そしてオーケストラ全体で盛り上がっていきますが、トランペットの掛け合いが印象的。最後に堂々と終わる辺りがマフィアのボスって貫禄ですか。

「刑事コロンボ」
 TVでは口笛が印象的なテーマ曲ですが、木管のメロディーで始まります。そしてストリングス主体にマーチ風のリズムで展開されていきます。2コーラス目以降は口笛のメロディーに何か変な音が使われてるんですが、何を使ってるのかは不明ですね。

「刑事ドラマ・メドレー」
   ~西部警察、太陽にほえろ、Gメン'75~
 華々しいファンファーレから始まる『西部警察』。ストリングスのメロディーに派手なブラスのアクセント。続いてドラムス主体のイントロに続く『太陽にほえろ』。原曲のイントロはエレキギターだけど、さすがにそこまでは持ってこなかった感じですか。テンポが少し速過ぎる感じで、ストリングスのサブメロに少し違和感があります。元はブラス系バンドの曲だから、ストリングスに新しい音を加えようとしたりしたらこうなるのでしょうか。一転テンポを落としてややマイナーなボレロ風のリズムで『Gメン'75』。次第に盛り上がっていき、堂々と終わります。

「交響組曲『宇宙戦艦ヤマト』」
 「交響組曲」とありますが、例によってアルバムの曲ではなく、演奏会用の『組曲 宇宙戦艦ヤマト』です。ヤマトブームがとっくに終わった90年代ごろから演奏活動中心に移った宮川泰によってまとめられた形で、(おそらく)いまだにオーケストラ版のCDは出ていません。(宮川彬良のアレンジによる吹奏楽版は何枚か出ていますが)
 元が演奏会用の曲だから、その時のプログラム内容や演奏家によってボーカルが入ったり、スキャットが入ったり、サックスがメインにフィーチャーされたりといろいろな演奏パターンがあるので、それを楽しむのも一興ですね。

   01. 序曲
 情緒的なピアノ主体で始まる「無限に広がる大宇宙」。アルバム『交響組曲』の「序曲」ではスキャットやストリングスが主体にアレンジされてしまってますが、元々の劇伴ではピアノ伴奏の印象的な曲だったので、懐かしい印象です。
 リズムマシンが入ってからストリングス主体に移り、大きく盛り上がっていきます。ハープの短いフレーズの後、「宇宙戦艦ヤマト」のモチーフが激しくドラマチックに展開されていきます。大きく盛り上がって再び「無限に広がる大宇宙」のモチーフが華々しく堂々と奏でられ、それを中断する形でそのまま次に続いていきます。

   02. 宇宙戦艦ヤマト
 イントロで木琴が入ってたり、細かいところで音の違いが目に付きますが、とにかく派手で勇壮なメインテーマです。ただ、本来は特徴的なスキャットパートのメロディーがほとんど聴こえてこないので単調な感じがします。通常は1コーラスで終わるところですが、今回はフルコーラスで充実感を覚えました。
 ただ、1箇所大いに気になる部分がありましたが、それは後述します。

   03. 出撃
 ややゆっくりな感じのテンポながら派手に奏でられる「ブラックタイガー」。この曲ばかりはストリングスは完全に脇役に回ってしまい、ブラス系メインの形ですが、とくにチューバとティンパニーが派手に活躍してる感じです。ここでも木琴が使われてるのも印象的ですが。

   04. 大いなる愛
 ピアノソロで始まる第1主題。2回目のループがストリングスで柔らかく奏でられます。そこにブラスが加わって華やかな第2主題に入り、最後はオーケストラ全体で盛り上がっていきます。
 そして、アルバムの「序曲」から切り取って来てつなげたような「宇宙戦艦ヤマト」のモチーフによるコーダ部がリズミカルで勇壮に締め括られます。

 毎度毎度だけど、第2楽章の後と第3楽章の後で拍手を入れるのはやめてほしいところです。でも、これでボーカルが入ったりしたらイントロ演奏中の歌手の登場シーンで拍手が入ったりするから、それよりはマシなんですが。

 アンコールはいつもの定番曲です。エルガーが入ってないのは今回はクラシック系の演奏曲が無かったからかな。

「オリーブの首飾り」
 これも「エーゲ海の真珠」と同様にポール・モーリアの演奏で知られた曲。リズミカルなピアノとハープ主体のテンポ良い演奏で始まり、ストリングス主体に移っていきます。アンコールということで手の余ってるメンバーを集めたのか知れませんが、パーカッションが派手ですね。

「ルンバ・キャリオカ」
 タンゴに始まってルンバに終わるという、暑苦しい情熱的な夏のコンサートを締め括るのに絶好の曲かな。今回はピアノが行儀のいい曲ばかりだったせいか、オケと掛け合ったりしてるのはこの曲ぐらいかな。長いパーカッションの間奏の後、ブラスが立ち上がってのパフォーマンスが印象的です。

     ☆ ☆ ☆

 「宇宙戦艦ヤマト」で気になったところというのは、ボーカルパートの第1音に被せて太鼓が鳴ってるところなんですね。これは一昨年の城陽でのコンサートでも感じたのですが、思いっきり違和感を覚えるところです。これは関西フィルの演奏だけに見られるもので、近年聴いた他の演奏(日本フィル、セントラル愛知、大阪市音楽団)のいずれにも見られません。
 「宇宙戦艦ヤマト」の楽譜は簡単な素人向けの楽譜なら書店や楽器店の楽譜コーナーで入手できると思いますが、一般的な4分の4拍子の曲なのですね。ただし、ボーカルの第1音はボーカルパート最初の小節の第4拍から始まっています。第1音、第2音は八分音符の二連音符なので「さらば~」のうち、「さら」が第4拍で、「ば」が次の小節の第1拍になります。
 4分の4拍子の曲だと通常は第1拍が「強」で、第4拍は「弱」。「宇宙戦艦ヤマト」でもそれは同じです。つまり、ボーカルパートの第1音は第4拍で「弱」のはずなのに、そこで大きく太鼓の音が入ってくるから物凄く変に感じてしまうわけです。これ、自分が歌手だとしたら、こんなところで太鼓が入ったらとても歌えませんよ。ボーカルを普通に「弱」で歌ったら太鼓の音に掻き消されてしまいますし……
 本当のところ、この太鼓、ボーカルパートの頭で入れようとするからおかしいわけで、正しい位置に移せば良いわけです。じゃ、どこが正しかというと、1つ手前の小節の第1拍、つまりイントロの最終音のところですね。
 そりゃ第1音で派手に音を入れたいのもわからないでもないけど、曲の強弱の流れに逆らって入れても仕方がないでしょうに。

 関西フィルというと『SF交響ファンタジー第1番』中盤の『宇宙大戦争』のセレナーデがまるで別の曲のような旋律で聴こえるというのも目立ってて、個人的には関西フィルの2大解釈ミスと呼んでるところですが、毎回繰り返されるというのは気付いてないってことでしょうか。
 ま、繰り返し演奏してくれるだけでもありがたいと思うところですが、やっぱり改善はしていって欲しいですね。

     ☆ ☆ ☆

とりあえず新しいCDも出てないので今回は吹奏楽版のスコアをはっておきますが、Amazonでも在庫は無いのかなぁ(写真もないし)。バンド専門のところを探した方が良さそうです。

ブレーンコンサートレパートリー1 組曲「宇宙戦艦ヤマト」
ブレーンコンサートレパートリー1 組曲「宇宙戦艦ヤマト」

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