2008.07.23

トンデモ音楽の世界

 トンデモ本といえば、予言解釈とか宇宙人とか珍妙な科学知識とかで(著者としては真面目なんだろうけど)ある意味楽しませてくれる一連の本。それらを紹介してきた「と学会」が今度は音楽の分野のトンデモを取り上げたというのがこの本。
 そういうと、さぞ珍妙な音楽ばかり紹介してくれるのかと思いきや、どっちかというと内容的にはトンデモというよりカルト的な性格が強いですね。『トンデモ本の世界』がどちらかというとトンデモ本の珍妙さを揶揄しながら楽しむような内容であるのに対して、この『トンデモ音楽の世界』はこういう変わった音楽の追求を楽しんでる人がいるという紹介的な傾向が大きいようです。(ま、揶揄するような内容で伊福部音楽を取り上げられたりしたら困りますが)
 個人的には山本弘によるニコニコ動画で大いに流行ってるMADを紹介した章や、イラストレーターの開田裕治夫妻と『豪快な○○○』シリーズの人が伊福部音楽を語ってる章が興味深かったです。

 この本には付録CDが付いていて、トンデモ音楽そのものをネタにしたような曲が収録されているのですが、これを手掛けているのが以前に『刑事クラ』で取り上げた《杉ちゃん&鉄平》です。
 収録曲は以下の通り。

 01. 怪獣協奏曲
 02. レプリカント密着24時
 03. UFOウォッチャー
 04. シューティング・ソナタ
 05. 水○スペシャルに幻の川○探検隊を見た!
 06. VOYAGER-日付のない墓標

 よくわからない曲が多いですが、とりあえず聴いてみましょう。


「怪獣協奏曲」

 昭和の怪獣ブームに乗って邦画各社が相次いで製作した怪獣映画の音楽を集めてアレンジしたものです。既製クラシック曲のベースにテーマ曲を繋げていくという作りは、『刑事クラ』とかと同じ手法ですね。
 まず、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」から始まり、そのままのピアノをベースにヴァイオリンでゆっくりとお馴染みの「ガメラマーチ」のサビが3拍子で奏でられます。あまりにあっさりと終わっちゃうので物足りなさがいっぱいです。
 続いて『キングコング対ゴジラ』のタイトル曲。ヴァイオリンの奏でる旋律がどんどん高く移調していってるのが特徴ですが、本来は男声コーラスがメインの曲。こんなに高くなってしまったら(裏声でも使わないと)コーラスの声が出なくて困るでしょうね。
 一転して静かに奏でられるドビュッシーの「月の光」が奏でられ、そのままゆったりと流れて行く「月と星のバラード」。『宇宙大怪獣ギララ』のED曲ですが、他の曲との組合せで考えたら「ギララのロック」じゃないのが謎です。原曲の歌が倍賞千恵子という辺りが松竹らしいといえばらしいのかもしれません。
 最後は軽快なピアノのイントロで始まるタンゴ調「怪獣ガッパ」 。怪獣映画といえども往年の日活らしさをあふれさせてる主題歌ですが、何といってもヴァイオリンの演奏が絶妙で、超絶ポルタメントの「ガッパ~~~」は聴きものです。ラストでピアノによる『ゴジラ』のタイトルテーマが入ってるのがニヤリとするところかな。


「レプリカント密着24時」

 『ブレードランナー』はテレビで1、2度見ただけなので音楽はよくわかりません。ヴァンゲリスというと『炎のランナー』のテーマ曲の方が印象的ですね。タイトル的にはテレビの特番とかで時々警察やら消防署やらの密着取材とかしていますが、そのノリでレプリカントの一日を追いかけてみたというところですか。
 悲しげでゆったりとしたヴァイオリンのフレーズで始まり、一転してスリリングで激しい速弾きに変わり、ピアノを交えて複雑に展開していきます。根底に流れているのはレプリカントの無常感といったところでしょうか。


「UFOウォッチャー」

 タイトルからするとあくまで主体は観測者の方みたいですね。空をあっちこっち行ったり来たりしてるUFOを追いかけて振り回されてるってところでしょうか。ま、多分にゲーセンのUFOキャッチャーを意識してネタに使ってるみたいですが。
 ゆっくりとサスペンスっぽい、少しミステリアスな感じのピアノ。電波障害のノイズっぽく不協和音を響かせるヴァイオリン。左右を行き来するサイレンのような音はUFOの到来なのか、それとも精神病院に運ばれる救急車なのか……


「シューティング・ソナタ」

 ゲーセンといえばシューティングゲーム。ステージごとに進行し、各ステージにはボスキャラがいて……というのがスタイルですが、そんなシューティングゲームのプレイ状況を音楽にしたのがこの曲。
 最初はややスピーディーで優雅なピアノ曲。お嬢様の午後のひとときって感じのエチュードですが、1、2面の比較的易しいステージを余裕を持ってクリアしているところでしょうか。
 続いてスリリングでハイテンションなヴァイオリンのアレグロ曲。ステージが進むにつれて難易度も高くなり、各面のボスキャラも手強く、自機も残りが無く、プレイに必死でもう余裕なんかはありませんって感じかな。
 最後は撃墜されてゲームオーバー。インベーダーゲームを思わせるようなブザー音を見立てた効果音に吹き出してしまいますが、やられた後は虚しさが残りますね。


「水○スペシャルに幻の川○探検隊を見た!」

 昔、水曜スペシャルというとUFOとか宇宙人とかの番組は見てましたが、川口探検隊とかは見たことが無かったですね。
 スリリングでアップテンポな始まりが冒険を予感させます。そしてアグレッシブなアレグロ。小刻みなピアノのリズムと力強いヴァイオリン。ジャングルの奥地へ突き進んで行く探検隊の雄姿を映し出している感じです。


「VOYAGER-日付のない墓標」

 厳かにゆったりと奏でられるホルストの『木星』の第4主題。本田美奈子や平原綾香の歌曲版の影響もあるのでしょうが、一般的には『木星』のイメージはこの主題なのでしょうか? 個人的には『木星』というと、『ライトスタッフ』か『ストラトス・フォー』かというあのド派手なアレグロ部分の印象が強いのですが。
 そして、ゆっくりとノスタルジックに奏でられる「VOYAGER」。ユーミンによる『さよならジュピター』のテーマソングですが、「日付のない墓標」というサブタイトルが示すように、物語の最後に犠牲になった主人公に対するレクイエムのような曲です。地球が助かって万々歳って感じで終わらないところが日本映画らしいところですが、どちらかというと作品自体へのレクイエムになっちゃってる感じがするのも否めないところです。

     ☆ ☆ ☆

 既製のクラシック曲に被せてポピュラー曲をクラシック風に演奏してみましたってのはライブとかのネタには良いのかも知れませんが、アルバム1枚そればかりだと何かプラスαが無ければ物足りないのが確かです。それは物語付けなり演奏技巧なりといったところなのでしょうか。
 今回は書籍の付録ということでネタとして割り切った音楽ですね。内容がカルトっぽいのはプロデューサーの唐沢俊一によるところだろうけど、中途半端に薄いのが気になります。
 書籍本体もそうだけど、付録CDの方も聴く人を選ぶのは確かですし、タイトルに引きつられても聴いてみて期待が外れたって人も多そうですが、付録CDのボリュームじゃ物足りないのは確かですし、《杉ちゃん&鉄平》を知るきっかけぐらいには良いんじゃないでしょうか。
 それを考えたら個人的には「怪獣ガッパ」だけで十分満足できています。


トンデモ音楽〈ミュージック〉の世界
トンデモ音楽〈ミュージック〉の世界


ついでにこんなものを作ってしまいました。

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2007.10.21

宇宙戦艦ヤマト音楽全集・模範演奏テープ:SIDE2

 引き続いてB面(SIDE2)に行きます。オートリバースデッキだとすぐにひっくり返りますね。
 収録曲を記します。

 SIDE2
 01. 序曲(交響組曲)(演奏:羽田健太郎)
 02. イスカンダル(演奏:羽田健太郎)
 03. 大いなる愛(演奏:羽田健太郎)
 04. 愛し合う二人(演奏:羽田健太郎)
 05. サーシャ(澪)幸せ(演奏:羽田健太郎)
 06. ディンギル星(演奏:羽田健太郎)
 07. 水の星アクエリアス(演奏:羽田健太郎)
 08. 神秘の星アクエリアス(演奏:羽田健太郎)
 09. ウルクの歴史(演奏:羽田健太郎)
 10. ユキ(演奏:羽田健太郎)
 11. ファイナルヤマト(演奏:羽田健太郎)
 12. アクエリアス・レクイエム(演奏:羽田健太郎)
 13. 無限に広がる大宇宙(演奏:宮川泰)
 14. 宇宙戦艦ヤマト(連弾)(演奏:羽田健太郎)

 では、聴いていきましょう。

「序曲(交響組曲)」
 『交響組曲』そのままの「序曲」です。後の『組曲』みたいに省略したりはしていません。
 オーソドックスなサスペンス風のイントロ。ピアノだけじゃマイナー系のサスペンス音の連続って感じでちょっとイメージが悪い感じです。
 そして弾き語り風に始まる「無限に広がる大宇宙」のモチーフによる主題。しっとりとした感じで始まり、次いでトリルで音の広がりを出そうとしてるんだけど、ちょっと違和感を感じます。
 中盤に向けての展開部はピアノならではの激しさが出てて良い感じですが、その後の主題が原曲では盛り上がるところなんだけど、ピアノのソロではテンションが落ちてる感じで寂しいです。
 後半の締めくくりはオーソドックスにまとまっていて良いですね。
 全体的には一般向けのアレンジのピアノソロで演奏するにはかなり無理があるように思います。楽譜集の目的が『ヤマト』の音楽を自分で演奏して楽しみたいという需要を満たすことだから、これはこれで構わないと思いますが、観賞用に演奏するなら連弾やデュオにした方が良いんでしょうね。

「イスカンダル」
 同じく『交響組曲』から。原曲は文字通りヤマトがイスカンダルに到着した時の音楽ですが、意外なところでは『さらば宇宙戦艦ヤマト』でコスモタイガー隊がヤマトに合流するシーンで使われていたのが印象的です。
 演奏はイージーリスニング風。おしとやかで上品で丁寧な演奏が続きます。後半の展開部は激しく力強いのが印象的です。

「大いなる愛」
 おそらく楽譜の需要が一番大きかった曲では。サントラ盤そのままの構成なので、雪の密航発覚シーンに使われた第1主題とラストシーンで使われた第2主題が混在した形になっています。『組曲』みたいに端折られてはおらず、オリジナルのフルサイズです。
 低音のキーで静かに始まる第1主題。やがて滑らかなタッチで奏でられ始めます。第2主題は軽やかに奏でられ、やがて華麗に展開されます。
 再び第1主題が軽快でロマンティックな感じで奏でられ、最後は第2主題が華やかに盛り上がります。
 さすがにハネケンという感じの絶妙なピアノタッチの演奏です。

「愛し合う二人」
 原曲は『ヤマトよ永遠に』の冒頭、暗黒星団帝国の奇襲を受ける地球の有人機基地で古代と雪が再会するシーンに使われていた曲。もちろん原曲のピアノパートもハネケンの演奏です。
 しっとりとして軽やかな演奏。徐々に情熱的に盛り上がっていきます。クライマックスは一段と激しく。
 ハネケンらしい屈指の名演奏って感じですが、この模範演奏通りに弾くのは素人には無理でしょうね。

「サーシャ(澪)幸せ」
 原曲は『ヤマトよ永遠に』の中盤、敵母星に向かって航海するヤマトの中で古代に禁断の恋心を抱くサーシャのシーンに使われていたように思います。サントラ盤では同じテーマモチーフで3曲セットで収録されてる曲のうちの真ん中の軽やかで明るい曲ですね。
 か細く軽やかなタッチの出だしの可憐なイメージの演奏。やや弾む感じのフレーズが続きます。後半はしっとりとしてスタッカート気味の演奏が続いた後、低音でおとなしい雰囲気で終わっていきます。

「ディンギル星」
 おそらくこの中ではヤマトファンにも一般に一番馴染みが薄い曲かな。作品本編では未使用な上に、他の曲とモチーフ上の共通点があるわけでも無いので、大量の音楽が作られた『完結編』の中では影が薄い曲です。ピアノがメインの曲ということでアレンジしやすく採用されたというところでしょうか。
 同じフレーズの繰り返しが多く、あまり技巧的に高度な部分も無いので、初心者の練習向きの曲かな。割とあっさり目にまとめられて終わっています。

「水の星アクエリアス」
 原曲は『完結編』の中盤、ヤマトが目的地の水惑星アクエリアスに到着したシーンの音楽です。
 出だしの音は原曲では木琴か鉄琴だろうけど、小刻みなトリルをピアノが上手く再現しています。メインの旋律はなかなかの演奏です。
 全体的に軽やかでしっとりとしていて、癒される感じ。一時期流行っていたヒーリングミュージックを髣髴させます。ラストは強めで雄大に締めくくられます。

「神秘の星アクエリアス」
 原曲は『完結編』の中盤、アクエリアスに着水したヤマトのパネルにこの星の大自然や失われた文明の痕跡が映し出されたシーンに使われていた曲。ピアノがメインの美しい曲で、これも楽譜の需要が大きそうです。
 しっとりとしたタッチの演奏で始まる曲。情感を歌い上げるような感じで、神秘というよりはどこか下世話な宮川先生らしいメロディーをハネケンの指が滑らかに演奏しています。
 トリルから入る後半部、ピアノだけでもなかなか濃厚な演奏になっています。

「ウルクの歴史」
 原曲は『完結編』の冒頭、ヤマトを襲撃したルガール・ド・ザール将軍が都市衛星ウルクに帰還し、父親の神官大総統からルガール王家の秘密と地球侵攻計画を聞かされるシーンに使われていた曲です。
 原曲は相当に重厚な曲なので、ピアノソロだと重厚感が足りず、どこか内面的な描写の演奏に感じるのは仕方の無いところでしょうか。強大さというよりも悲劇の宿命性を現してるような演奏です。
 激し過ぎない程度に力強く鍵盤を叩いているという印象。中盤、盛り上がって壮大に奏でられていきます。

「ユキ」
 原曲は『完結編』の未使用曲。同じモチーフを使った「古代君よかった」が病院で古代を見舞う雪のシーンに用いられていますが、それのイージーリスニング風のアレンジ。
 軽やかで可憐なピアノはやはりイージーリスニング風の演奏。後半は情感を込み上げる感じに。美しいピアノの小品です。

「ファイナルヤマト」
 原曲は『完結編』のラスト、冬月に収容された乗組員たちがヤマトと沖田艦長を見送るシーンに使われていた曲です。
 ゆっくりとしたバラード風の曲。ややマイナー調でレクイエム風の、空気が沈み込むような静かな演奏。中盤でピアノソナタ風に展開されていきます。演奏は激しいけど、曲そのものはマイナーで沈み込んだままの印象です。
 ハネケンの演奏はしっとりとしたレクイエムという感じで、男声コーラスをフィーチャーした原曲とはかなり印象が違います。

「アクエリアス・レクイエム」
 原曲は『完結編』のラスト、アクエリアスに立ち向かうヤマトのシーンに用いられた長大なピアノコンチェルト「SYMPHONY OF THE AQUARIUS」から主にピアノパートのメロディーを抜き出してアレンジした曲。
 需要としては「SYMPHONY OF THE AQUARIUS」なんでしょうが、とても一般人がピアノソロで弾ける曲じゃないから「アクエリアス・レクイエム」の方が採用された感じですね。
 そういうわけなので、ピアノ曲としては自然な感じにまとまっています。「SYMPHONY OF THE AQUARIUS」のような激しさは無く、イージーリスニング風というか、しっとりとしたレクイエムに仕上がっています。

「無限に広がる大宇宙」
 原曲はいわずと知れた遊星爆弾による地球の汚染が語られるシーンに繰り返し使われていた曲ですが、どちらかというと第1作のオリジナル曲よりもパート2のBGM集に収録されている再録バージョンに近いイメージがします。
 原曲では遊星爆弾の悲惨な光景が頭に蘇るところですが、そういうイメージは無くて、平和で穏やかな感じがします。
 宮川先生のピアノははっきりとしたキータッチで、力強い演奏です。後半は少し激しく、かつメロディアスな感じに。

 アニメや映画の劇伴作曲家の中には伊福部先生のように多くの曲の楽譜を保管してる人もいれば、録音が終わるたびにどんどん捨てていく人もいるらしいのですが、当初の宮川先生は後者のタイプだったようで、ヤマトブームで音楽の再演が求められた時には後の祭り。慌てて録音した曲を聴きながら採譜したとのことです。(セルフ耳コピ)
 『交響組曲』やその他の再録曲のアレンジが原曲とは異なってるのは、あえてアレンジを変えたというより、再現しきれなかったという部分が大きいのではないでしょうか。昨今のように耳コピ職人が大量にいたらバイトで雇って採譜させるという手段もあるのですが、DTMなんて欠片も無かった当時と今じゃ環境が全然違いますからね。

「宇宙戦艦ヤマト(連弾)」
 連弾ということはハネケン以外にもう1人奏者がいるはずですが、名前は書かれていません。A面最初の「宇宙戦艦ヤマト'83」(宮川版)と対をなすオーソドックスなアレンジで、連弾の分だけ音が増えている感じです。
 イントロの最後の波打つような演奏が印象的。さすがにソロに比べて音が厚く、より原曲に近いイメージです。素人の演奏でもそれっぽくは聴こえそうですね。
 宮川先生のソロの演奏に比べると、やはりハネケンらしい流れるような華麗な演奏で、連弾でもけっして激し過ぎたりはしません。

     ☆ ☆ ☆

 一般向けにアレンジされたピアノスコアの模範演奏とはいえ、やはり宮川先生とハネケンの演奏は聴き応えがありますね。
 宮川先生は後にオーケストラや名匠宮川組での演奏活動が多くなり、そこでは宮川先生自身のピアノの演奏によるヤマトの音楽もしばしば聴かれるようになったのですが、この頃はまだご本人による演奏なんてテレビの歌謡番組で取り上げられるぐらいしかなかったように思います。
 一方、当時のハネケンは劇伴作曲者としてやスタジオミュージシャンとしてのピアニストとしては業界内ではよく知られていたものの、コンサート等での実演家としての一般的な知名度はまだあまり無かった時代ですね。
 そんな両者によるヤマトの音楽の演奏が詰まった、この模範演奏テープはとても貴重な1本と言えます。今なら模範演奏はCDで最初から添付されてたりするんでしょうけど、当時は別途頒布という形が普通だったので、楽譜は買ったけど模範演奏テープは買わなかったとかいう人も多いんでしょうね。

 手元には現在、模範演奏テープはあるけど『宇宙戦艦ヤマト音楽全集』の楽譜集本体は持ってないから、復刊でもされれば入手したいものですが。楽譜の原版とか模範演奏の音源等がどこでどうなってるかも気掛かりです。出版元に残っていればいいのですが、下手すればウェストケープ倒産のドサクサで散逸してしまってる心配がありますからね。


 参考までにサントラ関係のCDを。

生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX
生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX


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2007.10.14

宇宙戦艦ヤマト音楽全集・模範演奏テープ:SIDE1

 今回は『宇宙戦艦ヤマト』生誕10周年企画の1つとして発売された楽譜集『宇宙戦艦ヤマト音楽全集』の購入者用に別途頒布されていた模範演奏テープです。
 羽田健太郎が亡くなられた時、追悼企画として面白い音源は無いかと探してた時に見付けたものですが、なにぶんカセットテープなんかすぐに聴ける環境じゃないので、聴ける環境に持ってくるまでに時間が掛かってしまいました。

 楽譜集と言ってもサントラ録音用のオーケストラ譜などではなく、よくある一般向けの簡易化されたピアノスコアで、模範演奏もそれにあわせたピアノ演奏であるわけですが、そこらの模範演奏テープと違うのは、演奏が宮川泰・羽田健太郎の両氏自身の手によるものだということです。
 観賞用に録音されたものではありませんから、そういう点での演奏クオリティという面ではいくら宮川・羽田両氏のピアノでも差し引いて聴かなければならない部分があるとは思いますが、オフィシャルの音楽アルバムでピアノアレンジのみを扱ったアルバムは無く、この音源も他に商品としては発表されていませんので、とても貴重なものだと思われます。

 模範演奏テープは90分テープの両面いっぱいに収録されて、CD1枚には収まらない分量です。ピアノの練習のために繰り返し聴くには、テープの耐久性がちょっと心配なところですね。
 A面(SIDE1)が歌もの、B面(SIDE2)がサントラ曲中心という構成ですね。宮川先生の演奏は全部で4曲、残りはハネケンの演奏というところですが、これは当時は宮川先生自身による演奏でヤマトの曲を聴ける機会が無かったので、ファンサービスとして4曲だけ演奏してもらったということでしょうか。
 テープの説明書には各曲1番は楽譜どおりの演奏、2番は両氏によるアレンジ入りとあります。歌ものは1番2番で分けられてもサントラ曲の方はどうなんだとか、歌ものでも1コーラス分しか無いのもありますから、あくまで参考的に捕らえた方が良さそうです。また、楽譜集の本体は手元にありませんので、楽譜に対してどれだけ違ってるのかは不明です。

 曲数が多いので片面ずつ行きましょう。まずはA面(SIDE1)から。収録曲は以下の通り。

 SIDE1
 01. 宇宙戦艦ヤマト'83(演奏:宮川泰)
 02. 宇宙戦艦ヤマト'83(演奏:羽田健太郎)
 03. 真赤なスカーフ(演奏:羽田健太郎)
 04. ヤマトより愛をこめて(演奏:宮川泰)
 05. ヤマト!!新たなる旅立ち(演奏:羽田健太郎)
 06. 好敵手(演奏:宮川泰)
 07. 星のペンダント(演奏:羽田健太郎)
 08. 銀河伝説(演奏:羽田健太郎)
 09. 愛の生命(演奏:羽田健太郎)
 10. 愛よその日まで(演奏:羽田健太郎)
 11. ヤマトよ永遠に(演奏:羽田健太郎)
 12. 別離(演奏:羽田健太郎)
 13. 古代とヤマト(演奏:羽田健太郎)
 14. 二つの愛(演奏:羽田健太郎)
 15. ラブ・シュープリーム(演奏:羽田健太郎)

 それでは順番に聴いていきましょう。

「宇宙戦艦ヤマト'83」(宮川版)
 宮川先生の演奏はイントロから始まるオーソドックスなアレンジ。1コーラス目は力強く、それでいて滑らかなヤマト。2コーラス目はやや穏やかで、柔らかく軽やかに。
 1コーラス目は男のロマンで2コーラス目が愛って感じですが、さすがに作曲者本人の演奏だけあってまったく無駄がありません。

「宇宙戦艦ヤマト'83」(羽田版)
 ハネケンの演奏はスローテンポのバラードで始めるアレンジ。哀愁漂う軽やかなタッチが印象的。
 1コーラス目はストレートですが、宮川先生の演奏に比べるとアレンジが多いですね。とくに「笑顔で答え~」の後の演奏の激しいところが特徴的です。バラードから始まって、どこかレクイエム風のイメージが漂います。
 2コーラス目の前半は原曲の形を留めていないほどのアレンジが加えられています。歌曲のピアノ演奏というよりは本格的なピアノ曲にアレンジしてしまったようなイメージですね。最後は普通のサビに戻って締めくくってますが、TVのOP風のフェードアウトで終わってるのが印象的です。

 羽田版の1コーラス目と宮川版をくっつければ「宇宙戦艦ヤマト'83」のシングルバージョンと同じ形になるのも面白いところです。

「真赤なスカーフ」
 哀愁の漂うイメージの曲です。ピアノの映える曲ですが、ハネケンのしゃれた演奏はまるでラウンジででも流れてそうなムード音楽の雰囲気です。
 2コーラス目はトリルを利かせたり、強弱のアクセントを大きく付けたり、通好みのアレンジに仕上がっています。

「ヤマトより愛をこめて」
 原曲は『さらば宇宙戦艦ヤマト』のエンディングで流れた沢田研二の曲。
 切ないタッチのイントロから始まる、どこか寂しげな演奏。まるでヤマトへのレクイエムですが、映画での使用シーンから考えればそれが本来のイメージですね。
 宮川先生のピアノはキータッチのはっきりしたスタッカート気味の演奏ですが、原曲の持つ哀愁感を十二分に引き出してる、湿っぽい演奏でもあります。1コーラスとサビのリフレインだけで終わっています。
 この曲は実際に使われたこの大野克夫作曲のものとは別に宮川先生も作曲されていたそうですが、自分の曲がボツにされた宮川先生としては、どういう気持ちでこの曲を弾いていたのでしょうか……

「ヤマト!!新たなる旅立ち」
 ほぼ原曲に沿ったイントロですが、フィーリングフリーのコーラスの最後の小節の部分がカットされてるのが異様に気になってしまいます。
 ハネケンらしい滑らかな指運びで、軽快で明るく力強いタッチの演奏。サビの一番ラストの部分の演奏がなかなか聴き応えあります。2コーラス目は強弱のメリハリを付け、サブメロを加えて音を厚くするようなアレンジになっています。

「好敵手」
 原曲では宮下明のトランペットが印象的なイントロをピアノが高めに弾いていますが、ボーカルのメロディーに入ってからが急にキーが低くなってるところに少し違和感を感じてしまいます。
 1コーラス目ははっきりと力強く、2コーラス目はイージーリスニング風の柔らかな演奏。後奏は消えゆくように弱いタッチで奏でられています。

「星のペンダント」
 原曲は『ヤマトよ永遠に』でヤマトが発進した直後に使われた印象的な曲です。
 ハネケンの演奏はゆっくりとしたテンポで、甘くか細いピアノタッチ。サビはやや力強く始まり、弱く曖昧な感じに終わっていきます。
 1コーラスの後でサビのリフレインですが、かなりダイナミックなアレンジで、力強い演奏です。

「銀河伝説」
 原曲は『ヤマトよ永遠に』のために作られた曲で、ビデオソフト等ではEDの後にこの曲が流れていますが、実際に劇場で聴いた記憶はありません。むしろ『宇宙戦艦ヤマトⅢ』の初期EDとしての方が馴染みが深いです。
 ハネケンの演奏はラウンジのピアノ風で、ややアダルトなイメージ。サビはかなり繊細な音の印象です。2コーラス目はロマンティックで甘く切なく感じます。

 この曲は「愛よその日まで」のB面に布施明バージョンが収録されていたのですが、ヤマトの歌の中でその布施明バージョンだけは現在に至るもCD化されていないのが残念です。(厳密に言えば「ヤマトより愛をこめて」の初期シングルバージョンも未CD化のはず)

「愛の生命」
 続けて岩崎宏美の曲ですが、こちらは『ヤマトよ永遠に』の古代が雪を回想するシーンで使われていた曲。(ドラマ編アルバムでは堀江美都子の「おもかげ星」に差し替えられていましたが)
 少し軽やかでリズミカル。いかにも歌謡曲のピアノ演奏って感じのイメージです。サビのビブラート部分のトリルがなかなか良い感じです。2コーラス目はよりリズミカルな演奏で、サビは壮大に奏でられます。

「愛よその日まで」
 原曲は『ヤマトよ永遠に』のラストで使われた布施明の曲。
 1コーラス目はややリズミカルな出だしで始まり、サビの手前でよりリズミカルに明るく跳ねる感じの演奏。2コーラス目はしっとりと穏やかに奏でられます。
 サビは力強く、軽やかで美しい演奏ですが、「ラララ~~」の部分が無くていきなり終わってるのはちょっと拍子抜けかな。

「ヤマトよ永遠に」
 原曲は『宇宙戦艦ヤマトⅢ』のED曲。次の「別離」とほぼ毎週交代で使われていました。
 ややマイナー風の寂しげで物憂げな印象で始まり、バラード風に歌い上げるピアノ。サビのクライマックスは相当な高音になっています。テープにはカラオケとしても使えるとか書いてありましたが、歌う人は大変そうです。
 1コーラスのみで終わっていますが、上手くまとめた終わり方という印象です。

「別離」
 原曲は『宇宙戦艦ヤマトⅢ』のED曲……というか、そもそもは『新たなる旅立ち』で使われた劇伴曲に歌詞を付けたものですね。オリジナルのピアノパートもハネケンの演奏だったと思うので、曲のイメージをわかってるという意味では安心です。
 1コーラス目はオーソドックスに力強く旋律を演奏しています。2コーラス目はイージーリスニング風に大胆にアレンジを加えていて、ピアノの演奏の腕をアピールしてるような感じがあります。やや激しい演奏が印象的です。

「古代とヤマト」
 原曲は『完結編』で地球がディンギル艦隊の襲撃を受ける中、病院を抜け出した古代が修理中のヤマトに向かうシーンに使われていた曲。長年ヤマトの歌詞を担当してきた阿久悠が自身のヤマトへの思いの全てを織り込んだって感じがひしひしと伝わってきて、今となっては涙なくして聴けない曲です。
 しっとりと切ない出だしの演奏で、とうとうと歌い上げていくメロディー。阿久悠の歌詞が思い浮かばせます。
 サビは大きく激しい演奏だけど、ちょっとメランコリーな印象を受けます。

「二つの愛」
 原曲は『完結編』の冥王星海戦で、負傷したままコスモゼロで偵察に出た古代が任務を達成して気を失った後、ナビゲーターとして乗り込んでいた雪の操縦でヤマトに帰還していくシーンで使われていた桑江知子の曲。
 原曲通りとはいえ、この手のピアノアレンジとしてはイントロがけっこう長いのが印象的です。抑え目でしっとりとした演奏による可憐な響き。華麗に盛り上がるサビ。
 リフレインでの流れるような感じの演奏がハネケンらしいところ。後奏もきちっと演奏してます。

「ラブ・シュープリーム」
 原曲は『完結編』のラストの古代と雪の結婚シーンに使われていた曲。
 1コーラス目はしっとりと、歌詞を噛み締めるような演奏で、サビは激しく。2コーラス目はやや熱情的で、サビは力強く。リフレインの盛り上がりからフェードアウト気味に終わります。

 一時期ヤマトファンの間ではその手のシーンの代名詞として使われていた「ラブ・シュープリーム」ですが、肝心のシーンは70mm版でカットされて幻に。後にLD-BOXで出たときに特典映像として復活しましたが、35mm版を完全に収めたものは初期のビデオソフトしか無いんですね。

     ☆ ☆ ☆

 長くなるので、続きは次の記事に。


 楽譜も模範演奏テープも今となっては入手困難ですが、参考までにヤマトのボーカル曲関係のCDを。

YAMATO ETERNAL EDITION File No.10 ヤマト・ザ・ベスト
YAMATO ETERNAL EDITION File No.10 ヤマト・ザ・ベスト

宇宙戦艦ヤマト YAMATO the Best II
宇宙戦艦ヤマト YAMATO the Best II


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2007.06.20

羽田健太郎『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』

 また残念な訃報を聞いてしまうことになりました。羽田健太郎といえば『さらば宇宙戦艦ヤマト』の「大いなる愛」を初めとするヤマトの名曲の多くをピアノで支えたプレイヤーであり、『宇宙戦艦ヤマト完結編』に至っては劇伴の作曲まで手掛けたことで、ヤマトの音楽ファンにとっては忘れるに忘れられない人です。

 追悼企画として何が良いかなと迷ったけど、『ハネケン・ランド』は以前にこのブログで取り上げてるし、『宇宙戦艦ヤマト完結編』『超時空要塞マクロス』『オーディーン』あたりは昔のパソコン通信時代の連載で書いてるし、『さよならジュピター』わざわざアナログ盤の再生環境を用意するのが面倒……。そういえばと思い出したのがこの『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』です。
 ヤマトの生誕10周年記念として音楽的に後世に残るものをと企画された四楽章構成の本格的な交響曲で、N響により初演されたものですが、残念ながら再演されたとかいう話は聞いたことがありません。
 ヤマトといえば宮川泰の音楽ですが、それをモチーフに堂々としたクラシカルな交響曲を紡いだのが羽田健太郎でした。後年、ピアニストとしてクラシック音楽のコンサートも手掛けるようになったハネケンですが、この方面で本格的なオーケストラ楽曲までは残していないようなので、後にも先にもこれが一番の大作ということになるでしょう。

 この『交響曲』、アナログ盤にCD新旧、LD新旧にDVDと手元に数だけはあるから、どれを聴こうかと考えましたが、数年前に出た30周年記念のプレミアムCD-BOXの特典ディスクとして「トラックダウンバージョン」という、既製のCDとは別バージョンのものが付いていたので、それを聴いてみることにしました。
 これは何かというと、既製のCDの音源は演奏時に2チャンネル用のステレオマイクで収録された音源がそのまま使われてるらしいのですが、それとは別に複数のマイクでマルチトラック録音された音源があって、DVD等の音源として使われているとのことです。マルチトラックと言ってもコンサートでの一発録りですからパート別に音がきっちりわかれてるってわけでは無いでしょうが、本来意図する音に近いようにバランスを調整する目的で使われてるようですね。
 DVDでは第一~第三楽章がこのトラックダウンバージョンを使用してるとのことなので、第四楽章はCDと同じ音源を用いてるってことでしょうが、DVDでも未使用の第四楽章分も入ってるのがこの特典ディスクということみたいです。

 では、収録曲目です。

 01. 第一楽章「誕生」
 02. 第二楽章「闘い」スケルツォ
 03. 第三楽章「祈り」アダージョ
 04. 第四楽章「明日への希望」ドッペル・コンチェルト

 演奏は大友直人指揮のNHK交響楽団。ソリストとして、スキャットが川島和子、バイオリンがN響コンサートマスター(当時)の徳永二男、そしてピアノが作曲者の羽田健太郎自身です。
 ちなみに現在出てるDVD版はコンサート当日のライブ映像を昨年他界された実相寺昭雄監督の手でまとめられたもので、後年NHK教育で放送された他、ビデオソフトとして発売されたものです。

 それでは順番に聴いていきましょう。


 第一楽章「誕生」

 第一楽章はオーソドックスなソナタ形式です。

(序奏)
 静かに沸き起こってくるような、夜明けのようなフレーズ。

(提示部)
 やがて現れるヤマトのメインテーマがこの楽章の第1主題です。バラード風に始まったかと思うとダイナミックに展開していきます。ブラスを主体に強弱を繰り返しながら、様々に展開されていきますが、主調はマイナーです。
 ここで用いられる旋律は「さらば~」から最初の「ヤ~マ~ト~」までの前半部。ポピュラー形式の歌曲だと全体を1つの主題として使うのが難しいのか、基本的に第1主題は前半部の旋律だけがもっぱら使われています。
 途中、ブラスとストリングスの激しくスピーディーなユニゾンと木琴の畳み掛けるような連打の部分が現れますが、『完結編』の「抜けるヤマト」に似たような表現のフレーズがあるんですね。プレミアムCD-BOXの解説書には使用曲として「抜けるヤマト」も記載されているのですはこれは違うんじゃないのかな。作曲者が同じだからたまたま似たような表現になっただけで、モチーフとして「抜けるヤマト」が使われたわけではないと思います。(現に既製CDのライナーの羽田健太郎自身の解説には記述がありませんし)
 断片的に用いられてきたヤマトのテーマがとりあえず前半部分を通して奏で終えたところで第1主題の提示は終わります。

 ストリングスによる短い間奏の後、第2主題の「イスカンダル」のモチーフが始まります。この間奏のフレーズ、どこか『さらば宇宙戦艦ヤマト』のデスラーのモチーフに似てるのですが、これも恐らく「イスカンダル」への繋ぎの音を探してたらたまたま似ていたってところでしょうね。宮川泰の原曲の作曲自体が似た曲想から始まってるんじゃないでしょうか。
 木管とストリングスを主体に静かに奏でられる第2主題は第1主題とは反対にメジャーで展開されます。第1主題のようにモチーフが断片的に不安定に変奏を繰り返すのではなく、美しい旋律が歌い上げるように奏でられます。

(展開部)
 静かに湧き上がってくるように再び第1主題が始まります。提示部とは一転して今度はメジャーで、華々しく展開されます。ここで初めて現れるヤマトのメインテーマの中盤の「宇宙の彼方イスカンダルへ」の部分がトランペットで高らかに奏でられるのがとても印象的です。
 華やかで派手な展開が繰り広げられますが、ここで現れるアレンジの技巧は『マクロス』や『さよならジュピター』でも見られる羽田健太郎らしさが発揮されています。そして大きく高らかに雄大なヤマトが奏でられます。

(再現部)
 いったん静寂にかえった後、提示部と同じように第1主題が展開されていきます。やはり主調はマイナーで、提示部よりは短めに終わります。
 ストリングスによる間奏のフレーズはやや長めで、ゆったりと大らかな第2主題がやはりメジャーで奏でられます。キーは提示部に比べてやや低めのイメージで、落ち着いた感じがします。
 曲は平和裏に大団円を迎えるかのように静かに終わっていきます。


 第二楽章「闘い」スケルツォ

 第二楽章はスケルツォ。交響曲におけるスケルツォとは、古典交響曲でのメヌエットに相当するテンポ速めの3拍子の舞曲というところですね。構成的には二部形式の一種のようです。

(A部)
 力強いブラスによる畳み掛けるような短い序奏。これはなぜか4拍子。
 スピーディーで流れるようなストリングスで奏でられる第1主題は『完結編』の「神殿部の斗い」のモチーフ。原曲のブラスのイメージが強いので、初めてこれを聴いたときはとても美しい旋律に聴こえました。
 そこに絡んでくるのがブラスの高らかな「FIGHTコスモタイガー」のモチーフ。「神殿部の斗い」は元から3拍子の曲なので構わないのですが、16ビートの「FIGHTコスモタイガー」が3拍子で奏でられるとかなり物足りない印象を受けます。ともに都市衛星ウルク攻防戦で用いられていた曲なので、イメージ的にはディンギル帝国との戦いですね。
 『完結編』では主に宮川泰がテーマ関連の楽曲、羽田健太郎が状況音楽を担当していて「神殿部の斗い」というのは状況音楽の方で、ヤマト側でもディンギル側でもなく、戦闘状況を描いてる曲なんですね。そこで展開次第ではどちら側のテーマ曲ともくっつくということになります。
 バイオリンによる諧謔的な跳ねるようなフレーズと、それに対応したブラスアンサンブルの繰り返しが展開された後、再び「神殿部の斗い」のフレーズが現れます。それに続き重低音で展開されるのが「ウルクの歴史」のモチーフです。
 諧謔的なフレーズがフルートによってややおとなしめに展開され、静寂に移行していった後、再び「ウルクの歴史」のモチーフが大きく奏でられえます。

(A’部)
 流れるようなストリングスで第1主題の「神殿部の斗い」が変奏的に奏でられます。ここまでくるともう戦いの音楽というより、もっと美しい別の何かの音楽のようです。ブラスが派手に展開されますが、ここでは「FIGHTコスモタイガー」のモチーフは入って来ません。
 短めの展開が続いた後、「ウルクの歴史」のモチーフが堂々と奏でられます。

(B部)
 静寂から奏でられるセレナーデ風の旋律が第2主題。これは3拍子ではなく4拍子ですね。ここでは既製曲のモチーフは使われず、新たなモチーフが生み出されています。戦いの合間の休息というか、戦い疲れて安らぎを求めるというか、そういうところです。
 序盤はストリングス主体に静かに奏でられた後、中盤でブラスも加わってやや力強く。後半はフルートで静寂に戻った後、再びストリングス主体の展開。滔々と朗じるかのごとく、引き伸ばす感じで終わっていきます。

(A”部)
 冒頭の序奏から繰りかえられますが、今度は最初に「FIGHTコスモタイガー」のモチーフが華々しく奏でられます。そしてストリングスの諧謔的なフレーズの展開の繰り返しの後、流れるような第1主題の「神殿部の斗い」が入ってきます。
 そして重低音の「ウルクの歴史」のモチーフが奏でられて終わります。


 第三楽章「祈り」アダージョ

 第三楽章はアダージョ。いわゆる緩徐楽章です。構成はやや変則ですが、三部形式といっていいでしょう。

(A部)
 風がそよぐような静かに始まるストリングスの序奏の後、穏やかに入ってくる第1主題。ここでは「平和への祈り」ともいうべき新しいモチーフで作られています。
 その第1主題に取って代わるように現れる第2主題がおなじみの「無限に広がる大宇宙」のモチーフです。ここでは木管とストリングスによってゆっくりと奏でられます。
 その後、ホルンを含む穏やかなフレーズがゆるやかに展開していき、やや高らかに歌い上げられて静かに消えていきます。

(B部)
 ややテンポの速い木管による短い序奏の後、さっきはメジャーで奏でられていた第1主題が今度はマイナーで展開されていきます。
 最初はストリングス主体だったフレーズに、やがて木管とブラスが加わってきて力強く展開されます。

(C部)
 静かに入ってくる川島和子による第2主題のスキャット。いわばヤマトを代表する音の1つですが、声の調子が良くなかったのか、あまりきれいに出てませんね。
 ブラスが入って高らかに奏でられる展開の後、再び静かにゆっくりとしたスキャットの調べ。木管とストリングスによって間奏のフレーズが奏でられた後、ホルンによる高らかなフレーズが続き、雄雄しく穏やかに終曲に向かいます。


 第四楽章「明日への希望」ドッペル・コンチェルト

 第四楽章はピアノとバイオリンによる二重協奏曲。構成はラプソディー形式ということなので、古典的な定型形式ではなく自由な形式を用いているとのことです。といっても、まったく無構成のメドレー形式というわけでもありませんので、便宜的に構成を分けて聴いてみましょう。

(A部)
 重厚なブラスで奏でられる力強い第1主題。新規のモチーフですが、意味的には「勝利の祝福」とか「凱歌」とか、ヤマトの活躍によって得られた平和を祝うような華々しい旋律ですね。
 そこに絡んでくる羽田健太郎の軽やかなピアノ。少しだけヤマトのテーマを奏でているのがニヤリとさせてくれます。ピアノとオーケストラの掛け合いが続いた後、再びオーケストラが第1主題を高らかに奏でます。
 ここで徳永二男のバイオリンソロが、第1主題に反発するような切なく滔々とした旋律を奏でます。「勝利の祝福」を否定するようなそれは、『パート1』のガミラス本星の決戦の後で戦いの残した虚しさに気付き「勝利か、クソでも食らえ」と叫んだ古代進の心情を表しているようです。
 しかし、その反発も虚しく、ピアノまでもが第1主題を奏で始め、オーケストラと調和して盛り上がります。

(B部)
 続いて現れるのが第2主題。これもお馴染みの「大いなる愛」のモチーフです。「大いなる愛」自体が2つの異なるモチーフで構成されていますが、これは『さらば宇宙戦艦ヤマト』で森雪の密航が発覚したシーンの音楽(モチーフA)とラストの壮大な愛のテーマ(モチーフB)を、サントラ盤用のレコーディングをするときにくっつけてしまったからですね。この第2主題はその「大いなる愛」の2つのモチーフを合わせてモチーフとしています。
 まずピアノがモチーフAを奏で、続いてバイオリンソロがピアノを伴奏に同じモチーフAを繰り返します。そしてストリングスが盛り上がってきてモチーフBを奏で始め、最後はオーケストラ全体で盛り上がり、モチーフBを華やかに繰り返します。
 ここは「我々がしなければならなかったのは戦うことではない。愛し合うことだった」という古代進の訴え掛けが広く受け入れられていくような展開を表しているようです。

(C部・序盤)
 ここからが怒涛の展開部で、さらに大きく3つの構成に分けられます。
 まず、第三楽章の第1主題のモチーフが第1主題と一体化してオーケストラによって高らかに奏でられます。第三楽章ではマイナーだったのがここではメジャーなので若干印象が違うようですが、ここで表されるのはやはり「平和の謳歌」でしょう。愛だ何だと小難しいこと言ってないで、せっかく勝利で手に入れた平和だなんだからそれを謳歌しようって感じです。これには愛で平和が守れるのかという反語もあります。
 これに反発して表れるのが、やはりバイオリンソロによる訥々と訴えかけるような旋律。今度は孤軍奮闘ではなくてピアノ伴奏を伴い、第1主題や第2主題のフレーズも交えて訴えかけていきます。平和の繁栄の中でテレサのメッセージに耳も傾けない防衛会議の首脳たちに「地球は宇宙の平和を守るリーダーではなかったのか」と批判する古代進の心情のようです。
 オーケストラが第1主題を高らかに奏で、続いて激しい展開を見せます。第一楽章でも現れたブラスとストリングスの激しくスピーディーなユニゾンと木琴の畳み掛けるような連打のフレーズが繰り返されます。
 やがてバイオリンソロがオーケストラと反発しあう展開が繰り広げられ、喧々諤々と主張の応酬をしてる様が描かれてるようです。

(C部・中盤)
 盛り上がりの中から傾れ落ちるように音階を下げていくピアノ。いったん極限まで弱まったところから、切々と語りかけるような旋律が奏でられ始めます。ピアノはやがて第1主題を奏で、続いてヤマトのテーマをバラード風に弾いていきます。
 ここでは熱くなった議論の双方に頭を冷やさせる一方、語り方を変えて訴えかけて双方の仲を取り持とうとしてる立場というところですね。ヤマトの戦いが何だったのかをもう一度考え直させているようです。

(C部・終盤)
 中盤のピアノを引き継いで、バイオリンソロが第2主題のモチーフAを奏で始めます。次第にリズミカルに弾むようなバイオリンの早弾きにピアノ伴奏が加わって展開していきます。
 バイオリンが盛り上がりきったところでオーケストラが第1主題を華々しく奏でると、再びバイオリンとの掛け合いが始まりますが、ここでは対立するというよりも熱っぽく語らい合ってるという感じになっています。
 その後はバイオリンとピアノがオーケストラと一体となって第2主題のモチーフBを雄々しく高らかに歌い上げて大団円を迎えます。

(コーダ)
 盛り上がった中をそのまま引き継ぎ、重厚に力強いヤマトのテーマが奏でられ、堂々の完結を迎えます。

     ☆ ☆ ☆

 第一楽章はヤマトのメインテーマをモチーフに使い、短い序奏に長めの提示部、派手な展開部、再現部と続く、堂々としたソナタ形式ですね。
 第二楽章は第1主題の「神殿部の斗い」の美しさがまず目を引くところですが、第2主題のセレナーデがさらに優雅さを加えていて、元がアニメの戦闘音楽とは思えないくらい芸術的に仕上がってるように思います。
 第三楽章はヤマトでは馴染みの深い「序曲」のスキャットが現れ、改めて心が洗われるような清らかさを感じさせてくれます。
 第四楽章はもうこれだけで独立した楽曲として通用しそうなぐらいの、極めて完成された素晴らしい仕上がりです。ただ、バイオリンはともかく、ピアノは羽田健太郎自身の演奏が前提で作られてるような曲なので、ピアニストが変われば印象ががらりと変わってしまう懸念はあります。

 「大いなる愛」というと後年のコンサート等では作曲者の宮川泰自身がピアノを演奏することが多かったのですが、羽田健太郎の演奏と比べるとやはり印象が違いますね。羽田健太郎が軽やかでしゃれたイメージなのに比べると、宮川泰は湿っぽいというか情にほだされたようなイメージでした。

 ポピュラー音楽とクラシック音楽の違いの一つに、ポピュラーではしばしば特定のアーチストが前提とされているのに対し、クラシックはアーチストを選ばないという点がありますが、そういう意味では純粋な交響曲として徹し切れてない部分も大きいと思われますが、せっかく後世に残るようにと作曲された作品だから、何度も再演されるようになってほしいものです。(自分が生で聴きたいというのが第一ですが)


今回のサンプル(これの特典ディスク)
生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX
生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX

単品CDは入手が困難なようですね
交響曲 「宇宙戦艦ヤマト」~ライブ~
交響曲 「宇宙戦艦ヤマト」~ライブ~

最も入手が容易なのがDVD版でしょうか
交響曲 宇宙戦艦ヤマト ライブ
交響曲 宇宙戦艦ヤマト ライブ

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2006.10.16

刑事クラ ~モーツァルト殺人事件~

 アニメや特撮映画と違って、一般のテレビドラマではタイアップ主題歌が話題になることはあっても作品のサントラには関心がもたれることは少ないようです。それでも、あるジャンルのドラマ作品の音楽にはアニメや特撮映画と比べても根強い人気があるものが存在します。
 そのジャンルというのが時代劇であったり刑事ドラマであったりするわけですが、一般の大人向けのドラマと違って、時代劇や刑事ドラマは小さい子供のころから見慣れて馴染んでることが多く、余計に音楽が頭にこびり付いたりするわけですね。
 そんな音楽で育ってきた子供たちが大人になっていろいろと自分たちで企画できるようになってきたら、小さい頃から耳に馴染んできたこれらの音楽を素材に使って何か出来ないかとあれこれ考えて珍妙な企画が出てきたりするわけです。
 数年前には時代劇の音楽でそんな傾向の企画のアルバムが何枚か出てきたりしてましたが、それの刑事ドラマ版とも言うべきものが、この『刑事クラ』というアルバムです。

 刑事ドラマの音楽をクラシック風にというコンセプトのアルバムですが、使用楽器がバイオリン×2、ヴィオラ、チェロの弦楽カルテットとピアノという組み合わせですから、室内楽的なアレンジに限られてるのが少し残念なところです。
 このアルバムを企画した杉ちゃん&鉄平(杉浦哲郎&岡田鉄平)については良く知りません。解説書からはピアノとバイオリンの人ってぐらいしかわかりません。ネットで調べたら『アニクラ』とかいうアニソンのアレンジ盤も出してるみたいですが……試聴データを訊いてみたけど、アニソンのアレンジ盤としてはあまり芸があるようには聴こえませんでした。

 収録曲は以下の通り。

 ダブルコンチェルト第一番「アマデウス・モーツァルト殺人事件」
 01. 第1楽章「初動捜査」 Allegro
 02. 第2楽章「殉職」 Lento
 03. 第3楽章「事件解決」 Allegro maestro

 04. ワルツ「刑事コロンボ(MYSTERY MOVIE THEME)」
 05. スペイン舞曲「西部警察PART2」
 06. 協奏曲「AXEL F(ビバリーヒルズコップ)」
 07. 夜想曲「私だけの十字架(特捜最前線エンディングテーマ)」
 08. 哀愁刑事 ~SENTIMENTAL TANGO~
 09. 最終刑事 ~THE END~

 10. アマデウス・モーツァルト殺人事件 RADIO EDIT

 「アマデウス・モーツァルト殺人事件」は刑事ドラマの主人公たちがモーツァルトの死因に挑むというコンセプトの作品で、モーツァルトの代表曲に刑事ドラマの音楽が組み合わされて作られています。
 ダブルコンチェルトというのは、ピアノがメインならピアノコンチェルト、ヴァイオリンがメインならバイオリンコンチェルトとなるから、ピアノとバイオリンの2つともメインのコンチェルトだということでしょうが、普通、コンチェルトというと対立するのはオーケストラなのに、ここでは弦楽カルテット(正確にはバイオリン1本が抜けるから弦楽トリオ)というのはちょっと大げさな名前のような気がします。

 第1楽章「初動捜査」は事件発生で出動した刑事たちが、事件の周辺状況を捜査している状況を想定した曲。事件発生といってもモーツァルト自身はずっと昔に死んでいますから、何か難事件が起こって、その解決のカギがモーツァルトの死に関わってるとか、そういうところでしょうか。
 まずファンファーレ的に『Gメン'75』のイントロから始まり、ややアップテンポな「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が続き、交響曲第25番のスピーディーなフレーズにつながっていきます。次にチェロから始まる『古畑任三郎』のテーマにピアノによる「トルコ行進曲」が重なってくるという展開。続く『はぐれ刑事純情派』がモーツァルト的な音楽の世界を断ち切って、いかにも日本の刑事ドラマらしい空気を作った後で『西部警察』のテーマ。本来はブラスメインの派手な曲なのにここではピアノと弦楽器だけという演奏にややダイナミック感が損なわれている感じ。なんかみんな歳をとって人情臭くなった大門軍団ってところでしょうか。そこに「ディベルメントK.136」が入ってきて優雅なモーツァルトの世界に引き戻されて終わります。

 ところで、『古畑任三郎』のテーマって出だしのところが『サウンド・オブ・ミュージック』のある曲に似ていて昔から印象に残っているんですが、その『サウンド・オブ・ミュージック』の方の曲、以前にJRのCMとかにも使われていて、けっこうお気に入りなのですが、巷で見掛けるCDってどれも歌ものばかりで、インストゥルメンタルって無いんですねぇ。どこかで『サウンド・オブ・ミュージック』の曲をすべてインストゥルメンタルにアレンジしたようなアルバム出してくれないかなぁ。

 第2楽章「殉職」は捜査途中で殉職した刑事に捧げるレクイエム。モーツァルトの死因を調査していて何で殉職者が出るのかよくわかりませんが、刑事ドラマに殉職は付き物ってことで……
 曲の方は「ラクリモサ」をベースに、ピアノによるマイナーアレンジの『太陽にほえろ』のテーマが絡んでくるという構造。頻繁にテーマが入れ替わってた第1楽章と比べると、テーマが固定されて落着いた感じの曲です。「ラクリモサ」というと以前に取り上げた『Fate/stay night』の「英雄鎮魂」という曲でも使われていましたが、モーツァルトのレクイエムというとこれが代表的な曲なんでしょうか。
 一方、『太陽にほえろ』というのは刑事が殉職する代表的なイメージってことなんでしょうが、テーマ曲のマイナーアレンジをレクイエム風に流すより、その刑事の在りし日の回想シーン的なものも入れた方が雰囲気あるような気がします。

 第3楽章「事件解決」は終幕に向けての畳み掛けってところで、サスペンス風に事件が進行する中を刑事たちが犯人を取り押さえて解決ってイメージ。その事件にモーツァルトの死因がどう関わっていたのか、また肝心のモーツァルトの死因が何だったのかというのも明らかにされてはいませんが……まさか、才能を妬んだサリアリによる毒殺だったとかいう映画『アマデウス』そのまんまのオチじゃないでしょうね。
 ピチカートで始まる『踊る大捜査線』に「ピアノソナタ第8番」が絡んで宿命的な展開を予想させた後、『特捜最前線』のサスペンス的なファンファーレから「交響曲第40番」のバイオリンによる悲しげなフレーズ。やがてダンスステップ的なアレンジのテーマが入ってきて、バラード風の『太陽にほえろ』のテーマにつながって事件解決。最後は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」に戻って大団円という構成。
 刑事ドラマというと終盤の犯人逮捕に向かうチェイスシーンというのが見所の一つなんですけど、そこにポイントが置かれてはいませんね。辛うじて『太陽にほえろ』の直前のダンスステップ風のところ、解説書には『銭形平次』と書いてあるんだけど聞き取れませんでしたが、そこがアクションシーンに該当するところですか。殉職者は出たけど、あくまで頭脳的に解決するのがメインの事件だったって感じです。『太陽にほえろ』なら山さんの出番って感じですね。
 でも、どうせ『西部警察』も『太陽にほえろ』も引っ張り出して来たんなら『大都会』あたりのテーマを派手に入れてもって気がしないでもないですけど。

 通して聞いてみた感じでは、モーツァルトが強烈過ぎって感じです。ま、モーツァルトの曲でも一般に聴き慣れた印象強い部分を率先的に持ってきてるからって面もあるんでしょうけど、単独ではそれなりに聴こえる刑事ドラマのテーマもモーツァルトの曲と絡んだとたんに力負けしちゃってますね。この辺はアレンジでモーツァルトの方を抑え気味にする必要があると思うんですが、そこまで配慮されていない気がします。所詮、切った貼ったで繋げた冗談音楽の枠を出ていないのではないでしょうか。

 ワルツ「刑事コロンボ」は弾むようなピアノによる軽快なワルツ。ま、このテーマ曲自体、そもそも落着いた牧歌的な音楽なので、それに輪を掛けた感じです。どうしてもアクションとかサスペンスを強調したような日本の刑事ドラマのテーマ曲と比べたら、別世界のような感じがしないでもありません。

 スペイン舞曲「西部警察PART2」はスリリングでアップテンポな曲。「アマデウス・モーツァルト殺人事件」では第1作のテーマが使われていましたが、こちらは第2作目のテーマ曲。やはりオリジナルはブラス主体の華々しい曲なので、ピアノと弦楽器だけというのはスケールダウンした感じです。
 だからこそのカルメン風にスペイン舞曲ってアレンジなんでしょうけど、スペイン舞曲というとやはりギター系の楽器が欠かせないんですけど、それをバイオリン系の楽器だけでやってるから、どこまでスペイン舞曲なんだって疑問が。ま、タイトルは雰囲気だけってものなんでしょうけど。
 途中でパトカーのサイレン風のフレーズが挿入されているんですが、少し耳障りかなぁ。

 協奏曲「AXEL F」は小刻みのバイオリン(ヴィオラ?)によるスリリングなフレーズで始まる曲。全体的にチェロだかバイオリンだかが激しく奏でてるって感じです。原曲は知らない(というか作品自体見たことない)ので、オリジナルに比べてどうアレンジされてるかとかはわかりません。

 夜想曲「私だけの十字架」は華麗なピアノのイントロから始まる曲。いわゆるコーラスパートを奏でるバイオリンは優雅で少し物悲しい雰囲気なのが印象的です。後半、曲のテンポが上がって演奏が激しくなってくるのが、夜想曲というタイトルからは少し違和感がありますね。
 それにしても、この曲は『非情のライセンス』の「昭和ブルース」と並んで昭和の刑事ドラマの主題歌の代表曲とも言える名曲ですね。

 哀愁刑事はピアノのイントロに始まってバイオリンがメインを奏でるタンゴ風の曲。岡田鉄平によるオリジナル曲ということですが、タンゴ風の曲で「哀愁刑事」といタイトルのつながりがよくわかりません。

 最終刑事は黄昏風のピアノによる無情感漂う感じの曲。こちらは杉浦哲郎によるオリジナル曲。やはり「最終刑事」というタイトルと曲の結び付きがよくわかりません。

 「アマデウス・モーツァルト殺人事件 RADIO EDIT」は「アマデウス・モーツァルト殺人事件」の短縮版かな。ラジオ番組等でリクエストしても3楽章全部掛かるのは難しいから、1曲にまとめてみたって感じでしょうか。詳しく聴き分けてないので何とも言えませんが、とりあえず第3楽章の最後に入ってた歓声が無く、すっきり終わってるのは確かです。

     ☆ ☆ ☆

 オーケストラを揃えれば企画が大掛かりになって大変だってことは想像が付きますが、やはり『太陽にほえろ』や『西部警察』を持ってきてブラス無しというのは寂しいですね。一方でモーツァルトというと弦楽器主体でオーケストラ書いてるような人ですから、弦楽演奏で並べたら勝負にならないですね。
 それにしても海外のオーケストラに比べると日本のオーケストラはストリングスが厚く感じたり、映画音楽等でもストリングス主体の曲が多いような気がするのは、モーツァルトからの影響なんでしょうかねぇ。これがベートーベンだとブラスとか木管だとかもコンスタントに使ってるイメージがあるんですが。
 正直なところ、モーツァルトは専門外で、聞き覚えがある曲でも解説書が無けりゃ曲名にたどり着けなかったぐらいですので、『刑事クラ』を名乗るなら、他のバッハとかベートーベンとかチャイコフスキーを連れて来てくれた方が有り難かったですが、やはり弦楽メインで選んだらモーツァルトだったんでしょうね。

 面白い企画ではあったけど、アニメのCDとかによくあるシンフォニー盤のように、作品のテーマ曲を素材にしてクラシックの手法で本格的な音楽に仕上げたというものではなく、あくまでクラシックの既成曲と混ぜてみたとか、既成曲の雰囲気に似せてみたというレベルから出てないような感じで、その辺が物足りないのが残念です。
 この辺がやはりアニメ作品とかとドラマ作品の劇伴音楽市場の大きさの違いというのが露骨に表れてるってところなんでしょうか。
 もっとも、そもそもこのアルバムはそんな大それた企画を目指したんじゃなく、あくまで《杉ちゃん&鉄平》というユニットの一連の作品の一つだといえば、そうなんでしょうけど……

(発売元:ユニバーサルミュージック UCCS-1092 2006.08.23)

刑事(デカ)クラ ~モーツァルト殺人事件~
刑事(デカ)クラ ~モーツァルト殺人事件~

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2006.06.22

『Great Movie Themes』~「ゴジラ~組曲」

 昨今、クラシックのCDで100曲入りとかの商品が売れてるようですが、この『Great Movie Themes』はそれの映画音楽版みたいなもので、5枚組で全74曲が収録されています。もちろんオリジナルサントラではなく、主にザ・シティー・オブ・プラハ・フィルハーモニックの演奏によるもの。映画音楽のオリジナルスコアの演奏では定評のあるオーケストラのようです。
 まだ全部聴いたわけでもないし、収録曲を羅列してもスペースの無駄ですから一覧は割愛しますが、『スター・ウォーズ』や『スーパーマン』といったジョン・ウィリアムズの定番作品から、『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』などの近年の作品、『風と共に去りぬ』や『ベン・ハー』など往年の名作までジャンルは幅広く収録されています。
 それでも、どちらかというと昨今のSFスペクタクル系の映画が多い感じがしますし、74曲程度じゃ作品に偏りが大きいことは否めません。そこらはセット商品の常として、こういうものだと割り切るしかありません。

 ちょこっと聞いた感じでは、演奏内容は平均的にそこそこ悪くはありません。あまり洋画のオリジナルサントラは聴かないので、そのまま比べることは出来ませんが、例えば『スーパーマン』や『E.T.』などは、手元にあるジョン・ウィリアムズ自身の指揮によるボストンポップスの演奏のCDと比べても別物とかいう感じではありませんし、『ロッキー』とか『エクソシスト』なども映画で聴いたようなイメージのままという感じがします。
 ま、厳密に聴き比べればいくらでも粗が出てくるでしょうけど、そんなに気になるならオリジナルのサントラ盤を聴けって話ですし。あくまで手軽に映画音楽を楽しむという点では良いアイテムでしょう。
 ただし、『スター・ウォーズ』が有名なタイトルマーチじゃなく『帝国の逆襲』のダースベイダーのテーマが入ってるというのは、初心者にとっては不親切。歌物が難しいのはわかりますが『タイタニック』でテーマソングじゃないサントラの曲が入っていても初心者には馴染め無いでしょう。

 ……とここまでは一般的な話。目的も無く大枚をはたいていまさらこんなオムニバス盤を買ったりはしません。
 最初レコード屋さんで手にとってみたとき収録曲に洋画のタイトルが羅列する中、一曲だけ場違いにそこに鎮座していた曲がありました。曲名は「ゴジラ~組曲」。パッケージの外からはただそういう情報しか読み出せませんでした。
 他の収録曲は全部洋画の音楽。イギリスのレコード会社が出したCDなので素直に考えればイグアナ映画……じゃなかった、エメリッヒ版『GODZILLA』の可能性も大いにあります。もっとも、あれはあれでまともなサントラ盤が出てない映画なので、それが補填されてるとめっけものということにもなりますが……

 バクチ半分で買っていったら、収録されてるのは本家本元の日本の『ゴジラ』。伊福部昭の名前がクレジットされています。
 で、問題は「組曲」の中身です。まさか『SF交響ファンタジー第1番』を丸々収録して組曲とか称してるわけでもないでしょうし。かつて日本の特撮映画の音楽を集めた『怪獣王』というオムニバスBOXがあり、これの特典の新録ディスクに和田薫編曲による『ゴジラ組曲』が収録されていましたが、もちろんこれの可能性も低いです。
 可能性として高そうなのは平成のゴジラで多く使われていた、「ゴジラの出現モチーフ」+「タイトルマーチ」+αという構成ですが……

 何はともあれ、実際に聴いてみるのが早いです。
 冒頭、足音だか破壊音だかを思わせるブラスとティンパニーによるエフェクト音とゴジラの鳴き声のSE……ま、これはこれで良いでしょう。
 そして『ゴジラ』のタイトルマーチ。イメージとしては第1作のタイトルかな。意外とオーソドックスに来たという感じ。演奏は昨今の日本の演奏と比べても悪くは無いかなと思ったのですが……
 1ループ終わったところでいきなりトランペットの甲高い音が。いや、低音の続く曲だからゴジラの鳴き声でも意識してアクセント的に入れてみたのだろうけど、なんか思いっきりぶち壊してる感じ。原曲を知らない人が聴いたらカッコイイとでも思うのかも知れないけど……
 続いて「ゴジラの恐怖」のモチーフ……かと思ったら、途中でラドンのモチーフが割り込み。この辺。伊福部昭自身によるいわゆる「ゴジラ対ラドン」等の入り方とは微妙に違っていて斬新といえば斬新なんですか……しかし、このラドンのモチーフが全般的に急ぎすぎ。とりわけラドンのモチーフの最後のフレーズのトランペット、本来ならスタッカート気味にアクセントをつけながらゆっくりと音階を高くしていくところを、一息で一気に音階を上げてるからもう完全に別物。これまでの演奏を一気にぶち壊してしまってる感じで思いっきり興を削がれてしまいました。
 最後に「怪獣大戦争マーチ」が流れるんですが、これは普通に演奏されてるのだけど、その前の違和感が残ってるために素直に聴けません。

 いや、タイトルマーチのラストはそういうアレンジもあるだろうと言えるのですが、ラドンのモチーフはモチーフ自体を弄ってしまったら曲そのものが別物としか思えないのです。
 なんか珍妙な曲を聴いてしまったって感じですね。
 ま、あまりこの曲のためにこのCDを一般の人に薦めたりはしませんが、珍妙さが気になるマニアの方々は怖いもの見たさ半分で聴いてみるのも宜しかろうとは思います。あくまで自己責任においてですけどね。

(発売元:シネマ・フレイヴァー PUCY-2508-12 2005.11.23)

GREAT MOVIE THEMES
GREAT MOVIE THEMES

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2006.04.17

YAMATO Premier Live in Columbia St. 2000.12.3

 伊福部先生の追悼シリーズもまだ予定の途中だったりするんだけど、とりあえず宮川先生の追悼で1枚。
 これは『宇宙戦艦ヤマト』の《ETERNAL EDITION》シリーズの全巻購入特典で限定300名に配布された非売品のCDなんだけど、おそらく宮川先生自身が演奏し、宮川先生が直接録音に関わったヤマト関連のCDとしては最後のものになると思うので、謹んで取り上げさせてもらう次第です。

 このCDに収録されているのは同じく《ETERNAL EDITION》シリーズの最初の『交響組曲 新・宇宙戦艦ヤマト』の発売時に新星堂での購入者限定で配布された抽選ハガキに当選した人だけが招待されたプレミアムライブでの演奏です。
 西崎プロデューサーと松本零士氏の著作権裁判が決着した現在から見れば『新・宇宙戦艦ヤマト』はすでに幻の作品と化してますが、当時はアニメ化前提で音楽まで作ってたんですね。
 ライブの演奏は名匠宮川組。晩年の宮川先生がその活動の中心を置いた、実力派の演奏家たちによるバンドです。
 曲目は次の通り。

 1.序曲~宇宙戦艦ヤマト
 2.羽黒妖のテーマ
 3.大いなる愛

 1曲目は基本的な構成はオーケストラコンサートでの演奏でお馴染みの、「序曲」の中盤で切って「宇宙戦艦ヤマト」につなげるという形(註)ですが、これはオーケストラのコンサートではありません。
 幻想的なシンセとピアノ伴奏だけのほとんどアカペラに近い川島和子のスキャットだけで「序曲」の序盤を終えると、オーケストラでは「パッパラパッパ、パパパー」とブラスが入ってくる中盤の出だしを「ダッダダダッダ、ダダダー」とエレキベースの低音を劈く音。ここからエレキギターとかサックスとか、バンドならではの楽器の音が中盤を盛り上げたかと思うと、オーケストラよりは早めにぶち切って、そこからはエレキギターのアルペジオ軽やかなイントロで始まるディスコアレンジ版の「宇宙戦艦ヤマト」。昔、『不滅の宇宙戦艦ヤマト』のアルバムに入ってたものよりも、名匠宮川組のCDに入ってるバージョンに近いアレンジですが、もう完全にノリノリ状態です。

 2曲目は『新・宇宙戦艦ヤマト』用に作られた新曲。今となっては幻の曲です。これを川島和子のスキャットと、ピアノ、サックスがミステリアスに……というよりは何か懐かしいような切ない感じに奏でています。
 3曲目はやはりABABのサントラとは違ってABのコンサート用の構成。Aの部分はサックスとピアノがメインに切なく、Bの部分に入ってスキャットがメインになり、後半ピアノの伴奏やサックスやエレキ系の楽器等が入ってきて盛り上げています。この曲、サントラではスキャットは入ってなくて、スキャット入りはコンサート用の独自のアレンジなんですが、最初は違和感あったけどオーケストラコンサートで聴きなれたせいか、今は最初からスキャット入りだったかのように自然に聞けるようになりました。

 ライブは生で聴くに限るって話もあるけど、生じゃどうしても興奮が先にたって音が聴き取れないことが多々あります。このライブだって、東京まで高い交通費払って聴きに行ったわけですけど、今聴き直すと新たな発見もあって良いものです。
 それにしても、本当に良い演奏です。

 『アコースティック ヤマト』みたいなアダルトなCDも良いですけど、大人になりきれない私のようなものには「ギューン」とエレキギターの響くようなポピュラーバンド編成のサウンドも捨てがたいです。でも『不滅の宇宙戦艦ヤマト』が未だにCD化されてない現状で、このタイプのアレンジを聴けるのはこの非売品のライブCDか、インディーズ扱いの名匠宮川組のCD『恋のバカンス「宮川泰とホッとな仲間たち」』しかないんですね。
 プレミアムライブ当日は上記の3曲の他にも何曲か演奏されていましたが、それらはすべてお蔵入り。ま、最初から一部の曲を少数限定で配布するという条件のレコーディングだったから仕方が無いと言えば仕方が無いのですが、せっかく録音したものが陽の目を見ないというのももったいない気がします。

 とりあえず『不滅の宇宙戦艦ヤマト』の早急なCD化を希望したいです。権利上の問題とか音源が残ってないとかでそれがダメなら、新たにレコーディングしなおしてでも出してほしいですね。

(非売品:コロムビア TDCL-91721 2001.--.--)

(註)
 コンサートライブの録音盤以外のスタジオ録音のものとしては『交響組曲 新宇宙戦艦ヤマト』の第一楽章がこの形。

交響組曲「新 宇宙戦艦ヤマト」~GREAT YAMATO
交響組曲「新 宇宙戦艦ヤマト」~GREAT YAMATO

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2006.02.05

アコースティック ヤマト

 『宇宙戦艦ヤマト』生誕30周年を記念して新録されたアルバムです。作曲者・宮川泰の子息、宮川彬良のアレンジによりピアノ(宮川彬良)とサックス(平原まこと)を中心にしたちょっぴりアダルトなムードで仕上げられています。
 もともと宮川泰によるヤマトの音楽はシンフォニックにアレンジされているとはいえ、メロディー主体の音楽であり、しばしばサントラ盤にもギターやバイオリンのソロバージョンが入れられてたり、かつてはイージーリスニング・シリーズと題した3枚のアルバムまでありましたから、特別な企画という感じでもないのですが、やはり現在という時点で作曲者の息子による解釈が入ったアルバムというところは興味深いでしょう。

 収録曲は以下の通り。

1.イスカンダル〜深海バージョン〜
2.宇宙戦艦ヤマト〜砂漠の川バージョン〜
3.序曲から 無限に広がる大宇宙
4.真赤なスカーフ〜ボサノババージョン〜
5.サーシャ
6.白色彗星〜ジャズバージョン〜
7.大いなる愛
8.スターシャ

 深海バージョンとか砂漠の川バージョンとかいうのが正直言ってどう解釈したら良いのかわからないところですが、とりたてて奇をてらったようなアレンジは無く、時には切なく、時にはしっとりとして、あるいは躍動的なサウンドが演奏者から直接伝わってくるような感じです。
 選曲は『交響組曲宇宙戦艦ヤマト』と『さらば宇宙戦艦ヤマト 映画音楽集』からのオーソドックスな選曲になっていますが、何かあるとこの2枚からの選曲というのがパターンになっているので、たまには後期のシリーズからの音楽も用いてほしいという気持ちはありますね。
 それと、「真赤なスカーフ」って、『交響組曲』にしろ『不滅の宇宙戦艦ヤマト』のディスコアレンジにしろ、何かと曲調を変えたアレンジばかりされてるって感じで、今回のボサノババージョンもその流れの一環という感じですが……いい加減ストレートにアレンジした曲にしてもらえないのかな、とかも思ってしまいます。

 ま、ヤマトの音楽を知らない人にいきなし聴けとか言っても仕方がありませんが、昔からのヤマトの音楽のファンなら、とりあえずは聴いてみてほしい一枚ではあります。大人になったかつてのヤマトファンが、グラスを傾けながらしみじみと在りし日を思い出す、そんなシーンが想定されてるアルバムのような気がします。
 でも、ま、どうせ新曲作るなら、大島ミチル、服部隆之、千住明、和田薫、佐橋俊彦、天野正道、大谷幸、等々、最近の劇伴作曲者として活躍してる人たちに独自の解釈でアレンジしてもらったオーケストラ曲をアンソロジー的に収録したアルバムとか聴けたらなぁ、とか贅沢なことを考えてしまいます。

 このアルバムは赤坂のコロムビアの第1スタジオでの最後のレコーディングだったとのことですが、コロムビアの1スタというと『交響組曲 新・宇宙戦艦ヤマト』の時の名匠宮川組によるシークレットライブを聴きに行った時のことを思い出します。
 昔はヤマトのオーケストラ曲もあのスタジオの中で録音されてたって聞いて、ちょっと信じられなかったりしたのですが、よく考えればライブの時に客席になってたスペースも本来客席でも何でもないのだから、そこにも演奏家の人たちが入ってるわけですね。
 その1スタもこれでお終いということで、一時代が遠くに過ぎ去ってしまったみたいで寂しいものがあります。

(発売元:コロムビア COCX-33144 2005.03.23)

アコースティック ヤマト
アコースティック ヤマト

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2006.01.22

大島ミチル|映画音楽ベスト

 大島ミチルといえば『ミラクル☆ガールズ』とか『アークザラッド』、『ファンシーララ』、『鋼の錬金術師』等、華麗なメロディーから荘厳なオーケストラ曲まで幅広い音楽を聞かせてくれるサントラ界の鬼才ですが、このアルバムはアニメの曲は一切収録されず、実写の映画音楽から作曲者自身が選んだ代表曲を再録音して収録したものです。
 それでも『ゴジラ×メカゴジラ』が入ってるのが一番なじみの深いところなんですが、このアルバムで一番の聴きモノはそれじゃなくて、冒頭に収録されている『プライド 運命の瞬間』なんですね。

 これ、映画を見たとき、なんか物凄く荘厳で良い曲だなぁと思ってサントラ盤が出るのを楽しみにしていたんですが、赤い電波を出してる人たちが映画に対して騒ぎ上げたせいか、結局、サントラ盤を見掛けることはありませんでした。それがこうしてCDで聴けるようになったのだから、手にしないわけにはいきません。
 実際のサントラと違ってアレンジし直されてる部分があるかもしれませんが、まさに大島ミチルの代表曲とも言うべき壮麗なサウンドを聴かせてくれます。後半部分の構成やアレンジにどこか聴き覚えがあるかと思ったら『ゴジラ×メカゴジラ』の機龍のテーマと作りが同じ感じですが、このアルバムに収録されてる『ゴジラ×メカゴジラ』の曲はゴジラのテーマなので、イメージが被ることも無く楽しめます。
 もちろん、他の収録曲も音楽としてすばらしいのですが、映画作品そのものに馴染みが無いのでコメントは控えます。

 このアルバムは何曲か再録音して録り溜めてあったうちから10曲選んで収録したとのことですが、続きを出していってほしいですね。で、出来ることならアニメ音楽でも同じ企画のベストアルバムを出してほしいです。
(『セントエルモ 光の来訪者』なんか『松本零士音楽大全』にも収録されてなかったものだし……)

(発売元:コロムビア COCQ-83877 2005.01.19)

大島ミチル・映画音楽ベスト
大島ミチル・映画音楽ベスト

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2006.01.15

交響曲『劇場版AIR』〜神話への誘い〜

 『劇場版AIR』のDVD初回限定版スペシャル・エディションの特典として付属していたCDです。
 昨今、サントラ盤が単独発売されずにDVD−BOXの特典としてしか出て来ない作品が多々ありますが、これはそういうものではなく、市販のサントラ盤の収録曲をモチーフに、新規にオーケストラ曲としてレコーディングされたものです。音声ドラマやキャラクターソングの入った新録CDが特典に付くことは多いですが、オーケストラ曲が付くってことは珍しい気がします。
 いくら日本より人件費の安い東欧の楽団で一発録りしたとしても、音声ドラマやキャラクターソングなどよりは相当に予算がかかると思いますが、DVDの売り上げで採算取れるんでしょうかねぇ? いや、そのぶん、1枚物のDVDより割増価格になってることも確かですけど……

 オーケストラアレンジは野見祐二。『耳をすませば』や『猫の恩返し』、NHKの『火の鳥』等の音楽を手がけた人ですね。『耳をすませば』の爽やかな感じの音楽が印象に残っています。
 演奏はチェコ・フィルハーモニー管弦楽団。野見祐二作品の多くを手掛けている楽団です。
 作品の構成はオーソドックスな4楽章の交響曲。4つの楽章それぞれに1〜2個の劇伴モチーフを用いて、音楽的に展開されています。アニメ音楽の交響曲化としては申し分ない出来といえるでしょう。
 ただ、難点といえば、こういうオーソドックスな交響曲化にありがちなことですが、モチーフの音楽をそのままストレートにオーケストラで鳴らすというカタルシスが得られないことですね。使用されているモチーフはすべて交響曲の形式に従ってアレンジされていますし、素材のモチーフ以外のオリジナルのフレーズの方が目立っていたり……
 ま、素材のモチーフ自身に馴染みが薄いのが原因ってこともあるんでしょうけど……せめておまけででもフルオーケストラでストレートに演奏した「鳥の詩」が聴きたかったですね。
 もっとも、だからといって素材の曲をそのままストレートに演奏したのを交響曲とか称されても困るのですが。

 作品そのものの出来は悪くは無いので、DVDの特典なんかで多くの人の耳に触れないまま埋もれてしまうのはもったいない気がします。やっぱり単独商品として出してもらわないと……特典CDだけのためにバカ高いDVDのセットをそうそう買えませんから。

(非売品:フロンティアワークス AIR-0005 2005.--.--)

劇場版 AIR スペシャル・エディション (初回限定版)
劇場版 AIR スペシャル・エディション (初回限定版)

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