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2012.06.05

宮川彬良&大阪市音楽団/『宇宙戦艦ヤマト』宮川音楽大勉強会

 5月26日に三田市総合文化センター・郷の音ホールで行われた宮川彬良&大阪市音楽団のコンサートに行ってきました。
 橋本改革の荒波に直面してる大阪市音楽団ですが、そういう政治の話は置いといて、最近は5日の大阪城野外音楽堂にも聞きに行きましたが、実に充実した音を聴かせてくれます。
 今年になってリメイクされた『宇宙戦艦ヤマト2199』の音楽を手掛けるのが宮川彬良ですが、そんな市音の音でヤマトをどう聴かせてくれるのかというのが楽しみなコンサートでした。

 演奏曲はだいたい次の通り

 1.宮川 泰『宇宙戦艦ヤマト』より
  01. ファンファーレ(「エンディング各種・1」)
  02. サスペンスA
  03. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「序曲」
  04. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「宇宙戦艦ヤマト」
  05. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「出撃」
  06. 「組曲・宇宙戦艦ヤマト」より「大いなる愛」
  07. 艦隊集結
  08. 探索艇
  09. 無限に広がる大宇宙
  10. ワープ
  11. 地球を飛び立つヤマト
  12. コスモタイガー2199
  13. 艦隊集結(リズムのみ)

 2.萩原哲晶『クレイジー・キャッツ・メドレー』
 3.宮川 泰『ゲバゲバ90分』

 4.宮川彬良『バレエ音楽「欲望という名の電車」』
  Ⅰ.鏡~回想
  Ⅱ.街
  Ⅲ.孤独
  Ⅳ.博奕
  Ⅴ.少年
  Ⅵ.愛欲
  Ⅶ.迷宮
  Ⅷ.幻

 5.いずみたく『見上げてごらん 夜の星を』
 6.宮川彬良『マツケンサンバⅡ』
 EC.宮川 泰『ゲバゲバ90分』


 いつもなら定番のファンファーレなりオープニング曲があるわけですが、今回はいきなりヤマトから始まってます。


『宇宙戦艦ヤマト』より

 ファンファーレとして用いられてるのはBGM集のレコードで「エンディング各種」に含められていたメインテーマのアレンジ曲。5曲ぐらい入ってた中の1曲目だったかな。劇中ではAパートの終わりだとか、ラストの次回に続くというような場面で使われる曲です。
 そんな音楽を背負って、宮川彬良が登場します。

 「サスペンスA」は未知の宇宙を進むようなミステリアスなサスペンス曲。アルバム『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の「序曲」冒頭で使われているモチーフなので、ここでもそのイメージで挟み込んだのでしょう。
 吹奏楽だと弦楽器が無くブラスばかりになるので、音が重厚になってる印象です。

 そして吹奏楽での定番レパートリーである「組曲・宇宙戦艦ヤマト」が続きます。
 ヤマトの印象的なスキャットのフレーズがサックスをメインにバラード風に始まる「序曲」は、ムード音楽的なアレンジです。鉄琴やトライアングルのアクセントが印象的。
 中盤の盛り上がり部分は低音が生えていて、クライマックスの太鼓とシンバルがよく響いています。

 今回は実にストレートな演奏の「宇宙戦艦ヤマト」は、イントロからパワー全開な感じです。アルバム『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の「誕生」のメインテーマ部分をそのまま忠実に再現してるかのような演奏は、「宇宙戦艦ヤマト」のインストゥルメンタルはこうでなくてはという自分のイメージを十分に満足させてくれる素晴らしい演奏でした。
 相変わらず、ここで拍手が入って中断というのが不満と言えば不満なんですが。

 続いて「出撃」というか「ブラックタイガー」のテーマ。赤いライトで雰囲気出していましたが、迫力全開の戦闘音楽です。全般的に分厚い音が特徴ですが、中間あたりでやや緩急をつけた演奏になってるのが印象的です。ラスト2音のアクセントもなかなか耳を離れません。

 どこかジャズっぽく始まる「大いなる愛」は、第1主題をサックスがしっとりと歌い上げていきます。
 第2主題は最初から太鼓とか入ってて盛り上がったところから始まってるイメージで、そのまま堂々とクライマックスに突入し、ヤマトのメインテーマによるフィナーレのTUTTIで締めくくられます。

 ここからは『宮川音楽大勉強会』と題して、ヤマトの劇伴音楽をめぐる蘊蓄を交えた演奏になります。

 まずは「艦隊集結」です。その名の示す通り、ドメル艦隊の集結シーンの印象が強い曲ですが、まさにオーケストラよりもビッグバンド向きの音楽。ブラスとリズムがすべてって感じの重厚な曲です。
 この演奏に合わせ、ピアノを艦隊に見立ててステージに運び込んでるというのが洒落っ気のあるところですね。

 ヤマトの音楽の特徴として最初に挙げられたのは【ヤマトは意外とロックである】というところです。
 本格的に音楽を意識したのが『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のアルバムだったり、『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の作品だったりすると、ヤマトの音楽はクラシックに近いシンフォニックサウンドというイメージを持ったりするのですが、第1作の劇伴音楽は演奏がオーケストラじゃなくビッグバンド形式だったりして、ジャズっぽい印象を受けるのは確かなんですが、そこからリズムに注目してロックという言葉を持ってきたようです。

 第1作当時の社会風潮として、若者と言えばヒッピーやらパンクやらの印象が合って、そこから若者をイメージする音楽としてロックのリズムを持ち出して来たという解釈のようです。
 とはいえ、何がロックかというのは解釈の分かれるところ。極端な話、リズムセクションの入った音楽は何でもロックだとか言い出せばキリが無かったりしますから。

 そんなロックな曲の代表として演奏されたのが「探索艇」です。ま、確かに軽快なロック系のナンバーですが……マラカス振って踊りますか。

 そして、「序曲」とかだと美しいクラシカルなイメージのある曲なのに、同じメロディーが実はロックだったという演奏の「無限に広がる大宇宙」。でも、これ、伴奏が張り切り過ぎてメロディーが埋没しちゃってますけど。(ピアノを弾いてるのかと思ったらキーボードだったので、イメージが違ったからかも知れません)

 2つ目の特徴として取り上げられたのは【プロデューサーの無理難題】というところ。タイトルじゃ意味不明ってのも取り上げられてますが、それよりも先行するイメージが無いから未知の音楽というので取り上げられたのが「ワープ」ですね。これはほとんどシンセのみの曲だから、ブラスの出番がありません。

 そんな音楽もプロデューサーに既製の曲のイメージがあるものはベタにそのまんまの音楽になっちゃってるみたいで、「艦隊集結」が『ベン・ハー』だってのは録音テープの冒頭に宮川泰の声で「ベン・ハー・ヤマト」ってタイトルが付いてたって話が伝わってるぐらい有名なところなんですが……(昔のニフティのヤマト会議室限定だったかもしれないけど)
 その路線でもう一つ挙げられたのが「美しい大海を渡る」……イスカンダルのテーマ曲ですね。当時、どうやって作ったのかと尋ねても「あれはたいしたことないんだよ」と帰ってくるだけだったのが、38年目にしてようやく『オズの魔法使い』の「虹の彼方に」が元ネタだったと気付いたとか言ってました。ま、あちこちからあまりにも褒められるから宮川泰もなかなか言い出せなかったのでしょうね。

 コーナーの締めくくりに2曲。まずは「地球を飛び立つヤマト」。文字通り、ヤマトが巨大ミサイルを撃破し、地球を出発していくシーンの音楽です。
 太鼓のイントロに始まり、盛り上がっていくファンファーレと印象的な出だしです。リズムに乗ってパワフルな前半に、バラード調の後半が対称的に続き、余韻を引きながら終わります。

 唯一新曲的なのが「コスモタイガー2199」。旧作では『新たなる旅立ち』以降に用いられたコスモタイガーのテーマを、『2199』用にアレンジした曲です。
 リズム系のイントロからまったく新しいイメージですが、全般的にリズムがリニューアルされてる感じですね。華やかなファンファーレ風のAメロの後、ゆったりとしたBメロの部分に反発するサブメロが入ってくるのは、今では封印されてしまったみたいな『交響組曲 新宇宙戦艦ヤマト』に入ってた「コスモタイガー」と同じ趣向のようです。
 原曲はディスコ風のライトなイメージなのですが、それに比べると重くエキサイティングな曲に仕上がっています。

 そして、今度は「艦隊集結(リズムのみ)」に乗ってピアノが撤去されていきました。

 『クレイジー・キャッツ・メドレー』
 クレイジー・キャッツの代表曲のメドレーってことですが、「スーダラ節」ぐらいしか知らないので何とも……
 華々しいブラスのファンファーレから始まって、やがて軽快な行進曲に続いていきますが、これが「ホンダラ行進曲」なのかなぁ。中間部でなぜか「鉄腕アトム」のイントロのフレーズが入ってたりしますが……
 しばらくバラード風の演奏が続いた後、派手で華々しい「スーダラ節」のメロディー。サックスのソロパートを挟んで、最後は軽快なスウィング調にテンポアップして締めくくられます。

 『ゲバゲバ90分』
 今や市音の顔ともなってる代表曲。この前(5月5日)の大阪城野外音楽堂でのコンサートでは楽器が横向くと音の大きさが変わってしまったりしていましたが、屋内のホールだと音が反射するので、そういうこともありません。
 演奏中に動くのは、そういう演奏スタイルとして有りなのでしょうけど、演奏終わったところでそのままポーズで止まってたり、トロンボーンの人が頭の上に乗っけたまま退場してるのは、一度や二度ならネタで良いけど、市音のキャラじゃないから、数を見ると痛いですね。

 『バレエ音楽「欲望という名の電車」』

 休憩を挿んで、後半のメインはこの曲。「欲望という名の電車」はテネシー・ウィリアムズによる戯曲で、映画を始めオペラや舞台などで数々展開されていますが、これを大正時代を舞台にした日本舞踊に置き換えた公演の音楽を担当したのが宮川彬良で、それをさらに吹奏楽の演奏用にアレンジしたのがこの作品ということです。
(以下、各曲の区切りは必ずしも明確じゃないので、印象によって判断した区切りに従っています)

  「Ⅰ.鏡~回想」
 ゆっくりとピアノを叩く音から始まり、フルートとオーボエによる木管のフレーズが続きます。そしてスローなスパイ音楽風のフレーズから、アンニュイなサックスが古い時代の黄昏時のイメージを、ややサスペンス掛かったイメージで奏でます。
 小刻みなリズムで全体に盛り上がっていく一大序曲の展開で、アクション音楽風のフィナーレを迎えます。

  「Ⅱ.街」
 テンポの良いスウィング風の曲。低音中心に展開していき、鉄琴などによるリズムの刻み方が印象的です。
 ややスローダウンして、フルートとホルンによる優雅な展開。
 軽快なピアノとピッコロのリズムが奏でられ、低音が分厚く盛り上がっていきます。

  「Ⅲ.孤独」
 アルトサックスのソロによる寂しげなフレーズから始まり、ピアノの伴奏を伴ったしっとりとしたバラードが展開されます。
 せつないピアノのセレナーデに、寂しげなサックスのフレーズが奏でられ、最後はドラマチックに盛り上がっていきます。

  「Ⅳ.博奕」
 アダルトタッチでテンポの良いフレーズ。アップテンポで派手に盛り上がっていき、パーカッションが映えています。
 ラテン風のリズムで展開していき、華やかなアクション音楽が奏でられます。最後はおどろおどろしい雰囲気で終わります。

  「Ⅴ.少年」
 もやもやとしたサスペンスタッチの夜明け時の雰囲気から、華々しく盛り上がる日の出のような始まり。ピュアな少年らしいイメージで歌い上げるフレーズが続きますが、やがてアダルトな混沌とした香りに包まれていき、派手な大人のイメージで終わります。

  「Ⅵ.愛欲」
 サスペンス風のフレーズから始まり、軽快でやや大人びたイメージのスウィング。
 やがて繰り広げられる驀進してる列車のようなリズミカルなスケルツォ風の展開は、どこかショスタコーヴィチ風で、どんどんエスカレートしていきます。

  「Ⅶ.迷宮」
 テナーサックスのソロによって寂しげなフレーズが奏でられ、ピアノがしっとりと歌い上げていく様子は「Ⅲ.孤独」の再現を感じさせます。今度はソロパートがアルトサックスとテナーサックスのデュオになり、やがて全体に盛り上がり、ピアノとブラスのせめぎ合いが始まります。
 優雅で穏やかな盛り上がりでクライマックスを迎えると、今度は宮川彬良によるアコーディオンのソロが交わり、ワルツ風のメロディーで大団円のフィナーレを迎えます。

  「Ⅷ.幻」
 流れるようなフルートのソロから始まり、ハープの伴奏とクラリネットが重なり、ピアノが穏やかにソナタを奏で始めます。
 やがて全体で盛り上がり、大きく歌い上げていきます。いったんスローダウンした後、チャイムの音とともに堂々と盛り上がり、TUTTIで締めくくります。

 バレエ音楽と題売ってるから、全体で単一の表題曲というわけではなく、あくまで個々の曲を寄せ集めたという形なのですが、それでも一曲一曲、序奏から展開し盛り上がって終わるというパターンが繰り返されるので、全体を通して聴くと食傷気味に疲れてしまう印象を受けたのは少し残念でしょうか。
 作品そのものの背景を知らないので、それを知った上で聴けばまた印象は違うのでしょうけど。

 『見上げてごらん 夜の星を』
 派手なアップテンポのマーチ風に始まり、バリトンサックスのソロを交えて奏でていきます。ソロパートはテナーサックスに交代し、続いてアルトサックスがチンドン風のフレーズを奏で、そしてバラードに転じます。
 アドリブ風のフレーズが挿まれた後、小刻みなリズムで盛り上がり、最後はソプラノサックスと派手なパーカッションが締めくくります。

 『マツケンサンバⅡ』
 締めくくり(プログラム上のアンコール)はこの曲。市音の演奏を聴くと、もう他の演奏は聴けません。とはいえ、5月5日のコンサートの反応を見て前曲と順番を入れ替えたとのこと。確かにあの時の演奏はまるで神がかってましたからね。
 今回も引けを取らない演奏ですが、さすがに屋内ホールではパワーがあり過ぎるように感じます。
 ノリノリのパーカッションもさるものながら、やはりこの曲の聴きどころはフルートのトリオのところと、サックスのカルテットのところでしょうね。

 で、本当のアンコールは『ゲバゲバ90分』をリピート。

     ☆ ☆ ☆

 『宇宙戦艦ヤマト』の劇伴音楽そのものの演奏とか、音楽に対する解説があったのがいつもの大阪市音楽団のコンサートとの大きな違いですが、先行きに危機感の積もる中、1人でも多くの客層を呼び込みたいという現れの企画でしょうか。どう考えても『宇宙戦艦ヤマト2199』とのタイアップなんかじゃないですからね。
 ま、滅多に聴けないものを聴けたということで、なかなかお得なコンサートだったと思いますので、今後とも続けて欲しいように思います。

     ☆ ☆ ☆

 とりあえず今回演奏された『宇宙戦艦ヤマト』の劇伴音楽が収録されたもの。新録された『宇宙戦艦ヤマト2199』のサントラは発売予定がまだ無いので、旧作の音源です。

 7月から2年に渡って発売される「YAMATO SOUND ALMANAC」のシリーズから。

YAMATO SOUND ALMANAC 1974-I 「宇宙戦艦ヤマト BGM集」
YAMATO SOUND ALMANAC  1974-I  「宇宙戦艦ヤマト BGM集」


 これは『宇宙戦艦ヤマト2199』に合わせて再発売されたもの。最初に出た時はNo.0とセットだったんですけどねぇ……

ETERNAL EDITION File No.1 「宇宙戦艦ヤマト」
ETERNAL EDITION File No.1 「宇宙戦艦ヤマト」


 LP時代のBGM集をデジタルリマスタリングでCD化したもの。

オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト Part1
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト Part1


 ついでに大阪市音楽団による「欲望という名の電車」が収録されたアルバム。

欲望という名の電車
欲望という名の電車

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