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2010.06.05

西宮交響楽団/『交響譚詩』

 5月30日に西宮市民会館アミティホールで行われた西宮交響楽団の第96回定期演奏会を聴きに行ってきました。目的は言うまでもなく伊福部先生の『交響譚詩』。客演指揮者の橘直貴が北海道出身なのと、5月31日の伊福部先生の誕生日の前日というあたりが選曲の理由なのでしょうか。

 西宮交響楽団は甲子園球場とか『涼宮ハルヒ』にお舞台でお馴染みの西宮市に本拠を持つアマチュア楽団です。主な演奏会場となってるアミティホールは阪神・西宮駅の駅前にあるので、もっぱら阪急沿線が中心の『ハルヒ』の世界とは雰囲気が違うかもしれませんが……
 指揮の橘直貴は良く知りませんが、ググってみたら『ブラバン!甲子園2』の指揮者だとか。確かこれは「宇宙戦艦ヤマト」が入っていたと思うから、聴いてみようかな……とか思ったりしたところです。

 さて、演奏曲は以下の通り

01. フェリックス・メンデルスゾーン
     劇音楽「アタリー」序曲

02. 伊福部 昭
     交響譚詩

03. カール・ニールセン
     交響曲第4番「不滅」

EC. セルゲイ・ラフマニノフ
     ヴォカリーズ

 プレトークで指揮者があまり知られていない曲ばかりと言ってたけど、伊福部先生の『交響譚詩』、そんなにマイナーですか。伊福部先生の曲の中では演奏機会は割と多い曲だと思うのですが……


劇音楽「アタリー」序曲
 メンデルスゾーンの中ではあまり有名じゃない曲だという話ですが、メンデルスゾーンと言っても「結婚行進曲」ぐらいしか頭の浮かんで来ない人にはあまり関係ありませんねぇ。
 これは旧約聖書に原典をとったラシーヌの戯曲に音楽を付けたものですが、この物語自体も日本人にはあまり馴染みのないものですね。同じ聖書を原典にした戯曲なら『サロメ』の方がまだ物語的にも受け入れやすいのですが……

 穏やかなトランペットの音色から始まり、滑らかなストリングスが入り、やがて柔らかな木管の音色に繋がっていく冒頭部。
 中盤はややマイナーがかったショッキングなフレーズや、断続的でシリアスな曲想が激しく盛り上がり、穏やかなフレーズとともに交互に展開されて行きます。途中、トランペットの華麗なフレーズの後、低音のブラスがリフレインし、やがて美しくも悲しげなストリングスとハープの音色が空気を支配します。
 終盤はゆっくりと堂々とした盛り上がりで締めくくられます。劇音楽の序曲にふさわしい、ダイナミックな展開で大団円に収束する心地よいコンパクトな大曲という感じですね。


交響譚詩
 第1の譚詩
 お馴染みの華々しい第1主題の出だしだけど、どこかワンテンポずれてる感じ。トランペットの音が裏返ってて、他のパートもばらばらな感じ。
 第2主題がやや穏やかに入ってくるところは、ちょっとティンパニーが目立ち過ぎかな。強弱の差が滑らかじゃなく、チューバがちょっと外してる感じ。ホルンが遅れ気味ってところかな。
 後半になって演奏も滑らかになってきたけど、ぎこちなさは最後まで残ってるように感じました。

 第2の譚詩
 導入部はまだぎこちなさが残ってる感じ。ボレロ風に盛り上がるところはきれいにまとまってきていて、木管のソロが入るあたりはなかなかな感じ。
 中盤の静寂なとところの間の取り方はかなり上手い。先程は遅れ気味だったホルンはこれくらいが良い感じかな。
 終盤の盛り上がりはやはりティンパニーが目立ってる様子。ラストの徐々に静寂に帰るところもきれいに終われてないのが残念。

 全体的に指揮者の緩急の取り方は的を得た感じなんだけど、オケの演奏がついてこれてないって感じですね。伊福部音楽ってそんなに難しいですか。


交響曲第4番「不滅」
 ニールセンはデンマークの近代音楽作家だそうですが、いうまでもなく初めて聞く名前です。この交響曲第4番は「不滅」と翻訳されていますが、けっして負けないとかいう力強い意味ではなく、クスクスとしぶとく消えずに残り続けてるって感じみたいですね。
 各楽章は途中で区切られず、連続して演奏されますが、曲調ははっきりと分かれています。

 第1楽章 Allegro
 スリリングで激しい導入から、華やかな盛り上がりと緊迫感。一転してバラード風の展開。再びスリリングに盛り上がった後は、ティンパニーの小刻みな余韻を残していったん静寂に帰ります。続いてバイオリンのピチカートがサスペンス感を与え、また激しく盛り上がっていく感じです。

 第2楽章 Poco Allegretto
 クラリネット主体で奏でられる穏やかな牧歌的なフレーズです。

 第3楽章 Poco Adagio Quasi Andante
 スリリングなストリングスとティンパニーの響き。やがてショッキングなフレーズがファンファーレ風に奏でられ、それがリフレインのように展開されていき、シリアスなバラード風の展開に繋がっていきます。

 第4楽章 Con anima. Allegro
 一転して華々しい盛り上がりで始まり、2組のティンパニーの乱打が響きます。余韻を奏でるトロンボーンが印象的。マイナーに転じながらも、必死で消えゆく生命を盛り返そうとしている様子が繰り返されます。そして、静寂の中からティンパニーの響きとともにクライマックスに盛り上がります。
 ラストはゆったりと堂々としたフレーズで盛り上がって大団円。最高に盛り上がったところですぱっと終わって気持ちいいですね。


ヴォカリーズ
 アンコールはラフマニノフのこの曲。曲名が語るように本来は声楽曲ですが、声楽が無いのしか聴いたことありませんねぇ。
 ストリングスの美しくもどこか寂しげなフレーズ。それを反復していくクラリネット。ストリングスと木管による展開が繰り広げられます。やがて、やや沈痛な趣きの盛り上がりを見せ、クラリネットのソロがやや情緒的に奏でます。

   ☆ ☆ ☆

 伊福部先生といえば、幻の作品と言われた『寒帯林』の楽譜が遺品の中から発見されたとかで関東で初演されるみたいですが、聴きに行くお金が無いです。是非、CDで出してほしいですね。『プロメテの火』の復元も進められているそうだから、こちらも期待したいところですが……

 6月11日に関西フィルの定期演奏会で、大友直人指揮で『ヴァイオリン協奏曲第2番』が演奏されるみたいなので、こちらは聴きに行く予定です。


譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽
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伊福部昭:管弦楽選集
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