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2009.04.09

六甲フィル/『SF交響ファンタジー第1番』

 少し古い話ですが、2月15に神戸文化ホールで開かれた六甲フィルハーモニー管弦楽団の第27回定期演奏会を聴きに行って来ました。

 六甲フィルハーモニー管弦楽団というのは、阪神大震災の後に神戸大学交響楽団のOBを中心として集まって結成された、主に神戸で活動しているアマチュアオーケストラのようです。指揮は客演の遠藤浩史。

 演奏曲目は以下の通りです。

 01. モーツァルト
   交響曲第35番ニ短調 K.385「ハフナー」
 02. 伊福部 昭
   SF交響ファンタジー第1番
 03. ブラームス
   交響曲第1番ハ短調 Op.68
 EC. ブラームス
   ハンガリー舞曲第6番ニ長調

 それでは、順番に印象などを……


モーツァルト
交響曲第35番ニ短調 K.385「ハフナー」

 ハフナーというのはザルツブルグの大富豪のこと。クラシック音楽(とくに交響曲)はベートーヴェンの時代からは市民社会での芸術音楽という側面を大きくしていきますが、モーツァルトの当時はまだ宮廷貴族や富豪向けのステータスシンボルとしての量産音楽という意味合いが大きかったので、これもそんな1つとしてハフナー家に献呈された作品ですね。

  第1楽章 Allegro con spirito

 雄々しいオーケストラで始まるソナタ形式の第1楽章。冒頭からの音の豊かさは古典時代ならではの曲って感じがしますが、どうなんでしょう。ブラスとストリングスのハーモニーが味わい深い印象です。
 主題展開部はややスローダウンしてマイナー気味に落ち込んだ感じですが、主題再提示部で再び華々しさが復活してきます。

  第2楽章 Andante

 優雅なセレナーデ風の緩徐楽章。そういえばこの曲は元はセレナードとして作られていた曲を交響曲に改作したものみたいですね。
 美しいストリングスにブラスのアクセントが入るという感じです。ストリングスの響きは非常に豊かな印象です。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが対向配置になっているので、それが効果的にハーモニーを響かせてる感じです。

  第3楽章 Menuetto

 華々しい序奏で始めるメヌエット。華々しいフレーズとおとなしめの静かに抑えたフレーズの繰り返しによる派手な主部が展開した後、ゆっくりと優雅な中間部が奏でられるのが印象的です。

  第4楽章 Finale:Presto

 出だしから華々しく派手なプレスト。ストリングスが主体でブラスは添え物って感じがモーツァルト的な感じかな。打楽器はティンパニーが目立つ程度。スピーディーながらも美しいストリングスの響き。少し控えめって感じもするけど、大きく盛り上がって終わります。


伊福部 昭
SF交響ファンタジー第1番

 オーケストラの編成が前曲から一気に大増員です。とくにコントラバスが倍増してるのって凄いですね。期待が高まります。

 冒頭、ゴジラの出現モチーフの重低音は抜群。ティンパニーとシンバルが目立ち過ぎって感じかな。続く間奏部は2拍子部分の溜めと7拍子部分のテンポアップがうまく出ています。
 「ゴジラ・タイトル」は少しテンポが速過ぎかな。原曲は速めなんだけど、この『SF交響ファンタジー』ではそれよりゆっくり気味の指定のはず。打楽器やブラスが強くてストリングス(とくにヴァイオリン)が弱い気がします。
 「巨大なる魔神」は上手く緩急が出ていますね。タムタムが強過ぎって感じだけど、逆にティンパニーはもうちょっと頑張った方が良かったですね。これ、ティンパニーの一番の聴かせどころのはずですから。
 「セレナーデ」はちょっとテンポが一定過ぎる感じ。ハープも伴奏に隠れてる感じだから、もうちょっと表に出て来た方が良いかな。全体的には音が豊かですね。
 「地底怪獣出現」はブラスの重低音が凄いですね。中盤の部分が少しテンポが速過ぎで、もう少し溜めが欲しいところです。
 「ゴジラ対ラドン」はラドンのモチーフの入るタイミングが絶妙。これ、ちゃんとスコアに書いてあるはずなのに、演奏しなれてないオケとかだと微妙に違うんですね。でも、太鼓が強過ぎって気がするし、繰り返しはちょっと拙速な感じですね。
 「宇宙大戦争タイトルマーチ」はファンファーレのテンポは良いんだけど、その後がいきなりテンポアップし過ぎ。かなり早過ぎる感じですね。でも、シンバルのタイミングがちゃんとちゃんと追い付いていってるのは良いです。
 この曲と「怪獣総進撃マーチ」は若干テンポを変えた方がメリハリが付いて良いのですが、そのまま突っ走ってる感じです。
 マーチの2回目は音がかなりボリュームアップした感じになります。「怪獣総進撃マーチ」の2回目のところでトランペットがミスっちゃってるのが残念。ま、ここの部分はとくにブラス系は過酷で、プロオケでも繰り返しを端折っちゃってる演奏がしばしばありますからね。
 クライマックスの「宇宙大戦争マーチ」はちゃんと盛り上げどころが分かってるって演奏で嬉しいです。結部の「怪獣総進撃マーチ」の締めも上手いですね。

 全体的にけっこう聴き応えのある演奏ですね。


ブラームス
交響曲第1番ハ短調 Op.68

 ブラームスは初めてですのでよくわかりません。この交響曲第1番は21年掛けて作ったということですが、これをもってチェレプニンが伊福部先生に交響曲を作り急ぐなと言ったお陰で、伊福部先生は生涯に『シンフォニア・タプカーラ』しか交響曲を作らなかったみたいですから、何とも罪作りな人です。

  第1楽章 Un poco sosutenuto-Allegro

 深刻そうなマイナー気味の出だし。沈んでいくようなストリングスのハーモニー。よく見ればコントラバスがオケの最後列で一直線に並んでるのが珍しいですね。
 哀歌のような沈痛な展開。まるで悩み深さを表すようなゆっくりとした展開。ちょっと『ゴジラ』のタイトルモチーフに似たフレーズが現れたかと思うと、大いなる苦悩って感じの激しい展開。
 ブラームスは苦悩の音楽ですか……と思ったら、後半はメジャー気味に豊かに展開していきます。

  第2楽章 Andante sosutenuto

 ゆっくりと優雅なストリングスで始まる緩徐楽章。木管のフレーズから始まる壮麗なセレナーデ風。そして、ストリングス主体でやや静かでおとなしめのバラード風に奏でられていきます。

  第3楽章 Un poco allegretto e grazioso

 ゆったりとした4拍子の舞曲風の始まり。普通、第3楽章にはメヌエットなりスケルツォなりの3拍子の舞曲が入るのですが、ブラームスはそうではないみたいです。
 徐々に盛り上がって、ファンファーレを伴った主題が現れますが、これがまた2+2+4拍子でかなり変則的ですね。

  第4楽章 Adagio-Piu andante-Allegro non troppo, ma con brio

 重々しい沈痛なストリングス。第1楽章を引いて苦悩の音楽って感じです。低音のピチカートでの盛り上がりが印象的。
 ゆっくりとした大きなブラスの大きなフレーズから、心が洗われるようなフルートの響き。非常にゆったりとした夜明けのようなイメージから、ベートーヴェンの『第九』に似たフレーズの優雅なセレナーデをストリングスが奏でます。そこから木管、さらに全体へと広がり、華々しく派手に展開していきます。
 延々と続く派手で激しい展開部。途中、ややゆっくりと優雅な部分が挿入され、単調さを避けてる感じかな。
 苦悩から歓喜や祝福へ昇華されて終わってるって感じですね。

 このブラームスの交響曲第1番は俗に「ベートーヴェンの第10番」とも呼ばれてるらしいですが、第4楽章の展開を見れば『第九』との関連性は伺えますね。ただし、ベートーヴェンの音楽はこんなに難解じゃないと思うんですけど。


ブラームス
ハンガリー舞曲第6番ニ長調

 元はピアノ曲のようですが、アンコール曲なのでプログラムには無く、誰による編曲のものなのかはわかりません。
 主部はゆったりとしたストリングス主体のワルツ風のフレーズと、派手なテンポアップのオーケストラのフレーズが繰り返されますが、このギャップが印象的です。ここがハンガリー舞曲の特徴的な部分なんでしょうか。
 中間部は堂々と大きく勇壮なフレーズと、ストリングスの小刻みなフレーズが奏でられ、最後に主部が繰り返されます。

     ☆ ☆ ☆

 かなり聴き応えのあるコンサートだったので、良かったですね。こういうのを聴くと日本のアマチュアオーケストラのレベルの高さが実感できます。逆に、下手なプロオケの演奏を聴いたら金を返せとか言いたくなりますが……プロはプロで年間何十曲とか数をこなさなければいけないから、一曲一曲に割けられるエネルギーはどうしても違ってくるんですね。

 配布されてたプログラム本体にも一般的な解説風の楽曲紹介は載っているのですが、それとは別に、ペラ紙に簡易印刷されたチラシ風の簡単なオーケストラの紹介とか演奏曲の紹介が書かれた物も挟み込まれてたのは気が利いてると思いました。
 ま、関西で無料のコンサートだから、どんな客層が来るかわかったものじゃないからでしょうが、初心者が興味を持てるレベルでの紹介というのも、客の演奏に対する集中力を喚起する上では良いと思われます。

     ☆ ☆ ☆

『SF交響ファンタジー』なんて頻繁に書いてるし、最近新譜が出たりしてるわけでもないので、CDは別に良いかとも思ったのですが、とりあえずはオーソドックスなのを。

宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー


こちらはユーズド価格がおもいっきし高くてぶっ飛びました。買うのはいろいろと冒険ですね。ま、手元に持ってるから、是非とのリクエストがあればレビューは書けますけど。

おもしろオーケストラ1/オーケストラ・イン・スクリーン~SFファンタジーの世界@〔「2001年宇宙の旅」~タイトル・テーマ(R.シュトラウス)/「スタートレック」~メイン・テーマ(J.ゴールドミスミ,編曲和田薫/他〕石丸寛/新星日本o.
おもしろオーケストラ1/オーケストラ・イン・スクリーン~SFファンタジーの世界@〔「2001年宇宙の旅」~タイトル・テーマ(R.シュトラウス)/「スタートレック」~メイン・テーマ(J.ゴールドミスミ,編曲和田薫/他〕石丸寛/新星日本o.

     ☆ ☆ ☆

 3月に引越ししたのが全然片付かないから、しばらくCDを聴いたりできません。根本的に荷解きしてCDを取り出す空間的余裕が無い……手元ですぐ取り出せるのが10年以上も前のCDばかりってのが……

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