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2009.04.28

日本フィル/『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』

 4月19日に東京芸術劇場で催された宮川彬良指揮・日本フィルハーモニー交響楽団の《第184回サンデーコンサート》に行って来ました。忘れもしない3年前、宮川泰先生が他界された直後に行なわれたコンサート以来ですね。(『宮川泰追悼、日本フィル・サンデーコンサート』参照)

 いうまでもなく目的は3年前のコンサートで彬良氏が公言された『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の復元演奏です。といっても、とりあえずA面曲だけというのが少し残念なところですが。

 演奏曲目は以下の通りです。

 01. イスカンダル(宮川 泰)
 02. 見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
 03. 深い河(黒人霊歌)
 04. ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)
 05. オー・ソレ・ミオ(カプア)
 06. 空のわすれもの(宮川彬良)
 07. あの宇宙を、征け(高取ヒデアキ)

 08. 交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川 泰)
    1:序曲
    2:誕生
    3:サーシャ
    4:試練
    5:出発
    6:追憶
 09. 真赤なスカーフ(宮川 泰)
 10. 宇宙戦艦ヤマト(宮川 泰)
 EC. ゲバゲバ90分(宮川 泰)


 今回のコンサートは星がモチーフということで、星とか宇宙に関係する曲がラインナップされています。
 それでは順番にいきましょう。


イスカンダル(宮川 泰)
 いきなり空想上の星ですが、14万8千光年彼方の大マゼラン雲にあるという、女王スターシャの住む星です。いうまでもなく、これも『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のB面に収録されてる曲なのですが、当時のスコアで現存してるのはこれだけだという話です。
 もっとも、いきなり冒頭のバスフルートのソロのところから彬良氏自身によるピアノが入ってる時点でオリジナルとは違ってるんですが……
 やがて、ストリングスが中心となり、ホルン等も加わってきたところでようやくピアノが抜けます。そこからパーカッション等も入ってオーケストラ全体で奏でられていきます。
 後半はレコードではシンセによるSE的なアクセントをピアノが奏でています。この辺り、オーケストラの演奏が非常に豊かな印象で、そのままレコード通りに終わります。

見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
 今度は漠然とした夜空の星。地上から見た宇宙の光景ですね。これもこの手のコンサートでは定番曲の一つ。いきなり『E.T.』のイントロから始まってる辺りがなんとも。何か原曲部分が普通のインストなのに、そうじゃないとこだけ派手に盛り上がってる感じで、原曲の好きな人はどうなのかな?

深い河(黒人霊歌)
 河の向こうに空があるというところから持ってきたらしいですが、よくわかりません。彬良氏は三途の川の向こうにあの世があるという例えを挙げてらっしゃいましたけど、イメージが曖昧ですね。後で錦織健が言ってたように、天の川とかの方が具体的な気がします。
 豊かなメロディーでかつ、しっとりとした雰囲気の演奏です。

ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)
 いうまでもなく月ですね。元がジャズバンドの曲ですから、メインを奏でるのはサックスなのですが、それをピアノに置き換えての演奏とのことです。しっとりとした感じに仕上がっています。

オー・ソレ・ミオ(カプア)
 太陽です。雰囲気的にスペインとかの方が似合いそうですが、元はイタリアのナポリ民謡とのことですね。
 ここから登場の錦織健のテノールが見事に歌い上げてくれます。さすがに本職、マイクなんか使いません。途中に入る、クラリネットだかイングリッシュホルンだかのソロがなかなかでした。

 毎度のことだけど、オケのコンサートで曲の演奏中に拍手を入れるのはやめてほしいです。ポピュラー歌手のコンサートじゃないんだから。
(ベートーヴェンの『第九』でも第4楽章でソロ歌手が入ったところで拍手するやつがいるから、それを嫌う指揮者の中にはソロ歌手を第1楽章から出させてる人もいるって話もありますし。もちろんコーラスも)

空のわすれもの(宮川彬良)
 元はコーラス曲とのことですが、今回は彬良氏のピアノ伴奏による錦織健の独唱。歌詞や曲調が平易なので、聴いた感じ、『みんなのうた』みたいな趣きのの曲ですね。

あの宇宙を、征け(高取ヒデアキ)
 これはNHKアニメ『タイタニア』の主題歌です。オケとテノールが張り合ってるような感じの曲ですね。聴いた位置の関係もあるのか知らないけど、もう少しオケとテノールの配分を考えないと、少しお互いの音を殺しあってるような感じがします。
 錦織健でアニメの主題歌というと「未完成協奏曲」なんかも聴いてみたい気がするのですが、今回のテーマとは合いませんね。


交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川 泰)

 1:序曲
 近年演奏の多い『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』では頭と後半部分がぶつ切りされてる「序曲」ですが、レコード通りに冒頭の「サスペンスA」のフレーズから始まります。
 やがてメインの主題として現れるのは「無限に広がる大宇宙」のモチーフ。ここで川島和子がいないからと、なんと錦織健がスキャットをやっているのですが、意外にもちゃんと聴けるのですね。恐るべし、錦織健。
 リズムボックスがテンポを奏で始めストリングスが主題のモチーフを盛り上げていきます。中間部で木琴が目立ってるのが少し印象的です。バイオリンのグリッサンドとティンパニーが絡み、演奏が盛り上がり、シンバルが鳴り響きます。フォルテの部分はかなりのパワーを感じますね。
 終盤はオーケストラ全体で主題を優雅に奏で上げ、ホルンと共に盛り上がるラストを迎えます。『組曲』では中盤で切られてしまうから、最後まできちんと聴けるのは嬉しいですね。

 2:誕生
 重厚な「悲愴ななヤマト」のフレーズで始まっていきます。コントラバスがなかなか響いてるのが印象的。そしてミステリックな雰囲気の「宇宙の静寂」のフレーズ。
 間奏部のファンファーレ的なフレーズから「ヤマト乗組員の行進」への盛り上がりが最高です。やはりここが一番の聴き所でしょうね。原曲よりはかなり軽めでポップな感じの演奏ですが、そのぶんノリは良いです。
 その行進曲からメインテーマのイントロに繋がるところ、原曲はそのままの音程で繋がってるのですが、今回はささきいさおのボーカルのキーに合わせたのか、イントロ部分に入るところで音程がどんと下がってしまってるのが気になりました。
 例のごとくボーカルが入るところでささきいさおが入ってくるので、演奏中に関わらず拍手が入ってしまうのが非常に残念ですね。だいたい原曲はボーカル無しだし、ボーカルのキーに合わせれば音程が変わるし、拍手は入れられるし、メリットがあるとも思えないので、ちゃんとレコード通りにインストゥルメンタルだけで演奏して欲しかったところです。(ささきいさおによる主題歌はちゃんと後のプログラムに入ってるわけだし)

 3:サーシャ
 大曲が続いたのでちょっと一息といったところの曲です。ミステリアスっぽい「イスカンダルの女」のフレーズを、木管から始まって、ハープのアクセントを経て、ストリングスに繋いでいきます。
 聴いてた場所によるのかもしれないけど、ちょっとコントラバスが強過ぎかな。

 4:試練
 緊迫感あふれる「サスペンスB」のフレーズで始まります。さすがに原曲にあったシンセの効果音はいっさい入っていません。
 中間の「探索艇」のモチーフはただただ軽快に奏でられます。
 終盤は「サスペンスB」のフレーズが少し入った後、じわりじわりと「ヤマトのボレロ」が奏でられていきます。スネアのリズムが本家ラヴェルの『ボレロ』並みに響きまくってるのが印象的。

 5:出発
 中間部のフレーズをカノン風にアレンジし、ボリュームアップした「地球に飛び立つヤマト」です。
 木管がリズムをリードしてる感じなのが印象的ですね。ストリングスはスタッカート気味の部分が多くて大変そうです。ラストのスローテンポの部分は優雅に奏でられてて、余韻に浸れます。

 6:追憶
 A面の最後は「宇宙戦艦ヤマト」のメインテーマをバラード風にアレンジしたイージーリスニング風の曲です。劇伴曲の「哀しみのヤマト」とは趣きが違うアレンジなんですね。
 ギターソロから始まり、ストリングスと木管がややしんみりと引き継ぎます。中盤になってトランペットが哀愁漂うバラードを奏でるのがとても印象的です。最後、ストリングスが余韻を奏でる中、鉄琴の短いフレーズで終わるのが、けっこう特徴的なんですね。

 本来、B面に続くためのインターミッション的な意味合いの曲ですから、ここで終わってしまうのは非常にフラストレーションが溜まるのですが、とにもかくにもようやくA面だけ復元できたということですから仕方がありません。


真赤なスカーフ(宮川 泰)
 これは『宇宙戦艦ヤマト』のエンディング曲。シングル盤バージョンで、ささきいさおのボーカルです。この曲、アニメのEDで使われたのはアレンジが違うんですけど、たまにはそっちを聴きたいとか思ったりしますが、どうなんでしょう。
 B面が復元されたらその1曲目が「真赤なスカーフ」になるのですが、『交響組曲』のこれは宮川泰先生らしい、ごっちゃ煮のアレンジメドレーになってて、聴ければなかなか楽しめるので大いに期待したいところです。(さすがに、これをボーカル入りでやったりは出来ないでしょうね)
 それにしても、ささきいさおの歌は全然変わりませんね。

宇宙戦艦ヤマト(宮川 泰)
 フルコーラスの主題歌ですが、「序曲」に引き続き錦織健のスキャット付です。やはりオケメインの「誕生」に無理やりボーカルを入れるよりは、ボーカル用の単独曲の方が映えて聴こえますね。
 錦織健のスキャットは、スキャット単独で聴くと悪くはないのですが、やはりささきいさおのボーカルと組ませると、ちょっと違和感があります。これをやるくらいなら「真赤なスカーフ」のバックコーラスをやって欲しかったところですが……

ゲバゲバ90分(宮川 泰)
 アンコール曲はトークでも触れられていた「ゲバゲバ90分」です。吹奏楽版は前に大阪市音楽団の演奏で聴いたことがありますが、オーケストラ版を生で聴くのは初めてかな。途中、トロンボーン隊が立って演奏してましたが、オーケストラじゃそれがせいぜいのパフォーマンスみたいですね。

     ☆ ☆ ☆

 何年後になるのかわかりませんが、引き続いてB面の復元を期待したいところです。
 B面6曲と言っても、「イスカンダル」は現存してるわけです。3年前のコンサートでは「明日への希望」が演奏されていましたが、あれのスコアはどうなってるのでしょうかねぇ。もっとも、この曲はスコアの復元以上に、コーラスを調達しないといけないという難問があるのですが。
 残るは「真赤なスカーフ」「決戦」「回想」「スターシャ」というところですが、「真赤なスカーフ」を原曲通りにやるとするとエレキギターとかも持ち込まないといけないし、いろいろとオケで生演奏するには面倒ですね。
 今回のA面ではその辺で妥協してる部分がけっこうあったように思いますけど、これもいつかもっと完全に近い形でやり直して欲しいですね。

     ☆ ☆ ☆

 アニメ音楽史上屈指の名盤とはいえ、単独の現行商品が無いんですね。次のは中古でプレムアム価格が付いてるから注意。(アナログ盤ならヤフオクに行けばいくらでも安く手に入りそうですけど)

交響組曲 宇宙戦艦ヤマト Symphonic Suite Yamato
交響組曲 宇宙戦艦ヤマト Symphonic Suite Yamato

 左サイドに張ってある30周年記念のCD-BOXもすでに在庫切れみたいですね。
 いよいよ『復活編』を作るとか言ってるから、便乗して過去の音源も復刻して欲しいものです。(個人的には『ヤマト』の音楽CDは全部押さえてるから、むしろ『オーディーン』のCDを出して欲しいんですが)

 これだけじゃ何だから、宮川彬良関連のCDでも。

 これは大阪市音楽団の演奏で吹奏楽版の『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』が収録されていますが、以前に記事で取り上げたアルバムとは違い、とくに平原まことの名前がクレジットされてないから市販されてるスコアに準じたスタンダードなアレンジの演奏かと思います。(レコード屋で現物を見掛けたこと無いので未入手)

ブラック・ジャック&宇宙戦艦ヤマト 宮川彬良&大阪市音楽団
ブラック・ジャック&宇宙戦艦ヤマト 宮川彬良&大阪市音楽団


 こちらは同じ大阪市音楽団の演奏ですが、以前の記事で紹介している平原まことのサックスをメインにフィーチャーされたアレンジの吹奏楽版『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』が収録されています。

ブラスバンド・バラエティ 宮川彬良&大阪市音楽団 痛快ライヴ!マツケンサンバII!!
ブラスバンド・バラエティ 宮川彬良&大阪市音楽団 痛快ライヴ!マツケンサンバII!!


 吹奏楽版『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』とか「ゲバゲバ90分」とかは宮川泰先生の生前に出てる次のCDでも聴けますが。

THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa
THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa


 なぜか未だにオーケストラ版の『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』はCDになっていないのですが、いいかげんどこかの演奏を出してくれないかな。いや、別に川島和子のスキャットが必要だとか言いませんから。(そういえばスキャットをフィーチャーした「大いなる愛」って『幻想軌道』のライブ盤辺りで出てたっけ?)

 『交響組曲』やら『組曲』やらややこしいですが、さらに来月は待望の『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』の再演ですね。

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あの「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」が甦る!! ・・・となれば、何をおいても聴きに行かざるを得ません。 ということで、東京芸術劇場へやってまいりました。 今回は指揮・ピアノ・お話が宮川彬良、ゲストとしてヴォーカルささきいさお、テノール錦織健の二人が参加。第一部は星や空、宇宙に関する曲を集めました、とのことで、先ずは「イスカンダル」から。 コンサートの一曲目にこの曲を持ってくるなんて・・・なーんて思っていたのですが、これがまたなかなか良いのです。「交響組曲」版のスコアをそのまま使っての演奏だったよ... [続きを読む]

受信: 2009.05.06 08:43

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