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2008.10.22

『あさっての方向。』Original Sound Track "truth"

 相変わらず時期外れのレビューです。昨今のアニメの本数からは遅れが広がることがあっても縮まることはまず無いので、これからもどんどん遅れて行くでしょう。サントラ自体はリアルタイムで入手してますが、作品があってのサントラですから、ある程度は作品本編が頭に入ってないと聴いても身が入らないのですね。
 『あさっての方向。』は京アニ版『Kanon』と同時期にBS-iで放送していた作品ですが、願い石に願って大人になってしまった少女と、それに巻き込まれて子供になってしまった少女の兄の元カノを巡る日常を丹念に描いた作品でした。
 こういう地味な作品というのは音楽にも堅実さが要求されますが、それに応えたのが光宗信吉の音楽です。光宗信吉というと以前に『ゼロの使い魔』を取り上げていますが、この作品は打って変わって、初期の『ナースエンジェル りりかSOS』を髣髴とさせるようなピアノ主体のサウンドでまとめられています。

 収録曲は以下の通り。

 01. 組曲『あさっての方向。』
 02. 光の季節 (TV size)
 03. 真心
 04. Summer Dream
 05. 夏祭り
 06. 願い石
 07. Pure
 08. お出かけ
 09. On the Beach
 10. 小さな冒険
 11. 無邪気
 12. 出会い
 13. Sad Things
 14. 願い
 15. わだかまり
 16. 郷愁
 17. 困惑
 18. 子供時代
 19. Jealousy
 20. ぎこちない雰囲気
 21. 穏やかな日々
 22. 晩夏
 23. 寂しさ
 24. 逃亡者
 25. 力を合わせて
 26. 家族のように
 27. 小さな幸せ
 28. High Tension
 29. 海の家
 30. 突然の別れ
 31. どじっぷり
 32. 尾行
 33. 照れっぷり
 34. 光の季節 piano version
 35. スイートホームソング music box version
 36. Summer Fantasy II
 37. 告白
 38. 和解
 39. ありのままの自分
 40. コマクサの花
 41. スイートホームソング (TV size)
 42. Summer Fantasy I
 43. 眼差し

 それでは適当にピックアップしていきましょう。

 「組曲『あさっての方向。』」は劇伴を素材に鑑賞目的を意識してまとめられた曲です。1枚まるまる劇伴曲をそのまま収録したサントラもあれば、収録曲すべてを観賞用にアレンジしなおしたサントラもありますが、中には一部だけ作り変えたりしたものもあります。昔のコンシューマー機のゲーム音楽のCDなんかでは、オリジナル音源の音楽に混じって生楽器で演奏しなおした曲とか混じってるものも多かったのですが、そんな感じですね。「組曲」と題してサントラの1曲目に乗せてあるのは、個人的には『劇場版スレイヤーズ』のサントラを思い出しますが……
 短いピアノの序奏の後、アバンタイトルのモノローグのバックで流れるスリリングな音楽。そして華麗なピアノによるメインテーマが始まり、木管のフレーズに続きます。ややテンポアップしてストリングスによるスリリングな展開。再び穏やかなピアノのメインテーマが流れ、やがて大団円的な盛り上がりで収束していきます。
 アバンタイトルで聴き慣れたフレーズから始まることで一瞬にして作品の世界に引き込まれますが、光宗信吉らしい華麗なピアノによるメインテーマが楽曲独自の世界に包み込んでくれます。続く展開部は劇伴そのものでは聴けない、アーチストとしての光宗信吉の音楽を堪能させてくれます。

 OP曲のTVサイズを挟んで実際の劇伴曲が並べられていますが、前半は光宗音楽の特徴とでも言えるピアノを主体にした曲が集められてる感じです。

 「Summer Dream」はファンタジックなピアノ曲。淡い短いフレーズの連続ですが、月光の中の願い石の奇跡が描かれてるようなイメージです。
 「夏祭り」はエレピから始まり木管、ストリングスと続く三拍子のメヌエット風の曲。ややノスタルジックな感じで、穏やかで華やかな夏の思い出を感じさせてくれるような曲です。
 「お出かけ」はゆっくりと弾むようなリズミカルなピアノに始まり、穏やかな木管のメロディーに続く曲。嬉しさとか、楽しさとか、夏休みへの期待感みたいなものを感じさせます。
 「On the Beach」は少しアップテンポでエレクトリックな感じの曲。リズムボックスの音が目立つ、少しスピーディーで穏やかな感じのメロディーですが、楽しい夏の光景ってイメージですね。

 「無邪気」はピアノによるメインテーマ。やがて木管に続いていきます。穏やかだけど希望にあふれてる感じが伝わってきます。弾むようなピアノタッチが印象的です。
 「出会い」は軽いピアノのフレーズから始まり、ストリングスを加えて穏やかに展開していきます。そして木管主体の第2のメロディーが奏でられ、だんだんと華やかな広がりを聴かせます。
 少し不思議な出会いの印象から、出会えた喜びとか感謝を思わせる雰囲気に繋がっていくようなイメージで、ホッと安心感を持てるようなまとまりの音楽かな。

 「願い」はスリリングな木管の旋律による、ちょっとスピーディーな感じの曲。ミステリアスな感じで事件の始まりっぽい感じの曲で、作品中でも印象的な使われ方をしてたように思います。どこか『りりかSOS』の最終回の音楽を思い出します。
 「わだかまり」は緩やかなスケッチ風のピアノ。少しリズミカルな感じに事件の進行や、後悔や悲しみなどやりきれない思いを切々と伝えます。
 「郷愁」は緩やかなピアノの旋律に始まる曲。以前の幼い印象を与える雰囲気から、一転して現実を思い出させるシビアなイメージを伝え、再び緩やかな旋律に戻っていきます。もう戻れない過去への郷愁というところでしょうか。
 「困惑」はゆっくりと弾むようなフレーズによる、日常的な雰囲気のコミカルなピアノスケッチ風の曲。曲だけ聴いてる感じでは「困惑」というタイトルがそぐわない感じなのですが、大人になってしまったからだや子供になってしまった椒子の、これまでの生活とは勝手が違った生活での戸惑いによる困惑って意味なんでしょうか。
 「Jealousy」は淡くセンチメンタルなメロディーに始まる曲。ピアノにファンタジックなシンセエフェクトを加えた感じですが、透明感あふれるピアノが印象的です。後半はピアノ主体のシリアスな雰囲気。

 中盤はピアノ以外の楽器を主体にした曲が集められてる感じですが、やはり主要なところをピアノで押さえてる感じがあるから、どちらかというと日常光景で用いるバリエーションって感じで、あまり印象的な曲はありません。

 「穏やかな日々」「晩夏」「寂しさ」の辺りはギターを主体にした曲が続きます。ピアノに比べて柔らかで、より穏やかなイメージや、風が吹けば飛んでいってしまいそうなもろく切ないイメージを奏でています。「寂しさ」の哀愁っぽさはやっぱりギターじゃないと雰囲気ありませんからね。
 「家族のように」はピアノと鉄琴によるゆっくりと穏やかなメインテーマの旋律。安らぎとか自分の居場所を感じられる、そんな曲です。
 「小さな幸せ」は木管というよりリコーダー系による、少し小刻みでリズミカルな感じの曲。椒子との同居生活になれて、日常生活が順調になってきたって感じの辺りの音楽でしょうか。
 「High Tension」はもろにディストーションを効かせたエレキ系のアクション曲。お得意のピアノ曲の繊細さに比べると、こういう方面はけっこうベタな作りの傾向がありますね。

 「突然の別れ」はゆっくりとしたピアノの出だしで始まる曲。寂しげな感じから徐々にリズミカルに転じていきますが、兄と椒子の以前の関係を知って、やるせなさと罪悪感を感じたからだが家出していく心情を巧みに描いている印象です。いかにも光宗信吉らしい心情曲といったところでしょうか。
 「照れっぷり」はミステリアスな感じのシンセ曲。波紋のような音と、淡いコーラス、水の流れるようなSE。淡く幻想的なイメージのする不思議な曲です。

 「光の季節 piano version」はOP曲のピアノソロ。淡く儚げで、少ししんみりとした寂しげな感じの曲です。
 「スイートホームソング music box version」はED曲のオルゴール・バージョン。やはりしんみりとした感じで、夢とか幼い頃の思い出とかいう雰囲気を醸し出しています。

 アルバムの終盤は本編でもクライマックスの重要どころに当てられた感じの曲が並んでいますが、音楽的にはストリングスが加わって弦楽オーケストラ風の盛り上がりを見せるところが聴きどころですね。

 「告白」は少し速めのスリリングなピアノのリズムで始まる曲。シリアスな雰囲気からショッキングな急展開のドラマを繰り広げるように変化していきます。後半はピアノとバイオリンによるゆっくりとしたフレーズから、やがてストリングスを中心にオーケストラ風の盛り上がりを見せます。
 家出したからだを探すテツと出くわしたからだが、大人の姿の自分がからだ本人だと告白するクライマックスの印象です。
 「コマクサの花」は軽やかなピアノによる安らぎ系のフレーズに始まる曲。すべてのわだかまりが解けたって感じで、ストリングス、次いで木管が加わってオーケストラ風の大団円的な終曲を盛り上げます。
 後半、間奏的に印象的なピアノソロが流れたと思ったら、最後は意外とあっさり終わってる感じです。

 「Summer Fantasy I」は最後にボーナストラック的に入ってる曲の1つですが、冒頭の「組曲『あさっての方向。』」で使われてるアバンタイトルのピアノ曲の単体バージョンですね。ファンタジックでミステリアスな雰囲気のピアノ曲です。
 「眼差し」はピアノとギターによるゆったりと穏やかな雰囲気の曲。作品中でも馴染みの深い平和な日常の中の温かなまどろみって感じの音楽ですが、アルバムの最後にここに収束させることで一つの世界が作られているようです。

     ☆ ☆ ☆

 実に光宗信吉の真骨頂って感じのサントラで、十分に堪能できるアルバムです。
 組曲的な楽曲は『りりかSOS』のサントラにも収録されてるのですが、『りりかSOS』では最終回のクライマックスでそれが延々と使われてて実に印象的だったのを覚えています。『あさっての方向。』はそんな波乱万丈な活劇でもないので、長々した楽曲を延々と聴かせ続けるような場面は想像できませんが、音楽的な指向は似たものを感じさせてくれます。

(発売元:ランティス LACA-5598 2007.01.24)

TVアニメ「あさっての方向。」オリジナルサウンドトラック
TVアニメ「あさっての方向。」オリジナルサウンドトラック

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