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2008.08.14

乙女はお姉さまに恋してる オリジナル・サウンドトラック

 今回は2006年秋に放映された深夜アニメ『乙女はお姉さまに恋してる』のサントラ盤です。例によって自分の作品視聴ペースに合わせた記事ですので、時代遅れとかいう批難はご容赦を。
 『乙女はお姉さまに恋してる』は、いわゆるスタチャ枠と呼ばれる時間枠で放映された作品で、最近では『D.C.II S.S.』とか『薬師寺涼子の怪奇事件簿』が放映されてる時間帯ですね。
 原作はキャラメルBOX製作の18禁PCゲーム『処女はお姉さまに恋してる』で、これをアルケミストがコンシューマー版にに移植したのがPS2版の『乙女はお姉さまに恋してる』です。ちなみにタイトルは共に「おとめはボクにこいしてる」と読むので「処女」が「乙女」に代わっても支障は無いのですが、やはり「処女」という言葉はレーティングで引っ掛かるのでしょうか? PC版PS2版ともボイス付きですが、アニメ版はいわゆるスタチャ声優主体にキャスト変更されています。

 作品内容というと、主人公がある理由で女装して女子校に通うことになるって作品で、正体を隠しながらエルダーという全校生徒の憧れの対象となる存在になっていくという作品です。原作ではやはりそのシチュエーションから妄想できる行為に至っていくものと思われますが、当然ながらアニメ版ではそういう要素はありません。主人公はあくまで健全なお姉さまとして振舞っていく作品です。(実のところ第1話ではそれっぽく思わせぶりな描写がいくつかあるのですが、第2話以降は完全に健全路線。主人公が男であると視聴者自身に思い出させるのは最終回あたりの展開になってからです)

 そんなわけで、作品の描写の中心となるのは舞台である聖應女学院での学園生活。音楽もお嬢様学校らしい優雅さを感じさせるような、ストリングスを活かした豊かな音作りの曲が多く使われています。
 音楽は原作『処女はお姉さまに恋してる』の音楽も担当してるらしいZIZZ STUDIOですが、原作の音楽は未聴です。
 サントラの収録曲は次の通りです。


 01. Love Power~TV EDIT VERSION~
 02. Beautiful day~TV EDIT VERSION~
 03. Mizuho's Thema
 04. Shion's Thema
 05. Mariya's Thema
 06. Kana's Thema
 07. Yukari's Thema
 08. Takako's Thema
 09. Ichiko's Thema
 10. Every Day
 11. Fresh Morning
 12. Good Feeling
 13. Amusement
 14. Surprise!
 15. Nostalgie
 16. Deep Relation
 17. Tense Situation
 18. Divine
 19. Anxiety
 20. Determination
 21. Party!!
 22. Charming Smile
 23. Final Parting
 24. Heart Pain
 25. Last Elegy
 26. Waltz
 27. YURI?
 28. Optimistic
 29. Coquettish
 30. Feel Down
 31. Action!
 32. Peaceful
 33. Let's Start
 34. Again Piano Arrange Version


 TVアニメのサントラということで細かな楽曲が多くありますが、いつものように適当に聴いてくことにしましょう。最近の音楽ですからベル系やブラス系は打ち込み音源で、ギターやバイオリン等のストリングスは生楽器の演奏っぽい感じです。(というわけなので、鉄琴とかハープシコードとかチェンバロとかチャイムとか書いてあるのは、その系統の音色っぽいといういうところです)

 「Love Power~TV EDIT VERSION~」は今は無きAice5によるOP曲。アニメでのキャスト変更の意図が色濃く出てる起用ですね。ウェディングベルを思わせるコーラスから華やかに始まり、アクティブにアップテンポで進行していく流れは好きです。声優ユニットの曲としてはパート分けがはっきりしていて聴きやすいですね。
 「Beautiful day~TV EDIT VERSION~」は榊原ゆいによるED曲。それまではエロゲ関係の人ってイメージが強かった榊原ゆいを一躍メジャーに押し上げた曲と言って良いでしょう。もっともシングルのタイトル曲はイメージソング「Again」の方なのですが。
 どちらかというと歌よりもEDアニメのやたらアゴの張ったデフォルメキャラの行進が強く印象に残ってたりしますが。

 「Mizuho's Thema」は主人公である瑞穂のテーマ。活発でカッコよく颯爽としてる感じの曲。ドキドキの女装をさせられて希望と不安の女子校生活ってイメージもあります。
 トランペットとチャイムによるイントロからフルートによる主題が始まります。トランペットのフレーズの後、同じフレーズをフルートが繰り返し、ストリングスが加わって展開していきます。不安げなエレピのフレーズにゆったりしたブラスが続き、やがて全体で主題を盛り上げて行き、最後はチャイムで締め括られます。

 「Shion's Thema」は先代のエルダーである紫苑のテーマ。まりやや貴子より先に名前が出てるってことは、原作では紫苑がプライマリヒロインなのかな? アニメでは瑞穂の理解者であり協力者という線をまったく越えてはいませんが。(というか、アニメ版は必要以上にまりやと貴子の敵対を強調し過ぎてる感じですね)
 ピアノのイントロから始まり、リード・オルガンによる主題が優雅に奏でられます。華やかで温かな感じで、見守ってくれる存在ってイメージです。
 「Mariya's Thema」は瑞穂の幼馴染みのまりやのテーマ。下町の娘っぽい浅野真澄の声もあるんだろうけど、元からお嬢様らしくない性格や陸上部員とかいうこともあり、可憐で活発な感じの曲で、いたずらっぽさも感じられます。
 ハープシコードのイントロに始まり、木管がメロディーを奏でますが、少しスピーディーでアクティブな感じの曲です。

 「Kana's Thema」は瑞穂の世話係の後輩、奏のテーマ。奏は大きなリボンを付けているのですが、これは魔法のリボンで実は「パラレルパラレル」と唱えると変身することができ……ません。せいぜい空を飛ぶだけのものです。
 エレピの小気味良いテンポに始まり、ブラスアンサンブルに展開、間奏部で印象的に鉄琴が使われ、木管に続いていきます。ゆっくり気味であどけないかわいさが感じられる曲です。
 「Yukari's Thema」はまりやの世話係の後輩、由佳里のテーマ。チェンバロ系を主体に、弾むような音色の曲。少し華奢で儚げな感じのする曲ですが、やや自身なさげだけど明るい後輩ってイメージですね。

 「Takako's Thema」は生徒会長の貴子のテーマ。以前からまりやとは敵対していて、まりやの推薦で瑞穂がエルダーに立候補したことで敵役になっちゃったって感じの人ですが、ものすごく生真面目な努力家なんですね。アニメでは一応この人がメインヒロインって感じなのかな。(ヒロインは瑞穂ちゃんだって話もありますが)
 ピアノに始まり、バイオリン主体で奏でられる哀愁漂うマイナー系のバラードって辺りがヒロインというよりライバルキャラ的な雰囲気ですが。鉄琴を交えたサスペンス風の中間部が印象的です。
 「Ichiko's Thema」は寮に居付いてる幽霊、一子のテーマ。ハーモニカ主体でうきうきスキップするような日常的な音楽。幽霊となって何の悩みもない能天気で長閑な感じがあふれています。

 「Every Day」はチェレスタ系でリズミカルな少しアップテンポの日常曲。楽しく明るい学園生活って感じ。
 「Fresh Morning」は弾むようなチェンバロ系。希望に満ちた朝って感じの曲です。未知の女子校生活を前にした期待や驚き、新鮮さとかいうものを表しているようです。
 「Good Feeling」はブラス主体のアクション曲……というか、ドタバタ系の匂いがする音楽です。派手でアップテンポ。作品中でも印象が強く、主にスポーツとか学園祭とかイベント関係のイメージがあります。
 「Amusement」はちょっとイタズラっぽい感じの曲。サンバ系のリズムにファンキーな木管のフレーズが特徴です。真ん中辺りでシンセが入り、少しサスペンス風のアクセントを刻んでいます。
 「Surprise!」はドタバタ系で走り回ってる感じの曲。アップテンポのチェレスタ系の弾むようなフレーズと、木管というかリコーダー系のファンキーな音が追いかけっこしてる感じかな。

 「Nostalgie」は木琴とフルートを主体とするメランコリックな感じの曲で、ややマイナー系。鉄琴のアクセントが印象的かな。回想シーンというよりどちらかというとかつて聖應女学院に通っていたという瑞穂の母親絡みのエピソードを思い出させる、センチメンタルなイメージの曲ですね。
 「Deep Relation」はスローテンポのサスペンス曲。低音のベースとピアノのアクセントがメインの曲です。疑念とか誤解、陰謀、敵対とかいうネガティブなイメージを感じさせます。後半になってストリングスのマイナーな旋律が入ってきます。
 「Tense Situation」はスローピッチで、少しスリリングなサスペンス風の曲。切羽詰った感じで、バイオリンの演奏が緊張感を高めています。途中でエコーが掛かったり、後半になると演奏がエスカレートし、速弾きなどのテクニックがなかなか聴きものです。

 「Divine」はチャペル風のオルガン曲。厳かな雰囲気とか、大事な決心って感じのする曲ですが、単にミッション系の学校って雰囲気作りかも知れません。
 「Anxiety」は鉄琴によるゆっくりとしたミステリー感の漂う曲。叙情的な雰囲気ですが、悩みとか心理的葛藤とか、そんなあたりを表してるようです。
 「Determination」はピアノによるセンチメンタルな感じの美しい旋律の曲。葛藤後の決心とか、心理の吐露とか、大きな問題にあたって重大な決心によって血路が開けたとかいうシチュエーションが印象的ですね。

 「Party!!」は「チュルルル~」とかいうコーラスが印象的な華やかな曲で、エピソードの最後に万事解決って感じでよく使われていた気がします。タイトル的には難関突破の後の打ち上げの宴会ってところですが。しばしば瑞穂の魅力をアピールするような印象を受けました。
 ライナーによるとコーラスはいとうかなこ。『破天荒遊戯』のOPやPS2版『ひぐらしのなく頃に祭』とかで最近名前を聞く人ですね。
 「Charming Smile」はゆったりとしたテンポの穏やかな曲。オルゴール系の少しメランコリックな旋律に始まり、柔らかなフルートの音色に続いていきます。優しさとか微笑みとか、そんなイメージの曲です。

 「Final Parting」はハープシコードのイントロから始まり、ハーモニカやフルートを主体に奏でられるゆったりとして哀愁漂うバラード系の曲。やがてストリングスが少し爽やかに感動的に盛り上げて行きます。
 最後の別れを前にした寂しさとか後ろめたさを振り払い、すっきりした結末を迎えていく感じです。
 「Heart Pain」はギターによるバラード系のエレジー。メランコリックな曲調で、後ろめたさとか後悔とか、そういう心理的状況を表してる感じです。
 「Last Elegy」はゆったりとしたギターソロによる「Party!!」のバラード・バージョン。とても心に沁みてくる曲ですが、罪とか罰とか、すべてを受け入れてしまった後の無力感の漂う悲しみとか寂しさとかいうイメージです。

 「Waltz」は最終回の生徒会主催の舞踏会の優雅なワルツ。現実音楽(作品世界の中で現実に流れている音楽)として用意されてるはずの曲なのですが、コンチェルト風に重ねられるピアノのフレーズが、揺れる心情を表しているような感じです。
 「YURI?」はヴィオラ(?)によるショッキングなサスペンス風の曲。タイトルが微妙ですが、少し妖しげなイメージですね。とくに中盤から後半にかけて派手な演奏が、大袈裟に強調付けてる感じです。
 「Optimistic」はピアノ、フルート、サックスの順で派手目のドラムとともに悪ふざけのようなコミカルなフレーズが奏でられていきます。イメージをそのまま外見に結び付ければトラブルメーカーとかトリックスターとかを思い浮かべますが、内面的に受け取れば空元気なんて感じもしてきます。
 「Coquettish」は繊細な鉄琴と凛々しく規律的なドラムスに、退廃的な雰囲気のストリングスが絡んできてる感じの曲。独特の緊迫感が醸し出されています。

 「Feel Down」は小刻みなテンポでメランコリックなストリングスで奏でられる曲。シンセボイスのバックコーラスが効果的に使われています。重大な決断を迫られて、深い悲しみやどうしようもない憂鬱な気分に落ち込んでいくような感じです。
 「Action!」は小刻みなテンポでスリリングなアクション音楽。急げ、瑞穂ちゃん!……って感じですか。
 「Peaceful」は台風一過、事件の後の穏やかな結末って感じの曲。いろいろあったけど、これで良かったんだってイメージかな。ハープシコードのフレーズから木管に引き継がれ、ストリングスの伴奏が加わってきます。淡く悲しげな雰囲気から開き直っていくような感じです。
 「Let's Start」は木管のメインフレーズがトランペットで繰り返されるスピーディーで爽やかな曲。アグレッシブに奏でられる希望にあふれた新たなる再出発ってところでしょうか。
 「Again Piano Arrange Version」はイメージソング「Again」のピアノソロによるバラード・バージョン。叙情的でセンチメンタルな雰囲気ですが、コーラスの後半の力強さが印象的です。

     ☆ ☆ ☆

 作品自体に物語の中心となるような一貫したテーマが存在しないので、そういう作品テーマ的な音楽は存在しません。各キャラクターのテーマの他には個々のシチュエーション音楽がパターン的に用意されてるって感じですので、バラエティ番組とかでも使いやすいような感じですね。
 音楽的には生楽器を使ってそうなのはギターとかストリングス系ぐらいで、後は打ち込みの音源みたいですが、意外と多くのところでストリングスの伴奏が入ってるので、音に厚みが感じられます。お嬢様学校が舞台ってこともあるのでしょうが、心持ちリッチな印象を受けますが、音の厚みに加え、各曲をきちんと楽曲として作り上げてるところにもあるのでしょう。例えサスペンス系の曲であってもエフェクトばかりを協調したME的なものは存在しません。
 主題歌のテレビサイズを最初に2曲並べてるところに少し違和感を感じたりしますが、各劇伴曲はどれも耳通りの良いサウンドなので、アルバムを通して聴いてもイージーリスニング的に楽しむことが出来るでしょう。

(発売元:キング KICA-812 2006.11.22)


乙女はお姉さまに恋してる オリジナル・サウンドトラック
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