いずみシンフォニエッタ大阪/土俗的三連画
7月3日にいずみホールで行なわれた「いずみシンフォニエッタ大阪」の第19回定期演奏会に行って来ました。
今回は「室内オーケストラの可能性…2つの室内交響曲」と題打たれている通り、室内オーケストラ作品のみによるコンサートです。しかも現代音楽の演奏を標榜する「いずみシンフォニエッタ大阪」だけあって、最古の作品が伊福部先生の土俗的三連画というのが尖がってますね。
指揮は常任指揮者の飯森範親。
演奏曲は次の通りです。
01. ジョン・アダムス
『室内交響曲』(1992)
02. パウル・ヒンデミット
『木管、ハープとオーケストラのための協奏曲』(1949)
03. 伊福部昭
『土俗的三連画』(1937)
04. 西村 朗
『室内交響曲第2番「コンチェルタンテ」』(2004)
奇しくも4曲とも3楽章構成というのが面白いところですが、狙ったのか偶然なのか、どうなんでしょう。
では、順番に曲や演奏についての印象とかを記します。
ジョン・アダムス
『室内交響曲』(1992)
ジョン・アダムスはアメリカの作曲家。この曲は解説を見たらシェーンベルクの音楽とドタバタアニメから発想を得たとかいうようなことが書いてあるのですが、シェーンベルクを知らないのでよくわかりません。
第1楽章:モングレルの歌
おもちゃ箱をひっくり返したかのような騒がしい始まり。ヴァイオリンとヴィオラの不協和音が続き、ドラムセットとキーボードの奏でるサンプリング音が派手にリズムを刻んでいきます。この辺りがもう伝統的なクラシックと違っていかにも現代音楽っぽいところですが、前衛を目指したというよりサントラ的な効果音楽を狙ったような感じです。
中盤からブラスのフレーズとか入ってきますが、トランペットに消音器が付いてるのが珍しいです。編成が小さいと1本のトランペットでも大き過ぎるってことでしょうか。
第2楽章:歩むようなバスを伴うアリア
ゆっくりとしたアダージョ風のホルンとコントラバスから始まります。続いてトランペットがマイナーなフレーズを奏で、高音のヴァイオリン&ヴィオラ、キーボードの電子音と続き、フルートのフレーズがヴァイオリンの伴奏を伴って現れます。
これも現代音楽っぽい無旋律で退廃的な雰囲気で、こういうのが延々と続きそうな雰囲気がちょっと嫌ですね。そんな中でもドラムセットがなかなかのパフォーマンスを見せてくれます。
第3楽章:ロードランナー
ドタバタアニメ的な騒がしい始まり。部屋の中を走り回ってる感じです。スピーディーなドラムセットにブラス主体の展開が続きます。ドラムセットが止まった所でストリングスが重なってくるのが印象的です。
あわただしいリズムを刻むコントラバスと忙しそうなドラムセットに合わせて鳴り響くトランペット。コントラファゴットの重低音が響き、やがてヴァイオリンのソロがしばらく続きます。
重低音のサンプリング音を奏でるキーボード。そして弾むようなドラムセット。最後は再び全体でドタバタ騒動を奏でて終わります。
パウル・ヒンデミット
『木管、ハープとオーケストラのための協奏曲』(1949)
ヒンデミットはドイツ出身の作曲家ですが、この曲は作風が退廃的だとナチスの弾圧を受けたとかでアメリカに亡命していた時期の作品です。ナチスといい、ショスタコービチのソ連といい、全体主義国家で音楽をやるの大変ですね。
これはフルート、オーボエ、ファゴット、クラリネット、ハープの5つの独奏楽器とオーケストラによる合奏協奏曲ということです。
第1楽章:Massig, schnell
スピーディーでフォルテの始まり。ゆったりとしたストリングスとあわただしいブラスが第1主題を奏でていきます。やがて木管とハープのソロがそれぞれ第2主題を奏で始めます。
派手で華やかなオーケストラに、ゆっくりしたハープ、そしてフルート、オーボエ、ファゴット、クラリネットが順番に続きます。
木管のアンサンブルとハープのソロがレクイエム風にゆったりと奏でられた後、ストリングスとホルンの伴奏で徐々に盛り上がっていき、ファンキーな木管のフレーズが奏でられます。
高らかにブラスが鳴り響いた後、ゆっくりと美しい木管の調べが流れていきます。
第2楽章:Grazioso
リズミカルに弾んだような木管のアンサンブルが楽しげな様子です。それをストリングスのピチカートが強調付けてる感じ。やがてマイナーに転じ、チェロとコントラバスのユニゾンが低く奏でられます。人生の享楽を謳歌してるような木管と、人生の苦痛を奏でるオーケストラを対比させてるかのようです。
第3楽章:Rondo: Ziemlich schnell
オーケストラの派手な出だしの後、クラリネットがメンデルスゾーンの『結婚行進曲』のメロディーを奏で始めます。
クラリネットはこのまま延々と『結婚行進曲』を奏で続けますが、他の木管はバラバラのフレーズを奏で、オーケストラに至ってはまったく無関係に演奏してる様子。ソロ楽器がてんでバラバラに演奏してるから当然なのですが、全然音が合ってない状態を演奏してる木管アンサンブルって感じですね。
ラストでようやくオーケストラが同調し、まとまって終わります。
この曲に『結婚行進曲』が使われてるのは、ちょうど初演の日がヒンデミット夫妻の銀婚式の日だったので、妻へのサプライズプレゼントとして用意したらしいです。
伊福部昭
『土俗的三連画』(1937)
言わずと知れた伊福部先生の室内楽作品です。『第2回伊福部昭音楽祭』の記事でも書いてるので、そちらも参照してください。
ジョン・アダムスみたいにキーボードやドラムセットを使ってるわけではありませんが、ピアノとティンパニーが入っただけでも何か大掛かりな雰囲気がしますね。
第1楽章:同郷の女達
オーボエがリズミカルに感じる始まり。テンポはややゆっくり目だけど、律動感にあふれています。ピアノは軽やかというか、繊細すぎる感じ。コントラバスの胴打ちもちょっと弱い気がしますが、トランペットは高らかに響いています。
全体的にアクセントが効いていて強弱のコントラストは高め。ラストのコントラバスが印象的でした。
第2楽章:ティンベ
ホルンが奏でるエレジー風の子守唄のフレーズ。やがてストリングスと木管が続いていきます。
第3楽章:パッカイ
非常にゆっくりした始まりかた。ティンパニーからブラスが盛り上がっていくところが少し淡白な感じ。中盤以降もテンポは遅く、終盤とらんぺっとが鳴り響く辺りから少し持ち直してるようです。
本来は酔っ払って陽気に歌い出す様子を描いた曲だと思うのですが、まるで酔っ払いがふらついてる様子を描いたような演奏に聴こえたのは気のせいでしょうか。
西村 朗
『室内交響曲第2番「コンチェルタンテ」』(2004)
「いずみシンフォニエッタ大阪」の音楽監督を務める西村朗が当オーケストラでの演奏用に書き下ろした作品らしいです。コンチェルタンテとは「協奏的」という意味。曲中で各楽器が交代でソロを務める協奏曲的な場面が盛り込まれてるということのようです。
第1楽章:導入部とメディテーション(瞑想曲)
コントラバスの重低音のスピカートの連続から始まり、やがて高音のヴァイオリンが絡んできます。リズム系の楽器も無く、ストリングスだけで展開していきます。スリリングなスピカートが続く中、沈痛な感じのヴァイオリンのソロがコントラバスと対峙するように現れてきます。そして、それはヴァイオリンとストリングアンサンブルの協奏曲のように展開していきます。
第2楽章:スケルツォ
マリンバとティンパニーによる小気味良いテンポの始まり。ヴァイオリンの執拗なピチカートの連続が印象的で、そこに木管が不協和音を重ねてきます。
スピーディーに流れるようなストリングスにアクセント的ブラスとティンパニーで盛り上がっていき、エスカレートを重ねます。最後は喧騒的な展開で終わります。
第3楽章:ポストリュード(後奏曲)
木管を中心に不協和音の後、ゆっくりとマイナー系のバラード。重々しくアクセント付けるティンパニーに騒がしいストリングスのスピカートが続きます。コントラバスからしきりに破裂音が聴こえますが、コル・レーニョというよりは弓で胴の部分を叩いてるような感じです。
ストリングスのスピカートに激しいティンパニーに大きくブラスが重なってきますが、ブラスは何かを演奏してるというよりは鳴ってるだけって感じですね。
静寂の中でストリングスの断続的なスピカートにヴァイオリンのソロが重なります。チューブラベルが印象的に鳴り響いた後、スタッカートに盛り上がって終わります。
☆ ☆ ☆
『土俗的三連画』はかなりゆっくりとした演奏だったこともありますが、第3楽章のノリがイマイチだったのが残念ですね。
面白かったのは『結婚行進曲』を用いた『木管、ハープとオーケストラのための協奏曲』です。特に第3楽章の各ソロ楽器とオーケストラがまったくバラバラな演奏というのは冗談音楽でもなけりゃ聴けませんから。それに、木管が全部ソロ楽器になってるのでここでのオーケストラというのは木管抜きというのも斬新な感じがしました。
☆ ☆ ☆
やはり『土俗的三連画』も定番の音源はこのシリーズから。
タワーレコードの企画商品なのでAmazon等では取扱いがありませんが、最近出たばかりで入手しやすいもの。音源は以前に出ていたビクターの『現代日本の音楽名盤選(3) 伊福部/早坂/清瀬/箕作』収録のものと同じと思われますが、デジタルリマスタリングとか書いてあるから多少は音質が良くなってるのかも知れません。
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