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2008.07.23

トンデモ音楽の世界

 トンデモ本といえば、予言解釈とか宇宙人とか珍妙な科学知識とかで(著者としては真面目なんだろうけど)ある意味楽しませてくれる一連の本。それらを紹介してきた「と学会」が今度は音楽の分野のトンデモを取り上げたというのがこの本。
 そういうと、さぞ珍妙な音楽ばかり紹介してくれるのかと思いきや、どっちかというと内容的にはトンデモというよりカルト的な性格が強いですね。『トンデモ本の世界』がどちらかというとトンデモ本の珍妙さを揶揄しながら楽しむような内容であるのに対して、この『トンデモ音楽の世界』はこういう変わった音楽の追求を楽しんでる人がいるという紹介的な傾向が大きいようです。(ま、揶揄するような内容で伊福部音楽を取り上げられたりしたら困りますが)
 個人的には山本弘によるニコニコ動画で大いに流行ってるMADを紹介した章や、イラストレーターの開田裕治夫妻と『豪快な○○○』シリーズの人が伊福部音楽を語ってる章が興味深かったです。

 この本には付録CDが付いていて、トンデモ音楽そのものをネタにしたような曲が収録されているのですが、これを手掛けているのが以前に『刑事クラ』で取り上げた《杉ちゃん&鉄平》です。
 収録曲は以下の通り。

 01. 怪獣協奏曲
 02. レプリカント密着24時
 03. UFOウォッチャー
 04. シューティング・ソナタ
 05. 水○スペシャルに幻の川○探検隊を見た!
 06. VOYAGER-日付のない墓標

 よくわからない曲が多いですが、とりあえず聴いてみましょう。


「怪獣協奏曲」

 昭和の怪獣ブームに乗って邦画各社が相次いで製作した怪獣映画の音楽を集めてアレンジしたものです。既製クラシック曲のベースにテーマ曲を繋げていくという作りは、『刑事クラ』とかと同じ手法ですね。
 まず、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」から始まり、そのままのピアノをベースにヴァイオリンでゆっくりとお馴染みの「ガメラマーチ」のサビが3拍子で奏でられます。あまりにあっさりと終わっちゃうので物足りなさがいっぱいです。
 続いて『キングコング対ゴジラ』のタイトル曲。ヴァイオリンの奏でる旋律がどんどん高く移調していってるのが特徴ですが、本来は男声コーラスがメインの曲。こんなに高くなってしまったら(裏声でも使わないと)コーラスの声が出なくて困るでしょうね。
 一転して静かに奏でられるドビュッシーの「月の光」が奏でられ、そのままゆったりと流れて行く「月と星のバラード」。『宇宙大怪獣ギララ』のED曲ですが、他の曲との組合せで考えたら「ギララのロック」じゃないのが謎です。原曲の歌が倍賞千恵子という辺りが松竹らしいといえばらしいのかもしれません。
 最後は軽快なピアノのイントロで始まるタンゴ調「怪獣ガッパ」 。怪獣映画といえども往年の日活らしさをあふれさせてる主題歌ですが、何といってもヴァイオリンの演奏が絶妙で、超絶ポルタメントの「ガッパ~~~」は聴きものです。ラストでピアノによる『ゴジラ』のタイトルテーマが入ってるのがニヤリとするところかな。


「レプリカント密着24時」

 『ブレードランナー』はテレビで1、2度見ただけなので音楽はよくわかりません。ヴァンゲリスというと『炎のランナー』のテーマ曲の方が印象的ですね。タイトル的にはテレビの特番とかで時々警察やら消防署やらの密着取材とかしていますが、そのノリでレプリカントの一日を追いかけてみたというところですか。
 悲しげでゆったりとしたヴァイオリンのフレーズで始まり、一転してスリリングで激しい速弾きに変わり、ピアノを交えて複雑に展開していきます。根底に流れているのはレプリカントの無常感といったところでしょうか。


「UFOウォッチャー」

 タイトルからするとあくまで主体は観測者の方みたいですね。空をあっちこっち行ったり来たりしてるUFOを追いかけて振り回されてるってところでしょうか。ま、多分にゲーセンのUFOキャッチャーを意識してネタに使ってるみたいですが。
 ゆっくりとサスペンスっぽい、少しミステリアスな感じのピアノ。電波障害のノイズっぽく不協和音を響かせるヴァイオリン。左右を行き来するサイレンのような音はUFOの到来なのか、それとも精神病院に運ばれる救急車なのか……


「シューティング・ソナタ」

 ゲーセンといえばシューティングゲーム。ステージごとに進行し、各ステージにはボスキャラがいて……というのがスタイルですが、そんなシューティングゲームのプレイ状況を音楽にしたのがこの曲。
 最初はややスピーディーで優雅なピアノ曲。お嬢様の午後のひとときって感じのエチュードですが、1、2面の比較的易しいステージを余裕を持ってクリアしているところでしょうか。
 続いてスリリングでハイテンションなヴァイオリンのアレグロ曲。ステージが進むにつれて難易度も高くなり、各面のボスキャラも手強く、自機も残りが無く、プレイに必死でもう余裕なんかはありませんって感じかな。
 最後は撃墜されてゲームオーバー。インベーダーゲームを思わせるようなブザー音を見立てた効果音に吹き出してしまいますが、やられた後は虚しさが残りますね。


「水○スペシャルに幻の川○探検隊を見た!」

 昔、水曜スペシャルというとUFOとか宇宙人とかの番組は見てましたが、川口探検隊とかは見たことが無かったですね。
 スリリングでアップテンポな始まりが冒険を予感させます。そしてアグレッシブなアレグロ。小刻みなピアノのリズムと力強いヴァイオリン。ジャングルの奥地へ突き進んで行く探検隊の雄姿を映し出している感じです。


「VOYAGER-日付のない墓標」

 厳かにゆったりと奏でられるホルストの『木星』の第4主題。本田美奈子や平原綾香の歌曲版の影響もあるのでしょうが、一般的には『木星』のイメージはこの主題なのでしょうか? 個人的には『木星』というと、『ライトスタッフ』か『ストラトス・フォー』かというあのド派手なアレグロ部分の印象が強いのですが。
 そして、ゆっくりとノスタルジックに奏でられる「VOYAGER」。ユーミンによる『さよならジュピター』のテーマソングですが、「日付のない墓標」というサブタイトルが示すように、物語の最後に犠牲になった主人公に対するレクイエムのような曲です。地球が助かって万々歳って感じで終わらないところが日本映画らしいところですが、どちらかというと作品自体へのレクイエムになっちゃってる感じがするのも否めないところです。

     ☆ ☆ ☆

 既製のクラシック曲に被せてポピュラー曲をクラシック風に演奏してみましたってのはライブとかのネタには良いのかも知れませんが、アルバム1枚そればかりだと何かプラスαが無ければ物足りないのが確かです。それは物語付けなり演奏技巧なりといったところなのでしょうか。
 今回は書籍の付録ということでネタとして割り切った音楽ですね。内容がカルトっぽいのはプロデューサーの唐沢俊一によるところだろうけど、中途半端に薄いのが気になります。
 書籍本体もそうだけど、付録CDの方も聴く人を選ぶのは確かですし、タイトルに引きつられても聴いてみて期待が外れたって人も多そうですが、付録CDのボリュームじゃ物足りないのは確かですし、《杉ちゃん&鉄平》を知るきっかけぐらいには良いんじゃないでしょうか。
 それを考えたら個人的には「怪獣ガッパ」だけで十分満足できています。


トンデモ音楽〈ミュージック〉の世界
トンデモ音楽〈ミュージック〉の世界


ついでにこんなものを作ってしまいました。

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コメント

 こんにちは。突然のコメント恐れ入ります。
 私は「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。映画ガメラに関する情報収集Blogを更新しており、こちらの記事にはガメラの検索から参りました。
 この度は上記書籍の詳しい書評を拝読して、大変参考になりました。「と学会」および「杉ちゃん&鉄平」のファンでもあるガメラ医師にとっては、誠に喜ばしい事でございました。
 拙Blogでは従来より、昭和のガメラシリーズに付いて言及した記事をまとめておりまして、この度7月25日付けの更新、
ガメラ:昭和(湯浅)版視聴記など 2008/07/25
http://blog.goo.ne.jp/gameraishi/e/1e3bcd6bb10c4d3064cdfaa0954f0e8d
中にて、こちらの記事をご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
 長文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。

投稿: ガメラ医師 | 2008.07.25 17:05

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 本項では、湯浅憲明監督に代表される昭和のガメラシリーズについて、視聴記や関連書籍の書評などを御紹介致します。 前回の「湯浅版視聴記など 07/18」はこちらです。  まず前半は、視聴記の御紹介から。 『オークション暗黒大陸★渇野郎』 http://blogs.yahoo.co.jp/salerbuyer/ さん、7月18日の更新。 ガメラ対ギャオス【写真あり】 http://blogs.yahoo.co.jp/salerbuyer/55927554.html  写真はDVDのカバー。大判のお写... [続きを読む]

受信: 2008.07.25 16:46

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