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2008.06.18

伊福部昭 ヴァイオリン協奏曲~ピアノ・リダクション~

 協奏曲といえば一般的に独奏楽器とオーケストラによって奏でられる音楽です。独奏楽器は様々で、ハープや打楽器の協奏曲もありますが、一般的によく見掛けるのはピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲です。また独奏楽器を複数用いた二重協奏曲なんてものもあります。
 ところで、独奏楽器の方はソロの演奏者だけで済みますから(曲の難易度を考えなければ)気軽に演奏できますが、オーケストラの方はそういうわけにはいきません。ソロの奏者がコンクールで協奏曲を弾こうと思っても、簡単にオーケストラを用意したりすることはできません。そこで、オーケストラの代わりにピアノ伴奏を用いることが多く行われています。
 例えば『のだめカンタービレ』では千秋がジョリベの『打楽器協奏曲』の伴奏を弾いたりしていますが、これなんかピアノ伴奏版は『のだめ』のサントラに入ってるので比較的容易に聴けますが、むしろ日本ではオーケストラ版のCDを探す方が難しかったりしますね。(現代音楽の作品という事情がありますが)

 今回の伊福部先生の『ヴァイオリン協奏曲』のピアノ・リダクション版は晩年の伊福部先生自身の手によってピアノ伴奏用に改作された作品ですので、純粋に鑑賞を目的とした演奏会用の作品として仕上げられていると思われます。


『ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲』(1948/1971)

 曲名としては戦前の『ピアノと管絃楽のための協奏風交響曲』と似たタイトルですが、あえて「協奏風狂詩曲」としたところに意味があるのか、まっすぐ「協奏曲」と名乗るのに照れたからかはわかりませんが、現在は『ヴァイオリン協奏曲第1番』とも呼ばれている作品です。
 時代的には『交響譚詩』と『シンフォニア・タプカーラ』の中間に作られた曲なので、両者に似た雰囲気を感じます。

  「第1楽章:Adagio-allegro」

 序盤はほとんどと言って良いほどヴァイオリンのソロによるバラード風の演奏が続きます。まるでレクイエムのように沈静な雰囲気で奏でられるのは、お馴染みの土俗的なマイナー系の主題です。やがて、ゆっくりと情緒深い調べに展開して行きます。
 中盤から小刻みでリズミカルなピアノ伴奏が加わり、アレグロ風のテンポになります。ここで繰り返されるピアノのフレーズの一部が「怪獣総進撃マーチ」の後半と似たモチーフが使われていることにニヤリとしてしまいます。
 ヴァイオリンとピアノの激しい掛け合いの展開が続いた後、ピアノが『ゴジラ』のタイトルテーマと同じフレーズを奏でるのが、ある意味、この楽章のハイライトですね。次第にピアノの伴奏が力強く、はっきりと主張して来る一方、ヴァイオリンは狂おしく奏でられていきます。
 終盤はスローダウンしてレクイエム風のバラードがじんわりと儚げに奏でられ、徐々に激しく展開し、再びリズミカルに盛り上がっていきます。序盤から中盤までをダイジェストに再現したような形ですね。


  「第2楽章:Vivace spirituoso」

 冒頭、ピアノの低音の激しい連続の後、軽やかなリズムで主題が奏でられます。続いてヴァイオリンが低く、ゆっくりと主題を奏で始めます。ピアノとヴァイオリンが寄り添いながら大きく、そしてスピーディーに展開して行きます。
 第1楽章ではピアノとヴァイオリンはどちらかというと対立的な関係にあったのとは対照的に、第2楽章では協調的な印象を受けます。
 少しスローがかったところで奏でられる豊かなフレーズは『交響譚詩』や『シンフォニア・タプカーラ』とのつながりを想起させてくれます。
 後半はヴァイオリンが主体でマイナー系のバラードが展開され、そこにスタッカートでテンポアップしていくピアノが加わり、ヴァイオリンは今度は高音で主題を奏で上げていきます。
 再び前半と同様に激しく展開を見せて終わります。


『ヴァイオリン協奏曲第2番』 (1978)

 こちらはかなり後年の作品であり、円熟の渋みを感じさせる作りです。『第1番』でしばしば感じる「交響曲への憧れ」のようなものは見事に消え去って、独奏楽器を引き立てることに注力しているようです。

 ゆっくりと雄大な雰囲気のヴァイオリンによる第1主題。寂しく儚げな雰囲気のバラードが繰り返されます。途中、レクイエム風の沈痛なピアノのフレーズが挟まれますが、ほとんどヴァイオリンのソロ曲のような印象が続きます。
 再びピアノのレクイエムが入り、そしてピアノとヴァイオリンの協奏が少しだけ奏でられます。
 ヴァイオリンがアレグロ気味に速度を増して来て舞曲風の第2主題が入ってきます。低音で踊り狂うような慌しい演奏です。ピアノを交えて、さらに激しくリズミカルに。アレグロのピアノの伴奏にノリノリのヴァイオリンって感じです。
 やがてスローダウンしてバラード風に奏で始めるピアノに、高音でそれを引き継いでゆくヴァイオリン。深く沈み込むように展開していくヴァイオリンに素朴なピアノ伴奏が寄り添います。そして大らかに第1主題が奏でられます。
 中盤、淡々としたピアノのレクイエムの後、激しく狂おしく展開していくヴァイオリンに小刻みなピアノの伴奏。
 リズミカルな第2主題の舞曲が展開された後、ゆったりとしたピアノ伴奏とともにヴァイオリンが大きく奏で上げていきます。優雅で穏やかなヴァイオリンの調べが続き、一転して激しい展開を見せていきます。
 スローでマイナーなバラードで第1主題が奏でられた後、アレグロのピアノのリズムと狂おしいヴァイオリンの音色が盛り上がり、激しく執拗に繰り広げられていきます。ラストはプレスト風にまで展開して終結を迎えます。

     ☆ ☆ ☆

 本来なら以前に取り上げた『ギター・トランスクリプションズ』のすぐ後に出る予定だったアルバムですが、なぜか延期が繰り返され、あまりに延期が続いたのでHMVの予約が取り消されちゃったとかいうことになったのですが、こうして無事に発売されて良かったです。
 『ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲』は『第2回伊福部昭音楽祭』の時にピアノだけで十分にリズムが出てるから、打楽器を追加するのは蛇足じゃないかということを書いたわけですが、実際、ピアノのリズムだけで何の不足も感じられません。
 ただ、たまたま手近にあったジャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラの演奏によるオーケストラ版の『ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲』を聴いてみたら、オケに対して打楽器がかなり強調されて使われているんですね。確かにこの雰囲気を再現しようとか思ったらピアノだけじゃ物足りなくて打楽器を追加しようと考えるのも分かる気がします。

     ☆ ☆ ☆

(演奏)
  ヴァイオリン:佐藤久成、ピアノ:岡田 将

(発売元:ミッテンヴァルト MTWD99028 2008.03.16)

伊福部昭:ヴァイオリン協奏曲~ピアノ・リダクション~
伊福部昭:ヴァイオリン協奏曲~ピアノ・リダクション~

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