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2008.05.26

デュオ・ウエダ ギターリサイタル~伊福部昭3回忌追悼~

 5月25日に京都の青山音楽記念館(バロックザール)で行われたデュオ・ウエダのリサイタルに行ってきました。
 以前にアルバムを取り上げましたが、京都在住のギタリスト夫妻によるデュオで、伊福部先生の音楽を積極的に演奏されているようです。今回も「伊福部昭3回忌追悼」という副題に引かれて聴きに行きました。
 さすがに『SF交響ファンタジー』をギターデュオでやるような無茶はもう無いかと思ったら、今度は『シンフォニア・タプカーラ』ですか。半分怖いもの見たさみたいな感じですね。

 演奏内容は次の通りです。

 01. 嬉遊曲 op.62(フェルナンド・ソル)
 02. 2つのワルツ(二橋潤一)
    第2番:Vivace
    第1番:Allegro moderato
 03. 2人の為の組曲(藤井敬吾)
    1.春のプレリュード
    2.夏のワルツ
    3.秋のサラバンド
    4.冬のトッカータ
 04. 七つのヴェールの踊り(伊福部昭)
 05. ヨカナーンの首級を得て、乱れるサロメ(伊福部昭)
 06. 白きオピラメ(石丸基司)
 07. シンフォニア・タプカーラ(伊福部昭)
    第1楽章:Lento - Allegro
    第2楽章:Adagio
    第3楽章:Vivace
 EC. 聖なる泉(伊福部昭)
 EC. (曲名不詳)

 アンコールの2曲目は何の曲か聞き取れませんでした。ポピュラー系の映画音楽っぽい感じでしたが。
 『2つのワルツ』の順番が入れ替わってるのは演奏順の通りです。
 それでは各曲についての印象などを記しておきます。


『嬉遊曲 op.62』(フェルナンド・ソル)

 ソルは18世紀から19世紀に掛けてのスペインのギタリストで作曲家。ナポレオンのスペイン侵攻で人生が変えられたような感じですね。
 前半は穏やかで美しい旋律から始まります。2本のギターの共鳴が見事に映えています。次第にやや激しくマイナーでバラード風の展開で寂しげな印象を与えます。そして再び穏やかな旋律に戻っていきます。
 後半は小刻みなリズムで展開されるポロネーズ。西洋の民族音楽的な楽しげな踊りの旋律で、奏でるギターは軽やかです。最後はスピーディーに激しく展開していきます。


『2つのワルツ』(二橋潤一)

  第2番:Vivace
 哀愁漂うようなフレーズに始まり、テンポアップして行きます。ギターのアルペジオが大きく響いてるのが印象的です。

  第1番:Allegro moderato
 小刻みで慌しいテンポの演奏。弦を押さえる素早い指裁きを追う目の動きが、なかなか大変そうでした。


『2人の為の組曲』(藤井敬吾)

 これはデュオ・ウエダの委嘱作ということで、2人というのはデュオ・ウエダのお2人を指しているようです。

  1.春のプレリュード
 ゆったりとした情景を感じさせる雰囲気。始まりの季節を思わせるような穏やかで広がりのある旋律が響きます。

  2.夏のワルツ
 少し小刻みな展開で、穏やかでトロピカルな印象を受けます。やや異国情緒でラテン系の雰囲気が夏のイメージってことでしょうか。

  3.秋のサラバンド
 マイナー系でゆっくりと寂しげな旋律。枯葉が落ちるようにどんどん落ち込んでいくようなイメージの曲で、淡々と沈み込んでいくようです。

  4.冬のトッカータ
 小刻みでマイナーな旋律。厳しい試練との激しい戦いって印象です。ボディーを叩いて打楽器的に使ってるのが新鮮でした。フラメンコのような激しい演奏の展開でした。


『七つのヴェールの踊り』(伊福部昭)

 これと次の曲は舞踊曲『サロメ』から二十五絃箏甲乙奏合として改作された作品をギター二重奏にアレンジしたものです。

 大きく奏でられる独特の伊福部メロディー。ゆっくりとしたマイナーなフレーズから徐々に展開されていきます。ビブラートの響きがなかなかです。
 中盤のアレグロの展開はさすがに伊福部音楽を理解してるかのように見事な演奏を盛り上げてくれます。緩急の付け方も絶妙。この中盤の盛り上がりに比べると終盤の盛り上がりは少し淡白な感じがしましたが、最後はアコースティックギターの限界に挑戦してるかのような激しさで、まるで大元の原曲の管弦楽版と張り合ってるかのような感じがしました。
 全般的に《第2回伊福部昭音楽祭》での野坂操壽、小宮瑞代による二十五絃箏の演奏よりも音がきっちり響いて聴こえていた印象です。ギター2本でここまで見事に聴かせてくれたら、もう言うことはありません。


『ヨカナーンの首級を得て、乱れるサロメ』(伊福部昭)

 静寂から盛り上がってくるアダージョ風に始まります。やがてアレグロに盛り上がっていきますが、すぐにバラード風の展開に。
 ロマンスのモチーフが展開されるところは明るく穏やかな演奏のイメージ。後半の畳み掛ける部分はやや軽やか過ぎる感じ。でも、そもそもギターや箏のようなピッキングで演奏する楽器なんか想定してない原曲の展開どおりに小刻みにきっちり奏でていってるのは凄いですね。
 ゆっくりとしたサロメの主題がやや穏やかな印象。最後の盛り上がりは低音の弦がことさら映えて聴こえました。
 けっこう凄いテクニックの演奏だったような気がします。


『白きオピラメ』(石丸基司)

 これもデュオ・ウエダの委嘱作とのこと。釧路湿原に生活するある画家を題材にして作った曲とのことで、表題はその画家の作品のタイトルを用いているようです。

 ややスピーディーでユニークなリズムに始まり、明朗な旋律が展開されていきます。
 ハイテンポなトレモロの連続からゆっくりとしたバラードに転じていき、そして孤高なイメージの旋律が印象的に奏でられます。
 後半は単調な旋律が執拗に繰り返されて展開していくイメージです。


『シンフォニア・タプカーラ』(伊福部昭)

 いわずと知れた伊福部先生の代表作で、唯一の交響曲。これがギター2本で演奏されるなんて、伊福部先生もあの世でびっくりされてることでしょう。

  第1楽章:Lento - Allegro
 バラード風に始まる冒頭部。ピアノかピアニシモって感じの原曲のイメージからすると少し音が強過ぎる感じがします。そのため、続く激しいアレグロの展開が少し弱く感じてしまいます。この辺りはさすがにフルオーケストラとギター二重奏とじゃ強弱の付け方が違ってくるってことでしょうか。
 原曲の展開をなぞって続いてく演奏は見事な感じです。ただ、原曲で木管やストリングスでソロの楽器が奏でる音が、やはりギター二重奏だと目立ち過ぎて違和感あります。
 伊福部音楽らしいメロディーの流れの展開は心地良く感じられます。

  第2楽章:Adagio
 静寂から弱くかすかに始まるアダージョ。淡々としたリズムで奏でられるマイナー気味の土俗的な旋律。徐々に穏やかに盛り上がっていき、やがて静寂に帰っていきます。

(演奏とは関係無いんだけど、こういう複数の作曲家の作品のコンサート等で、なぜか伊福部先生の作品になるとやたら客席で咳き込む輩が多くて気になって仕方が無いんですね。『サロメ』でもけっこう咳が聴こえたけど、とくに酷かったのがこの第2楽章のところ。
 そりゃ生理現象だから無理してまで曲が完全に終わるまで我慢しろとはいわないけど、ハンカチとかで口をふさいで極力音を立てないように配慮するのがマナーだろうし、それが出来ないなら出て行けと言いたいですね。)

  第3楽章:Vivace
 激しく始まるアレグロの舞曲。重いリズムと軽やかな音色が印象的です。前半ラストのややゆるやかに収束しているところがなかなか上手い印象です。
 後半は激しく盛り上がり。クライマックスの(原曲の)ピッコロパートもちゃんと奏でられているのには感激でした。この第3楽章、後半は盛り上がる一方のノンストップのお祭騒ぎって感じなんですが、オーケストラでもトリで演奏するのは相当辛いだろうに、それをギター2本だけでやるのは相当に大変そうです。


『聖なる泉』(伊福部昭)

 これは以前に取り上げたアルバムにも収録されてる曲で、余計な付け足しなんかはなく、ストレートに映画音楽のままの演奏ですね。ただ、ザ・ピーナッツのコーラスをそのままインストゥルメンタルにアレンジしたというよりは、弾き方に強弱のメリハリの特徴が感じられます。音程は少し低めの印象ですね。

     ☆ ☆ ☆

 『タプカーラ』のギター二重奏なんていったいどんなものになるのかと思ってたら、意外と凄かったですね。
 伊福部先生も北海道で林野官をやってらした頃は山小屋の中でギター1本で作曲活動をやってらしたとのことですから、ギターで拾える音が伊福部音楽のベースにあるということかも知れませんが、その伊福部音楽にギター曲がソロ曲で3曲しかないからって管弦楽曲からギター二重奏版をアレンジして演奏し続けてるデュオ・ウエダの活動には敬服せざるを得ません。
 2枚目の伊福部作品によるアルバムも期待していますから、これからも素晴らしい演奏を聴かせてもらいたいですね。

 名古屋や東京などの地方でも演奏会があるみたいなので、興味のある方は聴いてみてください。

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