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2008.03.25

第2回伊福部昭音楽祭・第2部

 第1部からの続きです。

【第2部】

 第2部は管弦楽曲中心の構成。演奏は寄せ集めの伊福部昭記念オーケストラで、指揮は堀俊輔がメインで何曲かは藤田崇文。

04.室内オーケストラのための『土俗的三連画』

 『日本狂詩曲』でいきなり三管編成の大作を出した伊福部先生が、そんな大きな編成の曲は演奏される機会が少ないとチェレプニンに指摘されて次に作ったのがこの『土俗的三連画』で、各パート1人ずつという極端な小編成の曲です。もっとも、昨今は二管編成ぐらいにアレンジされたものの方がCD等で耳にする機会は多いみたいですが。
 もちろん今回はオリジナルの編成です。

  第1楽章「同郷の女たち」
 各パート1人ってことはストリングスも第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスそれぞれ1人ってことですが、コンチェルトのソロを聴いてもわかるように、なかなか豊かな音が出ていますね。逆に、普段はユニゾンの形で耳に入ってくるヴァイオリンの音がソロのような感じで響いてくるのが新鮮です。
 ブラスの方はさすがに映えまくってる様子です。
 フルートの後、ヴィオラのソロで終わっていく感じが印象的です。

  第2楽章「ティンベ」
 ゆっくりとしたホルンから始まる、やや寂しげな感じがします。ヴィオラとチェロの伴奏がなかなかマッチしてるようです。ヴァイオリンのピチカートがハープのような効果を出してるのはちょっと驚きです。
 ファゴットがなかなか魅力的な低音を奏でてます。このくらいの編成だとピアノの伴奏もかなり映えて聴こえます。

  第3楽章「パッカイ」
 ヴァイオリンから始まった第1主題が続けてフルートによって奏でられ、ホルンとファゴットがリズムを奏でます。ティンパニーの後、クラリネットで始まる第2主題がなかなかよく響いています。
 激しいティンパニーの後、全体で盛り上がりますが、小編成でもオーケストラはオーケストラという感じですね。後半のアレグロ風の展開、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交互に旋律を奏でてるところが面白いです。
 トランペットによる第2主題が印象的。ヴァイオリンが第1主題を奏でた後、最後はなんか中途半端なところで終わってる感じがします。この後、第4楽章を期待したくなるのは自分だけでしょうか。


05.『Hommage to Akira Ifukube』(松村禎三)

 前回の実行委員長で昨年逝去した松村禎三が、伊福部先生の叙勲祝賀コンサートのために書いた曲です。この時、先生の9人のお弟子さんが先生のモチーフなり作風を倣って曲を書いたうちの1曲。しかし、この時のメンバーもすでに半数以上が鬼籍に入ってしまってるとは時の流れは速いものです。
 木管のマイナーフレーズから始まりストリングスが徐々に盛り上がってきます。ヴァイオリン一斉のピチカートが印象的ですね。最後に一発盛り上がって終わりますが、それ自身が一発芸ってオチを示してるみたいな感じですね。


06.交響詩『聖なる泉』

 原曲は『モスラ対ゴジラ』で小美人が歌ってた曲で、平成の『ゴジラVSモスラ』でコスモスの歌として復活。その後、声楽曲になったり二十五絃箏曲『胡哦』になったりしていますが、今回は『ゴジラVSモスラ』のサントラ版をベースに藍川由美のソプラノをフィーチャーしたアレンジです。
 冒頭、「ゴジラの恐怖」の出現シーンのモチーフ(というより、『SF交響ファンタジー第1番』の冒頭部)から始まりますが、なかなか荒々しい感じです。
 続いて「マハラモスラ」のモチーフがやや激し目に奏でられ、徐々に優雅な「聖なる泉」のモチーフに転じていきます。
 一転して激しいモスラのバトルモチーフが続き、さらに一転して静寂な「聖なる泉」が始まり、藍川由美のソプラノが入ってきます。ソプラノは若干出だしが早過ぎるように感じたりしたけど、普段の声楽のテンポとは違ってるのかな。
 オーケストラはストリングス主体で優雅に奏でられていますが、これをバックに肉声のみで歌ってるのは少し苦しそうな感じがしましたが、どうなんでしょうか。
(どうでもいいけど、ゴジラのモチーフを使うんならバトラのモチーフも使ってあげて欲しかったところです)


07.管弦楽の為の『コタンの口笛』

 原曲の映画音楽は『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の第2曲「北の海に死ぬ鳥の歌」の一部を用いた短い曲であるのを、今回はこの大元の曲をベースにして長めの曲に仕上げたらしいです。
 激しい太鼓から始まる感じが伊福部映画音楽というより怪獣映画みたいな感じがしてきますが、もちろん怪獣映画なんかではありません。口笛の感じがする音は何が出してるのかな?(前の方の席だったから、オケの後方はほとんど見えなかったから)
 ストリングスが控えめで太鼓や低音のブラスが主に響いてるので、『聖なる泉』よりもソプラノは映えている感じです。ソプラノもかなり激しいんだけど、プロの声楽家の力を見せ付けてくれるくらいに声が良く出ていますね。


08.『ゴジラ』より(オリジナル版)

 オリジナル版というのは、演奏される機会の多い『SF交響ファンタジー第1番』のアレンジじゃなくて、サントラのオリジナルスコア通りの演奏とのことです。

  「メインタイトル」(M1)
 足音の効果音に続けて入る辺りが酔狂ですが、後半のSEを重ねて演奏するまでには至らなかったようです。
 ストリングスがかなり激しく、パーカッションがそれを強調してる感じ。荒々しい印象を受けた演奏でした。

  「フリゲートマーチ」(M11)
 テンポはゆっくりだけど、サントラよりは旋律がこなれてる感じがします。ブラスバンドの現実音楽だけあって、ブラスだけで演奏してたみたいですね。

  「ゴジラの猛威」(MA')
 とにかくブラスの低音とティンパニーの乱打で迫ってくる恐怖のテーマです。チューバが大活躍という感じです。

  「エンディング」(M23)
 悲しくも優雅なストリングス主体で奏でられる「平和への祈り」の旋律。バックのホルンがなかなか効果的に響いています。ラストで盛り上がって終わるところが、往年の特撮映画のエンディングらしいところです。


09.『大坂城物語』より

 ま、ある意味で伊福部映画音楽の集大成のような作品ですね。以下の曲名は記憶を元に当日発売されたサントラ盤から拾ってきたものなので、間違っているかもしれません。

  「メインタイトル」(M2)
 激しく始まるボレロ風のタイトル曲。『座頭市』といい、これといい、伊福部時代劇音楽のタイトル曲はボレロが基本ですかって感じ。ゆっくりと大きなイメージの演奏で、打楽器がとことん激しいのが印象的です。

  「大阪城の抜け穴」(M9)
 何で音を出してたのかはわからなかったけど、ミュージックソーのようなエフェクト音から始まり、徐々にサスペンス感が高まっていきます。なんか怪獣の出現シーンのような感じ。チェロの低音が続いた後、一転してヴァイオリンの豊かな音色。最後は『ゴジラVSモスラ』でのモスラと同じモチーフが大きく奏でられます。

  「高麗橋の再会」(M14)
 フルートとハープによるロマンス系の曲。これは『ゴジラVSデストロイア』でのゴジラのレクイエムとして使われてた曲と似たモチーフの曲が美しく奏でられます。

  「茂兵衛の策略」(M27)
 同じく『ゴジラVSデストロイア』でのスーパーXⅢのテーマ曲の前半と同じモチーフが高らかなトランペットから始まって、ゆっくりとしたマーチ風に奏でられます。

  「関東勢の攻撃」(M29)
 緊迫したスリリングな激しい音楽。なんか昔の光学録音なんかだと平気で音割れしてそうな感じがします。おそらくホルンによる法螺貝のような音が繰り返し被さってるのが特徴的ですね。

  「敵中突破」(M31)
 いわずと知れた『シンフォニア・タプカーラ』のフレーズが、夜やゆっくり気味に奏でられ、オーケストラはクライマックスという感じです。パーカッションの乱打が印象的かな。

  「エンディング」(M33)
 再びロマンスのテーマ。同じようなモチーフを使っていても『ゴジラVSデストロイア』のレクイエムとは位置づけが違うので、純粋に安らぎを感じるような音楽に仕上がってる感じです。
 ただ、映画は大阪冬の陣が終わっただけで、その半年後に大阪城落城って破局があるのですが、そんなことはまったく無視した感じの開き直りはある意味凄い気がします。


EC.『土俗的三連画』第1楽章

 こちらは室内楽編成とは違って、当日の伊福部昭記念オーケストラ全員での演奏。二管とか三管とかの数え方はよくわからないけど、これはブラス系は2人だけど木管系が1人ずつなので一管編成で良かったのかな。
 やはりストリングスが大幅に増えると聴こえるイメージが違ってきますね。相対的に木管やブラスは弱まった印象を受けますね。


EC.『怪獣大戦争マーチ』(アンサンブル版)

 指揮者が退場した後で、オーケストラだけによるアンサンブル。お馴染みの曲ではありますが、何か打楽器系が激しいですね。(特に太鼓とシンバル)

     ☆ ☆ ☆

 第2部はオケ自身が小編成なのと大曲がなくて映画音楽中心だったので、前回と比べるとスケールダウンしたような感じは否めませんでした。『土俗的三連画』はけっこう満足できる素晴らしい演奏でしたが、他の曲がオケの編成に対して打楽器が頑張り過ぎというか、その辺がどこか少し違和感があったように思います。ま、アレンジの藤田崇文が打楽器曲中心に活動してる人ですから、得意分野の方にシフトしすぎてたのかもしれませんが。
 次回は未定だそうですが、『完本 管絃楽法』を1冊まるまる買えるだけの交通費に見合うだけの内容にして欲しいものです。(それか、ザ・シンフォニーホールあたりでやってくれるか)
 サロンコンサートの閉め出しだけは何とかしてほしかったものですね。

     ☆ ☆ ☆

 例によってCDを張って置きます。

譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽
譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽
オリジナル編成の『土俗的三連画』を収録。『日本狂詩曲』『交響譚詩』も入ってるので基本中の基本ですね。


伊福部昭の世界
伊福部昭の世界
『Hommage to Akira Ifukube』はこのCDか『伊福部昭 先生の叙勲を祝う会 祝賀コンサート』のCDかどちらかにしか入ってないと思うけど、どっちも今となっては入手困難みたいですね。


伊福部昭:全歌曲
伊福部昭:全歌曲
藍川由美による『聖なる泉』の歌曲版と『コタンの口笛』の原曲の『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』を収録。
(発売元:カメラータ・トウキョウ


『ゴジラVSモスラ』『ゴジラ』『大阪城物語』のサントラについては旧盤はどれも入手困難だと思うので、東宝ミュージックから出てるゴジラシリーズの50周年サントラBOXの全6巻(5巻まで発売中)の中から該当の作品が入ってるのや、今回のコンサートに合わせて発売された『大坂城物語』のサントラの方をどうぞ。
東宝ミュージック・ウェブストア

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