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2008.02.29

アニメグ。|緒方恵美

 昨年発売された緒方恵美の声優生活15周年記念のアニソンカバーアルバムです。アニソンカバーもあまり馴染みのない人が歌ってるのはどうしても興味の対象とはなりませんが、逆にこれはという人が歌ってるとカバーに過ぎないとわかってても興味を覚えてしまいます。
 しかし、最近はアニソン歌手の人のカバーとかは偶に見掛けても、声優さんは歌う人はとことんアーチスト指向に走っちゃってアニソンカバーなんて見向きもしませんし、そうじゃない人は単独でアルバムなんか作れなかったりしますからあんまり出てきません。この前、何人かの声優さんを揃えてアニソンをカバーしたってアルバムを見掛けたのですが、数だけ放り込むためにサビのメドレーって感じでじっくり聴けるようなものでもなくてがっかりしました。

 緒方恵美というと『幽☆遊☆白書』の蔵馬役で名前を知ったのが最初でしたが、その後『美少女戦士セーラームーンS』でのセーラーウラヌスとか、一時は中性的な美少年役の声優さんという印象でした。それが裏切られたのが『魔法騎士レイアース』のエメロード姫役で、普通の美少女キャラも出来るんだなと見直しました。もっとも『レイアース』の第2部では従来の路線のイーグル役もやってるんですが……
 さすがに近年はアニメの主役とかで見掛けることもなくなってきたので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』のシンジの声で名前を思い出したくらいなのですが、それに合わせたかのようにこういうアルバムが出て来たことも何かの縁なのでしょうか。

 彼女の音楽活動の方はキャラクターソングの類を除けば、初期のアルバムを少し聴いたくらいなので期待というほどのものはありませんでしたが、15周年というキャリアがどれだけ反映されているのかというところに関心を抱いて選んだアルバムです。
 収録曲は以下の通り。

 01. THE GALAXY EXPRESS 999
 02. Get Wild
 03. アンバランスなkissをして
 04. ヤマトより愛をこめて
 05. 残酷な天使のテーゼ
 06. 想い出がいっぱい
 07. 今日もどこかでデビルマン
 08. ムーンライト伝説
 09. ゆずれない願い
 10. 美夕八千夜
 11. 青のレクイエム
 12. Agape
 13. オカエリ!

 最後の曲が新録のオリジナルみたいですが、あとは昔聴き育ってきたとか、本人の出演作などで思い入れのある曲らしいです。
 それでは1曲ずつ聴いていきましょう。

 「THE GALAXY EXPRESS 999」はアニメ史上に残る青春映画の1つ『劇場版 銀河鉄道999』のテーマソングで、オリジナルはゴダイゴが歌っています。近年、ゴダイゴのボーカルだったタケカワユキヒデによるセルフカバーが出てますね。
 ゴダイゴのライブとか、タケカワユキヒデ版だと1コーラス目が日本語で2コーラス目が英語の歌詞で歌われたりしてますが、これはオリジナルと同じく両方とも日本語のバージョンです。
 かなりオリジナルを意識した歌い方のようです。昔から歌いなれてるってこともあるんだろうけど、無理はない感じで、声も自然に伸びてるような印象ですね。この曲なんか顕著なんだけど、本人が歌ってて楽しいんだろうなという感じが伝わってきます。

 昔から気になってたんだけど、サビのリフレインのループのままフェードアウトしていく終わり方はオリジナルそのままですが、この部分って実際、何回ぐらい分けてレコーディングしてるんでしょうね。カラオケなんかでは無理やり通しで歌ったりしますが、レコードなんかだと声が重なってるから一発で録ったりしたわけじゃないのは確か。明らかに思いっきり伸ばしてるのが1回ある分は別として、残りは同じ録音素材で繰り返せるのも確かですから。

 「Get Wild」は『シティーハンター』第1作目のED曲で、オリジナルはTM NETWORK。緒方恵美の年齢からすると聴き育ってきたというには新しすぎる作品だから、別の理由で思い入れがある曲ってことでしょうか。通信カラオケが普及する以前のLDカラオケ等でも歌えた数少ないアニメソングの1つなので、その関係かもしれません。単に学生時代にはまってた作品ってことかもしれませんが。(続編的な『Angel Heart』には出演してますが)
 これは男声を意識しすぎてちょっと苦しいところがあるかな。低音でアクセントを付けるような部分で声が出しきれてない感じです。

 「アンバランスなkissをして」は出世作の『幽☆遊☆白書』のED曲。オリジナルは高橋ひろ。『幽☆遊☆白書』のEDは全部で5曲あるのですが、何故か3代目のこの曲が一番人気があるみたいで、よくカバーされたりしてますね。
 これも男声ボーカルの曲だからちょっと不自然な印象が少しありますが、やはり思い入れが強い曲なのか、特徴は良く掴んでますね。

 「ヤマトより愛をこめて」はいわずと知れた『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のテーマソングで、オリジナルは沢田研二。やはり緒方恵美の世代だとこの作品は外せませんね。やっぱり彼女も映画館で涙を流してたのでしょうか。
 切なく情感があふれてくる歌です。かなり歌い手の気持ちがひしひしと伝わってくる曲ですね。オリジナルのボーカルだと割と声に力を入れて歌い上げてるって感じなのですが、緒方恵美の歌い方は歌うというよりも声を乗せたフレーズを置いていってる感じがします。これがこの人特有の歌い方なのか、単に男声だと声を張り上げられないからなのかはしれませんが、こういうしんみりしたバラード系の曲には似合ってる感じです。

 「残酷な天使のテーゼ」は出演作『新世紀エヴァンゲリオン』のOP曲で、オリジナルは高橋洋子。
 傍目には割と歌い易そうな曲だと思うのですが、なんか苦労してるように聴こえます。オリジナルのイメージだとこの曲は張りのあるボーカルで突き抜けるように歌っていくような感じなのですが、緒方恵美のボーカルはどこか緩く、甘い声を置いていってるという感じがして、どこか物足りなさが感じられます。

 「想い出がいっぱい」は『みゆき』のED曲で、オリジナルはH2O。作品自体は(同時期の『タッチ』とかと比べても)あだち充原作のアニメ化としては良かったと言えませんが、H2Oの主題歌だけは当たりでした。おかげで、この曲も通信カラオケ普及以前にカラオケで歌えた数少ないアニメソングの1つでした。
 ギターとピアノがメインのアコースティックな伴奏が印象的です。オリジナルのボーカルはもう少しメロディアスな感じなのに、淡々とフレーズを置いていってる感じですね。とくにフレーズの末尾をほとんど伸ばさずに止めてしまってるから曲の印象がかなり違います。どこか口先だけで歌ってるって感じがするんだけど、曲の持つ切なさは伝わってきます。
 ラストでスローダウンした静かなピアノ伴奏だけのリフレインが、(オリジナルには無いような)なかなか良い雰囲気が出てる感じで好きです。

 「今日もどこかでデビルマン」は『デビルマン』のED曲で、オリジナルは十田敬三。本放送も無理ではないし、当時はアニメの再放送も多かったから見る機会はあったと思いますが……あんまり小さい女の子が喜んでみるような作品では無かったと思うんですが、どうなんでしょう。ま、この頃はテレビはお茶の間に1台とかいう家庭が多かったから、年上の男兄弟とかいたら一緒に見せられてしまってたって話も普通でしょうけどね。
 どこか昔のグループサウンズを思わせる雰囲気のアレンジ。軽くストレートに歌ってるという感じでリラックスしてますね。キーの低い曲は鼻に掛かってる感じがちょっと耳につきます。それをこの人の魅力として受け取る人には良いのかもしれませんが、そうじゃないとマイナスイメージを持ってしまいます。

 「ムーンライト伝説」は出演作『美少女戦士セーラームーンS』(というより、無印からSuperSまで)のOP曲。オリジナルは初代がDALIですが、『S』だとムーンリップスになりますね。昔、初めて聴いたとき、ザ・ピーナッツとかの曲でもリメイクしてきたのかと思ったくらい古い感じの曲調が特徴の曲です。
 オリジナルとは違う、どこかで聞き覚えのあるようなイントロですが、何の曲に似てるのかは忘れました。これもボーカルは少しあっさり気味で、鼻に掛かった歌声になってますね。天王はるか(セーラーウラヌス)になりきって歌ってるってわけでもないでしょうけど、変に格好つけてる歌い方って感じを受けなくもありません。女声ボーカルの曲だし、もう少しストレートに声がでないのかな?

 「ゆずれない願い」は出演作『魔法騎士レイアース』のOP曲で、オリジナルは田村直美。これはエメロード姫が出てた第1部のOPで、イーグルが出てくる第2部では別の曲に変わってます。
 一転してキーの高い曲です。低めの声が地ならけっこう無理して高音を出してるんでしょうけど、一般的にはこれが一番自然に感じますね。声質もオリジナルの田村直美と似てる感じです。これまでの曲と違って素直に声が伸びてるように感じるのは確かです。ファンの人はどうか知りませんが、いわゆる緒方恵美のイメージとは違っても、こういう歌い方の方が魅力を感じます。

 「美夕八千夜」は出演作であるTV版『吸血姫 美夕』のED曲で、オリジナルは鈴木佐江子。川井憲次の和風ファンタジックホラー音楽の代表ともいうべき、幻想的で儚い曲調が特徴です。(個人的にはOVA版のいかにも川井憲次っぽいED曲に歌詞を付けた渡辺菜生子のイメージソングも好きなのですが)
 囁き声のコーラスがオリジナルとほとんどそのまんまで入ってるのが嬉しいですね。これが無いとこの曲じゃありませんから。もともと声を張り上げて歌うような曲じゃないから、フレーズを置いていくような歌い方でも違和感はありません。キーの高さも無理が無く、全体的に雰囲気が良く仕上がっています。

 「青のレクイエム」は出演作『SAMURAI DEEPER KYO』のOP曲……ということですが、全然覚えてないですね。作品自体は見ていた記憶はありますが。オリジナルは坪倉唯子らしいです。
 バラード系で始まったかと思ったら、けっこうハードな曲ですね。こういうシャウト系のハードロックの曲はこの人には似合ってそうです。ただ、声質的に甘く感じる部分が残ってる感じはあります。

 「Agape」は出演作『円盤皇女ワるきゅーレ』の挿入歌で、オリジナルはメロキュア。やはりこの曲を聴くと岡崎律子さんのことが偲ばれますね。ちなみに言うまでもありませんが『円盤皇女ワるきゅーレ』はここのブログタイトルの元ネタです。
 ピアノに始まるイントロとかコーラスとか、オリジナルのカラオケそのまま使ってるんじゃないだろうなと思ってしまうくらいそっくりですが、どうなんでしょう。(ブックレットのコーラスの記載を見たら「meg rock」ってあるから、メロキュアの日向めぐみのコーラスみたいですね)
 オリジナルはメロキュアの2人のコーラスのせめぎ合いが印象的で魅力だった曲なんですが、それを上手く再現しています。ボーカルにパワーがあって、張りのある声がしっかりと伸びてるのは良いですね。オリジナルもそうだったけど、非常に充実した聴後感が得られる素晴らしい曲です。

 「オカエリ!」はこのアルバムのオリジナル新曲みたいです。当人の曲のベストアルバム見たいなものなら新曲追加もありでしょうけど、こういうカバーアルバムを謳ったものに新曲を入れるのはどうかという気もしますが……
 「オカエリ!」というのは思い出のアニメソングの世界へのルーツ探しの旅からの「オカエリ!」って感じですが、どうも「オカヤリ」って聴こえてしまいます。アルバムの最後の曲としては無難なつくりですが、せっかく「Agape」で充実感に浸った後に鼻に掛かったボーカルが聴こえてくるのはどうかという印象を受けます。むしろ透明感のあるコーラス曲あたりで締めくくってくれたらなぁ。

     ☆ ☆ ☆

 同じ世代ということでピンポイントにツボにはまった曲を歌ってくれているのは嬉しいですね。とくに「ヤマトより愛をこめて」なんて、あの夏に劇場でリアルタイムで見た世代の人しか歌ってくれそうにありませんから。
 昔のアニソンからは、この「ヤマトより愛をこめて」「想い出がいっぱい」が出色かな。この人はこういう切ない歌をうまく情感を込めて歌ってくれます。でも、これらの曲はボーカルを抑えて声を置いていく感じなんですね。
 反対にボーカルの魅力を感じさせてくれるのは「ゆずれない願い」とか「Agape」ですね。声を張り上げるところは張り上げる、伸ばすところは伸ばすというところで自然に声の素質の良さが引き出されています。あまりキャラクターイメージとしての「声優・緒方恵美」に引き摺られない方が良いんじゃないかなと思います。

(発売元:ランティス LHCA-5080 2007.10.03)

デビュー15周年記念カバーアルバム「アニメグ。」
デビュー15周年記念カバーアルバム「アニメグ。」

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