宇宙戦艦ヤマト音楽全集・模範演奏テープ:SIDE1
今回は『宇宙戦艦ヤマト』生誕10周年企画の1つとして発売された楽譜集『宇宙戦艦ヤマト音楽全集』の購入者用に別途頒布されていた模範演奏テープです。
羽田健太郎が亡くなられた時、追悼企画として面白い音源は無いかと探してた時に見付けたものですが、なにぶんカセットテープなんかすぐに聴ける環境じゃないので、聴ける環境に持ってくるまでに時間が掛かってしまいました。
楽譜集と言ってもサントラ録音用のオーケストラ譜などではなく、よくある一般向けの簡易化されたピアノスコアで、模範演奏もそれにあわせたピアノ演奏であるわけですが、そこらの模範演奏テープと違うのは、演奏が宮川泰・羽田健太郎の両氏自身の手によるものだということです。
観賞用に録音されたものではありませんから、そういう点での演奏クオリティという面ではいくら宮川・羽田両氏のピアノでも差し引いて聴かなければならない部分があるとは思いますが、オフィシャルの音楽アルバムでピアノアレンジのみを扱ったアルバムは無く、この音源も他に商品としては発表されていませんので、とても貴重なものだと思われます。
模範演奏テープは90分テープの両面いっぱいに収録されて、CD1枚には収まらない分量です。ピアノの練習のために繰り返し聴くには、テープの耐久性がちょっと心配なところですね。
A面(SIDE1)が歌もの、B面(SIDE2)がサントラ曲中心という構成ですね。宮川先生の演奏は全部で4曲、残りはハネケンの演奏というところですが、これは当時は宮川先生自身による演奏でヤマトの曲を聴ける機会が無かったので、ファンサービスとして4曲だけ演奏してもらったということでしょうか。
テープの説明書には各曲1番は楽譜どおりの演奏、2番は両氏によるアレンジ入りとあります。歌ものは1番2番で分けられてもサントラ曲の方はどうなんだとか、歌ものでも1コーラス分しか無いのもありますから、あくまで参考的に捕らえた方が良さそうです。また、楽譜集の本体は手元にありませんので、楽譜に対してどれだけ違ってるのかは不明です。
曲数が多いので片面ずつ行きましょう。まずはA面(SIDE1)から。収録曲は以下の通り。
SIDE1
01. 宇宙戦艦ヤマト'83(演奏:宮川泰)
02. 宇宙戦艦ヤマト'83(演奏:羽田健太郎)
03. 真赤なスカーフ(演奏:羽田健太郎)
04. ヤマトより愛をこめて(演奏:宮川泰)
05. ヤマト!!新たなる旅立ち(演奏:羽田健太郎)
06. 好敵手(演奏:宮川泰)
07. 星のペンダント(演奏:羽田健太郎)
08. 銀河伝説(演奏:羽田健太郎)
09. 愛の生命(演奏:羽田健太郎)
10. 愛よその日まで(演奏:羽田健太郎)
11. ヤマトよ永遠に(演奏:羽田健太郎)
12. 別離(演奏:羽田健太郎)
13. 古代とヤマト(演奏:羽田健太郎)
14. 二つの愛(演奏:羽田健太郎)
15. ラブ・シュープリーム(演奏:羽田健太郎)
それでは順番に聴いていきましょう。
「宇宙戦艦ヤマト'83」(宮川版)
宮川先生の演奏はイントロから始まるオーソドックスなアレンジ。1コーラス目は力強く、それでいて滑らかなヤマト。2コーラス目はやや穏やかで、柔らかく軽やかに。
1コーラス目は男のロマンで2コーラス目が愛って感じですが、さすがに作曲者本人の演奏だけあってまったく無駄がありません。
「宇宙戦艦ヤマト'83」(羽田版)
ハネケンの演奏はスローテンポのバラードで始めるアレンジ。哀愁漂う軽やかなタッチが印象的。
1コーラス目はストレートですが、宮川先生の演奏に比べるとアレンジが多いですね。とくに「笑顔で答え~」の後の演奏の激しいところが特徴的です。バラードから始まって、どこかレクイエム風のイメージが漂います。
2コーラス目の前半は原曲の形を留めていないほどのアレンジが加えられています。歌曲のピアノ演奏というよりは本格的なピアノ曲にアレンジしてしまったようなイメージですね。最後は普通のサビに戻って締めくくってますが、TVのOP風のフェードアウトで終わってるのが印象的です。
羽田版の1コーラス目と宮川版をくっつければ「宇宙戦艦ヤマト'83」のシングルバージョンと同じ形になるのも面白いところです。
「真赤なスカーフ」
哀愁の漂うイメージの曲です。ピアノの映える曲ですが、ハネケンのしゃれた演奏はまるでラウンジででも流れてそうなムード音楽の雰囲気です。
2コーラス目はトリルを利かせたり、強弱のアクセントを大きく付けたり、通好みのアレンジに仕上がっています。
「ヤマトより愛をこめて」
原曲は『さらば宇宙戦艦ヤマト』のエンディングで流れた沢田研二の曲。
切ないタッチのイントロから始まる、どこか寂しげな演奏。まるでヤマトへのレクイエムですが、映画での使用シーンから考えればそれが本来のイメージですね。
宮川先生のピアノはキータッチのはっきりしたスタッカート気味の演奏ですが、原曲の持つ哀愁感を十二分に引き出してる、湿っぽい演奏でもあります。1コーラスとサビのリフレインだけで終わっています。
この曲は実際に使われたこの大野克夫作曲のものとは別に宮川先生も作曲されていたそうですが、自分の曲がボツにされた宮川先生としては、どういう気持ちでこの曲を弾いていたのでしょうか……
「ヤマト!!新たなる旅立ち」
ほぼ原曲に沿ったイントロですが、フィーリングフリーのコーラスの最後の小節の部分がカットされてるのが異様に気になってしまいます。
ハネケンらしい滑らかな指運びで、軽快で明るく力強いタッチの演奏。サビの一番ラストの部分の演奏がなかなか聴き応えあります。2コーラス目は強弱のメリハリを付け、サブメロを加えて音を厚くするようなアレンジになっています。
「好敵手」
原曲では宮下明のトランペットが印象的なイントロをピアノが高めに弾いていますが、ボーカルのメロディーに入ってからが急にキーが低くなってるところに少し違和感を感じてしまいます。
1コーラス目ははっきりと力強く、2コーラス目はイージーリスニング風の柔らかな演奏。後奏は消えゆくように弱いタッチで奏でられています。
「星のペンダント」
原曲は『ヤマトよ永遠に』でヤマトが発進した直後に使われた印象的な曲です。
ハネケンの演奏はゆっくりとしたテンポで、甘くか細いピアノタッチ。サビはやや力強く始まり、弱く曖昧な感じに終わっていきます。
1コーラスの後でサビのリフレインですが、かなりダイナミックなアレンジで、力強い演奏です。
「銀河伝説」
原曲は『ヤマトよ永遠に』のために作られた曲で、ビデオソフト等ではEDの後にこの曲が流れていますが、実際に劇場で聴いた記憶はありません。むしろ『宇宙戦艦ヤマトⅢ』の初期EDとしての方が馴染みが深いです。
ハネケンの演奏はラウンジのピアノ風で、ややアダルトなイメージ。サビはかなり繊細な音の印象です。2コーラス目はロマンティックで甘く切なく感じます。
この曲は「愛よその日まで」のB面に布施明バージョンが収録されていたのですが、ヤマトの歌の中でその布施明バージョンだけは現在に至るもCD化されていないのが残念です。(厳密に言えば「ヤマトより愛をこめて」の初期シングルバージョンも未CD化のはず)
「愛の生命」
続けて岩崎宏美の曲ですが、こちらは『ヤマトよ永遠に』の古代が雪を回想するシーンで使われていた曲。(ドラマ編アルバムでは堀江美都子の「おもかげ星」に差し替えられていましたが)
少し軽やかでリズミカル。いかにも歌謡曲のピアノ演奏って感じのイメージです。サビのビブラート部分のトリルがなかなか良い感じです。2コーラス目はよりリズミカルな演奏で、サビは壮大に奏でられます。
「愛よその日まで」
原曲は『ヤマトよ永遠に』のラストで使われた布施明の曲。
1コーラス目はややリズミカルな出だしで始まり、サビの手前でよりリズミカルに明るく跳ねる感じの演奏。2コーラス目はしっとりと穏やかに奏でられます。
サビは力強く、軽やかで美しい演奏ですが、「ラララ~~」の部分が無くていきなり終わってるのはちょっと拍子抜けかな。
「ヤマトよ永遠に」
原曲は『宇宙戦艦ヤマトⅢ』のED曲。次の「別離」とほぼ毎週交代で使われていました。
ややマイナー風の寂しげで物憂げな印象で始まり、バラード風に歌い上げるピアノ。サビのクライマックスは相当な高音になっています。テープにはカラオケとしても使えるとか書いてありましたが、歌う人は大変そうです。
1コーラスのみで終わっていますが、上手くまとめた終わり方という印象です。
「別離」
原曲は『宇宙戦艦ヤマトⅢ』のED曲……というか、そもそもは『新たなる旅立ち』で使われた劇伴曲に歌詞を付けたものですね。オリジナルのピアノパートもハネケンの演奏だったと思うので、曲のイメージをわかってるという意味では安心です。
1コーラス目はオーソドックスに力強く旋律を演奏しています。2コーラス目はイージーリスニング風に大胆にアレンジを加えていて、ピアノの演奏の腕をアピールしてるような感じがあります。やや激しい演奏が印象的です。
「古代とヤマト」
原曲は『完結編』で地球がディンギル艦隊の襲撃を受ける中、病院を抜け出した古代が修理中のヤマトに向かうシーンに使われていた曲。長年ヤマトの歌詞を担当してきた阿久悠が自身のヤマトへの思いの全てを織り込んだって感じがひしひしと伝わってきて、今となっては涙なくして聴けない曲です。
しっとりと切ない出だしの演奏で、とうとうと歌い上げていくメロディー。阿久悠の歌詞が思い浮かばせます。
サビは大きく激しい演奏だけど、ちょっとメランコリーな印象を受けます。
「二つの愛」
原曲は『完結編』の冥王星海戦で、負傷したままコスモゼロで偵察に出た古代が任務を達成して気を失った後、ナビゲーターとして乗り込んでいた雪の操縦でヤマトに帰還していくシーンで使われていた桑江知子の曲。
原曲通りとはいえ、この手のピアノアレンジとしてはイントロがけっこう長いのが印象的です。抑え目でしっとりとした演奏による可憐な響き。華麗に盛り上がるサビ。
リフレインでの流れるような感じの演奏がハネケンらしいところ。後奏もきちっと演奏してます。
「ラブ・シュープリーム」
原曲は『完結編』のラストの古代と雪の結婚シーンに使われていた曲。
1コーラス目はしっとりと、歌詞を噛み締めるような演奏で、サビは激しく。2コーラス目はやや熱情的で、サビは力強く。リフレインの盛り上がりからフェードアウト気味に終わります。
一時期ヤマトファンの間ではその手のシーンの代名詞として使われていた「ラブ・シュープリーム」ですが、肝心のシーンは70mm版でカットされて幻に。後にLD-BOXで出たときに特典映像として復活しましたが、35mm版を完全に収めたものは初期のビデオソフトしか無いんですね。
☆ ☆ ☆
長くなるので、続きは次の記事に。
楽譜も模範演奏テープも今となっては入手困難ですが、参考までにヤマトのボーカル曲関係のCDを。
YAMATO ETERNAL EDITION File No.10 ヤマト・ザ・ベスト
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コメント
こんにちは。
羽健を尊敬するひとりです。
以前、このようなテープの存在を知り、聞くチャンスがないかと思っていましたが、今回、巡り合えました。
残念ながら、HP上では聞く事ができないようですが、CD販売等で鑑賞できる機会があれば嬉しいです。
詳細を知りたく、よろしくお願いいたします。
投稿: 石塚 寿樹 | 2011.11.06 00:17
石塚様 こんにちわ。
残念ながら現在入手する方法は所有者から譲渡される以外は無いと思われます。私の手元のものも昔からあるもので、近年に入手したものではありませんから。
もとよりレコード用に録音されたものではないだろうから単独でCD等で出すのは権利的に難しいと思われますし、90年代後半のウェストケープ倒産を経た今日では音源が残ってるのかどうかもわかりません。
投稿: 結城あすか | 2011.11.06 19:44