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2007.08.13

関西フィル/『SF交響ファンタジー第1番』

 8月5日にザ・シンフォニーホールで行われた関西フィルの『サマー・ポップス・コンサート』に行って来ました。
 夏休みの真っ最中だというのに客層はまったく若くないですが、演奏曲目を見れば若い連中が聴くようなのがまったくありませんね。ま、かといってガキがいっぱいだったら、それはそれで困るわけですけど……
 指揮はお馴染みの関西フィルの首席指揮者・藤岡幸夫。この手のコンサートはこの人が指揮をすることになってるみたいです。

 それでは、演奏曲目です。


第1部 時代を超えて心に響く珠玉のポップス

 01. ラ・クンパルシータ
 02. 太陽がいっぱい
 03. 恋はみずいろ
 04. オリーブの首飾り
 05. アラビアのロレンス
 06. 007メドレー
 07. ルンバ・キャリオカ

第2部 あの頃、憧れのスターたち…

 08. 「ロミオとジュリエット」
 09. 「ボディーガード」より
 10. 「男はつらいよ」
 11. 「鉄腕アトム」
 12. 「ウルトラマン」
 13. 「SF交響ファンタジー第1番」

アンコール

 14. ひまわり
 15. ルンバ・キャリオカ


 ポップスと言っても往年の映画音楽がほとんどです。この辺りは同じ在阪オーケストラのコンサートでもクラシックのアレンジやら、洋楽の名曲やらいろいろ入ってる大阪フィルポップスコンサートと傾向がまったく違うところですが、大フィルの方は宮川彬良の個性によるところが大きいですから、それに比べると地味な感じはします。
 とはいえ、映画音楽も生で聴けるコンサートというのはなかなかありませんから、こうしたものを毎年定期的に開いてくれるのはありがたいものです。

 それにしても、ポップス系のコンサートだとやはりプログラムがお粗末。解説文はおろか作曲者名すら「鉄腕アトム」「ウルトラマン」「SF交響ファンタジー第1番」の3曲しか記載がないというのは……。裏を返せばそんなの知ってて当然、逆にこの3曲を知らないという客層をターゲットにしたコンサートなのか知りませんが……


 それでは簡単に演奏の様子を。
 まずは《第1部 時代を超えて心に響く珠玉のポップス》から。

 「ラ・クンパルシータ」はアルゼンチン・タンゴの名曲といわれる曲らしいですが、よく知りません。
 派手に始まるスピーディーなタンゴ。中盤、テンポを落としてバラード風に奏でられた後、鉄琴がリズムを刻み、ドラマチックな展開を見せます。後半はバイオリンの分厚いユニゾンが展開され、全体で盛り上がっていきます。

 「太陽がいっぱい」はアラン・ドロン主演の同名映画からですが、見たことありません。
 ハープとチェロによる切ないフレーズから始まってストリングスやブラスが加わっていきます。マイナー掛かったもの悲しいお馴染みの旋律を繰り返すストリングス。やがてホルンやブラスがこれに取って変わりますが、最後は再び切ないバイオリンの調べに戻った後、盛り上がって終わります。

 「恋はみずいろ」「オリーブの首飾り」は共にポール・モーリア管弦楽団の演奏で馴染みの深い曲です。
 「恋はみずいろ」は指揮者が他では聴けないアレンジだと言ってたのですが、聴いてみればクラリネットのソロから始まり、派手なブラスで盛り上がっていく、まさに独創的なアレンジですね。普通はピアノや鉄琴とストリングスが主体の、どっちかというとかわいらしい曲のはずですが、とことんド派手で、「恋はみずいろ」というよりはコバルトブルーって感じです。
 「オリーブの首飾り」はとことんスピーディー。ボンガやタンバリンなどのパーカッションが派手。メインの旋律はストリングスとピアノやチェレスタといったところですが、6月の城陽での演奏と比べてもずいぶん印象が違います。

 「アラビアのロレンス」も同名の映画の音楽。派手なティンパニーとブラスに始まり、ストリングスの雄大で少しメランコリーなテーマ曲。伝奇的というか、大河ドラマ風の感じのする曲ですね。
 アラビア的ともいえるエキゾチックな木管の音や、テンポアップしていく太鼓の音、バイオリン一斉のピチカートなどが印象的です。

 「007メドレー」は同名の映画シリーズのメドレーですが、ロジャー・ムーア主演で水陸両用のロータス・エスプリが登場する『私を愛したスパイ』ぐらいしか見たことがありませんね。
 お馴染みのテーマモチーフを木管が奏で、派手なトランペットがそれに割り込みます。中盤、ストリングスが美しいフレーズを奏でてる中をティンパニーが割り込んでくる辺りは『キングコングの逆襲』の「コングとスーザン」を思い出してしまいました。
 ラストで再びメインテーマに戻って、盛り上がって終わりますが、なかなか派手な演奏だった気がします。

「ルンバ・キャリオカ」はサマー・ポップス・コンサートでは毎度の定番曲とのことですが、何の曲かはわかりません。
 ポップスらしいリズム先行の曲で、パーカッションやドラムセットが中心って感じ。特に途中でパーカッションだけのパートがかなり続くのが、こういうオーケストラ主体のコンサートでは珍しいって印象ですね。


 続いて《第2部 あの頃、憧れのスターたち…》です。

 「ロミオとジュリエット」はこれまで何作も映画化されてるようですが、割とよく聴くこの曲はオリビア・ハッセーの出てる1968年版かな?
 ストリングスとフルートによる静かな始まり。途中、ピアノとヴィオラのソロや、ハープとバイオリンによる切ないフレーズが続き、甘く切ない悲劇を印象付けてくれます。

 「ボディーガード」よりはピアノとストリングスによる静かな伴奏に、フリューゲルト・ホルンのソロによるバラードが切なく奏でられ、哀愁漂うように終わっていきます。
 フリューゲルト・ホルンは一見トランペットのような外観なんだけど、トランペットよりは音が柔らかいとのこと。スコアの指定はトランペットだったんだけど、奏者がフリューゲルト・ホルンで吹きたいと申し出たものらしいです。

 「男はつらいよ」はおなじみ寅さん映画のメインテーマ。冒頭のトランペットから始まってストリングスに続くイントロ。続けてメインの旋律をストリングスが優雅に奏でてるのが微妙に違和感を感じてしまうところ。
 いや、映画音楽としてはストリングスでいいのかも知れないけど、得てして渥美清の歌ってた主題歌のイメージも出てくるから。
 2コーラス目ではクラリネットのソロが入ってるのも印象的。

 「鉄腕アトム」は御存知、国産テレビアニメの第1号(というと正確には違う)の白黒アニメの主題歌。ティンパニーのリズムに続くハープのイントロから始まる曲。メインが木琴とブラスでなかなか派手目で、かえってストリングスの間奏が印象に残ります。

 「ウルトラマン」は同じくTVの巨大ヒーロー特撮の奔りの作品。ウルトラシリーズは毎作主題歌が変わるので、リメイクされたりすることはまずないから、音楽自体はそんなにメジャーな作品ではないように思いますが。
 これもブラスと木琴が派手な感じのアレンジ。「鉄腕アトム」もこれも編曲者が同じみたいだから、編曲者の趣味なんでしょうか。

 ……というところで、今回のメインの目的の曲です。

 「SF交響ファンタジー第1番」

 藤岡幸夫指揮、関西フィルの演奏による「SF交響ファンタジー第1番」は3年前の河内長野での《ゴジラ VS スター・ウォーズ》のコンサート以来です。演奏に先立って指揮者が「ゴジラはヒーロー」だと言ってる時点で根本的に解釈ミスが山積みのような気がしたのですが、3年前に同じ指揮者がジョン・ウィリアムズと比較して「伊福部さんは不器用」だと言いながらタクトを振ってるのを見ていますから、たいていのことは覚悟済みです。
 問題は3年前から多少は良くなったのかどうかということなのですが……

 冒頭の「ゴジラの恐怖」の出だしの重低音と、ティンパニーはほぼ完璧。吹奏楽版とは比べ物にならないオーケストラならではのサウンドです。これなら期待出来るかなと思ったのですが……
 続く間奏部分が異様に速い感じ。これじゃ次に駆け足が待ってそうな印象です。
 「ゴジラ・タイトル」は多少速めの印象だけど、音は良く出ています。ストリングスは十分分厚く、コントラバスの低音も映えています。
 「巨大なる魔神」は打楽器の音が少し違う気が。どうも本来はティンパニーだけのところを小太鼓も入ってるって感じなのかな。この辺は少し気になるという程度のものですけど……
 スローダウンして『宇宙大戦争』の「愛のテーマ」ですが……どうもテンポがおかしくて、まるで別の曲を聴いてる感じです。全体的に速すぎるのもそうですけど、溜めも何もなく、流してるだけなんですね。伊福部映画音楽の中では「エミーのテーマ」と双璧をなす屈指のセレナーデの名曲なのに、台無しにしてしまってます。
 続いて「地底怪獣出現」ですが、ここも溜めが無くてテンポが速く、本来あるはずの重厚さやサスペンス感がまったく感じられません。
 「ゴジラ対ラドン」も少しテンポがおかしい感じがしたけど、この前の吹奏楽版のCDと違って打楽器のタイミングは合っていますね。ラドンのモチーフの入り方も悪くは無く、ナクソス盤の演奏などよりはずっと良いです。
 そして、ラストのマーチです。最初のファンファーレは分厚くて良いですね。しかし、マーチ本体の出だしが物凄く速いのが気になります。『宇宙大戦争』の「タイトルマーチ」の後半のシンバルが思いっきり決まっています。こういう部分の音が決まってくると全体に締りが感じられて良い感じになります。
 テンポは異様に速いまま「怪獣総進撃マーチ」に入りますが……このスピードでちゃんと追いついてるブラスはなかなかです。伊福部マーチってけっこうブラスに負担が掛かるみたいですから。こんなに速い演奏で後が続くんだろうかと思ったら、リピートを端折っちゃってます。2回目のリピートの端折りは芦屋交響楽団や《伊福部昭音楽祭》での本名徹次指揮の演奏でもやってることですけど、「怪獣総進撃マーチ」の1回目のリピートも端折ってるってのは酷い気がしますね。
 で、演奏は「宇宙大戦争マーチ」に入りますが、速いテンポそのままで続けて入ってきてるので、演奏もそのまま流していくだけって感じで、この「宇宙大戦争マーチ」の部分で盛り上がって来ません。伊福部先生はここで盛り上げさせるためにあえて有名な前半のモチーフを使わずに後半のモチーフだけを持ってきてると思うんだけど……そんな配慮も台無しです。
 マーチの最後は「怪獣総進撃マーチ」で締めくくりですが、ラストのティンパニーあたりに少し違和感が残りました。

 全体的にオケ自体の演奏は悪くはないんだけど、テンポの取り方とかがおかしいのは指揮者によるものでしょうね。
 城陽での《スクリーン・ポップス2007》でクラシックスとポップスの違いとして、ポップスはテンポが一定だけど、クラシックは曲の途中でもどんどんテンポが変わることだと、本人が言ってたと思いますけど、この「SF交響ファンタジー第1番」はクラシック曲同様にちゃんとテンポの取り方を勉強してから演奏して欲しいような気がします。
 ま、個々の原典の映画を見ろとかサントラ盤を聴けとまでは言わなくても、《伊福部昭音楽祭》でも流してた『ゴジラファンタジー』のビデオを見るとか、日比谷公会堂初演版か『伊福部昭の芸術』シリーズのCDぐらいは聴いてたら、少なくとも『宇宙大戦争』の「愛のテーマ」があんな演奏になることは無いと思います。
 関西フィルはこの曲をレパートリーとして演奏してくれる数少ないオーケストラの一つだからこそ、やはりそれなりの演奏で続けていってもらいたいですね。


 最後に《アンコール》です。

 「ひまわり」は同名映画の音楽みたいですが、よく知りません。
 ゆったりとしたピアノソロによる物悲しい旋律から始まる曲。やがてリズムセクションが入って、ストリングス、木管が切なく奏で上げ、徐々にブラスが加わってきて盛り上がっていきます。
 ラストはダイナミックなピアノのフォルテを中心に盛り上がり、ピアノのソロで締めくくられます。

 「ルンバ・キャリオカ」は第1部の最後の曲を再演。さっきはよくわからなかったけど、パーカッションの中にはボンガやクラヴェス、マラカスとかが入ってるみたいです。
 ザ・シンフォニーホールでの『サマー・ポップス・コンサート』では毎年この曲で終わるのがお決まりみたいですね。

     ☆ ☆ ☆

 ポップスコンサートなので1曲数十分とかのクラシックのコンサートと比べても仕方が無いのですが、それでもやはり大曲が『SF交響ファンタジー第1番』だけというのは物足りない気がします。この点、同じ藤岡幸夫指揮・関西フィルのコンサートでも城陽でやってる『スクリーン・ポップス』の方が充実感が感じられました。

 それにしても、最初から半分覚悟していたとはいえ、返す返す不満の残る『SF交響ファンタジー第1番』です。ま、ある楽器の音が良くないとか、ちょっと演奏ミスってるんじゃないかとかいうのはどんなコンサートでもあることですから何も言いませんが、素人目にも根本的に指揮者の解釈ミスだと思える演奏なのは大いに問題だと思います。
 そりゃ、作曲家の生前は未発表だった遺稿の初演だとか、長年譜面が行方不明で録音すら残ってない幻の名曲が発見されたとかいう作品の演奏なら解釈も手探りで行うしかありませんけど、日本国内でも年間何回かは演奏されてる作品だし、現行商品のCDでも常時何枚かは見掛けるものだから、勉強不足としか思えません。

 指揮者の感覚ではこの曲は純音楽作品ではなく、クラシック曲のようにまとめられてはいるけどポップスの曲で、「ゴジラは昔よく見たから知ってるな」くらいで理解してるつもりになって指揮をしてるのかも知れませんが、そんな簡単な曲ではないと思います。
 確かに有名なゴジラやラドンのモチーフのところはほぼ完璧に演奏されてるけど、逆によほどのファンじゃないと音楽なんか覚えてないようなバラゴン出現のところとか、『宇宙大戦争』のセレナーデのところはそれなりなんですね。
 オーケストラの音自体はきちんと出てるだけに、指揮者の解釈で演奏に不満が残るというのは残念でありません。

 今回の演奏に比べると、前回聴いた吹奏楽版のCDの演奏はいかにオーソドックスで安心して聴けるものだったかというのを実感しました。

     ☆ ☆ ☆

 関西フィルの演奏でレコーディングされたものは出てないので、基本的なレコーディングのCDを挙げておきます。
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
 日比谷公会堂初演版は入手困難みたいだし、基本的な録音としてはやはり『伊福部昭の芸術』シリーズのこれ。これの音源を用いて『SF交響ファンタジー』だけ抜き出した廉価版が以前に出てたんだけど、そっちももう入手が難しいみたいですね。

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