THE MUSEUM 水樹奈々
飯塚雅弓を成功させたパイオニアLDC(現ジェネオン)が、その次を狙って売り出していたのが確か水野愛日とこの水樹奈々だったように思いますが、飯塚雅弓がTVアニメ『新天地無用!』を半ばプロモーション用に使ってたのと違い、当時、アニメイト等でのイベント告知を見ても「水樹奈々、それ誰?」という感じで、名前は覚えてたけど実際に何らかの活動をしてるのに触れる機会はしばらくありませんでした。(この時期はパイオニアLDCがゲーム方面に力を入れていた時期なので、そっちの方面で売り出していこうという方針だったようです)
結局、水樹奈々という名前を本格的に意識するようになったのはキングレコード移籍後に『RUN=DIM』を初めとするアニメソングを歌ったり、『七人のナナ』や『シスタープリンセス』など話題のTVアニメにレギュラー出演するようになってからですね。で、一番インパクトがあった出会いが『RUN=DIM』のED曲「Heaven Knows」であり、当時のイベントなどで本来は演歌歌手を目指していたとか聞いていたので、その後アニメの声優の仕事を数多くこなしているけど、個人的には歌手の方が本業のアーチストとしてのイメージを持っています。
この辺りは以前に取り上げた桃井はるこもそうで、世間的には声優に分類される人かも知れませんが、自分の中では奥井雅美などと同じジャンルのアーチストってイメージですね。
今回はそんな水樹奈々の歌手としてのこれまでの軌跡を綴ったベストアルバム『THE MUSEUM』を取り上げてみます。
収録曲は以下の通り。
01. 想い
02. Heaven Knows
03. The place of happiness
04. LOVE&HISTORY
05. POWER GATE
06. suddenly~巡り合えて~
07. New Sensation
08. still in the groove
09. パノラマ-Panorama-
10. innocent starter
11. WILD EYES
12. ETERNAL BLAZE
13. SUPER GENERATION
14. Justice to Believe (MUSEUM STYLE)
15. Crystal Letter
16. TRANSMIGRATION 2007
01~14がそれぞれシングルの表題曲、15が新曲、16が既製曲のリメイクという感じですね。それでは順番に聴いていきましょう。
「想い」はバラード風のゆっくりとした始まりの曲。だけど、リズムは小刻みで速いテンポ。出だしはマイナー調の曲で、サビになってメジャーに変わるって感じ。やや短めの曲であっさりしてるけど、ボーカルがしっかりしていて聞き応えは十分。
『少年進化論』とかいうドラマCDのイメージソングだそうですが、そっちの方は知りません。とりあえず水樹奈々のデビュー曲って、昨今の水樹奈々のイメージからは少し違うところもあるけど、演歌歌手を目指していたという影響は当時の方が強く、むしろ今よりも可能性を感じるところがありますね。
「Heaven Knows」はコーラスの頭に早口のラップが付いてるのが特徴的な曲。そのためかコーラス本体が短く感じられ、すぐにサビが始まってしまう印象です。バックは相当に派手なヘビメタ系のサウンドだけど、それに負けないボーカルの力強さはさすが水樹奈々というところ。
『RUN=DIM』とかいう土曜の朝にやっていた3DCGアニメのED曲なのですが、作品の舞台である地球温暖化による水面上昇で都市が水没したシュールな光景を映したEDの映像との組み合わせが印象的でしたね。
水樹奈々を初めて見たのはこの曲の販促イベントの時だったかなぁ。やっぱし生で聴けるのは一番ですが、昨今のライブコンサートみたいにチケットを取り難いとか、人がいっぱいいすぎるところは息苦しいとかいうのはキツイですからね。
「The place of happiness」はサビから始まる曲。メインのコーラスは水樹奈々にしては軽やかでノリが良いポップな感じの曲なのですが、サビはけっこう重い感じです。なんかこの辺から歌い方が奥井雅美に似た感じになってきて、初期のまっすぐな柔らかさがなくなって来たみたいです。
『GENERATION OF CHAOS』というゲームの曲みたいだけど、当時は盛んにCMで流れてたのか、とても耳に馴染んでいたような気がします。
「LOVE&HISTORY」はパワーのあるボーカルとヘビメタ系の激しい曲。これもサビが主体って感じで全体的に短めのイメージが感じられます。サビは突き抜けるような感じで印象的なんですが、フレーズが断続的で一発芸って感じ。せっかくの水樹奈々のボーカルなのに歌い上げるようなものが何も無いってのが欠点かな。
リフレイン前のフレーズがなかなか良い感じなので、これを中心にした曲を作った方が良かったんじゃないかなぁ……
「POWER GATE」は軽やかでポップなノリの良い曲で、そのままサビに盛り上がっていくストレートな作りの曲。これも聞いた感じ、奥井雅美っぽいところがありますねぇ。サビのところの解放感が格別です。後奏のサックスがちょっとしつこい感じかな。
テレビ大阪の深夜番組『M-VOICE』のテーマ曲ってことですが、確か月単位でテーマ曲が変わってる番組でしたね。割と声優だかアニソン系の歌手だかのゲストが多かった番組だったような気がします。
「suddenly~巡り合えて~」は、ややゆっくりなテンポでかつ激しい感じの曲。ボーカルは最初から全開気味で、これもボーカルがメインって感じの前が短い印象の曲です。
個人的にはちょっとヘビー過ぎるって感じがします。
「New Sensation」は徐々に歌い上げていく感じのメロディーで、畳み掛けるような感じのサビの曲。やはり奥井雅美風の歌い方。
全体的にじっくりと聴き込みたいような感じなんだけど、サビがちょっと拙速なのが曲全体にアンマッチ感を引き起こしてしまってます。
そういえば学生服のCMソングだとかいう話だったんですが、どんなCMなのか見た記憶はありませんねぇ。(ま、アニメをやってる時間のCMしか触れる機会はありませんから)
「still in the groove」はかなり激しくハイスピードな曲。曲のスピードに対して歌詞に呂律が回ってない感じがします。そのため、ボーカルはスピードに追いつくのがやっとって感じでパワーが足りません。
曲としてのノリは良いんだけど、水樹奈々には似合ってませんね。どっちかというと奥井雅美なら歌いこなせそうな感じがします。イロメロミックスのCMってありますが、この頃はまだアニメロが独立してなかったのかな?
「パノラマ-Panorama-」はややゆったりとしたテンポに、淡々と紡いでいくメロディーの曲。サビでちょっと起伏が現れるかなって感じの、全体的にフラットなイメージです。
ボーカルは突き抜けるような感じだけど、あまり活き活きとした感じがありません。ちょっと華やかさが足りないって気がします。
「innocent starter」は力を抜いて優しく語りかける感じの歌いだしの曲。やや哀愁や切なさを感じさせます。徐々に力強く盛り上がっていき、サビの歌い上げる感じがよく出ています。
いわずと知れた『魔法少女リリカルなのは』のOP曲ですが、とてもいろんなものが歌いこまれてるって感じで、雰囲気もよく、水樹奈々の一番の名曲と言って過言では無いでしょう。
「WILD EYES」は最初から激しくパワーのあるボーカルの曲。そのままサビまで一直線ですね。『バジリスク 甲賀忍法帖』の1クール目のED曲ですが、アニメソングというより、なぜかアニメロ系の曲って印象の方が強い感じがします。
激しいだけでやや単調な物足りない感じで、曲としては退屈かな。テレビアニメのEDで1コーラス聴くだけなら良いんだけど、フルコーラス聴くのは疲れます。
「ETERNAL BLAZE」はバラード風のゆっくりとした始まりから一転してスピードアップするイントロの曲。最初からハイペースで力強いボーカル。途中、少しペースを落とした感じから、サビは力強く、最後は張り叫ぶぐらいの感じにまでヒートアップします。
これは『魔法少女リリカルなのはA's』のOP曲ですが、とにかく緊張感のあるハイテンションな曲で、『なのは激闘編』って感じの曲ですね。やや運命っぽい悲しく切ない感じから、それを力強く振り払って希望に向かって反撃していくって感じの、励まされる印象です。
「SUPER GENERATION」は軽快でポップな曲だけど、ボーカルはパワフル。サビもスピーディーで突き抜ける感じ。
ノリの良いダンス系の曲で、素直にカッコイイんだけど、こういう曲は珍しいなと思ったら、水樹奈々本人の作曲ですか。それもあってか、非常に活き活きしたボーカルが特徴ですね。
「Justice to Believe (MUSEUM STYLE)」はゴシック風というか何というか、運命的な雰囲気を感じさせる作りの曲。ボーカルは切実かつ力強く歌い上げる感じ。雷鳴轟くようなSE、コーラス、それにピアノのリズムが曲の雰囲気を盛り上げています。間奏が異様に長いけど、曲を上手く盛り上げています。
水樹奈々の曲というとどっちかというとパワフルなボーカルがメインで、バックは適当にハードロックやヘビメタ系でまとめてるって印象が強いんだけど、こういう凝ったバックの曲もなかなか良いですね。
「Crystal Letter」は力強いイントロに続く、切ないというか痛々しいという感じで早口に歌い上げる始まり方の曲。マイナー系だけど、テンポが異様に速いイメージです。サビになってメジャーに転じ、力強く盛り上がります。切なさの残るしっとりとしたサビの終わり方が印象的です。リフレインの始まりの裏声の部分がちょっと不自然かな。
切実な思いを込めた訴えかけるような歌というイメージの曲です。
「TRANSMIGRATION 2007」はいきなりサビのフレーズから始まる出だしの曲。ボーカルはハードだけど、典型的な奥井雅美風の歌い方……って、この曲は作詞が奥井雅美ですか。以前にラジオ番組か何かの企画で作った曲をレコーディングしなおしたものみたいですね。
サビの直前まではテンポが速いけど、どっちかというとハードなバラードって感じで歌い上げる曲というイメージです。
☆ ☆ ☆
やたら奥井雅美に良く似た歌い方の曲が多いのですが、これは奥井雅美が仮歌を歌ってるとかいう影響からでしょうか? 奥井雅美はキング在籍中は自作曲以外にもけっこう多くの声優関係の曲の仮歌を歌ってたみたいですし、林原めぐみも一時期、奥井雅美の仮歌の曲が多くて歌い方がやたら似ていた時期がありましたからね。それとも以前に奥井雅美を担当していて、現在は水樹奈々を担当してる矢吹俊郎の指導なのかなぁ。
キングと言えば米倉千尋もどことなく似たような歌い方だし、こういうのにも流行り廃りってのもあるんでしょうけど、ちょっと聞いただけで真っ先に他の歌手の名前が出てくるようなのはどうかという気がしますが……
あと、アニメロ関係の曲ってイメージがけっこう多くの曲に付いているんですね。実際にタイアップが明確に謳われてるのは「still in the groove」だけのようですが、どうもそれだけって気がしません。アニメロサマーライブ等のCMで既製曲が使われたりしてることもあったり、シングルやアルバムのCMがしばしばアニメロのCMと続けて流れてるからごっちゃになったりしてるのかもしれませんが、アニメロ自体も水樹奈々とか奥井雅美が好きみたいですからねぇ。
サビがメインのようなどっちかというと着メロ・着うた向きの曲が多いのもそんな感じを感じさせてるのかも知れませんが、しっかりとした歌唱力のある人なんだから、もっとじっくり歌い上げるような曲を増やしてもらった方が良いような気がします。
そういう点でもバランスが取れて水樹奈々の歌が堪能できる点で「innocent starter」が一番名曲だと思います。サビの一発イメージでわかりやすい曲とか、激しい曲も良いんだけど、そんな曲ばかりだと聴いてて疲れますからね。実際、このベスト盤、曲を選んでだりザッピングして聴く分には構わないけど、通して聴くとけっこう疲れます。(シングルのC/Wとか、アルバムにはそうで無い曲もたくさんあるとは思いますが)
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