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2007.04.03

日本のアニメとゲーム 夢のシンフォニー

 3月25日に春日井市民会館で行われた《日本のアニメとゲーム 夢のシンフォニー》というコンサートに行って来ました。
 オーケストラで書かれたアニメの音楽は枚挙に暇が無いほど膨大にありますが、そのうち実際に生で演奏を聴けるものといえば、宮崎アニメの音楽等一部を除けば滅多に機会がありません。そんなわけで、いったいどんな音楽を聴かせてくれるのかと楽しみに行きました。
 演奏は吉住典洋・指揮のセントラル愛知交響楽団。プログラムがモノクロ簡易印刷のペラ紙1枚というのは、無いよりはマシという程度。サイト上の記事で読める以上の内容はありません。

 会場の中は真っ暗に近い状態。映写する関係でしょうけど、とてもオーケストラのコンサート会場とは思えません。譜面台に照明が付いてるとは言え、こう暗いと奏者の方も大変そうです。
 席はプレオーダーで確保した前の方の右端。ポピュラーミュージシャンのライブじゃないんだから、オーケストラで前の方の席でもあまり嬉しくはありませんねぇ。全体的にオーケストラが視野に入るところが良いです。もっとも、今回はどのみち暗くて演奏してる様子なんか見えなかっただろうと思いますが。
 オーケストラの編成は最近聴いてる関西フィルとか日本フィルとかのコンサートと比べると、やや小振りかな。第1バイオリンと第2バイオリンが向き合う形ではなく向き合う場所にはチェロが入ってるので、右側の席だと完全にバイオリンが遠くて、コントラバスとチェロの低音部隊が近くって感じ。見えはしないけどファゴットやチューバもこっちの方にあるはずだから、低音ばかり聞こえてきそうです。

 演奏曲目は以下の通りです。

第1部
 1.ジャングル大帝 (富田勲作曲)
     ジャングルの朝~動物たちのつどい
 2.宇宙戦艦ヤマト (宮川泰作曲)
     交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」
 3.機動戦士Vガンダム (千住明作曲)
     Victory G
 4.機動戦士ガンダムSEED (佐橋俊彦作曲)
     交響組曲「機動戦士ガンダムSEED」
      ~第十章 闘いの果て届けられた想い

第2部
 1.ドラゴンクエストⅧ(8) (すぎやまこういち作曲)
     序曲
 2.ドラゴンクエストⅢ(3) (すぎやまこういち作曲)
     おおぞらをとぶ
 3.ファイナルファンタジーⅦ(7) (植松伸夫作曲)
     エアリスのテーマ
 4.ファイナルファンタジーⅩ(10) (植松伸夫作曲)
     ザナルカンドにて
 5.新世紀エヴァンゲリオン (J.S.バッハ作曲)
     G線上のアリア
 6.イノセンス (ロドリーゴ作曲、川井憲次編曲)
     Follow Me~「アランフェス協奏曲」より
 7.スチームボーイ (スティーブ・ジャブロンスキー作曲)
     Ray's Theme

 今回のコンサートは愛知博の時に行われたコンサートの再現とのことで、『スチームボーイ』がラストに入ってたりするのはその名残なのかも知れません。しかし、「愛・地球博」とか名乗ってたら一番真っ先に出てくるだろう宮崎アニメの作品が無いのは、映像の許可が降りなかったのか、それとも演奏の機会が多いからあえて外したのか、気になるところですが……
 各曲にはその音楽と結びついた映像がバックに映されるということですので、どれだけ映像と演奏がシンクロしたものかも興味深いです。
 それでは1曲ずつ行きましょう。

第1部
 1.ジャングル大帝 (富田勲作曲)
     ジャングルの朝~動物たちのつどい

 前半はブラス主体の壮大なファンファーレの後、流れるようにメインテーマを奏でるストリングスと、それに絡むホルン、独特のパーカッションが魅力的な演奏。いわばタイトルテーマのアレンジなのですが、『ジャングル大帝』という作品の始まりを感じさせてくれる音楽ですね。
 後半はブラスによる目覚めのイメージから小刻みなモチーフの展開で、ストリングスが被さってくるような印象。
 『ジャングル大帝』という作品、物心付く前に子守唄代わりに見てたというくらいの記憶しかないので音楽もレコードを買ってまで聴いたこともありませんが、映像自体は具体的なドラマシーンじゃなくイメージ的なものだったので、それなりに音楽ともマッチングしてたように感じました。

 2.宇宙戦艦ヤマト (宮川泰作曲)
     交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」

 『交響組曲』と書いてあるけど、演奏されたのは演奏会用アレンジの『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』の「序曲」と「宇宙戦艦ヤマト」。イントロ無しでピアノ伴奏付きのスキャットで始まり途中でぶった切られる「序曲」は『交響組曲』ではありません。
 ソプラノ歌手の人がスキャットの部分を歌ってるんだけど、解釈ミスというか何というか、クラシックの声楽手法で歌ってるので違和感がありまくりです。オリジナルの川島和子をそのままコピーしろとまでは言いませんが、ポピュラー音楽のスキャットにはポピュラー音楽としての形式があるのだから、それに従ってほしいです。『ヤマト』のスキャットは透明な流れるような声が基本。声を震わせて歌い上げてはいけません。
 スキャットには難ありだけど、オーケストラの演奏は悪くはありません。編成が大きくないので音に無駄が無いというか、去年の関西フィルの演奏よりはずっと自然に聴こえました。しかし、このセントラル愛知交響楽団の演奏もメインテーマのテンポが速過ぎます。これ、宮川泰が自ら指揮したコンサートなんかだとしばしばボーカルが入ってますから、ちゃんとボーカルが歌えるテンポで演奏するのが本来のスピードのはずですが、こんなテンポだとスキャットは入ってもボーカルは歌えませんね。
 で、画面は止め絵……。思いっきりコンセプトから外れてるって感じなんですが、本編映像が使えなくても演奏したかったってところでしょうか。

 3.機動戦士Vガンダム (千住明作曲)
     Victory G

 千住明といえば近年ではリメイク版『鉄人28号』や『雪の女王』が印象深いですが、この『Vガンダム』はアニメを手掛けた初期の作品。この作品の音楽を元に『交響組曲第2番「THOUSAND NESTS」』という作品も作られてますが、ここで演奏された「Victory G」はこれとは別に作曲者本人によって演奏会用に編成された楽曲のようです。
 木管とストリングス主体の安らぐような音楽から始まり、低音のブラス主体の危機感を煽るスリリングな進軍曲。ついでストリングス主体の悲痛なレクイエム風の曲の後、華々しいブラス全開のビクトリーガンダムの登場曲。この作品で一番印象に残る音楽ですが、盛り上がるところの入る鉄琴が効果的に響いてます。ラストはゆっくりと派手目のマーチ風の曲が勝利を奏でる大団円です。
 千住明はアニメや映画等のサントラだけでなく純音楽作品等の演奏会でも幅広く活躍されてる人ですが、オーケストラのアレンジはなかなか上手い人ですね。この1曲だけでも一個の作品としてぞくっと来るような素晴らしさを感じます。

 バックの映像は音楽の展開とは無関係に適当に画面をつないで流してるだけ。同じ作品の映像なら何を流しても雰囲気が出るとでも考えてるのかもしれませんが、音楽と合わないシーンを持ってこられてもねぇ。
 『ヤマト』の止め絵はともかく、もうこの時点で映像には期待できなくなってしまいました。この前の『伊福部昭音楽祭』の第2部みたいに本当に音楽に合った映像を流そうというくらいのものは最初から無かったんですね。ま、あっちは東宝の全面協力があって出来たことだろうから、借り物の映像じゃこれが限界なのかもしれませんけど……

 4.機動戦士ガンダムSEED (佐橋俊彦作曲)
     交響組曲「機動戦士ガンダムSEED」
      ~第十章 闘いの果て届けられた想い

 初代『ガンダム』を抜きに『Vガンダム』と『ガンダムSEED』がセレクトされてる理由はわかりませんが、とりあえず第1部の最後は『ガンダムSEED』です。愛知博の時点では続編『ガンダムSEED DESTINY』も放映中ですが、まだシンフォニーとしてまとめられてなかったから取り上げられなかったのでしょう。
 う~ん……聴いていてあんまりよくわかりませんねぇ。これ、以前にCDも聴いたのですが、やはりピンと来ませんでした。オリジナルのサントラ自体は聴いてないので曲に馴染みが薄いといえばそうなんですが、それなら『Vガンダム』も同じなんですけど……
 思うに、佐橋俊彦という人は起用に曲をたくさん作るんだけど、それがかえって個々の曲の印象を薄くしてしまって記憶に残らないって感じではないでしょうか。この曲もいくつかのBGMをメドレーでつなげて構成されてるようですが、どこにポイントがあるというようなメリハリが無いんですね。
 佐橋俊彦はアニメや平成になってからの『ウルトラマン』や『仮面ライダー』の音楽も幅広く手掛けてる多作の人ですが、どうも印象に残ってないんですね。いまだに一番記憶に残ってるのは『赤ずきんチャチャ』のホーリーアップの音楽ってくらいですから……

第2部
 1.ドラゴンクエストⅧ(8) (すぎやまこういち作曲)
     序曲

 第2部の前半はゲーム音楽から。といっても『ドラクエ』と『ファイナルファンタジー』だけというのはどうかと。ま、美少女ゲームの音楽まで演奏してくれとは言いませんが、偏ってるのは確かですね。
 1曲目のこの曲は、有名なドラクエマーチから始まり、ゆったりとした曲に続きます。このゲーム自体やったことないけど、なんかゲームの映像とオーケストラの音楽というのは違和感があります。音楽だけならそういうことは無いんですけど……

 2.ドラゴンクエストⅢ(3) (すぎやまこういち作曲)
     おおぞらをとぶ

 この曲ではオーケストラの音楽だけを楽しんでくれと、映像抜きでステージも少し明るめ。ま、実際には映像が調達できないとか大人の事情があったのかも知れませんけど、中途半端な映像なんていらないから、最初から全部こうしてくれと言いたいところです。
 ハープとフルートによるイントロの後、オーケストラで始まる曲。木管の小刻みなフレーズにストリングスのフレーズが続き、最後はオーケストラが盛り上がる感じです。すぎやまこういちは良いメロディーを書く人なので、『ドラクエ』の曲は割と聴きやすい感じですね。

 3.ファイナルファンタジーⅦ(7) (植松伸夫作曲)
     エアリスのテーマ

 ストリングスと木管の静かなフレーズが続いた後、アクセント的にブラスが盛り上がって区切りを付けてるという感じが何度か繰り返されてる感じ。いわゆるゲーム音楽的な繰り返しを意図して作るとこうなるのかも知れませんが、音楽的にも物足りないし、なんか機械的に一定周期で盛り上がれって言われてる感じで、どことなく嫌な印象を受けますね。

 4.ファイナルファンタジーⅩ(10) (植松伸夫作曲)
     ザナルカンドにて

 シンフォニックで美しい曲ですが、バックの映像のCGがリアルすぎて思いっきり違和感を感じます。
 ゲームはほとんど専門外なので、ゲーム自体の音というと昔のPSGとか良くてFM音源ぐらいのイメージしかないんですが、最近はメディアの容量もハードの処理能力も増えてるから、実際にオーケストラで録音した音楽でも使えるんでしょうかねぇ?

 5.新世紀エヴァンゲリオン (J.S.バッハ作曲)
     G線上のアリア

 ここからはアニメとクラシック音楽の融合と題して、クラシック曲を用いたアニメシーンとのこと。
 「アリア」は劇場版で復活したアスカの弐号機が量産型エヴァンゲリオンと死闘を繰り広げるシーンに使われていた曲。「G線上のアリア」とは本来はバイオリンソロ用にアレンジされた曲に付けられていた愛称なので、オーケストラ版を呼称するのは(他の楽器にとってG線上も何もありませんから)不自然だと思いますが……

 映像は該当シーンをそのまま丸々流してれば良いものを、『DEATH & REBIRTH』の総集編部分についてた演奏シーン等の余計な映像を加えて変に編集してあるから雰囲気も何もありませんね。
 それより、『エヴァンゲリオン』には鷺巣詩郎による素晴らしい音楽が山ほどあるのに、それを差し置いて「アリア」なんてコンサートを探せばいつでも聴けるような曲を持ってくるというのは大いに不満がありますね。

 6.イノセンス (ロドリーゴ作曲、川井憲次編曲)
     Follow Me~「アランフェス協奏曲」より

 司会の大塚明夫と田中敦子によるバトーと草薙素子の会話の生アフレコに続けて演奏されたのがこの曲。ボーカルを担当するソプラノ歌手は西みほという人。(『ヤマト』と同じ人です)
 この曲の原曲がロドリーゴの「アランフェス協奏曲」ということで、クラシック繋がりとのことですが、この曲は古くから多くのジャズメンにアレンジされて来た曲で、川井憲次のアレンジによる『イノセンス』のこの曲も「アランフェス協奏曲」から直接アレンジされたものではなく、歌手の伊藤君子自身が1989年に出した曲が元であり、さらにこの伊藤君子の曲も外国のアレンジ曲が元になってるらしいので、ずいぶんと世代を重ねているもののようです。
 曲は頭からソプラノのアカペラが続き、ずいぶんたってからピアノの伴奏が入りますが、伴奏が入った時点でようやくずっとアカペラだったことに気付いたというくらいもの凄い表現力のボーカルです。1コーラス目の後半になってストリングスが加わってきますが、あくまでアコースティックなイメージは変わりません。
 2コーラス目でようやくギターやスネアドラムが入ってきて川井憲次らしいアレンジになって来るんですが、それでもあくまで曲を引っ張るのはボーカルの力です。『ヤマト』のスキャットはどうかと思ったけど、この「Follow Me」は最高です。
 席の関係で演奏の方はわからなかったのですが、ギターとかドラムスとかもちゃんと生でやってたのでしょうか? 全然出番の無いブラスの人たちが完全にお休み状態だったのは確かですけど。

 7.スチームボーイ (スティーブ・ジャブロンスキー作曲)
     Ray's Theme

 最後は『スチームボーイ』の曲。愛知博の時期からみて比較的最新の話題作を持ってきたということでしょうか。
 全然知らない作品なので音楽の方も同様ですが、なんかストリングスはストリングスだけ、ブラスはブラスだけという感じで分離した感じのする曲でしたね。

 アンコールは再びFollow Me。今度は生アフレコが終わった後は映像抜きで音楽だけです。アフレコシーンはさっきとは別のシーンでしたが、アンコールの方が演技も自然に感じられて良かったですね。

     ☆ ☆ ☆

 アニソンではない本当のアニメ音楽に光を当てようとした試みは素晴らしいものですが、現実にどこまでコンセプトが活かされていたのかには疑問が残るところです。映像と音楽のマッチングを唱えるなら実際に使用されたシーンの映像とその劇伴の組み合わせじゃないと意味がないはずですが、オーケストラ演奏が前提のためか演奏会用のアレンジ曲が多く、また映像もシーンに関係なくその作品の映像を適当に流してるだけでは本当の意味でのアニメにおける音楽の効果なんてわかりません。
 もっとも、劇伴そのものを演奏するとなるとスコアが現存しないor借りられない、楽器編成がオーケストラとはまったく違う、単独の音楽としての鑑賞を前提に作られた曲じゃないための聴感上の問題、などいろいろ支障があったりするのでしょうけど。音楽的にはちゃんとオーケストラ用にアレンジされた演奏会用のバージョンが良いのでしょうけど、それならそれに合わせて編集された映像でも流すかしてくれた方が良いんですが、映像の方も権利関係がうるさいから好き勝手に編集して使うってわけにもいかないんでしょうね。

 ま、映像と重ねるというコンセプトはともかく、演奏の方は(『ヤマト』のスキャットは別とすると)難の無い演奏だったので十分に楽しめました。
 数多作られ続けている日本のアニメ音楽の数に比べると、こういう機会で聴くことの出来る音楽は極めて少ないのが現状で、これではコンテンツ立国も何もありません。是非ともこのようなコンサートは続けていってほしいですね。

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