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2007.02.21

ゼロの使い魔 サウンドトラック

 今回はすでに続編の話が流れているアニメ『ゼロの使い魔』のサントラ盤を取り上げてみます。ヤマグチノボルによるライトノベル原作のこの作品、『灼眼のシャナ』に続く釘宮理恵のツンデレヒロインということで話題になりましたが、ツンデレ=沢近愛理という印象だった『スクラン』第1期の頃から比べると、ツンデレのイメージもずいぶん変わりましたね。(『つよきす Cool×Sweet』までいくとツンデレを何か誤解してるとしか思えないのですが)
 もともと原作を読んでたから作品の方はそこそこ馴染みがあるって感じで入れましたが、逆に目新しさとかは感じなかったから、特に注目するような作品でもなく、普通に楽しむぐらいの付き合いだったところです。

 この『ゼロの使い魔』の音楽を担当したのが光宗信吉。『アキハバラ電脳組』や『少女革命ウテナ』、近年では『遊戯王デュエルモンスターズ』などの作品で華麗な音楽を披露していますが、この人の本領としてはむしろ『ナースエンジェル りりかSOS』や『ちっちゃな雪使いシュガー』に見られる癒し系の音楽というイメージです。
 また、一時期、笠原弘子のライブプロデュースを担当していて、バックで生のピアノ演奏を聴く機会があったのも印象に残ってます。

 そんなところで、まずは収録曲の一覧です。40曲というのは昨今のアニメサントラでも多目の数字ですが、短い曲が多いというところでしょうか。

 01. First Kiss ~TV version~
 02. ガンダールヴ
 03. Good Friends
 04. うきうき気分
 05. Peaceful Time
 06. 清楚
 07. Cheerful Lady
 08. ルイズ
 09. Nice Days
 10. 恥じらい
 11. Sensual Fire
 12. Spy
 13. Uneasiness
 14. Soil Monster
 15. 悪女
 16. 情けない日々
 17. バカにふられて
 18. Battle in Bar
 19. Amorous Old Man
 20. Haunted House
 21. 恋の予感
 22. 憧れ
 23. 決意
 24. 勇気
 25. Secret
 26. Crisis
 27. Higher Sky
 28. 二つの月
 29. やさしさ
 30. Happy Things
 31. Passed Away
 32. 切ない想い
 33. 亀裂
 34. Empty
 35. Noble
 36. 祈り
 37. 舞踏会
 38. Palace
 39. Common People
 40. ホントノキモチ ~TV version~

 それではいつものように摘み食いしていきます。実のところアニメはまだ半分ぐらいしか見てないので、曲の使用状況とかイメージが実際と違ってる場合があるかも知れませんが、ご容赦を。(昨春以来、旧にアニメの本数が増えたので1週間分を見るのに3週間ぐらい掛かってる感じですから)

 「First Kiss ~TV version~」はOPテーマの1コーラスバージョン。歌ってるICHIKOって人は確か『まぶらほ』の主題歌を歌っていた人だと思いますが、ボーカルに張りのあるパワフルさを感じる人ですね。
 単なるタイアップ曲とまではいかなくても今風のイメージ主体の歌なのかと思ったら、「キスから始まる」とか「月が2つ」だとか「魔法」だとか、けっこう具体的に作品のツボを押さえた歌詞になっていて印象強い感じがします。

 「ガンダールヴ」はブラスのフォルテで始まるスピーディーなアクション曲。メインを奏でる爽快なストリングスが特徴的。クライマックスで活躍する主人公のテーマって感じで、ここはガンダールヴの力に目覚めた才人が破壊の杖とか、ゼロ戦を駆って活躍するシーンの音楽って感じです。
 光宗信吉の作品では『アキハバラ電脳組』のディーヴァの変身シーンの音楽とか、『遊戯王デュエルモンスターズ』で遊戯が究極のコンボを完成させて勝利するシーンの音楽とか、この手のアクション音楽に壮麗でさっぱりとしたきれいなメロディーが使われてたりするのが印象的で、この曲もその例に漏れません。
 しかし、この手の曲はサントラも終盤に収録ってのがいわばお約束なのに、一番最初に入れてしまって、いったいどうするんでしょう?

 「Good Friends」はドラムのリズムで始まる、うきうきするようなハイテンポの曲です。少し高音を奏でる木管とストリングスが爽やかな感じを与えてくれます。
 曲としては、ピンチに仲間が駆けつけてくれるとか、戦いに勝って仲間のところに無事に帰って来るとか、戦いの場面から日常場面への繋がりとか、割と幅広く使いどころがありそうな感じです。

 「うきうき気分」はドラムのリズムがややゆったり気味なテンポの矩形波音の曲に始まり、後半でエレキギターのフィードバックが激しい曲に変わって行きます。
 才人のテーマって感じでのどかな学園の日常生活で、なんかお調子者って感じの音楽ですが、どこか異世界に飛ばされて孤独な才人の心情が漂ってる感じがします。
 「Peaceful Time」は日の出を告げるホルンのファンファーレ風の始まりから、鳥のさえずるようなストリングスの幽玄な調べに続いていく、夜明けのイメージ。平和な日々の始まりとかいう感じの、いわばお約束のパターン曲って感じで、あまり作曲者の個性がありませんね。

 「清楚」はバイオリンが主体の室内楽風の曲。優雅な宮廷音楽とかを意識した感じのアンリエッタのテーマかな。ゆっくりとした4拍子の曲で、全体的な構成はABACAの小ロンド形式。メインのモチーフがAで、Bはおとなしくゆったりした曲調で、Cはマイナー風。
 この辺のこざっぱりした作りは光宗信吉の得意とするところなのか、他の作品でもこういう室内楽風の音楽は多いですね。日常的なシーンで使われていたら普通の劇伴ですが、宮廷シーン等で使われてると現実音楽なのか単なる劇伴なのか混同しそうです。

 「ルイズ」は、アップテンポに奏でられるルイズのテーマ。ブラスのファンファーレから始まって、モーツァルトの「アイム・クライネ・ナハト・ムジーク」を思わせるようなハイテンポのストリングスの調べ。そこにエレキギター等が絡んでくる、意外と激しい曲です。
 クライマックスでルイズがぶちきれて使えない魔法を暴発させるシーンというのが真っ先に思い浮かぶところですが、初期には才人がギーシュ相手の決闘で剣を使うシーンなんかにも使われてたのが印象的です。

 「恥じらい」は小刻みなテンポのピアノ曲。才人に想いを寄せるシエスタとか、デレ状態のルイズとか、そんな感じの曲なのかな。スタッカートの効いたエチュードって感じの曲ですが、これも光宗信吉らしいピアノの小品ですね。
 「Sensual Fire」はサックスによるアダルトな雰囲気の曲。ラウンジで語らう大人の恋ってイメージですが、ここでは媚薬の香を漂わせるようなキュルケの誘惑って感じですね。

 「Spy」はフィンガークラッカー風のパーカッションや足音を思わせるストリングスとシンバルの音など、文字通りスパイ風の曲。何かパブリックドメインのBGM集にそのまま入ってそうな、パターンの曲って感じで特徴的なものはあまり感じられませんね。
 「悪女」はハープ風の音による神秘的なサスペンス曲。オーボエか何かが人の唸り声のような音を出してるのが印象的です。タイトルからすると土くれのフーケのミステリー的な感じを表した曲ってところでしょうか。
 「Amorous Old Man」はウッドブロック風のリズムに、呪文だかお経だかのような不思議な男声コーラスが掛かる一種独特な雰囲気の曲。タイトルは恋する老人って意味だからミス・ロングビルにお熱を上げてる学院長のオスマンの曲って感じですが……

 「憧れ」はゆったりとしたハープのアルペジオに、バックを流れるような透明感のあるストリングスが印象的な曲。幼い頃の甘酸っぱい憧憬とか、トンネルを越えたら光の向こうで待ってるものとか、そんなイメージの曲ですが、ルイズにとっての婚約者ワルドのイメージなのかな。
 「決意」はスリリングでアップテンポな曲。出だしはサスペンス風で、ヘビメタ風の激しいベースギターのアクション系の緊迫感のある盛り上がりに展開していく曲。危機に立ち上がる決意って感じですか。
 「勇気」はアイキャッチ風の音楽から始まり、アップテンポのアクション曲が盛り上がっていく曲。激しいエレキベースに、ストリングスの何か訴え掛けるような力強い旋律がややアンマッチな感じがして印象的です。

 「二つの月」はシンセとピアノによるゆったりとした寒色系の幽玄な曲。地球と違って二つの月が夜空に輝いてるところが異世界であることを否応無く思い知らせてくれるわけですが、そんな異世界に1人紛れ込んでしまった才人の孤独さが、異世界の神秘性とともに心に訴え掛けてくるような印象的な曲です。
 「やさしさ」はサックスによるゆったりとしたバラード風の曲。他人への思いやりを感じるハートウォーミングな曲なのは確かですが、その一面、そんな優しさに触れることで故郷への思いを募らせる才人の心情を描いたようなイメージの曲ですね。ひしじしと感情が伝わってくる名曲です。
 「Happy Things」は軽やかなピアノが出だしの、前曲に引き続いてキャラクターの心情を吐き出してるような曲です。才人が倒れたときとかにルイズが見せる優しさ。そんなルイズの態度にこの世界での居場所を見付ける才人……そんな感じの曲ですか。後半のサックスが奏でる心の揺れのような演奏が印象的です。
 「Passed Away」はゆったりとしたもの悲しいピアノとバイオリンが主体の曲。破壊の杖とかゼロ戦とか、この世界の過去に残された才人との世界とのつながりを通じて、孤独で絶望的な才人の運命を暗示してるかのような悲痛でノスタルジックな雰囲気の曲です。
 「切ない想い」は物悲しいピアノソロに始まり、そこにチェロが入ってくる感じの曲。傷を舐めあうような悲しい恋のイメージですが、ワルドに裏切られたルイズの想いとか、陥落目前のアルビオンのウェールズ皇太子を想うアンリエッタの想いとか、そんなところでしょうか。
 「舞踏会」はテンポの速いワルツ。舞踏会と言っても本格的な宮廷の舞踏会というよりは、トリステイン魔法学院の行事の舞踏会って感じで少し気軽な室内楽って印象ですね。
 「Palace」は華やかなファンファーレから始まる豪華な室内楽風の曲。こちらはそのものズバリの宮廷音楽って感じで、ストリングスのフォルテがずっと続く華やかな曲です。謁見の間のアンリエッタのバックに掛かる音楽って感じで、王国の危機を救ったルイズたちが表彰される場面などに使われる感じで、現実音楽的な印象が強い曲です。
 「Common People」は民族楽器風の弦楽器にフルート、フラダンスのパーカッション等によるエスニックなお祭風の音楽。用途としてはお祭というより町の喧騒を象徴してるという感じで、アニメの劇伴では良くある使われ方ですね。
 異国情緒ってイメージなのは才人の視点から見て異世界の町ってこともあるんですが、ルイズたち貴族から見ても庶民の世界というのは異世界だってイメージも含んでるんでしょう。

 「ホントノキモチ ~TV version~」はED曲のTVサイズ。歌はルイズ役の釘宮理恵が歌っていますが、異世界ファンタジーものにしてはずいぶん俗世的で内面的な曲ですね。ルイズ名義で歌ってるにしてはずいぶん曲の印象が幼いって気がしますが、恋愛は晩熟だってことでしょうか。

     ☆ ☆ ☆

 この作品の舞台である中世風のファンタジー世界は、『りりかSOS』とか『ちっちゃな雪使いシュガー』で印象的だったクラシカルな室内楽風の音楽という光宗信吉の特徴的な面がうまく活かせる題材だったということもあって、音楽が作品を盛り上げるという点では良作のひとつだと思います。
 自身がピアニストでもある光宗信吉ならではのピアノ曲も何曲か堪能できますし、この手の作品に不可欠なかっこいいアクション曲も揃ってるし、それだけで申し分ないくらいのサントラであるはずなのですが、どこかちょっと物足りない感じがするのは何故でしょうか?
 主要曲を除くと、いかにもなパターン的な曲がいくつかあったのもそうだし、一番派手な曲が初っ端に出てきてるから、後半で尻すぼみに感じたってところもあるかもしれません。パターン的な曲は、そもそもそういう音楽にして欲しいという製作側からの要求だったのかも知れませんが、残念なのは確かですね。
 テレビシリーズの続編もあるみたいなので、そちらに使われる新曲にも期待したいと思います。

(発売元:ハピネット KDCA-76 2006.08.23)

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