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2007.02.27

天球の音楽 牧野由依

 牧野由依という名前を初めて意識したのは『ツバサ・クロニクル』のサクラ役として。丹下桜はないだろうから誰がやるのかって興味を持ってたから、とりあえず新人の声優さんとしては声を聴く前に名前を知ったって感じでしょうか。結局のところ『ツバサ・クロニクル』のキャスティングはその他のキャラも含めて以前のCLAMP作品のキャスティングとは一新されてしまったから、サクラだけがどうこうという注目のされ方はされず、素直に声を受け入れた感じでしたね。
 一方、歌の方は同時期に始まった『創世のアクエリオン』のEDの歌手に抜擢されていましたが、当初は菅野よう子がどこかの子役の女の子でも探してきて歌わせてるのかと思ったくらいで、歌手の名前すら意識してませんでした。それが牧野由依だと知ったのはサントラ盤で歌手の名前を確認した時でした。
 歌手としての牧野由依を強く印象付けてくれたのは、やはり『ARIA The ANIMATION』と『ARIA The NATURAL』のOP曲を2作続けて担当したことでしょうか。この2作品で発揮された癒し系の歌声には牧野由依という存在を改めて深く意識させられました。

 そんな牧野由依のファーストアルバムが、この『天球の音楽』です。ビクターの声優アルバムの傾向からすると、テーマ性を持ったオリジナルアルバムを出してくるのかと思ったのだけど、若干の新曲以外は既製曲を集めたベスト盤だったのが意外でしたが、本人はまだ学生さんなんでアルバム作りだけでスケジュールを詰め込めないとかいうところでしょうか。
 収録曲は以下の通り。

 01. オムナ マグニ
 02. ウンディーネ
 03. 幸せのため息
 04. もどかしい世界の上で
 05. シンフォニー
 06. ユーフォリア
 07. ジャスミン
 08. 夏休みの宿題
 09. 髪とヘアピンと私
 10. ユメノツバサ
 11. 永遠の想い
 12. CESTREE
 13. 雨降花-Album Version-
 14. アムリタ

 ベストアルバムと考えたら普通かも知れないけど、14曲も入ってるのは割りとC/Pが高いアルバムかと思います。
 では、個々の曲について。

 「オムナ マグニ」は『創世のアクエリオン』のED曲。オルゴールチックな音楽で、どこか西洋風の美少女が花園で鼻歌を歌ってるようなイメージに少し宗教がかったようなミステリアスなイメージがあります。
 どこかよく知らない外国風の歌詞で、初めて聴いた時は菅野よう子がまた変な歌をって印象でした。前述のように牧野由依の歌を初めて聴いた曲なのですが、サントラを買うまではあまり歌手自身が誰なのか意識していませんでした。
 曲自身の神秘的というか奇妙な印象はさておき、コーラスがけっこうきれいな曲ですね。

 「ウンディーネ」は『ARIA The ANIMATION』のOP曲。透明で流れるようなボーカルで、まるでネオ・ヴェネツィアの空気に溶け込むようなイメージです。牧野由依をはっきり歌手として意識させてくれた忘れられない曲と言えます。
 『ARIA』の主題歌らしく、バックはギターやピアノがメインだけど、その一方でストリングスがけっこう曲の印象に対するウェイトを占めてるような気がします。ボーカルがメインの曲というよりも、ボーカルとバックが互いになくてはならないくらいに強く結び付いていて、それが作品の雰囲気作りに重要な働きをしているように思います。

 「幸せのため息」はこのアルバムのオリジナル曲かな。拍手のようなリズミカルなパーカッションが特徴のポップス風の曲。バックはアコースティックギター、サックス、エレキベースって辺りが中心でしょうか。
 こういう派手目の曲でも透明な歌声は健在で、弾むような軽やかなノリの曲ですね。リフレインのアカペラ風のところがややスローダウンしたペースでボーカルが強調されてるのが絶品で、強く印象に残ります。

 「もどかしい世界の上で」は『N・H・Kにようこそ!』の2代目ED曲。ピアノの静かなイントロから一転してロックバンド風のバックミュージック。牧野由依の曲にしてはかなりハードな音楽って印象ですが、ここでも透明感のあるボーカルはけっしてバックに負けていません。
 理不尽な世界に小さな胸を精一杯に張り上げて抗議してるって感じが非常に良く現れていて、思わず共感に誘われてしまいそうです。牧野由依の声にこんなにパワーがあったのかと非常に実感させてくれる曲ですね。

 「シンフォニー」は「ウンディーネ」のC/W曲。ギターをバックにゆっくりとしたバラード風に始まる曲です。途中からドラムスとか入ってきてバックが厚くなりテンポアップしてくるけど、ボーカルも負けじと頑張ってます。2コーラス目の直後、間奏の前に新しいメロディーのフレーズが入ってくるのが斬新で印象的。
 去り行く季節を切なく感じつつも、それを糧にしていくしたたかさ。恋をして強くなっていく女の子って感じの曲でしょうか。

 「ユーフォリア」は『ARIA The NATURAL』のOP曲。ネオ・ヴェネツィアの風に乗って季節を移ろっていく感じの曲。相変わらず歌の妖精としか言えないような見事な歌声が魅力的な曲です。
 シンセパーカッションの水面を叩くような音で始まってるのが印象的。「ウンディーネ」に比べるとボーカルが主張し気味な感じがします。とくにサビの辺りのボーカルの力強さは全然違う印象を与えますが、どちらの特徴も合わせ込んで歌い上げてる辺りが素晴らしいです。

 「ジャスミン」は「アムリタ」のC/W曲。ややマイナーなメロディーで語られるような曲で、しっとりとしたボーカルが特徴です。サビの部分でチャイニーズ風というか、エスニックな旋律がポイント。
 リフレインの手前の暖かな感じの歌い方がとても印象に残ります。全体的にボーカルはくっきりとしてしとやかな感じですね。

 「夏休みの宿題」もこのアルバムのオリジナル曲かな。ギターのフレーズの後、ブラスを交えた派手なイントロで始まるアップテンポの曲。このアルバムでは一番景気のいい感じの派手な曲ですね。
 囁くような感じから次第に力強く歌い上げていくボーカル。ギラギラした日差しの中にくっきりと刻まれる夏休みの出来事って感じです。まだ未練の残るひと夏の恋を、やり残した宿題に重ねてるって感じの、レモン色の甘酸っぱい青春の1ページってところでしょうか。

 「髪とヘアピンと私」は『ARIA The NATURAL』の挿入歌。『ARIA』のボーカルアルバムでは藍華役の斎藤千和が歌ってますが、本編では斉藤千和バージョンだけじゃなく、牧野由依バージョンも使われていたようです。
 曲はピアノ伴奏によるしっとりとした感じで、囁くような語り口のボーカル。ややかすれがかった声が珍しいかな。「ウンディーネ」や「ユーフォリア」と違って、感情的で弱々しい印象です。
 アニメでは藍華が伸ばした髪の毛を燃やしてしまって泣く泣くショートカットに変えた話で使われていた曲ですね。今日から自分は変わろうとイメチェンしたけど、どこか不安げで自信が無いって感じがよく現れてる感じです。

 「ユメノツバサ」は『ツバサ・クロニクル』の挿入歌。ややスローテンポのロック調の曲で、淡々と歌い上げてる印象。立ち去っていく世界への哀愁と次の世界への希望を織り成した、時空の放浪者としての切なさを表した曲かな。
 アニメでは1つの世界でのエピソードが終わり、サクラたち一行が次の世界に旅立っていくというシーンに使われていて、非常に印象に残る曲で、思わずつられて口ずさんでしまいそうです。この終わりの無いような旅の行き着く先に、いったい何が待っているのだろうか……

 「永遠の想い」は『ツバサ・クロニクル』のドラマCDの収録曲。アニメで使われたかどうかはわかりません。
 ゆったりとしたテンポの曲で、ややハスキーがかったおとなしめでたどたどしいボーカルが、記憶を失って心細いサクラの心情を歌ってる感じですか。夢のようにはかなく遠いけれど、ずっと想い続けてきた恋。どこか幻のようなファンタジックなイメージの曲ですね。

 「CESTREE」は『ZEGAPAIN』の挿入歌。そういえば牧野由依もメイウー役で出てましたか。
 微かに囁くような声を重ねていくような歌で、フレーズはどこか断続的。全体的に神秘的かつセクシーな感じがして、特にラストの「チュッ、チュッ、チュッ」って辺りが艶かしい感じがします。神話の世界を跳ね回るニンフのようなイメージです。

 「雨降花-Album Version-」は「ユーフォリア」のC/W曲のアレンジ版。ゆったりとして柔らかく温かなフレーズの曲。雨続きで外に出かけられずに家で恋人を思うような、切なさを感じるバラードです。
 雨音に託してしんみりと染み渡る恋心。その感情を張り上げた状態でもちゃんと声が伸びてるボーカルは見事としか言えません。リフレイン後の終わり方が切なさをより強調してる感じで、心に沁み込みます。

 「アムリタ」は『劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君』のED曲。劇場版はまだ見てないので曲のイメージしかわかりませんが、ピアノ伴奏でしみじみと語り込む感じで始まるバラードです。
 サビになって急激に盛り上がって歌い上げる感じになるのが、かなりコントラストが強すぎる感じで、さらに最後の「アムリタ」だけ、ポツンと置き残された感じになってるのがやけに印象的です。ボーカルはとことんピュアな感じで、サクラの心情を表した曲ってところなんでしょうか。

     ☆ ☆ ☆

 元々から音楽をやってる人なので、歌に関して文句の付けようはありません。歌声に恋したと言っても過言では無いくらい魅了させてくれました。まさに「歌姫降臨」と言ったところです。
 最近は「声優界の歌姫」といってもずいぶん安売りされて、あちこちでたくさんの人がそう呼ばれたりしてるみたいですが、私の感覚でそれに値するのは笠原弘子、岩男潤子、坂本真綾、それにこの牧野由依の4人ぐらいでしょうね。
 牧野由依は歌声にそれだけの魅力を持った人なので、これからの活躍に期待は大きいです。けっして一過性で使い捨てにされたりすることなく、大事に育てていってもらいたいですね。

(発売元:ビクター VICL-62167 2006.12.06)

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