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2006.12.20

美郷あき Sincerely

 美郷あきの名前を初めて目にしたのは『舞-HiME』のエンディング。栗林みな実のアップテンポで軽快なオープニングに比べると、ずっしりとしっかりしたバラードを歌う人を持ってきたなという印象でした。で、その印象から名前は知らないけどスタジオミュージシャンとかそっちの方で経験の豊富な人なのかと思ってたんだけど、どうやらこの曲がデビュー曲だったことを知ったのは最近イベントで本人が語ってるのを聞いたからです。

 これまでのアニメソングを聴いてきたイメージでのこの人の歌の特徴というのは、とにかく雰囲気が重いということです。いや、声が重いとかそういう意味ではなくて、歌詞の行間にある目に見えないけど何か大切なものを、そのまま大きな袋に詰め込んで引き摺り回してるって感じなんですね。他の歌手が歌ったならもっと軽快に歌ってるような曲でも、この人に掛かればずしりと響いてくるって感じです。
 恐らく感受性の物凄く優れた人で、それを歌にちゃんと盛り込んで歌える人なんですね。

 今回はそんな美郷あきのファースト・ベストアルバム『Sincerely』を聴いてみましょう。
 では、収録曲の一覧です。

 01. 明日をとめないで
 02. 夢にみた楽園
 03. Silent wing
 04. 少女迷路でつかまえて(berry's maturing ver.)
 05. モンタージュ
 06. 君が空だった
 07. UNLIMITED FIRE
 08. Goal to NEW WORLD
 09. before
 10. true love?
 11. ふたりが忘れない
 12. 君が空だった(accoustic ver.)

 「明日をとめないで」はアニメ『よみがえる空』のOP曲。何かをやり遂げるという力強い意思、目標に対する希望、揺るがない決意……そんなものをしっかりと歌い上げてる曲で、ストレートにポジティブな感じの曲です。
 バックはストリングスを中心に音が厚めで、ドラムもかなり強めの演奏であり、歌詞の持つ力強さを一層引き立ててる感じ。イベントで本人が2006年のオープニングソングだというようなことを語ってたのですが、時期的なものは別にしても、何かを始める時に気合入れに聴くのに良い感じの曲ですね。

 「夢にみた楽園」はPS2版の『ガンパレード・オーケストラ 白の章』のOP曲。白の章ってことは青森の部隊の話ですか。
 他の美郷あきのアニソン系の曲に比べたら少し軽めの感じですね。サビの部分で曲調が変わって、アニメ版の『ガンパレード・オーケストラ』に近い雰囲気を感じさせてくれる曲ですが、放映当時のCMでけっこう聴き慣れてたからそういう感じがするのかな? でも、アニメ版のOP映像にこの曲被せてもあまりイメージが変わらないような気がしますね。
 個々のフレーズは前向きなんだけど、全体的に未来に対する希望が見えない痛々しい決意。それを無理に強がって笑顔を見せてるって感じの曲なんですが、それが幻獣との絶望的な戦いの最中ってイメージを上手く描いてるように思います。

 「Silent wing」はPS2版『舞-HiME 運命の系統樹』のED曲。
 どちらかというと困難に挫折して諦め、すがってきたものを突き放したって感じの冷めたイメージの曲。それでいて、まだこだわりを引き摺り続けてるって痛々しい心情の歌なんだけど、どこか歌い方が軽めに感じるんですね。この人の場合、ふだんの曲からして割と重い印象を受けるから、こういう本来なら重さの目立つ曲も相対的に軽く感じてしまうとか、そんなところなのかなぁ。歌詞の割には淡々と聴こえる曲ですね。
 このPS2版、OP曲はALI PROJECTでアニメ版とがらりとイメージが違っててまったく別の作品って印象なんですが、EDの方は同じ美郷あきを使って何とか世界観をつなげてるってところですか。でも、微妙に狙いどころが違うのは曲を聴いただけでも明らかですが……

 「少女迷路でつかまえて(berry's maturing ver.)」はアニメ『ストロベリー・パニック』のOPテーマのアレンジ曲。ややスローテンポのダンスリズムの曲に仕上げられています。
 原曲は割とテンポ良くて軽めの曲なんだけど、歌詞とか作品イメージに含むところがありすぎるからか、美郷あきのボーカルも何かいろいろと引き摺ってるってイメージが感じられたのだけど、こちらは同じ曲でもこうも違ってくるのかというくらい軽いイメージに聴こえます。
 そうは言ってもサビの部分の歌い方は原曲のイメージをそのままの歌い方に感じられるんですが、もっとも、原曲に付加されてるアニメ作品の内容からくる後ろめたさみたいなものが払拭されてるぶん、純粋に曲だけのイメージですっきり聴けるってところでしょうか。

 「モンタージュ」はPCゲーム『最終試験くじら』のイメージソングということですが、あまりよく知りません。PCゲームといえばエロゲですが、最近はエロゲ原作のアニメ作品も普通になってきたこともあってか、ランティスは将来のメディアミックス展開を睨んでこのジャンルにも積極的に手を出してるみたいですね。
 曲はピアノのイントロで始まるスローテンポな、美郷あきらしく歌い上げてるバラード曲。モンタージュというのは記憶をたどって再現した顔って感じだけど、はっきりとした顔の記憶が無くて、どこかあやふやなそんな物に頼ってるってあたり、相手のことをずっと想ってるってようなことを言ってるけど、本当はいい加減って感じがするなぁ。
 リフレインの出だしのアカペラ部分の歌い方が美郷あきらしさが十分に引き出されてるって感じで、なかなか良いですね。

 「君が空だった」はアニメ『舞-HiME』のED曲。これが美郷あきの基本だっていう感じのバラード系の曲ですね。
 歌詞はそんなに重くもない普通の曲なんだけど、この人が歌うとどうも情感を込めすぎて重く感じられてしまうんですね。ま、基本的に歌い方が濃い人なんだろうけど、曲によってはほとほどにさっぱりと歌った方が曲本来の爽快感とか活かせるように思うんだけど、どうなんでしょうか。

 「UNLIMITED FIRE」はPS2版『サイバーフォーミュラ ROAD TO THE INFINITY 2』のOP曲。
 作品が作品だけにテンポの良いテクノトランス風の軽いノリの曲ですね。それだけに他の美郷あきの曲とはイメージが違うって感じですが。それでもサビで曲調が変わってるところあたりで美郷あきらしさが発揮されてるようです。
 歌詞がイメージ主体というか、どうも支離滅裂で何を言いたいのか全然わからないってのが難点ですね。さすがにこれじゃ、美郷あきも情感を込めるところが見付からないって気もしますし……

 「Goal to NEW WORLD」「Silent wing」のC/W曲。ただただアップテンポでノリの良い曲ですが、特に何かのタイアップ曲というわけではないようです。
 軽く、何かすべてのことが吹っ切れたように、ひたすら突き進んで行ってるってイメージの曲ですね。美郷あきにもこんな曲が歌えるのかって感じの驚きの曲です。内容はひたすらポジティブに希望を歌い上げてるって感じですが、何も引き摺るものが無いとこんなにストレートに歌えるのかってところです。ま、とにかく必聴の1曲かな。

 「before」「少女迷路でつかまえて」のC/W曲。バックはギターがメインの、ややゆっくりめの曲。やはりアニメとかのタイアップで作品内容に引き摺られたりするものが無いと素直に軽く歌ってるって感じですね。
 歌詞がどこか少女っぽい能天気な曲だと思ったら、作詞はmeg-rock(日向めぐみ)ですか。けっこうリズミカルで素直に楽しむには良い曲なんだけど、どこか美郷あきには似合ってないって感じで物足りない気がしますね。

 「true love?」「くちびる白昼夢」のC/W曲。これもバックがギターメインのスローテンポでアコースティックな曲。歌い上げるという曲ではなく、ちょっとおしゃれな感じにまとめてるって感じだけど、美郷あきのボーカルとしては少し弱々しい感じがするかな。
 雰囲気的に夢を見てるようなふやふやとした軽さがあるって印象。本人がダンスをやってるみたいなので、どこかステップを踏みたくなるような曲に対しての相性は強いようです。

 「ふたりが忘れない」はアニメ『ガンパレード・オーケストラ』のED曲。スローテンポでバラード気味です。
 何かもう失われてしまって取り戻せない大切なものを振り返ってる感じの曲で、後悔とか悲しみというものを微妙に引き摺ってて、そこが美郷あきらしさを引っ張り出してるって感じですね。
 ある意味、「君が空だった」と共に美郷あきという歌手のイメージを作り上げたような曲であり、その視点から見ればけっこう味のある曲と言えるかも知れません。

 「君が空だった(accoustic ver.)」は影山ヒロノブのアレンジとギターによるアコースティックバージョン。ま、原曲のメロディーが変えられたりしてるわけじゃないんですが、いかにも影山ヒロノブっぽいイメージに仕上がってますね。キッズステーションで放送してる『アニぱら音楽館』で美郷あきがゲストの回にこの曲が影山ヒロノブとのセッションで歌われたのですが、この時の影山ヒロノブによるサビの部分の歌い方がそのまんま出てるって感じで、原曲とはずいぶん印象が違います。
 全般的にボーカルは美郷あきにしてはおとなしめ。ま、これも「少女迷路でつかまえて(berry's maturing ver.)」同様、新たにアレンジしなおされることでタイアップ作品のイメージに引き摺られることがなくなったぶん、イメージが軽くなったって感じですか。

     ☆ ☆ ☆

 アレンジバージョンの2曲以外はすべてタイアップ曲やシングル盤からの再収録という、文字通りのベストアルバムですが、アニメやゲームとのタイアップ曲が大半とはいえ、個々の作品のイメージよりは本人のボーカルのイメージの方が先に立つ曲ばかりなので、単一のアルバムとしてもバランスは悪くはありません。
 ただ、C/W曲まで入ってるくらいなら「くちびる白昼夢」が入っていないというのは中途半端な気がします。そりゃ一般的なアーチストなら現行シングルの曲がベスト盤に入らないというのがセオリーなんですが、作品の放送時期に合わせた売り上げがメインのアニソン系シンガーなら、もう放送が終わって2ヶ月になる作品の曲を出し惜しみしたって意味無いんじゃないかと思います。
(ま、DVDはまだリリース中だから、TVで未放映の地方とかDVDで初めて見るという人にとっては現行の作品ってことかも知れませんが)

(発売元:ランティス LHCA-5060 2006.11.22)

Sincerely
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