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2006.11.02

田村ゆかり 天使は瞳の中に

 田村ゆかりといえば、昔、「桜井智がまたミンメイを歌ってら」(註1)と買った『マクロス・ジェネレーション』のCDでテーマソングらしき曲を歌ってたのが名前の覚え初めで、その後『デビルマンレディー』や『青山剛昌短編集』のテーマ曲を歌ってたのを聴き、その頃はもっぱら歌の人かとイメージしていた覚えがあります。
 その印象が変わったのは『ぴたテン』の美紗役で今に繋がるロリ系の声を耳にしたときで、それ以来、森野苺、芳乃さくら、高町なのは……とカウンターパンチを連続で食らわせられっぱなしで忘れられない声優さんになってしまいましたが、以前とはすっかり変わってしまったなぁという印象が強いですね。

 再び歌で田村ゆかりに関心を持ったのは『魔法少女リリカルなのは』辺りですが、アルバムを聴いてみようと思ったのはつい最近になってからです。
 初期のポリドール時代はアニソン関連のシングルをけっこう出していたものの、アルバムとしてはミニアルバム1枚。このミニアルバムは現在入手困難という感じでamazonのユーズド価格でもとんでもない値段が付いていますが、さすがにそんなとこまで手が出せないので、普通に入手できるコナミ移籍以降のアルバムをぼちぼちと聴いていこうかと思います。

 そんなわけで、今回は少し古いけどコナミから出た田村ゆかりのファースト・フルアルバム『天使は瞳の中に』です。古いと言っても2001年のアルバムですから、自分の中ではごく最近のアルバムって感覚ですが……
 それでは曲目一覧。

 01. プロローグ~lalala…~
 02. summer melody (album version)
 03. まっすぐな心
 04. 春色の風,今も…。
 05. in the Oak wood
 06. スマイル スマイル
 07. 天使じゃなくても
 08. あの夏を忘れない
 09. A Day Of Little Girl~姫とウサギとおしゃべりこねこ~(album veresion)
 10. 青空にあいたい(album version)
 11. エピローグ

 「プロローグ~lalala…~」は文字通りアルバムのプロローグとして置かれているゆっくりとしたテンポの短い曲。どうもエフェクト掛けまくりで、シンセベースのノイジーな伴奏が続いてる感じで、聴覚上、あまり良い印象をもてない作りです。
 ボーカルはその上をゆったりと重ねてる感じで続きますが、最後に「きっとね」の繰り返しで終わってるのが印象的ですね。

 「summer melody」はちょっぴり夏のイメージがするポップなサマーソング。甘ったるいボーカルにやはりシンセベースのノイジーな伴奏が重なってて、ちょっとボーカルが殺されてるって感じがします。ドラムスは明らかに打ち込みとわかる単調さが不自然さを出してて、全体的にはサビで急に激しくなる、安っぽいゲームの主題歌って作りなのが残念かな。
 歌詞は夏のある日のよくある恋愛ソングって感じでやや可もなく不可もなくという感じで無難といえば無難。しかし、この甘ったるい歌声で「恋は戦い」と言われても実感も何も無いですね。
 間奏の後でサビのリフレインがあるのかと思ったらそのまま終わっちゃう終末部分の囁くようなコーラスがけっこう効果的な印象を与えてくれます。全体的にはこのアルバムで一番元気の良い曲かな。

 「まっすぐな心」は何か迫ってくるような効果音が被るイントロで始まる曲。テンポはややゆっくりで、囁くというよりも機械的に音を置いてるような歌声が流れてくる感じです。サビに向かって盛り上がってくるにつれて徐々にボーカルにも感情が入ってきていますが……全体的に曲の狙いがよくわからない作りですね。
 歌詞は、寝ぼけ半分な朝から新しい1日が始まるから、昨日までのことにはくよくよしないって感じで、どっちかというともうちょっと励ますような力強さを求められるような気がするんですが……

 「春色の風,今も…。」は失恋の思い出を振り返ってるような、スローロック系のおとなしい曲。出だしのあたりから曲はゆっくりなんだけど曲の切れ目が無いから、どうも息継ぎが難しそうな曲ですね。曲を作ってる方はどうせ打ち込み主体だろうし、どんな作りでも気にせずに済むんでしょうが、実際に声を出して歌う方は大変です。
 もっとも、田村ゆかりのボーカルもゆっくりでおとなしめの曲だとあまり声が出てないって感じがします。サビに向かって曲が盛り上がってきたらボーカルの方も伸びてきてるって感じですね。その中間辺りで早口風になってるところは効果的です。
 歌詞の感じが少しアダルトっぽい感じがしますが、この人の声でそれに見合えというのは無理な話で、この辺は曲自体の作りに難点ありと言うところでしょうね。リフレインのところでちょっと息切れしてる印象を受けるのもマイナス評価ですねぇ。

 「in the Oak wood」はオーボエだか、木管系のアコースティックな音(でも、やっぱりサンプリング音源なんだろうな)から始まるのが印象的な曲。これもボーカルの出だしは囁くような感じ。英語の歌詞がボーカルの弱さをカバーしてるって感じで、全体的には良い印象を受ける作りです。
 曲調はヨーロピアン風のムーディーなメロディーでけっこう雰囲気の良い曲ですね。
 歌詞は樫の木にもたれながら恋の思い出に浸ってるって感じで、避暑地での静かな午後ってイメージです。

 「スマイル スマイル」はややアップテンポな曲。こんな曲なら普通はあまり声を弄らなくて良いのに、エフェクト掛け過ぎって感じですね。ややハスキー掛かった田村ゆかりのボーカルが実に魅力的です。このアルバムを通して聴いてみて言えるんだけど、下手に透明感出させようと押さえ気味に歌わせるよりも、こうしてハスキーっぽいところをまっすぐに持ってきた方がずっと魅力的なボーカルになるような気がします。
 歌詞は遠く離れた街から久しぶりに帰ってきて友人たちに再会して励まされえいるという内容で、聴く者に元気を与えてくれるポジティブな歌です。典型的なアイドルソングの作りといえばそんな感じですが、魅力的な曲であることには変わりません。

 「天使じゃなくても」はシンセウェーブがテンポアップしていくような感じのイントロで始まる曲。間奏部のシンセウェーブが割りと印象的です。ボーカルは少し淡々とした歌い方から、サビに向かって甘くリズミカルになっていく感じ。
 歌詞の方はあなたが天使だったらとか、私が天使だったらとかいう感じで何か天使がスーパーマンのような万能の便利屋さんって印象を受けて、逆に天使じゃない自分たちなら何も出来ないのかって疑問が出てきたりするんですが……そこはあまりつっこむところじゃなく、甘い乙女っぽい天使のイメージを用いた歌ってことなんでしょうね。

 「あの夏を忘れない」はゆったりとしたアコーディオン風の伴奏によるイントロで始まる曲。アカペラっぽく始まるボーカルが、せつなく淡々と歌い上げる感じなのがなかなか魅力的。サビはマイナー気味ながらフラットでリズミカルな曲調で、とつとつと訴えかける感じに歌ってるのが印象的です。
 歌詞の内容は夏の最後の思い出作りと別れの予感って感じで、これまた夏を題材にした歌では定番みたいなものですが、語り掛けるようなボーカルの感じが、田村ゆかりの歌として上手く特徴付けてる感じで、かなり良い曲ですね。後奏がフェードアウトしていくところも、上手く余韻を引き伸ばしています。

 「A Day Of Little Girl~姫とウサギとおしゃべりこねこ~」は甘くロリっぽいボーカルの、田村ゆかりの本領発揮って感じの曲。ポップアップな曲ですが、やはりリズムに乗れる曲の方が自然に歌えるって感じですね。
 サビの単語の繰り返しがロリっぽさをいっそう引き立ててる感じで、リフレインの囁く感じがとどめを刺してくれます。
 このアルバムの他の曲と比べると、ピアノをメインに厚めの音を重ねてる伴奏が印象的です。ただ、生楽器ならサックスやエレキギターの入るだろう部分がいかにもシンセの矩形波って音で済まされてしまってるのが非常に物足りない感じがして残念です。
 全体的にいかにも田村ゆかりって感じを引き立てるファンシーな作りで、とても馴染みやすい曲ですね。

 「青空にあいたい」はパーカッションだけをバックにアカペラっぽいボーカルで始まる曲。囁くような感じのボーカルがやけになまめかしく聴こえてきます。徐々にテンポアップしてリズミカルになってきて、かすかなコーラスとベースが伴奏に加わってきて独特の雰囲気が出てくる感じです。中間部でいったん曲が途切れて曲調が変わったかと思ったら、最初に戻ってるって感じの作りなのが意外性を感じさせます。
 歌詞は雨の日に一人ぼっちでカレシのことを思ってブルーに沈んでるってところですが、それを歌う非常にピュアな声が堪能できるのが魅力的な曲ですね。

 「エピローグ」は文字通り、アルバムの締めくくり曲。基本的に「プロローグ~lalala…~」と同じメロディーをベースに構成されていて、ノイジーな伴奏も同じ。極端にスローペースで囁くような感じで始まるボーカルですが、ややテンポアップして歌い上げる感じになったかと思えば、再び囁きに戻る感じ。
 アルバムの最初と対比させることによって、全体を振り返ってるというイメージを出しているのはオーソドックスな手法です。ラスト「忘れないで」とセリフで切ってるのが少し唐突な終わり方のようか気がして、何か物足りなさを感じさせています。この物足りなさが次のアルバムへの期待に向かうのか、それともせいぜいここまでのものとして終わってしまうのかが聴く人によって違ってくると思うんですが、なんか微妙なところですね。

     ☆ ☆ ☆

 う~ん……正直言って、メチャクチャ安っぽいアルバムって気がしますね。別に田村ゆかりの歌が安っぽいとかそういうわけじゃないんですが、安っぽいのは曲の作りとか伴奏とか……とくに伴奏、これじゃせいぜい80年代ぐらいのレベル。いまどきこんな安っぽいシンセの音で曲を作られても……という感じです。
 ま、コナミといえばゲームメーカーだし、コナミ矩形波倶楽部(註2)って名前が真っ先に頭に浮かんできますが。もっともそんなのには関係なく、単に予算の都合なんだとは思いますけど、せめて一般楽器のサンプリング音源をメインにしておいたら、こんなに安っぽくはならないと思います。

 アルバム全体の印象としては、何か華が無いなぁという感じ。ま、新人の声優さんを人気が出たから歌ででも売り出そうと気合入れて作ったアルバムというんじゃなく、けっこう歌を歌ってる人なのにフルアルバムが出てないからファンサービスがてら作ってみようって感じなんですね。それなら安っぽいのも納得だけど……
 それでも、田村ゆかりの魅力というのは収録曲の節々に現れてるし、そりゃ初めての人に訴えかけるようなものは無くても、ファンにとってはけっして悪くはないアルバムだと思います。

(発売元:コナミ KMCA-113 2001.07.04)

天使は瞳の中に
天使は瞳の中に

(註1)
 「桜井智」は現在の表記では「櫻井智」。
 これ以前に『マクロス7』の関連アルバムとして丸々1枚、桜井智が演じるミレーヌ・ジーナスがリン・ミンメイをカバーするというコンセプトのアルバムが出ていました。もっとも、《FireBomber》のミレーヌにしてはアコースティック系にしっとりとアレンジされた曲が多く、とくに『愛・おぼえていますか』がバラードになってたのは違和感を感じましたが。
 『マクロス・ジェネレーション』の方はそれのリベンジとして期待して買ったというのが正直なところです。

(註2)
 X68000ユーザーとしては『出たな!ツインビー』の音楽が忘れられないところ。これのためにMIDIボードとRoland SC-55を揃えた気が……アルバムも何枚か買ってた記憶があります。現在ではPC本体に音源モジュール内蔵が当たり前だから、わざわざMIDI環境揃えて音楽聴くなんて手間は無くなりましたけど。

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