« Fate/stay night A.OST | トップページ | BLOOD+ ORIGINAL SOUNDTRACK 1 »

2006.08.08

坂本真綾|夕凪LOOP

 声優さんの中には役柄としての演技よりも音楽活動の方が印象に残る人がいて、グループこまどり時代の先輩に当たる笠原弘子なんかその代表的な存在なのですか、坂本真綾の場合もどちらかというとそういうイメージがあります。もっとも、彼女の場合は最近でもルナマリア(ガンダムSEED DESTINY)とか、藤岡ハルヒ(桜蘭高校ホスト部)とか、そっちのほうでもけっして印象が薄いわけではないのですが。
 でも、そういうイメージがあるのは、これまで大事に音楽活動を育んできたという実績が伝わってくるからですね。そんな彼女の音楽活動に転機を迎えたという感じなのがこのアルバムです。
 坂本真綾の歌と言えば出世作『天空のエスカフローネ』の縁か、長らく菅野よう子によるプロデュース作品が続いてきましたが、今回の『夕凪LOOP』は菅野よう子の世界から脱却したアルバムということで、今後の音楽活動を占うためにも注目されるところです。

 それでは収録曲です。

 01. Hello
 02. ハニー・カム
 03. ループ
 04. 若葉
 05. パプリカ
 06. My Favorite Books
 07. 月と走りながら
 08. NO FEAR / あいすること
 09. ユニゾン
 10. 冬ですか
 11. 夕凪LOOP
 12. a happy ending

 「Hello」は穏やかなバラード系の曲。坂本真綾らしいのびのびとしたボーカルが感じられます。アルバムの最初にアーチストの魅力をストレートに出してきた真っ向勝負の曲といえるでしょう。

 「ハニー・カム」はアップテンポのイントロで始まる曲。ところがボーカルが始まったとたんにドラムス以外の伴奏が引っ込んでしまう感じで、極力ボーカルを表に出した感じになります。透明感あふれるボーカルがこれに応えるように曲をリードしていきます。サビになって普通に伴奏が復活する感じですが、爽やかで気持ちの良い曲です。

 「ループ」は『ツバサ・クロニクル』(第1期)のEDで耳に馴染みが深い曲です。歌うというより歌詞を紡いでるという感じのバラード。サビになって一転してのびやかなボーカルが歌い上げるという感じですが、歌の魔術師のような作品ですね。とりあえず現在(アルバム発売当時)の坂本真綾を代表する曲です。

 「若葉」はスローロックのリズムに、ゆったりとして澄んだボーカルの曲。タイトルに現れてるようにのびのびとした生命力とか若々しさというものを感じさせてくれる曲ですが、特にサビの部分の声の伸び具合が魅力的です。
 サビの辺りでテンションを落とした部分のボーカルがなぜか笠原弘子に非常によく似て聴こえるんですが、昔からのこととはいえ、こればかりはいつまで経ってもついて回るんでしょうか……

 「パプリカ」は少しトロピカルでポップな曲。どちらかというと原由子とか谷山浩子とか、その辺のニューミュージック系の印象を受ける曲で、キッチンから見たのんびりとしたちょっとポエトリーな日常風景ってイメージです。

 「My Favorite Books」はゆったりとしたテンポの曲調なのに激しいリズムのバックバンドに、どことなくアバンギャルドなボーカルの曲。曲全体がマイナー調がベースで、歌いにくそうな曲なのは確なように思われます。ちょっと馴染みにくい曲かな。

 「月と走りながら」はゆっくりとしたギターバックのアコースティックな曲。ボーカルの力が活きる曲ですね。途中で入ってくるバックコーラスがなかなか絶妙な味付けをしてくれています。曲中におもいっきり低音の部分があるのですが、ここばかりはさすがに声が苦しそうな感じです。

 「NO FEAR / あいすること」はピアノ伴奏でしっとりと歌い上げてる曲。やはりアカペラっぽいボーカルの魅力もさるものながら、この曲は途中で何度も複雑に曲調が変わってるのですが、それを見事に歌い切ってる辺りはさすがです。

 「ユニゾン」はなかなかユニークな曲ですね。ピアノ伴奏のアカペラな出だしから始まって、それがオーケストラバックに盛り上がってくるかと思えば、コーラスのユニゾンが独特のハーモニーを奏で、後半がらりとアップテンポな曲調のポップスバンドに変わったかと思えば、最後は再びピアノ伴奏のアカペラタッチに戻ってゆっくりと終了。
 曲の作りとしては様々な形態の伴奏とのユニゾンを転々と繰り返していくといった趣なんでしょうけど、ユニゾンという観点で印象に残ったのはコーラスのところです。この部分、まるで坂本真綾が複数いて歌ってるかのようにインパクトがあります。

 「冬ですか」は高らかなトランペットのイントロで始まる、少しルーズな趣のあるジャズ系のバックバンドの曲。少しアダルトでアップテンポな曲ですが、けだるく甘えるようなボーカルが特徴的です。サビに向かう盛り上がり部分の歌い方になかなか魅力を感じます。

 「夕凪LOOP」はピアノとエレクトリック系の楽器によるムードバンド風のバックバンドの曲。つぶやくような歌い方から始まって徐々に声を張り上げていく歌い方はどこかシャンソン風の雰囲気があります。サビの部分でそれは絶頂になるわけですが、最後までテンションを落とさず見事に歌い上げてるところが立派です。
 ただ、アルバムの表題曲なんですが、これがこのアルバムを代表するかというと、違うような気がしますね。

 「a happy ending」はピアノ伴奏のアカペラ風でメルヘンチックな感じの曲。やわらかく弾むような、スキップするようなメロディー。どちらかというとフォークダンスにでも流れてそうな曲です。サビの部分でコーラスが重なってる部分が印象的です。

     ☆ ☆ ☆

 坂本真綾のボーカルの魅力というものを改めて思い知らしめてくれた1枚です。
 菅野よう子という巣箱にいた雛が、立派に巣立って飛び立っていったという感じでしょうか。以前の坂本真綾に比べるとボーカルが一皮向けて、より主体性を持ってきたというところでしょうか。
 菅野プロデュースの作品はそれはそれで素晴らしいんだけど、坂本真綾の素の歌声を引き出してはいるものの、あくまで主体性は菅野よう子の音楽の方にあったという感じ。いわばボーカルというよりもコーラスとしての役割が大きかったんじゃないかなという気がします。
 今回のアルバムは明確にボーカルとしての主体的な役割を坂本真綾に求めていますし、素の歌声の魅力だけではなく、歌手としての技量まで引き出されているように感じました。主体的な歌手としての坂本真綾の旅立ちというところです。
 鳥籠で歌うカナリアが良いのか、野山でさえずるウグイスが良いのかは聴く人それぞれの嗜好ですが、個人的にはこれからの坂本真綾を期待したいと思えるアルバムだったと言えます。

(発売元:ビクターエンタテインメント VICL-61755 / 限VIZL-155 2005.10.26)

夕凪LOOP(初回限定盤)
夕凪LOOP(初回限定盤)

夕凪LOOP(通常盤)
夕凪LOOP(通常盤)

|

« Fate/stay night A.OST | トップページ | BLOOD+ ORIGINAL SOUNDTRACK 1 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3819/11331250

この記事へのトラックバック一覧です: 坂本真綾|夕凪LOOP:

« Fate/stay night A.OST | トップページ | BLOOD+ ORIGINAL SOUNDTRACK 1 »