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2006.07.07

Kanon Original Soundtrack

 『Kanon』は泣きゲーというジャンルを確立したKEYの代表作ですが、2002年に東映アニメーションによりアニメ化されています(以下、東映版)。その時のサントラ盤も2枚出ていますが、今回はオリジナルのゲーム版のサントラを取り上げます。
 何故いまさらゲーム版のサントラかと言えば、わかる人も多いと思いますが、秋から放映される京都アニメーション製作による新しいアニメ版(以下、京アニ版)に対する備えといったものでしょうか。以前の『AIR』でもゲーム版の音楽がそのまま使われていたようですが、それが今回の京アニ版『Kanon』にも踏襲されると見込んでのことです。

 ゲーム版と言ってもPCゲームは手を出したことは無く、最初に作品を見たのが旧アニメ版であり、これの録画のために当時は画期的だったハイブリッドレコーダーRD-X1を買ったと言うのも今は遠い思い出です。その後、予約特典の羽リュック目当てにソフマップで買ったPS2版を1回だけプレイしたら川澄舞ルートに行き当たったというのがすべてです。
 PS以前のコンシューマー機では音楽機能に制限が多かったのか、例えばPS版の『ToHeart』はPC版の音楽を新たにアレンジし直して録音しなおしたりしてて(PS版での新曲もありますが)、どちらのサントラ盤も出てたりして聴き比べてみると面白かったりするのですが、『Kanon』の場合、PS2ではその制限が緩和されたのか、PC版の音楽をそのまま使っているみたいですね。

 それでは収録曲を見ていきましょう。

 01. 朝影
 02. 夢の跡
 03. Last regrets(FullChorusVersion)
 04. 約束
 05. 2 steps toward
 06. 木々の声と日々のざわめき
 07. 彼女達の見解
 08. pure snows
 09. 雪の少女
 10. 日溜まりの街
 11. 笑顔の向こう側に
 12. the fox and the grapes
 13. 少女の檻
 14. 兆し
 15. 冬の花火
 16. 霧海
 17. 凍土高原
 18. 残光
 19. 風を待った日
 20. 生まれたての風
 21. 風の辿り着く場所(Full Chorus Version)
 22. Little fragments
 23. Last regrets(Short Version)
 24. 風の辿り着く場所(Short Version)

 たぶんほとんどMIDIによる打ち込みで、演奏はPCM音源モジュールを使ったものだと思われますので、楽器の名前のあるのは似た音色のものです。使用音色名そのものまで特定していませんから、雰囲気的なものとして受け取ってください。(ゲームもPS2版をちょっとプレイしただけなので、いい加減な記憶に頼ってます)

 「朝影」はゲームの起動直後、クレジットとか表示される画面で流れていたような印象がある曲です。フルート、ストリングス、グラスハープによる朝の目覚めのような音楽。曲の印象としては清々しくてピュアで、これからすべてが始まるって感じかな。
 「夢の跡」はOPテーマののメロディーを使ったゆったりとしたアレンジの曲。主人公(祐一)の夢や回想なんかのモノローグだか字幕だかのバックに流れてた感じです。オルゴールの音色がメインで、そこにグラスハープとかパーカッション、後半になってストリングスが加わってくるイメージ。微かな思い出とか記憶の断片を印象付ける曲ですが、曲の印象としてはやはり懐かしさだとか記憶の奥底の光景って感じかな。

 「Last regrets」は彩菜の歌うOPテーマ。ゆっくりとつぶやくような感じで歌い上げてるという感じで、物語に溶け込んでいくような雰囲気の曲です。東映版のアニメでは最終話で祐一があゆの入院してる病院に急ぐシーンに使われていたように思います。
 OP曲としては作品の展開への予感を抱かせるようなイメージがありますが、最初に聴いたのがアニメなので、挿入歌的な使い方の方が効果的な曲のような気がします。

 「約束」はタイトルメニューで入力待ちの画面で流れていた曲かな。オルゴールとグラスハープの音色でピュアな音色を奏でています。曲の印象としては、大切な思い出とともにこれから始まる何かの予感を感じさせられます。
 「2 steps toward」は日常の音楽。セーブデータのロード直後にこの曲をよく聴いたという印象があるから、1日の始まりとか、区切りの良い所で使われてた感じでしょうか。鉄琴、ストリングス、ベース、ドラムという辺りの音色がメインで、曲の印象としてはゆったりとした日常、(1日の始まりに)何かわくわくする期待というものを感じます。
 「木々の声と日々のざわめき」も日常の光景の音楽。前曲と比べると、何か新しい展開があったときに使われていた感じでしょうか。アップテンポのドラムとリコーダー系の音色とブラスのアクセントによる、爽快なメロディーが印象的です。冬空に少し眩しい光とか、新鮮さを与えるきびきびとした空気とか、そんな感じの曲ですね。

 「彼女達の見解」は日常でのヒロインたちとの触れ合いとか、そんな感じですか。スローテンポのマーチっぽいリズムで、ハーモニカ辺りの音色がメインで、低音のブラスとドラムという組み合わせ。曲としての印象は、何気ない日常でのちょっとうきうきする気分というところでしょうか。
 ところで「彼女達の見解」ってタイトルですが、これを見るとどうしても思い出してしまうのがアニメで真琴の拾ってきた猫にどんな名前を付けるか、あゆと名雪と真琴があれこれ考えてたシーンなんですが……
 「pure snows」はちょっと神秘的で運命的な展開を感じさせる曲。音色はピアノとグラスハープにドラムという感じで、ゆっくりとはっきりと、それでいて少し不安定でアドリブがかったピアノの音が全体を印象付けてる感じです。全般的にアダルトっぽさを感じさせる曲です。

 「雪の少女」は名雪のテーマ。ここからは各ヒロインのテーマが並んでる感じです。オカリナかクラリネット辺りの(というか、シンセウェーブっぽい)音色にポップなドラム。軽快に駆けてるような感じの曲ですが、そこはさすが陸上部のキャプテンというところ。この作品では一番アクティブな印象を与える音楽ですね。
 「日溜まりの街」は「約束」と同じメロディーをポップにアレンジした曲。雰囲気的にはあゆのテーマって感じですね。おもな音色は鉄琴、グラスハープ、ストリングス、ドラム。曲の印象としてはうきうきとしたデートとかいう感じ。町で出会うことの多いあゆを印象付けてるって感じですね。
 「笑顔の向こう側に」はゆったりとしたのどかな曲。栞のテーマということででおとなしい感じの曲かと思ったらそうでもない感じ。音はクラリネット、木琴、ストリングスでアクセントとしてブラスとシンバル。どちらかというと栞の芯の強さをどことなく感じさせてくれる曲です。
 「the fox and the grapes」は fox ってあるから真琴のテーマでしょうか。フルート、ギター、ドラムによる、ややハイテンポの曲。尖った感じの多いこの作品の中でもとりわけ尖った曲って感じで、どこか颯爽としたクールな印象を与えています。曲の印象としては突っ切るような鋭い風というイメージですね。
 この曲名を訳すと『狐と葡萄』。高い所にあって取れない葡萄を「どうせ酸っぱい葡萄さ」と強がる狐の寓話ですが、いつも強がって祐一にぶつかってばかりいる真琴に似合ったタイトルですね。ま、今風に言えばツンデレでしょうが。
 「少女の檻」は主に夜の校舎でのシーンでミステリアスな雰囲気を感じさせる曲。舞のテーマというところなんでしょうね。ストリングスによる悲しげで美しい調べ。後半、重低音のチューバが入ってきますが、とにかく悲壮な使命感を漂わせている印象です。

 「兆し」はシンセエフェクト系の音による不安なサスペンス調の曲。魔物が出現し、舞が戦うシーンの音楽って感じですが、途中からドラムが入ってきてスリリングになって来ます。
 「冬の花火」はピアノの音色による細やかな演奏が印象的な曲で、それにリコーダーが重なってきます。アニメではだんだん弱ってきた真琴の思い出作りのために水瀬家の全員で遊びに出掛け、家に帰って来てから夏の残り物の花火をする話がありましたが、その辺の絡みの音楽でしょうか? 曲の印象としては悲しくで寂しい感じ、忘れていた記憶というところです。
 「霧海」は幻想的で美しいチェンバロとハープ、そしてストリングスが奏でる曲。悲しい別れってイメージの曲ですが……真琴との別れって感じかなぁ。
 「凍土高原」は繊細なピアノとハープ、ストリングスによる美しい曲。ドラマチックな出来事の後のロマンチックな光景、そしてメランコリックな雰囲気を感じさせる曲です。蘇ってくる記憶とか、運命に傷付く少女の悲しみとか、そんなイメージが浮かんできます。
 「残光」はシンセエフェクト系の音とストリングスによる曲。幻想的に広がる朝日のイメージですが、物語の結末を迎えた後の新しい1日の始まりというところかな。悲しみを乗り越えた後の清々しい朝というイメージを感じさせます。

 「風を待った日」はゆったりとしたピアノによるイントロの後、OPテーマのメロディーが奏でられる曲。主に鉄琴、ストリングス、パーカッションという感じですが、小刻みなテンションの曲調が印象的です。取り戻した過去の記憶、強い決意……というイメージを受けるのは、やはり東映版のアニメでの「Last regrets」の影響ですね。
 「生まれたての風」は幻想的なグラスハープやオルゴールの音色で奏でられるEDテーマのメロディーを用いた曲。通じる思い、叶う奇跡……というイメージを受けるのは、これも東映版のアニメでの「風の辿り着く場所」の影響ですか。

 「風の辿り着く場所」は彩菜の歌うEDテーマ。弾むようなリズムで、ゆったりとしたアップテンポの曲。ちょっとボーカルが弱い印象を受けますが、I'veらしいサウンドを堪能させてくれる曲です。
 東映版のアニメでは最終話、あゆが奇跡的に意識を取り戻した後のエンディングに使われていたように思います。新しい未来が始まる希望を歌った曲って感じですね。
 「Little fragments」はオルゴールによるしんみりとしたOPテーマのメロディー。

 最後のトラックの後ろに隠しトラックがあって、「雪の少女」を生バンドによる演奏風にアレンジした曲が入っています。アップテンポでメリハリが訊いててなかなかの聴きものですが、こういうところに入ってると簡単に頭出しも出来ないからちょっと聴くのに不便ですね。
 隠しトラックだからと言って丁寧に隠してしまうんじゃなくて、曲目一覧には載ってないけどトラックは切られてるぐらいにして置いてくれた方が親切だと思います。

   ☆ ☆ ☆

 テーマソングも含めて全般的にベル系の音(鉄琴、オルゴール、グラスハープ、ピアノ等)が多く、透き通ってきれいだけど、寒色系で尖がった感じの曲で占められてる感じがします。この系統の音色は簡単に聴き映えのいい音が出せるのでDTM等でも多用されたりしますが、この作品ではむしろ、冬の雪国という空気は澄んでるけど寒い環境というものをうまく音楽的に織り込んでるような感じがします。
 生楽器じゃないから可能なことなんですが、鉄琴の音でピアノ同様の演奏をしてるような曲が結構多いのも特徴的ですね。

 ゲーム音楽とアニメ劇伴の最大の違いというのは、アニメでは物語の進行速度、タイミングは作り手でコントロール出来るので、物語の展開にあわせてキャラクターの動きや心情にぴったりマッチした音楽を付けることが出来ますが、ゲームの場合は進行速度やタイミングはプレイヤーの操作次第であり、予め作られた音楽でそれにこと細かくあわせることは不可能ということです。また、音楽データの容量等の制限もあります。
 したがって、ゲームの音楽はどうしてもシーン単位で比較的長く流される、くどくどとした具体的な描写対象を持たないおおまかな音楽が中心になります。プレイヤーとしても時に長々と聞かされることになる音楽は刺激が多くて疲れるものよりは適度に心地良く聴ける環境音楽的なものの方が好ましく思われます。(註)
 この『Kanon』のゲーム版の音楽と、東映アニメ版で新たに作られた音楽の違いというのは基本的にそういうところにあるわけで、それがオーソドックスな作りだと思われますが、今度の京アニ版でゲーム版の音楽が主体的に使われるとしたらどんな感じになるのか興味深いですね。

(註)
 ここでゲームと言ってるのは『Kanon』のような恋愛アドベンチャーとかビジュアルノベルとか呼ばれる、テキストなり音声で語られる物語を進めるのが中心のゲームのことです。
 ゲームのジャンルが違えば状況も違うので、シューティングのようなジャンルの音楽だと適度に刺激がないとプレイヤーが盛り上がらないということになります。

(Key Sounds Label KSLA-0006 2002.10.25)

Kanon Original Soundtrack
Kanon Original Soundtrack

Kanon prelude
Kanon prelude

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