地獄少女 オリジナル サウンドトラック
深夜アニメに鮮やかに咲いた彼岸花のような和風ホラーアニメ『地獄少女』のサウンドトラックです。すでに2枚目も出てるみたいですが、今回は1枚目。
これは『真月譚 月姫』のサントラの時も書いたことなんだけど、この手の作品の音楽はなぜか耽美な雰囲気の漂う感じがして、一種独特のものがあるんですね。作品上の設定では舞台は現代でも、実際には大正ロマン香る時代の面影があったり……ま、これは『月姫』は別としても、美夕も地獄少女もシーンに応じて洋服と和服を普通に着別けてるというところにも関係してるのかもしれませんが、どことなくノスタルジー漂う日本の原風景が描かれてる気がするからかも知れません。
この作品の音楽は高梨康治、水谷広実の両氏によるもの。不勉強ながらお二人とも過去の作品は知りませんので、劇伴音楽として意識したのはこれが初めてです。
収録曲は次の通り。
01.焦燥
02.悪意
03.影差して
04.蜘蛛と老婆と少女
05.地獄通信
06.少女降臨
07.三藁捜査線
08.真昼の太陽
09.いじめ
10.朱(あけ)に染まる
11.父と娘
12.復讐の行方
13.あたたかいもの
14.芝居
15.うつろな穴
16.覚悟
17.地獄流し
18.満ちていく闇
19.哀れな影
20.暗黒イリュージョン
21.地獄ロック
22.地獄の川流れ
23.優しい気持ち
24.かりぬい(フルバージョン)
和風ホラーということで全体的に琴や三味線を思わせる弦楽器の音(以下、単に弦)が多く使われてますが、一部ギターはあるみたいですが、ほとんどはシンセのようですね。
「焦燥」は毎回流れるOP前のナレーションバックに使われてる曲。弦とピアノによる作品世界への導入曲というところでしょう。
「蜘蛛と老婆と少女」はいわば地獄少女のテーマとも言うべきモチーフ曲。弦とギターとバイオリンによる印象的なフレーズに始まり、中間部分でコーラスとストリングスによる優雅な曲調に変わった後、再び最初のモチーフに戻る曲。主に藁人形の糸が解かれた時とか、夕暮れ時に露天風呂に入ってる閻魔あいに祖母らしき声が「長襦袢置いとくよ」とか声を掛けるシーンに流れてる曲ですね。
「少女降臨」はショッキングな出だしに始まり、ミステリアスな効果音楽が続いた後、この世ならざる凄みを感じさせる曲調に続く曲。いわば地獄少女の登場シーンの音楽ですが、馴染みのあるのは「地獄通信」へのアクセス直後にふと背後に閻魔あいがいるという感じの冒頭のショッキングテーマですね。
「真夏の太陽」はトロピカルなフレーズから始まる青春真っ只中って感じの日常音楽。ストリングスメインに軽快なパーカッションという、このサントラでは異色な感じがする曲ですが、それだけに耳に残ります。ま、事件発端以前の日常音楽という位置付けでしょうね。
「朱に染まる」はコーラスによる地獄少女のテーマ。依頼者に藁人形を渡し「人を呪わば穴二つ」と説明するシーンとか、人形の糸が解かれて地獄少女の出番とかいうシーンに使われていたイメージかな。ミステリアスでありながら、なぜかホッとするような感じがします。
「父と娘」と「復讐の行方」はともに柴田親子のテーマという感じです。どことなくフォークっぽい作りなのは柴田がフォーク世代ってイメージなんでしょうかね。そういえば三藁のテーマ「三藁捜査網」がロカビリーとかその辺の雰囲気があるのも、曲の作りでイメージ別けしてるような感じです。
「あたたかいもの」はギターメインによる日常音楽。復讐がなって取り戻したあるべき日常というよりは、もう戻っては来ないものへの憧憬という感じですね。
続く「芝居」も依頼者側の悲しみを奏でた曲。物悲しいピアノにストリングスがかぶさって情感がこみ上げてくるという感じですが、深い悲しみを感じさせる曲です。
「覚悟」はシンセのスリリングなフレーズに始まり、徐々に音が増えて盛り上がっていく作りの曲。追い詰められた依頼者がついに糸を解くまで追い込まれるという状況に陥り、地獄少女の出番に繋がる曲。作品のクライマックスを依頼者側から描いた音楽という感じです。
「地獄流し」はコーラスによる地獄少女のテーマに始まり、だんだんスリリングに盛り上がっていく曲。契約が成立し、着物を着た閻魔あいが地獄の火車に乗って地獄流しに出動するシーンの曲。こちらは地獄少女の側から描いてる音楽ということで前曲とは対称的ですが、作品上ではこちらのほうが印象深い曲ですね。
「地獄ロック」は出だしから激しいリズムのヘビメタ風の曲。中間部のやや流れるような曲がアクセントになっていますが、全体的にヴェルディの『レクイエム』のサビのように畳み掛ける感じの音楽です。言うまでも無く地獄流しにするターゲットに地獄絵図の悪夢を見せてるシーンの曲で、この作品では一番印象度の強い曲です。DVDのCMに使われていた印象も強いので、思わず「地獄少女DVD」とかつぶやきたくなってくるのはご愛嬌。
「地獄の川流れ」はすべての終わりにターゲットを三途の川を川流ししているシーンの曲。全般的にスローテンポで、コーラスとバイオリンの物悲しいフレーズが、もう後悔してもどうにもならないという絶望感とそれを淡々とこなす地獄少女の超絶した存在感を感じさせる曲です。
「優しい気持ち」はピアノによる安らぎ風の曲。地獄流しが終わった後の依頼者のその後という感じの曲ですが、すべてが終わった安心感というよりも、やはりどことなく復讐のむなしさというものを感じさせる気がします。
最後の「かりぬい」は能登麻美子によるED曲。ただ、イントロは本編ラストの依頼者名義の蝋燭が灯されるシーンに掛かってる部分が無く、ED画面に入ってからの部分だけなのですが、蝋燭シーンのイントロはEDバージョンだけの特別なんでしょうか。
全般的に作品中でしばしば使われていたパターン曲は網羅されているし、構成もほぼ物語の流れに沿って並べられているので、『地獄少女』の音楽を堪能できる一枚といえるでしょう。ただ、OP未収録はともかく、やはり作品内と同じイントロの付いたEDバージョンの「かりぬい」はボーナストラック扱いででも収録してほしかったところですね。(2枚目のサントラにも未収録みたいだし)
この『地獄少女』は作品自体も好評で、秋からはまた新シリーズが予定されてるようですが、音楽も印象的な作品だったことは確かなので、興味がある人は一聴をお薦めします。
ところでCDの型番を見たらアニプレックスって『るろうに剣心』とかを出してた旧SPEビジュアルワークスってことでソニーミュージック系のメーカーみたいなんだけど、相変わらずここの出すサントラCDって聴く人にとって親切な解説書を付けてくれないのが残念ですね。
極端な話、作品の絵を見たい人間だったらDVDソフトの方を買うんだから、CDに付ける版権図なんてジャケット表紙に1枚で十分なはず。それをさも購入者は絵が目当てだとばかりにブックレットを絵で埋められたって嬉しくはありません。それより音楽内容に触れた解説を充実してくれた方がよっぽど良いんですね。
(発売元:アニプレックス SVWC-7331 2006.01.25)
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