« アコースティック ヤマト | トップページ | 野中藍 あいのうた »

2006.02.12

七つのヴェールの踊り 伊福部昭作品集

 先日、伊福部先生がお亡くなりになられてしまい、自分の中の心の支えの一つが失われてしまったって感じがします。もう先生の新作を聴くことが出来ないということは、頭の中で理解できてても実感の湧かないところですが、とりあえず今は心の中にぽっかり穴が開いてしまったって感じです。
 本来なら未聴のまま溜め込まれてるアニメサントラとか声優アルバムを紐解いていくところなのですが、しばらくは伊福部先生の作品を聴いて、そのご功績を偲びながらご冥福を祈りたいところです。

 やはり未聴のまま溜め込まれてる伊福部先生の作品の収録CDの山から、今回は現在のところ最新の新譜である野坂惠子の演奏による二十五絃箏曲を収録したこのアルバムを取り出してみました。

1.二十五絃箏甲乙奏合「七つのヴェールの踊り」
   〜バレエ・サロメに依る
2.二十五絃箏甲乙奏合「ヨカナーンの首級を得て、乱れるサロメ」
   〜バレエ・サロメに依る
3.古代日本旋法による踏歌

 二十五絃箏というのは通常の十三絃の箏よりも絃の数を増やし、音域を広げた楽器で、古代中国にはあったらしいのですが、現代のものは野坂惠子の創作楽器と見た方が良いでしょう。
 甲乙奏合というのはメインの二十五絃箏とは別に低音用の二十五絃箏を合わせて、二人の奏者で演奏する形態のことです。
 伊福部先生は晩年になってその創作活動の多くをこの二十五絃箏やそれ以前の二十絃箏のために捧げられていて、野坂惠子の演奏によって多くの作品が発表されています。この「七つのヴェールの踊り」のその一連の作品に続くものです。

 『サロメ』はもともと戦後にバレエ作品のために作られた音楽を、後にオーケストラによる純音楽作品として編曲された作品ですが、さらにそこから2つのシーンを抜き出して二十五絃箏用に編曲されたのが、この作品です。
 元がオーケストラ曲であり、題材が古代中東を扱っていたものなので、それを純東洋風の箏曲として演奏されたのを聴くと、ずいぶん雰囲気が違って感じられます。むしろ日本風の音階の曲としては『わんぱく王子の大蛇退治』の「アメノウズメの踊り」に近いものがありますが、あちらも雅楽ベースの音階とはいえ、伊福部先生ならではの管弦をフルに活かした曲なので、やはり印象は違います。
 とはいえ、曲の組み立ては『サロメ』そのままなので、その曲想の組み立てには慣れ親しみを感じますし、やはり『サロメ』は『サロメ』、それ以外の何物でもありません。
 既製の『舞踊曲「サロメ」』のCDは「七つのヴェールの踊り」はまとめて1トラックに区切られていて、どこが7つの踊りなんだ?というところがわかりにくかったのですが、このCDではちゃんとトラックで区切りされてるのが親切ですね。だからといってトラックごとに切りわけて聴くような曲ではありませんが。
 聴き所はやはり伊福部音楽らしさがひしひしと感じられる第3の踊りから第4の踊りに現れる『海底軍艦』なモチーフの絡み合い、第6の踊りから第7の踊りに現れる『宇宙大怪獣ドゴラ』な激しいアレグロのせめぎ合いといったところでしょうか。これがたった2面の箏で奏でられているなんてことを忘れさせる迫力です。

 おなじく『サロメ』からの「ヨカナーンの首級を得て、乱れるサロメ」。バレエの終劇部分のクライマックス部分ですが、原曲では比較的短めの曲であっさりと盛り上げて終わってるのに対して、この二十五絃箏版はこれだけで単独の音楽作品となるように、大幅にボリュームを膨らませています。
 宴が終わった後の静寂なセレナーデと、狂気に取り付かれたサロメの激しさを表す激しいアレグロが交互に繰り返され、原曲とはかなり趣を変えているようです。ここではアレグロの部分に前曲に引き続き『宇宙大怪獣ドゴラ』なモチーフが使われてたり、セレナーデの部分には『宇宙大戦争』や『キングコングの逆襲』でおなじみのロマンスモチーフが使われていたりするところが心に和みます。

 「古代日本旋法による踏歌」は、『日本書紀』等に記述の残る古代の舞踏の曲を伊福部先生の独自の解釈や想像力で再現したみたというコンセプトの曲で、本来はギターやリュートでの演奏を想定されていた曲の二十五絃箏による演奏版です。
 こちらは音色は箏なのでギター等とは少し趣が違いますが、全体的な印象としては原曲とそう違いはありません。
 古代日本旋法によると謳ってるように、もともとのギター曲では西洋楽器であるギターに日本の旋法を弾かせるため、独自の運指法を指定されていたようですが、箏の場合は元から東洋の楽器なので、むしろこの曲の演奏には向いているのかも知れません。

(発売元:カメラータ・トウキョウ CMCD-28096 2005.11.20)

七つのヴェールの踊り~バレエ・サロメに依る
七つのヴェールの踊り~バレエ・サロメに依る

|

« アコースティック ヤマト | トップページ | 野中藍 あいのうた »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3819/8622768

この記事へのトラックバック一覧です: 七つのヴェールの踊り 伊福部昭作品集:

« アコースティック ヤマト | トップページ | 野中藍 あいのうた »