2011.12.07

片山杜秀と聴く「わんぱく王子の大蛇退治」

 11月26日にザ・フェニックスホールで催されたレクチャーコンサート、「映画は音楽に嫉妬する」の第1弾である『片山杜秀と聴く「わんぱく王子の大蛇退治」』に行ってきました。
 このシリーズは講師のレクチャーを受けながら映画音楽という視点から映画を掘り下げていこうというようなもののようですが、その第1回として取り上げられたのが、伊福部昭の音楽で知られる東映の長編アニメ映画『わんぱく王子の大蛇退治』です。
 講師は音楽評論家として知られる片山杜秀、映画の合間のコンサートパートのピアノ演奏は高良仁美。片山氏はCDとかの解説文から思ってたイメージよりは意外と若いというのが印象でした。
 ザ・フェニックスホールは初めてだけど、超高層ビルの中にあるこじんまりとしたコンサートホールで、せいぜい室内楽ぐらいのためのホールですね。客席も少なくステージに近いから、こういうレクチャーコンサートには便利な場所かもしれません。

 内容は次のような感じです。(順番は違ってたかもしれません)


 1.映画「わんぱく王子の大蛇退治」
    冒頭部

 2.映画「わんぱく王子の大蛇退治」
    アメノウズメの踊り

 3.伊福部昭『日本組曲(ピアノ組曲)』
    第1曲「盆踊」
    第2曲「七夕」
    第3曲「演伶」
    第4曲「佞武多」

 4.伊福部昭『SF交響ファンタジー第1番』(ピアノ独奏版)

 5.映画「わんぱく王子の大蛇退治」
    大蛇退治~終幕

 EC.伊福部昭『日本組曲』
    第4曲「佞武多」


 なにぶん著作権のまだ生きてる映画なので、映画自身を全編上映というわけにはいかなかったようですが、重要なポイントは押さえています。
 作曲家が実写じゃなくアニメ映画を担当するメリットとして、映画の音楽部分をより存分にコントロールできる、その一つに効果音も作曲家が担当する(現在のアニメじゃそういうことはほとんどないけど)ということが挙げられているのだけど、なるほど、映画の冒頭の動物たちのシーンはまるでディズニーの『ファンタジア』をもろに意識したような作りになってます。

 しかし、伊福部先生の本領が発揮するのは「アメノウズメの踊り」の部分。かつて黛敏郎が『題名のない音楽会』で邦画の映画音楽を特集した時、代表作を求められた伊福部先生が挙げて演奏されたのが、この「アメノウズメの踊り」の音楽。
 以前に「第1回伊福部昭音楽祭」でこの曲をスクリーンに合わせて生演奏するなんて嗜好をやっていましたが、さすがに映像とぴったり演奏するなんてのは無謀だったようです。このシーン、映画の方は音楽が先で、それに合わせて映像を作ってるわけですが、それこそ音楽が映像を従えてるという感じで、実写映画にはありえない、作曲家にとってこの上も無い快感なのでしょうか。


『日本組曲(ピアノ組曲)』

第1曲「盆踊」
 力強く律動的な演奏で、かつ高音の部分は軽やかです。ラストのフォルテッシモも壮大に響きます。

第2曲「七夕」
 ちょうど『わんぱく王子の大蛇退治』の「母のない子の子守歌」に似たわらべ歌の主題が印象的に聞こえました。
 交響曲なら緩徐楽章ってところで、精霊流しをイメージさせる鎮魂的なバラード。律動的だけど柔らかく、高音が映える演奏です。

第3曲「演伶」
 躍動的な導入から、ゆっくりとした民謡風の主題。跳ねるような律動的なフレーズとの緩急の繰り返しが特徴的です。
 雑踏の中を練り歩き、やがて遠ざかっていく余韻を感じさせます。

第4曲「佞武多」
 次第に力強くエスカレートしながら踊り歩いていくような土俗的舞曲。執拗なオスティネートと、祭囃子を思わせる小刻みの高音フレーズがとても印象的です。


『SF交響ファンタジー第1番』(ピアノ独奏版)

 力強い「ゴジラの恐怖」、ピアノならではの雰囲気がオーケストラに遜色のない導入を盛り上げます。ややテンポの速い間奏を経て、軽やかでリズミカルな「ゴジラのタイトルテーマ」。強弱と緩急の機微が独奏曲ならではの味ですね。
 やや滑らかな印象の「巨大なる魔神」ですが、こちらはもうちょっと緩急のアクセントが欲しいところ。あと、高音のパートが目立っていて、ちょっと印象が違って聞こえてる感じです。
 続く『宇宙大戦争』のセレナーデはしっとりと穏やかにロマンチックな調べが、次第に心もち力強くなっていきます。
 サスペンスタッチで力強い「バラゴン出現」は後段の繰り返しのフレーズが印象的に響きます。
 やや音に乱れが見られた「ゴジラ対ラドン」は、ラドンのモチーフがサスペンスタッチで力強く、対称的にゴジラのモチーフがリズミカルに奏でられます。
 クライマックスのマーチメドレー。冒頭のファンファーレはピアノではちょっと苦しい感じがしますが、『宇宙大戦争』の「タイトルマーチ」は軽やかで力強く、「怪獣総進撃マーチ」が軽快でリズミカルに続きます。これは独奏による限界なのか、マーチの切り替わり部分がオーケストラ版に比べると切ってつなげた感じのアレンジで、何となくぎこちなく感じられます。
 終盤の「宇宙大戦争マーチ」は力強く躍動感あふれる演奏で、優雅に奏でられていますが、最後の「怪獣総進撃マーチ」になると興奮がエスカレートし過ぎてメロディが崩れちゃってるぐらいに盛り上がって終わります。


 ピアノの高良仁美は、主に沖縄関係の音楽を弾いてる方だそうですが、沖縄とは反対にある北海道出身で、ドロドロとした土俗的なイメージのある伊福部先生の音楽を奏でてるというのは何かアンビバレンツな感じで興味深いものがあります。
 以前にキングで出してた『伊福部昭の芸術』シリーズのCDでピアノを担当したことがあって、その時に肘で鍵盤を叩いたりしてたら伊福部先生が気遣ってくれたのが印象に残ってるとのことです。終わったら肘に無出血してたとかいうから、大変な演奏だったんでしょうね。
 でも、そういう経験を経ているからか、パワーを要求される伊福部先生の曲を十分に奏でられているのでしょう。

 片山氏によれば、『日本組曲』は戦前から海外で多く演奏されて来たけど、日本国内では外国人の演奏家ばかりで日本人が演奏することは少なく、それはあまりに激しい演奏を要求されるから、体力の乏しい日本人の演奏家からは避けられていたのだろうということです。
 これがピアノだけじゃなく金管楽器にも言え、日本のオーケストラだと思うようなブラスの音が出ないから、それを補うために最初からブラスの数を多く書く習慣が出来たという話。結果として伊福部先生の曲は低音の分厚い曲になり、この低音の迫力ある曲を要求する怪獣映画なんかには不可欠になっていったとのことです。

 今回の『わんぱく王子の大蛇退治』でも、絵で描いたヤマタノオロチをいかに映画として存在感あるキャラクターにするかということになった時、伊福部先生の音楽と結び付くのは必然だったのでしょうか。

 片山氏は伊福部先生が音楽家として最も満足した映画作品が『わんぱく王子の大蛇退治』だと言ってるわけですが、それとは裏腹に、伊福部先生のアニメ作品は後にも先にもこれ一本なのです。(『鉄人28号 白昼の残月』その他の既製楽曲の流用作品は除く)
 ま、思うに東映動画もこの作品を作ってみたら音楽を前提に作品を作るのが意外と面倒だと分かって、そういう作り方の映画はそれっきりになったのと、やっぱりアニメで怪獣出しても東宝特撮には対抗できないと思って、伊福部先生に依頼する作品は出て来なかったんでしょうねぇ。
 そういうところから考えると、この『わんぱく王子の大蛇退治』は日本映画がまだ娯楽の主役だった時代だからこそ生まれた、奇跡の1本と言えるのかもしれません。

     ☆ ☆ ☆

 ピアノ独奏版の『SF交響ファンタジー第1番』が目当てで聴きに行ったコンサートだったけど、『わんぱく王子の大蛇退治』や伊福部先生の映画音楽についての解説とか、とても充実していて楽しめました。
 企画としては面白いシリーズなんだけど、どうせ2回目以降は洋画の名作とかそんなあたりが続くだろうから、現役の映画音楽作家の作品とかでやってほしいと期待しても無理なんでしょうねぇ。興味ある作曲家が取り上げられたりしたら、また聴きに行ってみたいと思いますが。

     ☆ ☆ ☆

取りあえず今回のお題の映画
わんぱく王子の大蛇退治 [DVD]
わんぱく王子の大蛇退治 [DVD]

サントラそのものは入手困難でしょうが、近年になって交響組曲化されたもの
伊福部昭の芸術(7)
伊福部昭の芸術(7)

高良仁美さんがピアノを担当してる1枚(当然ながらオーケストラ版です)
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー

ピアノ版の『日本組曲』はこのあたり
伊福部昭ピアノ作品集 第一集
伊福部昭ピアノ作品集 第一集

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2011.09.24

伊福部 昭 SF交響ファンタジー ギタートランスクリプションズ

 しばらく更新をサボってる間に『プロメテの火』とか『寒帯林』とか伊福部先生の作品もいろいろと出て来ましたが、それらは機会があればおいおいと聴いていくこととして、今回はギターで『SF交響ファンタジー』を奏でたという大胆な企画のアルバムです。

 ギター演奏の『SF交響ファンタジー』というと以前に取り上げたデュオ・ウエダのアルバムの中に第1番を演奏したものが入っていましたが、それとの違いも気になりますね。

 今回のアルバムは以前に取り上げた『伊福部昭 ギタートランスクリプションズ』を手掛けた哘崎孝宏によるもの。さすがにソロというわけにはいかないので第2ギターとして岩木俊宏が加わっています。
 また男声合唱による『豪快シリーズ』で知られる不気味社の八尋健生が、哘崎孝宏とともに編曲を手掛けているようです。(『豪快シリーズ』は聴いたことないのでよく知りませんが)

 収録曲は以下の通り

 01.怪獣大戦争マーチ
 02.SF交響ファンタジー第1番
 03.SF交響ファンタジー第2番
 04.SF交響ファンタジー第3番

  SFファンタジー〈ゴジラVSメカゴジラ〉
 05.No.1 イントロダクション
 06.No.2 Title メインタイトル
 07.No.24 ベビーゴジラ
 08.No.21 Robot plane 翼竜ロボット
 09.No.6 Ladon ho God ゴジラVSラドン
 10.No.10 Gフォースマーチ
 11.No.39 ラドン
 12.No.43 Postludio ローリングタイトル

  SFファンタジー〈ゴジラVSデストロイア〉
 13.No.3 メインタイトル
 14.No.9 Vision Destroyer Machine オキシジェンデストロイヤー
 15.No.23B スーパーXⅢ
 16.No.39 G.EXTRA ゴジラ
 17.No.40前半 デストロイア
 18.No.26 メーサータンク
 19.No.44 レクイエム
 20.No.45 エンディイングタイトル

 冒頭に「怪獣大戦争マーチ」を配し、「SF交響ファンタジー」を第3番までキッチリ入れている上に、伊福部先生自身が演奏会用にまとめ上げた『ゴジラVSキングギドラ』ではなく、『ゴジラVSメカゴジラ』『ゴジラVSデストロイア』に挑戦しているところに心意気を感じます。

 それでは簡単に聴いていきましょう。

「怪獣大戦争マーチ」
 数ある伊福部マーチの中でも有名な曲ですが、軽快なギターが奏でる様は、まるでラテン系の音楽のようです。怪獣と戦う勇ましさというよりも、南欧の街の喧騒の中で繰り広げられる日常のドタバタを思わせます。
 伊福部先生の土俗的な舞踊曲の中にある陽気で本能的なほとばしりが、ラテンの陽気さとどこかつながっているのでしょうね。

「SF交響ファンタジー第1番」
 さすがにオーケストラの重低音には敵わないものの、力強い低音で始まる「ゴジラの恐怖」のモチーフ。続く『ゴジラ』の「タイトルテーマ」は力強くもしっとりと優雅に奏でられます。このあたりオーケストラとは奏で方の趣向が違うんですね。引き続く「巨大なる魔神」もそんなところ。派手さ強大さを目指すのではなくモチーフのメロディーを活かした演奏という感じがします。
 しっとりとしたアダージョのセレナーデは『宇宙大戦争』のロマンステーマ。さすがにこういう曲はギターが得意とするところですが、いかんせん短いのが残念。すぐに「バラゴン出現」となってしまいます。ここも奇をてらわずに正攻法でモチーフを奏でることで、ギターの可能性を見せつけてくれます。
 それに続く「ゴジラ対ラドン」の出だしはギターの胴を叩く打楽器的な奏法を交えることで、メロディーの重厚さは損なわれるものの、冒頭の「ゴジラの恐怖」とは違った聴かせ方をしています。そしてラドンのモチーフは軽快でなめらかに奏でられ、絡むゴジラのモチーフにはどこか哀愁を感じさせます。
 後半のマーチ部は『宇宙大戦争』の「タイトルマーチ」がトレモロを活かした斬新な印象を与えてくれるのと交互に、軽快でやはりラテン系っぽい「怪獣総進撃マーチ」が安心感を与えてくれる感じ。そして続く「宇宙大戦争マーチ」はアルペジオを活かしたはつらつとした旋律でさながらフラメンコ音楽のような印象を与えた後、力強い「怪獣総進撃マーチ」で幕を下ろします。

「SF交響ファンタジー第2番」
 冒頭は『奇巌城の冒険』のメインタイトル。やや静かに流れるバラード系の曲なのでギターにとっては得意分野。これももうちょっと長く堪能したいところですが、すぐにキングギドラの出現モチーフに移ってしまいます。ここは単音で流した方が楽そうですが、トレモロを駆使してビブラートを再現してる辺りは感服です。続く「キングキング対ゴジラ」の対決モチーフは原曲の軽快なイメージではなく、どこか不安を誘うような単調さが印象的です。
 幻想的な雰囲気で奏でられる「聖なる泉」は純音楽作品「胡哦」のモチーフにもなってる曲だから、これもギター向きの曲。これだけ切り出して単独の曲として堪能したいぐらいです。ギター版「胡哦」が入ったCDもどこかにあったはずだから、探してきて聴き直してみたいです。
 そして『大怪獣バラン』の「メインタイトル」。これは原曲はオーケストラでコーラスが入ったりするんだけど、大元のモチーフはラドンとかと同じで、割とギターとかピアノに合ったソロ向きのメロディーという感じなので、それをそのまま活かして正攻法で乗り切ってる印象です。ただ、オーケストラ版は元の劇伴よりもかなり派手にアレンジされてるので、そういう点では別ものになってしまってますね。
 素朴にたたずむような「黒部谷のテーマ」は原曲ではホルンが幽幻なイメージを醸し出していますが、ギターはどこか哀愁を漂わせてる感じです。そして『キングコングの逆襲』のメカニコングの出現テーマと軽快なキングコングの追撃モチーフが続きます。そしてクライマックスの「メーサー光線車マーチ」。やはり軽快だけど力強くはないものの、起伏のある曲の表情を堪能させてくれます。ラスト近くで「ラドン追撃せよ」の末尾のトリルの部分が挿入されているんですが、ギター版だからって省いたりはしないんですね。

「SF交響ファンタジー第3番」
 出だしは『怪獣総進撃』の東宝マークの音楽。原曲でもサスペンスタッチの不安を煽るところですが、ギターだともろに怪談風に聞こえますね。
 軽快なメカニコングのテーマは原曲でもメカっぽさを出すために尖ったイメージのモチーフ。エレキギターならギンギンの尖ったイメージを出してくれるでしょうけど、そこはクラシックギター。鋼鉄の巨猿にもどこか寂しさと哀愁を感じさせます。
 そして同じく『キングコングの逆襲』の「コングとスーザン」。ベースのモチーフはバラード風のセレナーデですが、実際にこの曲を特徴付けるのは平穏を破るティンパニーなんですね。このティンパニーをリズム楽器として捉えるのかメロディー楽器として捉えるのかで解釈が違ってくるのですが、このギター版ではメロディーパートとして奏でています。
 ややスローテンポで始まる「東京湾と海底軍艦」はラストのスパートに向けて鋭気を溜め込んでるという感じで、『キングコング対ゴジラ』の「コング輸送作戦」に続きます。ここはストレートで軽快にモチーフを奏でていますが、ギターだとどことなくマイナーっぽく感じてしまいます。この部分、日比谷公会堂初演版に映像を付けた『ゴジラファンタジー』では当時は全長版フィルムが未発見だったため別のシーンの映像で代用されていたというのは昔の思い出。
 そしてファロ島での「キングコング対大ダコ」のモチーフ。原曲は重厚なサスペンス曲なのですが、トレモロを駆使してはいるものの、かなりマイルドな味わいになっていて、これはこれで聴きものという感じです。
 超絶アルペジオを駆使した「海底軍艦マーチ」に続き、クライマックスの「地球防衛軍マーチ」が奏でられますが、これはモチーフ自身の性格なのか、どこかゆったりとした感じで聞こえてきます。後半のトリルはオーケストラとは印象が違うけど、大曲の締めくくりにふさわしい盛り上がりを感じさせてくれます。

《ファンタジー〈ゴジラVSメカゴジラ〉》
「No.1 イントロダクション」
 弱々しいキングギドラのモチーフから始まるこの曲は映画の冒頭、メカキングギドラの残骸のカットからGフォースの訓練シーンに流れた導入曲。後半の激しいアルペジオの伴奏が印象的です。

「No.2 Title メインタイトル」
 重厚でゆったりとしたメカゴジラのテーマですが、ギター版はバラードがかった幽幻な印象を受けます。やはり原曲の和太鼓パートをギターを叩いて再現してるようですが、けっこう響いてますね。

「No.24 ベビーゴジラ」
 ギター向きの切ないセレナーデ。原曲はコール・アングレだから管楽器さながらの風に溶けこむような雰囲気だけど、ギターだとどことなく風を刻むようなイメージを受けてしまいます。そこが優しさよりも寂しさを感じてしまう所以なのかしれません。

「No.21 Robot plane 翼竜ロボット」
 前曲と似た感じの曲ですが、こっちの方が淡い感じかな。トラック間にブランクが無いので、ちょっと聴いた感じでは前曲がそのまま続いてるかのように思えます。タイトルが曲と違うような気がしますが、これは翼竜ロボットをだしにしたデートのシーンだから、こういう甘い音楽なのです。

「No.6 Ladon ho God ゴジラVSラドン」
 この作品でようやく全体が復活したゴジラの恐怖のモチーフ。これは序盤のアドノア島でのゴジラとラドンの戦いの音楽。ここでは重厚さとかよりもモチーフの音楽要素を重視して忠実に再現してるように思います。どことなくバラードっぽく聞こえますが、それに絡むラドンのモチーフは相変わらず軽快な感じ。でも、「SF交響ファンタジー第1番」のものに比べると心持ちゆったりしてますね。

「No.10 Gフォースマーチ」
 軽やかに奏でられるガルーダのテーマ曲。平成に入って待望の新曲の伊福部マーチでしたが、意外とギターと相性いい感じです。でも、どっちかというとスーパーメカのテーマ曲と言うより、西部劇のヒーローのテーマ曲ってイメージですね。

「No.39 ラドン」
 神秘的な音色は力尽きたファイアーラドンが最後の力を振り絞って倒れたゴジラにエネルギーを与えるシーンの音楽。幻想的なフレーズの最後にお馴染みのラドンのモチーフが現れます。割とこういった曲もギターは聴かせてくれますね。

「No.43 Postludio ローリングタイトル」
 どこか哀愁と神秘性を漂わせた感じのエンディング曲。原曲はハープが重要な聴かせどころを担ってたので、それをギターで置き換えたって感じなので音の違いに比べて違和感はあまり感じませんね。むしろオーケストラとかコーラスとか入れるよりもギター版の方が曲としてはまとまりがあるような気がします。ただこの辺は聞く人の好みの問題でしょうけど。

『ファンタジー〈ゴジラVSデストロイア〉』
「No.3 メインタイトル」
 映画冒頭の香港破壊シーンの音楽。いつもと違うゴジラということを明確に分からせてくれる音楽ですが、やはりオーケストラの重低音あっての曲。それでもなかなか雰囲気を感じさせてくれるアレンジです。この辺はガットの聴かせどころという感じです。

「No.9 Vision Destroyer Machine オキシジェンデストロイヤー」
 第1作『ゴジラ』のレクイエムのモチーフがゆっくりと奏でられます。尺があればギターなりの聴かせどころとかあるんでしょうけど、何分にも短いのが残念です。

「No.23B スーパーXⅢ」
 「Gフォースマーチ」に続く新作伊福部マーチですが、前半は『大坂城物語』の合戦シーンのモチーフ、後半は「Gフォースマーチ」のアレンジなので目新しさがないというか、逆に変に古さを感じてしまいそうな曲です。ギターは非常に軽快に奏でてくれるのですが、やっぱり時代劇のチャンバラシーンが頭に浮かんできます。

「No.39 G.EXTRA ゴジラ」
 おなじみのゴジラのモチーフで始まるものの、これは「SF交響ファンタジー第1番」以来の『ゴジラ』のタイトルテーマが続くパターンの曲。非常にゆっくりと奏でられるこの曲は、さしずめ「ゴジラのバラード」という感じの演奏で、吟遊詩人がギター片手にゴジラの物語を語ってるイメージが浮かんできます。

「No.40前半 デストロイア」
 ショッキングフレーズのようなデストロイアのモチーフ。アクセントポイントとしての選曲なのでしょうが、もうちょっとじっくり聴かせる選曲であっても良かったように思えます。たぶん、ギターとは一番相性が悪そうな構成に思えますから。それでもギターならではの聴かせ方というものを味あわせてくれているのはさすがです。

「No.26 メーサータンク」
 おなじみ「メーサー光線車マーチ」のモチーフ。『ゴジラVSモスラ』でも使われていましたけど、オリジナルのメーサー光線車と平成ゴジラのメーサータンクじゃ画面上の動きが全然違うから、同じ曲使われても違和感あるのですが、お約束の音楽というところなんでしょうね。「SF交響ファンタジー第2番」のものと比べると、軽やかだけどストレートで力強い感じがします。

「No.44 レクイエム」
 メルトダウンしたゴジラのレクイエム。哀愁ただようこの曲にはギターは格好のお似合いです。原曲のような荘厳なイメージには欠けますが、一音一音噛み締めるように奏でてくれるのはギター曲ならではです。

「No.45 エンディイングタイトル」
 『ゴジラ』のタイトルテーマに始まるエンディング曲。これも「SF交響ファンタジー第1番」に倣って後に「巨大なる魔神」のモチーフが続きますが、これはキングコングのみならず歴代のライバル怪獣のイメージってところでしょうか。演奏は力強くストレート。

     ☆ ☆ ☆

 デュオ・ウエダ版と比べれば、向こうはオーケストラの「SF交響ファンタジー第1番」の印象をそのままギターデュオに置き換え、それを再現しようとしている感じですが、今回の哘崎版はオーケストラ版の構成音を分解・再構成することで、曲を要素単位で再現しようとしているように感じました。
 ユニゾンで音の厚みを得るよりもパート分けで伴奏やサブメロディーやアクセントを出来る限り忠実に再現しようとしているのですね。それがために全体的な雰囲気においてオーケストラとは聴いた印象がずいぶん違ってる部分があったりもしますが、耳を凝らして聴いていくとなるほどと感じる部分も少なくありません。
 ギター2本じゃ出せる音も限られているわけだし、まして作曲者本人のアレンジというわけでもありません。このあたりは個々の嗜好の違いの現れですね。

 『ファンタジー〈ゴジラVSメカゴジラ〉』『ファンタジー〈ゴジラVSデストロイア〉』については、劇伴にかなり忠実な構成のアレンジというのが意外でした。このあたりは伊福部先生が自ら手掛けた『交響ファンタジー「ゴジラVSキングギドラ」』と比べるとかなり物足りなく感じてしまうのですが、作曲者が亡くなられた後となっては本人の監修もない大幅なアレンジは躊躇われたというところでしょうか。
 それでも個々の曲だけ聴くのではなく、『ファンタジー〈ゴジラVSメカゴジラ〉』『ファンタジー〈ゴジラVSデストロイア〉』として全体を通して聴けば、そのボリューム感に不足はありません。

     ☆ ☆ ☆

 今回、哘崎氏よりサンプル盤を送っていただきました。最近は情報に疎く発売のことを知らなかったもので、それがなければ聴けるのがいつになったことかわかりません。ここにお礼を申し上げます。(本文中は敬称を省略させていただいておりますが、失礼)

(発売元:ジェイズミュージック GRGT-01 2011.09.01)


 Amazonも取り扱いがなく、発売元の直販も見当たらないので、HMV ONLINEのページを貼っておきます。(他にもググれば幾つかネットショップが見付かると思いますが)
 扱いが無くなった場合はご容赦を。

Sf交響ファンタジー Guitar Transcriptions: 哘﨑考宏 岩木俊宏



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2010.06.05

西宮交響楽団/『交響譚詩』

 5月30日に西宮市民会館アミティホールで行われた西宮交響楽団の第96回定期演奏会を聴きに行ってきました。目的は言うまでもなく伊福部先生の『交響譚詩』。客演指揮者の橘直貴が北海道出身なのと、5月31日の伊福部先生の誕生日の前日というあたりが選曲の理由なのでしょうか。

 西宮交響楽団は甲子園球場とか『涼宮ハルヒ』にお舞台でお馴染みの西宮市に本拠を持つアマチュア楽団です。主な演奏会場となってるアミティホールは阪神・西宮駅の駅前にあるので、もっぱら阪急沿線が中心の『ハルヒ』の世界とは雰囲気が違うかもしれませんが……
 指揮の橘直貴は良く知りませんが、ググってみたら『ブラバン!甲子園2』の指揮者だとか。確かこれは「宇宙戦艦ヤマト」が入っていたと思うから、聴いてみようかな……とか思ったりしたところです。

 さて、演奏曲は以下の通り

01. フェリックス・メンデルスゾーン
     劇音楽「アタリー」序曲

02. 伊福部 昭
     交響譚詩

03. カール・ニールセン
     交響曲第4番「不滅」

EC. セルゲイ・ラフマニノフ
     ヴォカリーズ

 プレトークで指揮者があまり知られていない曲ばかりと言ってたけど、伊福部先生の『交響譚詩』、そんなにマイナーですか。伊福部先生の曲の中では演奏機会は割と多い曲だと思うのですが……


劇音楽「アタリー」序曲
 メンデルスゾーンの中ではあまり有名じゃない曲だという話ですが、メンデルスゾーンと言っても「結婚行進曲」ぐらいしか頭の浮かんで来ない人にはあまり関係ありませんねぇ。
 これは旧約聖書に原典をとったラシーヌの戯曲に音楽を付けたものですが、この物語自体も日本人にはあまり馴染みのないものですね。同じ聖書を原典にした戯曲なら『サロメ』の方がまだ物語的にも受け入れやすいのですが……

 穏やかなトランペットの音色から始まり、滑らかなストリングスが入り、やがて柔らかな木管の音色に繋がっていく冒頭部。
 中盤はややマイナーがかったショッキングなフレーズや、断続的でシリアスな曲想が激しく盛り上がり、穏やかなフレーズとともに交互に展開されて行きます。途中、トランペットの華麗なフレーズの後、低音のブラスがリフレインし、やがて美しくも悲しげなストリングスとハープの音色が空気を支配します。
 終盤はゆっくりと堂々とした盛り上がりで締めくくられます。劇音楽の序曲にふさわしい、ダイナミックな展開で大団円に収束する心地よいコンパクトな大曲という感じですね。


交響譚詩
 第1の譚詩
 お馴染みの華々しい第1主題の出だしだけど、どこかワンテンポずれてる感じ。トランペットの音が裏返ってて、他のパートもばらばらな感じ。
 第2主題がやや穏やかに入ってくるところは、ちょっとティンパニーが目立ち過ぎかな。強弱の差が滑らかじゃなく、チューバがちょっと外してる感じ。ホルンが遅れ気味ってところかな。
 後半になって演奏も滑らかになってきたけど、ぎこちなさは最後まで残ってるように感じました。

 第2の譚詩
 導入部はまだぎこちなさが残ってる感じ。ボレロ風に盛り上がるところはきれいにまとまってきていて、木管のソロが入るあたりはなかなかな感じ。
 中盤の静寂なとところの間の取り方はかなり上手い。先程は遅れ気味だったホルンはこれくらいが良い感じかな。
 終盤の盛り上がりはやはりティンパニーが目立ってる様子。ラストの徐々に静寂に帰るところもきれいに終われてないのが残念。

 全体的に指揮者の緩急の取り方は的を得た感じなんだけど、オケの演奏がついてこれてないって感じですね。伊福部音楽ってそんなに難しいですか。


交響曲第4番「不滅」
 ニールセンはデンマークの近代音楽作家だそうですが、いうまでもなく初めて聞く名前です。この交響曲第4番は「不滅」と翻訳されていますが、けっして負けないとかいう力強い意味ではなく、クスクスとしぶとく消えずに残り続けてるって感じみたいですね。
 各楽章は途中で区切られず、連続して演奏されますが、曲調ははっきりと分かれています。

 第1楽章 Allegro
 スリリングで激しい導入から、華やかな盛り上がりと緊迫感。一転してバラード風の展開。再びスリリングに盛り上がった後は、ティンパニーの小刻みな余韻を残していったん静寂に帰ります。続いてバイオリンのピチカートがサスペンス感を与え、また激しく盛り上がっていく感じです。

 第2楽章 Poco Allegretto
 クラリネット主体で奏でられる穏やかな牧歌的なフレーズです。

 第3楽章 Poco Adagio Quasi Andante
 スリリングなストリングスとティンパニーの響き。やがてショッキングなフレーズがファンファーレ風に奏でられ、それがリフレインのように展開されていき、シリアスなバラード風の展開に繋がっていきます。

 第4楽章 Con anima. Allegro
 一転して華々しい盛り上がりで始まり、2組のティンパニーの乱打が響きます。余韻を奏でるトロンボーンが印象的。マイナーに転じながらも、必死で消えゆく生命を盛り返そうとしている様子が繰り返されます。そして、静寂の中からティンパニーの響きとともにクライマックスに盛り上がります。
 ラストはゆったりと堂々としたフレーズで盛り上がって大団円。最高に盛り上がったところですぱっと終わって気持ちいいですね。


ヴォカリーズ
 アンコールはラフマニノフのこの曲。曲名が語るように本来は声楽曲ですが、声楽が無いのしか聴いたことありませんねぇ。
 ストリングスの美しくもどこか寂しげなフレーズ。それを反復していくクラリネット。ストリングスと木管による展開が繰り広げられます。やがて、やや沈痛な趣きの盛り上がりを見せ、クラリネットのソロがやや情緒的に奏でます。

   ☆ ☆ ☆

 伊福部先生といえば、幻の作品と言われた『寒帯林』の楽譜が遺品の中から発見されたとかで関東で初演されるみたいですが、聴きに行くお金が無いです。是非、CDで出してほしいですね。『プロメテの火』の復元も進められているそうだから、こちらも期待したいところですが……

 6月11日に関西フィルの定期演奏会で、大友直人指揮で『ヴァイオリン協奏曲第2番』が演奏されるみたいなので、こちらは聴きに行く予定です。


譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽
譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽

伊福部昭:管弦楽選集
伊福部昭:管弦楽選集

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2010.01.13

宇宙戦艦ヤマト復活篇 オリジナル・サウンドトラック・アルバム

 知らない間に2010年になっちゃいましたが、とりあえず復活しちゃったのでヤマトの音楽でも聴いちゃいましょう。
 この数年の間に宮川泰、羽田健太郎というヤマトの音楽を担ってきた二大巨匠が相次いで亡くなられたので、『復活篇』の音楽はいったいどうなるのかと心配していましたが、新規の作曲家に一任するという形ではなく、既存の音楽とクラシック曲をベースにしたものになってしまいました。ま、両者の音楽の印象が大き過ぎるとはいえ、新しいヤマトの音楽というものも期待していただけに少し残念だったのは確かです。

 さて、発売されたサントラ盤の収録曲は以下のとおりです。

 01. 無限に広がる大宇宙
 02. カスケードブラックホール
 03. 古代の帰還
   「別離」
   「別離09」
 04. 若者たち
 05. 氷塊に眠る
 06. ヤマト発進
   「発進準備」
   「宇宙戦艦ヤマト2009/Short Version(THE ALFEE)」
   「宇宙戦艦ヤマト2009/Symphonic Version(Instrumental)」
 07. 戦火の渦へ
   「新コスモタイガー2009」
   「ヤマトの戦い」
 08. フライバイ・ワープ
 09. アマール
 10. ゴルイ
 11. 女王イリヤ
 12. 未来への戦い
 13. SUS大要塞
 14. 「復活篇」のためのシンフォニー
 15. メッツラー
 16. この愛を捧げて
   Symphonic Version(Instrumental)~Short Version(THE ALFEE)

 ……というところで、いつものように順番に聴いていきましょう。

『無限に広がる大宇宙』
 ヤマトといえばこの曲は外せない、川島和子による冒頭スキャット。これは『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の「序曲」からの抜粋。今回の映画でも「無限に広がる大宇宙……」というお馴染みのナレーションのバックに使われていますが、宇宙の光景も従来の手描きの美術じゃなくて完全にCGの映像になっちゃいましたが、この音楽があるだけでやっぱりヤマトなんだなと懐かしく感じます。

『カスケードブラックホール』
 今回の地球を襲う最大の危機であるカスケードブラックホールの音楽はマーラーの交響曲第2番『復活』第一楽章から。『復活篇』だから『復活』ってわけでもないでしょうが、カスケードブラックホールの持つ脅威や神秘性というものはうまく表されている感じがします。

『古代の帰還』
 古代の登場シーンに使われていたのは『別離」』。元々は『新たなる旅立ち』や『永遠に』でサーシャ絡みの別れのシーンに使われていた曲ですね。ユキとの別離ってわけでもないんでしょうが、宮川泰のせつないメロディーがこの作品における古代とユキの立場を心情的に語っています。
 後半のストリングスメインのより悲しげな『別離09」』は今回の新録。3年ぶりに再開した娘の美雪に拒絶される父親の寂しさがありありとしてきますが……オリジナルの演奏と続けて聴くと、曲のイメージがどうしても違ってしまいますねぇ。

『若者たち』
 これは『新たなる旅立ち』の主題歌のインストゥルメンタル。確か『新たなる旅立ち』では未使用で、『ヤマトIII』の実弾演習の回で使われていたように思います。今回の映画では古代がヤマトに乗り込んで、小林や機関部員の双子と出会うシーンかと思うんですが、実際に使われていたかどうかは記憶が定かでありません。

『氷塊に眠る』
 古代がヤマトにたどり着く直前、『完結編』でのヤマトの最後のシーンが挿入される部分で使われていた曲。これは『完結編』のイメージアルバム『ファイナルへ向けての序曲』の最後「宇宙戦艦ヤマト メモリアル」の既存曲のメドレーが終わったラストに入ってる曲で、『完結編』の「ファイナル・ヤマト」の原曲ですね。「ファイナル・ヤマト」が『大ヤマト零号』で使いまくられてたから、対抗してオリジナルを主張したってわけではないと思いますが。

『ヤマト発進』
 いよいよアクエリアスの氷塊から発進する新生ヤマト。『さらば』や『完結編』では『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の「誕生」がヤマト発進のシークエンスを盛り上げていましたが、ここではその伝統を受け継ぐべく『発進準備」』新録曲が使われています。雰囲気的には「誕生」というよりは『永遠に』の「俺たちのヤマト」に近いような気がしますが……
 そして「誕生」中間部のブリッジに続けて THE ALFEE による『宇宙戦艦ヤマト2009』が続きます。でも、オリジナルのささきいさおの歌と比べてどうこうというよりも、ヤマトの発進シーンはインストゥルメンタルというイメージがあるから、個人的にはボーカル曲は入れて欲しくなかったですね。西崎監督的には『オーディーン』の「Gotta Fight!」の流れなのかもしれませんが。

『戦火の渦へ』
 前半最大の山場は、ゴルイ提督率いるエトス艦隊と第3次移民船団を護衛するヤマトの激しい戦闘シーンです。ヤマトの新艦載機コスモパルサーの出撃シーンに使われていたのが新録の『新コスモタイガー2009』です。
 以前『交響組曲 新 宇宙戦艦ヤマト』発売時のプレミアムライブの時に宮川泰が「新コスモタイガー」の人気が高いのを不思議がっていましたが、原曲の「新コスモタイガー」は軽快なイメージを出すためかブラス主体でライトな仕上がりになっていたのが、この『交響組曲 新 宇宙戦艦ヤマト』では他の曲とのメドレーという面もあるから、かなり厚めのアレンジに変更されていて、それがカッコよかったんですね。
 今回の新録もこの時のアレンジ以上に重厚なオーケストレーションがなされていて、なかなかカッコよく仕上がっています。
 後半の『ヤマトの戦い』は今回の新録曲のアレンジを担当している山下康介によるオリジナル曲。ヤマトのテーマモチーフを織りまぜながら緊迫感のあるスリリングな曲調で戦闘シーンを彩っています。

『フライバイ・ワープ』
 ブラックホールをスイングバイに使った移民船団の大ワープ。この緊迫感溢れるシーンに使われているのは『完結編』の「驚異のニュートリノビーム」。解説には「羽田健太郎の楽曲の普遍性」とか書いてありますが、『完結編』でハネケンが書いてたのは主にシチュエーション音楽ですからねぇ。

『アマール』
 移民の受け入れ先であるアマールで使われているのはチャイコフスキーの『スラブ行進曲』。アマールの持つエスニックなイメージと政治的に緊迫している雰囲気がぴったりとはまってる感じですね。

『ゴルイ』
 自らの誇りを取り戻すため、SUSに反旗を翻すゴルイ提督に使われるのはベートーヴェンの『エグモント序曲』。この曲自体が圧政に反旗を翻して犠牲になった英雄を描いた戯曲のために作られた曲なので、それを意識しての使用なんでしょうね。『復活篇』に使われているクラシック曲の中でもあまりとっつきやすい曲とは言えませんが、それだけに聴きこむことによって心情的な訴えが伝わってくる感じです。

『女王イリヤ』
 ゴルイ提督の犠牲と、蜂起を訴える民衆の叫びに揺れ動くアマールのイリア女王。その心情を繊細に奏でているのが横山幸雄のピアノによるショパンの『ノクターン第1番』。この横山幸雄というピアニスト、同時期に発売された『交響曲・宇宙戦艦ヤマト』の新録盤『交響曲ヤマト2009』のソリストを担当していますが、どんな人かと思えば、以前に関西フィルの定演での伊福部昭の『リトミカ・オスティナータ』で物凄い熱演を聴かせてくれた人じゃないですか。以前、東京交響楽団による『交響曲・宇宙戦艦ヤマト』の再演を聴いた時、ピアノがこの人だったらなぁと思ったのはナイショですが、それがこうして実現してくれたのはこの上もない喜びです。

『未来への戦い』
 地球人類の存続と真のアマールの独立のためにSUSとの最終決戦に向かっていくヤマト。そのバックに流れるのが横山幸雄のピアノによる力強いベートーヴェンのピアノソナタ『月光』。この人、力強い曲を弾かせると一流ですね。並のピアニストじゃ、これだけの演奏はできません。流石に『リトミカ・オスティナータ』のリハでピアノの弦を2本切ったというだけあります。

『SUS大要塞』
 ヤマトのトランジッション波動砲でハイパーニュートロンビーム砲が粉砕されるとともに沈んで行ったかに見えたSUSの要塞が、異空間から自由自在に出現してヤマトを攻撃してくるシーンに使われているのがグリーグの『ピアノ協奏曲イ短調作品16』。ヤマトの敵は強大になるにつれて宗教掛かってくる印象がありますが、これもその流れのひとつという感じです。力強いオーケストラに絡んでくるピアノの音色が、荘厳なイメージで敵の圧倒的な力を醸し出してるようです。

『「復活篇」のためのシンフォニー』
 これは90年代に出た『復活篇』のメイキングビデオである『胎動編』当時に作曲された、羽田健太郎の遺作をアレンジし直して新録した曲。ギターソロがどこかノスタルジーを感じさせる曲ですが、全体的には勝利の凱歌ともいうべき勇壮なイメージですね。敵を打ち破って大団円って感じの曲ですが、映画で使われていたかなぁ?

『メッツラー』
 これは山下康介による新録曲。異次元の異種生命体であるメッツラーの不気味さや恐ろしさ、そしてヤマトや地球にこれから待ち受ける宿命への予感を表してる曲なのかなぁ。これも実際に使われていたのかどうか、印象に残っていません。メッツラーのところはビジュアルの印象が圧倒的ですからねぇ。

『この愛を捧げて』
 THE ALFEE によるテーマソングをSynphonic Versionのインストゥルメンタルからのメドレー。映画では前半は使われていませんね。雰囲気的にはヤマトの歴代の映画主題歌よりも『オーディーン』の「Odin」的な印象を受けます。やっぱりヤマトのテーマソングはもうちょっとロマンティックな感じで愛を歌ってくれないと……
 ま、世間にはいろんなジンクスがあるわけだけど、THE ALFEE が主題歌を歌ったのが原因で某宇宙を走るSLみたいに「第一部完」が永遠の最後になってしまったりしないことを祈りたいと思います。

(発売元:EMIミュージック TOCT-26918 2009.12.16)

     ☆ ☆ ☆

 既存のヤマトの劇伴曲からはこのサントラに収録されている曲以外にも『さらば』の「ゆうなぎ」前半、『完結編』の「抜けるヤマト」や「ウルクの猛攻」などが使われていますが、この辺は音響監督の人の趣味で選曲してるようにも思ってしまいます。

 新録曲を担当してる山下康介は羽田健太郎の教え子だそうで、その関係で『復活篇』の音楽に抜擢されたのでしょうか。大林宣彦作品等の映画音楽をはじめ、ドラマや戦隊物、アニメでは『ガラスの艦隊』や『ドラゴノーツ』、『しおんの王』など多くの作品を手掛けてるようですね。
 演奏はクラシック曲が日本フィルハーモニー交響楽団、それ以外の劇伴新録曲が東京ニューシティ管弦楽団とのこと。かつてのようにあちこちから演奏家を集めてシンフォニック・オーケストラ・ヤマトとして録音するような形じゃないのは、音楽プロデュースを務めた大友直人の意向とか、その他の現実的な事情とかあるのでしょうか。

 それにしても、横山幸雄のピアノは凄いに付きます。今回はクラッシック曲の演奏だけですが次は劇伴曲の演奏もやって欲しいですね。従来のヤマトのピアノを弾いてきた羽田健太郎が「お洒落」で「華麗」だとすると、横山幸雄は「繊細」と「力強さ」というところですか。この人のピアノで「自動惑星ゴルバ」とか「SYMPHONY OF THE AQUARIUS」とか聴いてみたいですね。

     ☆ ☆ ☆

 ……ということで、今回の題材のサントラ盤。

宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック
宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック


 ついでに『交響曲』。映画で使われていたのはハネケン自身の演奏の初演の音源ですが、今は入手困難みたいなので、横山幸雄がピアノソロを担当している新録盤。

宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック 交響曲ヤマト2009
宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック 交響曲ヤマト2009

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2009.10.20

【都市伝説】子門真人版(?)「宇宙戦艦ヤマト」の謎

 今回も穴埋め記事ですが、とりあえず『復活篇』公開も近付いてきたので、ヤマトのネタで書いてみましょう。

 子門真人版「宇宙戦艦ヤマト」というのは、昔、ささきいさおが正式の歌手に決定する前に子門真人がレコーディングしたという話(何かのインタビュー記事でのささきいさおのコメント)があって、幻の音源として当時から話題になっていたものです。
 その後、20世紀末に『松本零士音楽大全』が出た時に歌手不詳のパイロット版「宇宙戦艦ヤマト」というものが収録されたのですが、それは《子門真人版》(と思えるもの)ではなかったので、相変わらず幻の音源だというのが、基本的なところです。

     ☆ ☆ ☆

 ここまではWikipediaの関連記事にも載ってる話なので、何もここに書くような話ではありません。(この話題は昔からニフティサーブのヤマト会議室とかでやってた話なので、別にWikipediaからネタを引っ張って来たわけではありません。念のため)
 ここまでなら都市伝説というよりはトリビアの類でしょう。

     ☆ ☆ ☆

 ところが、いつの頃か忘れたのですが、そのヤマト会議室だと思うけど、右翼の街宣車が子門真人版「宇宙戦艦ヤマト」を流してるのを聴いたことがあるとかいう発言があったわけです。右翼の街宣車と「宇宙戦艦ヤマト」というのは昔から定番の組み合わせみたいなもので、それ自体は珍しくもなんともないのですが、普通ならささきいさおのオリジナル音源を使ってるものだと思うのに、よりによって子門真人版とかいうことになると、そりゃ一大事ですね。
 ま、これが昔、コアなファンが知人の日本コロムビア(当時)の社員に内緒で聴かせてもらったとかいう話なら、それなりに信憑性があるものですが、右翼の街宣車がそんな幻の音源を入手して街で垂れ流してるというのは、とても信じることが出来ません。

     ☆ ☆ ☆

 自分自身がその右翼の街宣車の流してたのを聴いたわけではありませんが、問題の謎はすぐに判明しました。
 結論を言うと、子門真人版「宇宙戦艦ヤマト」じゃなく、子門真人に歌い方が似た歌手のカバーによる「宇宙戦艦ヤマト」だったわけです。

 「宇宙戦艦ヤマト」ほどのメジャー曲になるとカバーも枚挙に暇がありません。昔はよくスーパーでワゴンセールやってたようなパチもんカセットテープまで含めたら星の数ほどあるでしょう。
 でも、そんなマイナーな音源まで探さなくても良いのです。(話題になった当時)ちゃんとしたメーカーからCDで出ていたのですから。

     ☆ ☆ ☆

 「宇宙戦艦ヤマト」のカバー曲というと比較的メジャーなのはビクター音産(現・フライングドッグ)から何度でもリリースされてる古いアニメのオムニバス盤に収録されている藤井健のバージョンですが、何もオムニバス盤でカバー曲を出していたのはビクターだけではありません。
 キングレコードから出てた『懐しのテレビ・ラジオ 主題歌 全曲集III』というオムニバスCDの一番最後に「堀 光一路/キング男声合唱団」による「宇宙戦艦ヤマト」が収録されているわけですが、これが実に子門真人に似た歌い方によるカバー曲なんですね。もちろん、CDで新録したものではないから、元の音源は昭和50年代にアナログ盤で出ていたものでしょう。
(1983年頃に発行された『STARCHILD HANDBOOK』を調べてみたけど、そもそもスターチャイルドとは違う部門が出したのか、それともこの手のオムニバス盤は省いたのか、載ってませんでした。ま、このCD自体がスタチャとは別のレーベルですけど)

     ☆ ☆ ☆

 堀光一路という歌手は『無敵超人ザンボット3』の主題歌を歌ってた人らしいですが、そのあたりのことはあまり知りません。元々から子門真人に似た歌い方の人だったのか、それとも意図的に子門真人に似せて歌ったのかというのは不明です。
 ただ、当時は「およげ!たいやきくん」の爆発的ヒットにあやかろうと、各レコード会社の児童・学芸部門が子門真人に似た歌い方で売ろうとする風潮があっただろうことは容易に想像がつきます。
 ま、この堀光一路版「宇宙戦艦ヤマト」もそういう時代の産物なのでしょう。

     ☆ ☆ ☆

 ニフティサーブのヤマト会議室でこれ(堀光一路版「宇宙戦艦ヤマト」)の元記事を書いて以来だと思うけど、久しぶりにCDを掘り出して来て聴いてみたけど、出だしはコーラスが被ってるからそうでもないけど、ソロパートに入ると確かに子門真人に似ていますね。
 ま、耳の肥えた人なら容易に違いがわかるレベルなんでしょうけど、(とくに右翼の街宣車のスピーカーの割れた音なんかで聴いたなら)素人耳にはまるで子門真人本人が歌ってるように聴こえても無理はありません。

     ☆ ☆ ☆

 そういえば、最近はすっかり右翼の街宣車を見掛けなくなりましたね。ああいうのは軍国時代に生きた高齢の人がやってることが多いから、みんな老齢で引退しちゃったんでしょうかね。

     ☆ ☆ ☆

今回のネタ元CDはこれ。古いから中古を探すしかありません。(ちなみに自分の購入目的は『猿の軍団』と『シルバー仮面』だったりするのは内緒)

懐しのテレビ・ラジオ主題歌全曲集 III
懐しのテレビ・ラジオ主題歌全曲集 III


当該曲は以下のCDにも収録されているようです。(こちらは入手容易かな)
(ただし、Amazonの紹介ページの収録曲情報はでたらめに間違っているみたいなので要注意。試聴リンク先はメーカーのサイトですから、そこの曲情報を信用してください)

なつかしの昭和子どもの歌 ベスト
なつかしの昭和子どもの歌 ベスト


カバーといえば、この前(といっても春頃か)、ヤマトが入ってたらどんなCDでも買うというコレクターの知人に紹介して買わせたのが次のもの。(良い子のみんなはマネをしてはいけません)

ハヤテのごとく!ドラマCD2/疾走!白皇学院バスツアーとマリアさんの独り言
ハヤテのごとく!ドラマCD2/疾走!白皇学院バスツアーとマリアさんの独り言


ついでなので、『復活篇』関係の新譜でも貼って置きます。

宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック
宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック

宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック 交響曲ヤマト2009
宇宙戦艦ヤマト復活篇オリジナルサウンドトラック 交響曲ヤマト2009

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2009.09.21

アニメギガ「作曲家・大島ミチル」

 このところ更新を怠ってますが、生活環境の変化とかでなかなか音楽に集中できない状況です。ま、コンサートの感想とかもまとめてないのが何個かあるのですが、時機を逸すると載せにくいとかいうのもあるので……

 さて、9月20日にBS2で放送された『アニメギガ』(http://www.nhk.or.jp/animegiga/)のゲストは大島ミチルさんでした。『アニメギガ』では過去にも田中公平さんや川井憲次さんがゲストで出ていますが、田中公平さんはアニソンの作曲家としての扱いが強かった感じだし、川井憲次さんはちょうど『スカイクロラ』の頃だったから押井作品絡みのカリスマ作曲家的なイメージな気がしたから、純粋にアニメの劇伴作曲家としての話題に期待できそうなのは初めてじゃないかと期待していました。
 もっとも、大島さんにしても今となっては大作志向の(作品で起用される)作曲家ってイメージがしますから、もっとテレビアニメを中心に地味でやってる作曲家をゲストで呼んでもらった方が、それはそれで生々しい業界の話が聞けそうな気がしますが。

 大島ミチルさんといえば、個人的には『ミラクル☆ガールズ』とか『アークザラッド』とか『魔法のステージ ファンシーララ』という辺りが強く印象に残っていますが、番組中で触れられていたのは最初のアニメ作品『セントエルモ 光の来訪者』、代表作といわれる旧作『鋼の錬金術師』、そして最新作の『妄念のザムド』の3作品でした。
 『セントエルモ』なんて、よく引っ張り出してきたなという感じですが、これ、『松本零士音楽大全』にも音源が入らなかったくらいだから、サントラ盤とかは出てないんですよね。(石川優子の主題歌すら出てたかどうか……)
 個人的には思い入れの深い『ミラクル☆ガールズ』についても何か語って欲しかったところですが……

 大島さんがロシアのオーケストラを使ってることにちょっと触れていましたけど、あんまり深い業界事情とかまでは踏み込んでませんね。要するに、80年台末から90年台初頭のロシア・東欧革命で社会主義が滅んだ結果、ロシアや東欧のオーケストラは国家の保護が無くなって経営が苦しくなったので、伝統ある有名オーケストラも外国からのレコーディングの依頼とかを積極的に受けるようになったのですが、一方、日本でもアニメや映画音楽でフルオーケストラを使いたいけど、国内のオーケストラを使うと人件費や会場費で莫大な予算が掛かってしまうから、比較的低予算で使えるロシアや東欧のオーケストラを使ってレコーディングする作曲家が90年台中盤以降から増えてきたってところですね。
 ま、大島さんが言ってるように、日本のオーケストラより外国のオーケストラの方が体格の関係でブラスが豊かに聴こえるって面もあるでしょうけど。

(確かに日本のオーケストラと欧米のオーケストラを聴き比べると、向こうのオーケストラはブラス主体に聴こえて、逆に日本のオーケストラはストリングス主体に聴こえるって印象はよく感じますが、この辺は国民性による音の好みも関係してるって気もします。日本人はモーツァルト好きな人が多いようですが、モーツァルト時代のオーケストラはまだ金管楽器が未発達だったので、楽曲的にもストリングス主体のものが多いみたいですし……
 昔、確かロサンゼルスでレコーディングされた『交響組曲1000年女王』のLPを聴いたら、それまでに聴き慣れたアニメの交響組曲と違って、やけにブラスの音ばかり響いてると思ったけど、単に喜多郎のサントラを編曲したらそうなっただけかと思ってたら、その後、ゴジラとかの音楽を向こうのオケが演奏したのを聴いたらやはりストリングスよりブラスが強いんですよね。向こうの音源は教会で録音したとかいうのも多いから、設備的な音響の関係もあるのかと思ってたけど、その後もいろいろ聴いてると、やっぱり根本的にオーケストラの音が違うんだとわかってきました)

 BSハイビジョンでも9月25日に放送があるようなので、興味ある人は見てみてください。

     ☆ ☆ ☆

番組中で触れられていた『亡念のザムド』と『鋼の錬金術師』

亡念のザムド ORIGINAL SOUNDTRACK
亡念のザムド ORIGINAL SOUNDTRACK

TVアニメーション 鋼の錬金術師 オリジナル・サウンドトラック 1
TVアニメーション 鋼の錬金術師 オリジナル・サウンドトラック 1

TVアニメーション 鋼の錬金術師 オリジナル・サウンドトラック 2
TVアニメーション 鋼の錬金術師 オリジナル・サウンドトラック 2

TVアニメーション 鋼の錬金術師 オリジナル・サウンドトラック 3
TVアニメーション 鋼の錬金術師 オリジナル・サウンドトラック 3

劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 オリジナル・サウンドトラック
劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 オリジナル・サウンドトラック


アニメ以外の大島ミチル音楽を知るには……

大島ミチル~テレビ音楽ベスト~
大島ミチル~テレビ音楽ベスト~

大島ミチル・映画音楽ベスト
大島ミチル・映画音楽ベスト


 『映画音楽ベスト』は過去に記事にしてるので、気が向いたらそちらも読んでみてください。

   《大島ミチル|映画音楽ベスト》

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2009.05.23

東京交響楽団/交響曲「宇宙戦艦ヤマト」

 5月16日に東京芸術劇場で催された大友直人指揮・東京交響楽団の東京芸術劇場シリーズ第100回のコンサートに行ってきました。
 目的は言うまでも無く25年ぶりに再演される羽田健太郎作曲の『交響曲「宇宙戦艦ヤマト」』です。この曲自体についてはハネケンの追悼記事として以前に書いてますので、楽曲に関する詳細はそちらをご参照ください。(羽田健太郎『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』

 初演の時は聴けなかった(というか、レコードが出てから初めて知った)貴重なヤマトの演奏会用の音楽ですので、万難を排して聴きに行くことにしました。しかし、3月の『ウルトラセブン』4月の『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』と、3ヶ月連続の東下りはさすがに懐的に辛いですね。いつもは年1回ぐらいに抑えてるものですが。

 会場には西崎プロデューサーからの花が飾られていましたが、ご健在そうで何よりです。おりしも『ヤマト』の新作が動き出してるみたいなので、期待したいものですね。

 さて、コンサートの演奏曲目は以下の通りです。

 01. 坂本龍一
    映画『戦場のメリークリスマス』テーマ曲
 02. 三枝成彰
    NHK大河ドラマ『太平記』から
    「はかなくも美しく燃え」(藤夜叉のテーマ)
 03. 三枝成彰
    映画『優駿 ORACION』から“誕生”
 04. 服部隆之
    TBS日曜劇場『華麗なる一族』からメイン・テーマ(原典版)
 05. 羽田健太郎(テーマ・モチーフ:宮川泰)
    交響曲『宇宙戦艦ヤマト』
 EC. 冨田勲
    NHK『新日本紀行』テーマ曲

 それでは、順番に印象などを……

坂本龍一
 映画『戦場のメリークリスマス』テーマ曲

 坂本龍一といえばYMOの坂本教授ってイメージでしたが、それを一新して世界的な映画音楽作家として印象付けたのが、この『戦場のメリークリスマス』ですね。シンプルで覚えやすいフレーズの繰り返しによるこのテーマ曲は、いまなお色々なところで耳にします。
 鉄琴の序奏から始まり、ストリングスが伴奏を重ねます。次いで木琴とベル、そしてピアノが主題のフレーズを奏でていき、徐々にストリングスが加わってきます。
 次第にオーケストラ全体で優雅に、そして壮麗に奏でられていきますが、終始ベルが響いてるのが印象的です。

三枝成彰
 NHK大河ドラマ『太平記』から
 「はかなくも美しく燃え」(藤夜叉のテーマ)

 三枝成彰といえば、個人的には『機動戦士Zガンダム』の音楽の人ってイメージですが、透き通った流れるようなストリングスを多用するオーケストレーションの印象が強い作曲家ですね。
 木管のフレーズから始まり、次第にストリングスが重なってきますが、この辺りが実に三枝成彰らしい作りです。
 やがて哀愁的なヴァイオリンのソロが響いてきますが、これは劇伴の原曲では胡弓によるものだという話。もっとも、ヴァイオリンも胡弓と呼ばれたりする場合がありますが……
 マイナー気味の沈滞したようなフレーズがしばらく続き、全体で華々しく盛り上がっていきます。再びヴァイオリンのソロが入り、穏やかな伴奏と共に締めくくられていきます。

三枝成彰
 映画『優駿 ORACION』から“誕生”

 波打つような独特のヴァイオリンとフルートによる序奏。ベル(トライアングル?)とストリングス、そしてブラス、パーカッション、コーラスが加わって大きく盛り上がっていきます。
 マイナーなストリングスのフレーズが続いた後、ストリングスにコーラスが加わって優雅に展開されます。全体で壮大に盛り上がり、堂々とした主題が奏でられます。その後、清らかなコーラスと美しいストリングスのフレーズが展開され、安らぎと清浄なイメージが広げられます。
 最後は全体で壮大に盛り上がって、太古の連打と共に堂々のクライマックスを迎えます。

服部隆之
 TBS日曜劇場『華麗なる一族』からメイン・テーマ(原典版)

 服部隆之というと『劇場版スレイヤーズ』とか『機動戦艦ナデシコ』の作曲家というイメージですが、音楽的にはストリングスとブラスを調和させた豊かで華やかなオーケストレーションの印象が強い人です。
 原典版とあるのは、実際にレコーディングに用いられた作曲家手書きのスコアを用いての演奏とのことみたいです。
 力強いブラスとストリングスから始まり、徐々にスローダウンしていきます。哀愁漂うマイナーなストリングスと低音のコーラスのフレーズが続きます。やがて叙情的にオーケストラが展開していきますが、この辺りが実に服部隆之らしい深みのあるオーケストレーションです。
 ピッコロとハープが間奏的なフレーズを奏でた後、全体で盛り上がると、今度はトランペットやホルンが哀愁的なフレーズを印象深く重ねます。
 ピアノのソロからストリングスの穏やかにフレーズに続き、徐々に全体で盛り上がり勇壮に展開していきます。その後の余韻に響くホルンが印象的。
 スタッカート気味にテンポ良く盛り上がり、行進曲風に勇壮に展開していきます。やがて大きくコーラスが入り、壮大に響き渡ります。まるで交響曲の終楽章のような堂々たるフィナーレを迎えます。


羽田健太郎(テーマ・モチーフ:宮川泰)
 交響曲『宇宙戦艦ヤマト』

 第一楽章「誕生」

 低音から始まる幻想的な序奏。CDでは数え切れないくらい繰り返し聴いてる冒頭部ですが、生で聴くブラスの響きはとっても豊かに感じられます。
 可変的なテンポで奏でられる第1主題のメインテーマが壮大に展開されていきます。オーケストラの音がとにかく豊か。こればかりはレコードでは味わえない醍醐味です。ホルンによる間奏を経て第2主題の「イスカンダル」が奏でられます。華麗な木管がメインのフレーズから始まり、美しいストリングスに引き継がれていきます。
 展開部の第1主題はどこか不安定な雰囲気で始まります。危うくも派手な展開が繰り広げられますが、途中に入るティンパニーの響きが印象的。
 再提示部になると第1主題は安定し、勇壮かつ堂々とした展開で盛り上がります。そして静寂に帰って第2主題。雄々しく優雅な雰囲気で、曲全体は穏やかに流れていく感じです。

 第二楽章「闘い」

 流れるようなストリングスによる第1主題の「神殿部の斗い」に、トランペットによる「FIGHTコスモタイガー」が絡み、華々しい盛り上がりから始まっていきます。重低音の「ウルクの歴史」はコントラバスがメインで旋律を奏でてるのが実に印象的です。
 こうして生で聴くと、ストリングス主体の第1主題のフレーズと、重低音の「ウルクの歴史」のフレーズ、そしてブラス中心の展開音楽が三者互いに対峙してるイメージが強く感じられます。
 中間部に流れるストリングス主体の第2主題は、激しいスケルツォに挟まってとても優雅に感じられます。
 終盤はより力強い「FIGHTコスモタイガー」から始まって展開されます。

 第三楽章「祈り」

 ストリングスで優雅に奏でられる第1主題。そして清らかな第2主題の「無限に広がる大宇宙」が木管中心で奏で始められます。
 中間部では第1主題が展開的に奏でられていきます。美しくも不安げな感じから、熱情的なブラスの展開に移り、最後は雄々しく堂々とした形になっていきます。
 終盤はスキャット(ヴォカリーズ)とハープを加えた第2主題。ヴォカリーズは安井陽子というソプラノ歌手の人ですが、初演の川島和子に比べると声が野太い感じがします。川島和子のスキャットが割りとフラットで頭にアクセントがあるのに対し、声の半ばに重みを置いた歌い方です。ま、以前に聴いたセントラル愛知交響楽団のコンサートの時の人みたいに、おもいっきり声を震わせたソプラノそのものの歌い方ほどじゃないにしても、やはりどこか違うような気がします。

 第四楽章「明日への希望」

 ピアノとヴァイオリンによるドッペルコンチェルト。今回はピアノが若林顕、ヴァイオリンがコンマスの大谷康子ということです。
 オケは力強い第1主題のユニゾンで始まりますが、ブラスの出だしが少し弱いかなという感じ。続いて入ってくるピアノは確かに力強くはあるけど、軽やかさが足りず、テンポを維持するのにいっぱいで、少し音が濁ってる気がします。初演のハネケンのピアノと比べるのも無理があるのだけど、どうしてもあれが基本に感じてしまいますからね。
 そして第2主題の「大いなる愛」をピアノが奏で始めますが、ハネケンとも宮川泰とも違う、まったく別の味わいです。一方、ヴァイオリン・ソロは表現豊かな演奏なのですが、ちょっと弱々しい感じが否めません。
 中盤、第三楽章の第1主題が現れる辺りはオケの演奏が豊かに響いてます。ヴァイオリン・ソロの歌い上げていく部分はかなり見事に聴かせてくれます。しかし、そこに加わってくるピアノが何かもたついて感じられます。そして、オケの方もそれに引っ張られてるのか、少し乱れを見せてる感じです。
 終盤近くのピアノとヴァイオリンの掛け合いは音がかみ合ってないというか、初演のハネケンと徳永二男の阿吽の呼吸のようなものはここには存在してないのでしょう。それを望むのは無理な注文とはわかるのですが……
 それでも、ラストの盛り上がりは格別の味わい。堂々としたメインテーマを用いたコーダがフィナーレを飾ります。

冨田勲
 NHK『新日本紀行』テーマ曲

 冨田勲といえば、このブログ的には『ジャングル大帝』の人なのですが、どちらかというとクラシック音楽の演奏にシンセサイザーを用いた旗手の人という感じですか。もっとも、バッハの楽曲を使ったアルバムしか聞いたことはありませんが。
 この『新日本紀行』の曲は、途中に拍子木とか木魚とか笛の音という和風テイストを入れることで日本をめぐってるって雰囲気を出してる感じですが、曲そのものの作りはあんまし和風の感じはしないので、狙いどころは良くわかりません。ま、オケで和楽器そのものを使ってたとは思わないから、クラヴェスやウッドブロック、フルート等で代用してるんでしょうが、席が前の方だと演奏してるところが見えないので、よくわかりません。

     ☆ ☆ ☆

 これまで音源が初演版しか無かったから、どうしてもそれをスタンダードとして比較してしまいます。特にソリストの方たちにはきつい感想になってしまいがちです。こういうのも比較対象が多くなれば、それなりにきちんとした評価が出てくるのでしょうが。
 これを機会に、多く演奏されるようになってくれたらと思います。大友氏も語ってられましたが、羽田健太郎が残した貴重な大作なのですから。本当の意味での音楽的な評価がなされていって欲しいものです。

(とか言ってるけど、現在では頻繁に演奏されてる伊福部先生の『SF交響ファンタジー第1番』だって、未だに頭の中には日比谷公会堂初演版がスタンダードとして居付いてますからねぇ……。最初にレコードとしてリリースされた演奏の影響は大きいです)

     ☆ ☆ ☆

 第三楽章の女声ソロのパート、初演のレコード等じゃ「スキャット」の記述なのに今回のコンサートでは「ヴォカリーズ」との表記です。「スキャット」とは誤用で音楽的には「ヴォカリーズ」の方が正しいってことのようですが……おおっぴらにそんなこと書いてるの、Wikipediaの「宇宙戦艦ヤマト」の項目でのこの「交響曲宇宙戦艦ヤマト」に対する記事でしか見たことありません。
 ま、Wikipediaの記載自体、出典を示して書かれてるわけじゃないから、誰が言い出したことかわからないので今回の表記との関連性は不明なのですが、どうなんでしょうね。
 音楽的に「ヴォカリーズ」が正しいにしても、その当時「ヴォカリーズ」でググっても(Wikipediaの「ヴォカリーズ」の項目も含めて)音楽用語として有用な記述への検索結果が出て来なかったから、どこまで一般に認知されてる(さらに1984年当時に遡って、当時に認知されてた)言葉かはわかりません。

 この「ヴォカリーズ」を正しいとする根拠の1つとしてジャズ用語である「スキャット」の誤用が挙げられてるわけですが、そもそもこの指摘自体がおかしい気がします。
 『宇宙戦艦ヤマト』の音楽でこれを「スキャット」と称しているのは第1作目の音楽(少なくとも『交響組曲』のアルバム)から始まっていますが、そもそもこれを「スキャット」と呼んでいるのは(根源的にはジャズ由来なのでしょうが)日本の歌謡曲での習慣からなのですね。少なくとも由紀さおりの「夜明けのスキャット」に遡る流れです。
 「夜明けのスキャット」は「ルールルルー」の子音の連続だから「スキャット」で、『ヤマト』のは「アーアーアアアー」の母音の連続だから「ヴォカリーズ」というのは、そりゃ子音と母音が明確に区分されてる西洋言語の音楽なら正しいのでしょうが、共に音節をはっきりと出している日本語の音楽では区別する意味がありません。
 つまりのところ、日本の歌謡曲における「スキャット」としては『ヤマト』の川島和子の歌も「スキャット」として間違いではなく、大元のジャズの定義を持ってきて誤りだというのはふさわしくないのではないでしょうか。歌謡曲の「スキャット」とジャズの「スキャット」は別物だと考えた方が良いと思います。

 クラシック音楽として「スキャット」という概念が無いから「ヴォカリーズ」と表すというのなら、それはそれで正しいと思いますが、別のところからジャズの定義を持ってきて「スキャット」は誤りだというのは違うのではないでしょうか。

     ☆ ☆ ☆

 相変わらず商品欠乏状態ですね。リンクを貼っておくけど、取扱いがあるかどうかは運次第だと思ってください。(メーカー在庫が無いからマーケットプレイス次第)

 まずは滅多に出て来ない単品CD。それでもジャケ写はある。

交響曲 「宇宙戦艦ヤマト」~ライブ~
交響曲 「宇宙戦艦ヤマト」~ライブ~


 DVDの方はたまには出て来るみたいです。

交響曲 宇宙戦艦ヤマト ライブ [DVD]
交響曲 宇宙戦艦ヤマト ライブ [DVD]


 左サイドにも貼ってある特典ディスクに『交響曲』が付いてるBOX版。2年前にはまだまだ現行商品で在庫があったのに、これも今では……

生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX
生誕30周年記念 ETERNAL EDITION PREMIUM 宇宙戦艦ヤマト CD-BOX


 これはアナログ盤といえどもヤマト末期の商品だからヤフオクで探しても『交響組曲』ほど手軽に手に入らないと思います。むしろ商品期間の長かったCDの方が多く出てるかも。(ま、イージーリスニングシリーズとか、『宮川泰の世界』ほどのレア物じゃないでしょうが)

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2009.04.28

日本フィル/『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』

 4月19日に東京芸術劇場で催された宮川彬良指揮・日本フィルハーモニー交響楽団の《第184回サンデーコンサート》に行って来ました。忘れもしない3年前、宮川泰先生が他界された直後に行なわれたコンサート以来ですね。(『宮川泰追悼、日本フィル・サンデーコンサート』参照)

 いうまでもなく目的は3年前のコンサートで彬良氏が公言された『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』の復元演奏です。といっても、とりあえずA面曲だけというのが少し残念なところですが。

 演奏曲目は以下の通りです。

 01. イスカンダル(宮川 泰)
 02. 見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
 03. 深い河(黒人霊歌)
 04. ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)
 05. オー・ソレ・ミオ(カプア)
 06. 空のわすれもの(宮川彬良)
 07. あの宇宙を、征け(高取ヒデアキ)

 08. 交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川 泰)
    1:序曲
    2:誕生
    3:サーシャ
    4:試練
    5:出発
    6:追憶
 09. 真赤なスカーフ(宮川 泰)
 10. 宇宙戦艦ヤマト(宮川 泰)
 EC. ゲバゲバ90分(宮川 泰)


 今回のコンサートは星がモチーフということで、星とか宇宙に関係する曲がラインナップされています。
 それでは順番にいきましょう。


イスカンダル(宮川 泰)
 いきなり空想上の星ですが、14万8千光年彼方の大マゼラン雲にあるという、女王スターシャの住む星です。いうまでもなく、これも『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のB面に収録されてる曲なのですが、当時のスコアで現存してるのはこれだけだという話です。
 もっとも、いきなり冒頭のバスフルートのソロのところから彬良氏自身によるピアノが入ってる時点でオリジナルとは違ってるんですが……
 やがて、ストリングスが中心となり、ホルン等も加わってきたところでようやくピアノが抜けます。そこからパーカッション等も入ってオーケストラ全体で奏でられていきます。
 後半はレコードではシンセによるSE的なアクセントをピアノが奏でています。この辺り、オーケストラの演奏が非常に豊かな印象で、そのままレコード通りに終わります。

見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
 今度は漠然とした夜空の星。地上から見た宇宙の光景ですね。これもこの手のコンサートでは定番曲の一つ。いきなり『E.T.』のイントロから始まってる辺りがなんとも。何か原曲部分が普通のインストなのに、そうじゃないとこだけ派手に盛り上がってる感じで、原曲の好きな人はどうなのかな?

深い河(黒人霊歌)
 河の向こうに空があるというところから持ってきたらしいですが、よくわかりません。彬良氏は三途の川の向こうにあの世があるという例えを挙げてらっしゃいましたけど、イメージが曖昧ですね。後で錦織健が言ってたように、天の川とかの方が具体的な気がします。
 豊かなメロディーでかつ、しっとりとした雰囲気の演奏です。

ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー)
 いうまでもなく月ですね。元がジャズバンドの曲ですから、メインを奏でるのはサックスなのですが、それをピアノに置き換えての演奏とのことです。しっとりとした感じに仕上がっています。

オー・ソレ・ミオ(カプア)
 太陽です。雰囲気的にスペインとかの方が似合いそうですが、元はイタリアのナポリ民謡とのことですね。
 ここから登場の錦織健のテノールが見事に歌い上げてくれます。さすがに本職、マイクなんか使いません。途中に入る、クラリネットだかイングリッシュホルンだかのソロがなかなかでした。

 毎度のことだけど、オケのコンサートで曲の演奏中に拍手を入れるのはやめてほしいです。ポピュラー歌手のコンサートじゃないんだから。
(ベートーヴェンの『第九』でも第4楽章でソロ歌手が入ったところで拍手するやつがいるから、それを嫌う指揮者の中にはソロ歌手を第1楽章から出させてる人もいるって話もありますし。もちろんコーラスも)

空のわすれもの(宮川彬良)
 元はコーラス曲とのことですが、今回は彬良氏のピアノ伴奏による錦織健の独唱。歌詞や曲調が平易なので、聴いた感じ、『みんなのうた』みたいな趣きのの曲ですね。

あの宇宙を、征け(高取ヒデアキ)
 これはNHKアニメ『タイタニア』の主題歌です。オケとテノールが張り合ってるような感じの曲ですね。聴いた位置の関係もあるのか知らないけど、もう少しオケとテノールの配分を考えないと、少しお互いの音を殺しあってるような感じがします。
 錦織健でアニメの主題歌というと「未完成協奏曲」なんかも聴いてみたい気がするのですが、今回のテーマとは合いませんね。


交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川 泰)

 1:序曲
 近年演奏の多い『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』では頭と後半部分がぶつ切りされてる「序曲」ですが、レコード通りに冒頭の「サスペンスA」のフレーズから始まります。
 やがてメインの主題として現れるのは「無限に広がる大宇宙」のモチーフ。ここで川島和子がいないからと、なんと錦織健がスキャットをやっているのですが、意外にもちゃんと聴けるのですね。恐るべし、錦織健。
 リズムボックスがテンポを奏で始めストリングスが主題のモチーフを盛り上げていきます。中間部で木琴が目立ってるのが少し印象的です。バイオリンのグリッサンドとティンパニーが絡み、演奏が盛り上がり、シンバルが鳴り響きます。フォルテの部分はかなりのパワーを感じますね。
 終盤はオーケストラ全体で主題を優雅に奏で上げ、ホルンと共に盛り上がるラストを迎えます。『組曲』では中盤で切られてしまうから、最後まできちんと聴けるのは嬉しいですね。

 2:誕生
 重厚な「悲愴ななヤマト」のフレーズで始まっていきます。コントラバスがなかなか響いてるのが印象的。そしてミステリックな雰囲気の「宇宙の静寂」のフレーズ。
 間奏部のファンファーレ的なフレーズから「ヤマト乗組員の行進」への盛り上がりが最高です。やはりここが一番の聴き所でしょうね。原曲よりはかなり軽めでポップな感じの演奏ですが、そのぶんノリは良いです。
 その行進曲からメインテーマのイントロに繋がるところ、原曲はそのままの音程で繋がってるのですが、今回はささきいさおのボーカルのキーに合わせたのか、イントロ部分に入るところで音程がどんと下がってしまってるのが気になりました。
 例のごとくボーカルが入るところでささきいさおが入ってくるので、演奏中に関わらず拍手が入ってしまうのが非常に残念ですね。だいたい原曲はボーカル無しだし、ボーカルのキーに合わせれば音程が変わるし、拍手は入れられるし、メリットがあるとも思えないので、ちゃんとレコード通りにインストゥルメンタルだけで演奏して欲しかったところです。(ささきいさおによる主題歌はちゃんと後のプログラムに入ってるわけだし)

 3:サーシャ
 大曲が続いたのでちょっと一息といったところの曲です。ミステリアスっぽい「イスカンダルの女」のフレーズを、木管から始まって、ハープのアクセントを経て、ストリングスに繋いでいきます。
 聴いてた場所によるのかもしれないけど、ちょっとコントラバスが強過ぎかな。

 4:試練
 緊迫感あふれる「サスペンスB」のフレーズで始まります。さすがに原曲にあったシンセの効果音はいっさい入っていません。
 中間の「探索艇」のモチーフはただただ軽快に奏でられます。
 終盤は「サスペンスB」のフレーズが少し入った後、じわりじわりと「ヤマトのボレロ」が奏でられていきます。スネアのリズムが本家ラヴェルの『ボレロ』並みに響きまくってるのが印象的。

 5:出発
 中間部のフレーズをカノン風にアレンジし、ボリュームアップした「地球に飛び立つヤマト」です。
 木管がリズムをリードしてる感じなのが印象的ですね。ストリングスはスタッカート気味の部分が多くて大変そうです。ラストのスローテンポの部分は優雅に奏でられてて、余韻に浸れます。

 6:追憶
 A面の最後は「宇宙戦艦ヤマト」のメインテーマをバラード風にアレンジしたイージーリスニング風の曲です。劇伴曲の「哀しみのヤマト」とは趣きが違うアレンジなんですね。
 ギターソロから始まり、ストリングスと木管がややしんみりと引き継ぎます。中盤になってトランペットが哀愁漂うバラードを奏でるのがとても印象的です。最後、ストリングスが余韻を奏でる中、鉄琴の短いフレーズで終わるのが、けっこう特徴的なんですね。

 本来、B面に続くためのインターミッション的な意味合いの曲ですから、ここで終わってしまうのは非常にフラストレーションが溜まるのですが、とにもかくにもようやくA面だけ復元できたということですから仕方がありません。


真赤なスカーフ(宮川 泰)
 これは『宇宙戦艦ヤマト』のエンディング曲。シングル盤バージョンで、ささきいさおのボーカルです。この曲、アニメのEDで使われたのはアレンジが違うんですけど、たまにはそっちを聴きたいとか思ったりしますが、どうなんでしょう。
 B面が復元されたらその1曲目が「真赤なスカーフ」になるのですが、『交響組曲』のこれは宮川泰先生らしい、ごっちゃ煮のアレンジメドレーになってて、聴ければなかなか楽しめるので大いに期待したいところです。(さすがに、これをボーカル入りでやったりは出来ないでしょうね)
 それにしても、ささきいさおの歌は全然変わりませんね。

宇宙戦艦ヤマト(宮川 泰)
 フルコーラスの主題歌ですが、「序曲」に引き続き錦織健のスキャット付です。やはりオケメインの「誕生」に無理やりボーカルを入れるよりは、ボーカル用の単独曲の方が映えて聴こえますね。
 錦織健のスキャットは、スキャット単独で聴くと悪くはないのですが、やはりささきいさおのボーカルと組ませると、ちょっと違和感があります。これをやるくらいなら「真赤なスカーフ」のバックコーラスをやって欲しかったところですが……

ゲバゲバ90分(宮川 泰)
 アンコール曲はトークでも触れられていた「ゲバゲバ90分」です。吹奏楽版は前に大阪市音楽団の演奏で聴いたことがありますが、オーケストラ版を生で聴くのは初めてかな。途中、トロンボーン隊が立って演奏してましたが、オーケストラじゃそれがせいぜいのパフォーマンスみたいですね。

     ☆ ☆ ☆

 何年後になるのかわかりませんが、引き続いてB面の復元を期待したいところです。
 B面6曲と言っても、「イスカンダル」は現存してるわけです。3年前のコンサートでは「明日への希望」が演奏されていましたが、あれのスコアはどうなってるのでしょうかねぇ。もっとも、この曲はスコアの復元以上に、コーラスを調達しないといけないという難問があるのですが。
 残るは「真赤なスカーフ」「決戦」「回想」「スターシャ」というところですが、「真赤なスカーフ」を原曲通りにやるとするとエレキギターとかも持ち込まないといけないし、いろいろとオケで生演奏するには面倒ですね。
 今回のA面ではその辺で妥協してる部分がけっこうあったように思いますけど、これもいつかもっと完全に近い形でやり直して欲しいですね。

     ☆ ☆ ☆

 アニメ音楽史上屈指の名盤とはいえ、単独の現行商品が無いんですね。次のは中古でプレムアム価格が付いてるから注意。(アナログ盤ならヤフオクに行けばいくらでも安く手に入りそうですけど)

交響組曲 宇宙戦艦ヤマト Symphonic Suite Yamato
交響組曲 宇宙戦艦ヤマト Symphonic Suite Yamato

 左サイドに張ってある30周年記念のCD-BOXもすでに在庫切れみたいですね。
 いよいよ『復活編』を作るとか言ってるから、便乗して過去の音源も復刻して欲しいものです。(個人的には『ヤマト』の音楽CDは全部押さえてるから、むしろ『オーディーン』のCDを出して欲しいんですが)

 これだけじゃ何だから、宮川彬良関連のCDでも。

 これは大阪市音楽団の演奏で吹奏楽版の『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』が収録されていますが、以前に記事で取り上げたアルバムとは違い、とくに平原まことの名前がクレジットされてないから市販されてるスコアに準じたスタンダードなアレンジの演奏かと思います。(レコード屋で現物を見掛けたこと無いので未入手)

ブラック・ジャック&宇宙戦艦ヤマト 宮川彬良&大阪市音楽団
ブラック・ジャック&宇宙戦艦ヤマト 宮川彬良&大阪市音楽団


 こちらは同じ大阪市音楽団の演奏ですが、以前の記事で紹介している平原まことのサックスをメインにフィーチャーされたアレンジの吹奏楽版『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』が収録されています。

ブラスバンド・バラエティ 宮川彬良&大阪市音楽団 痛快ライヴ!マツケンサンバII!!
ブラスバンド・バラエティ 宮川彬良&大阪市音楽団 痛快ライヴ!マツケンサンバII!!


 吹奏楽版『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』とか「ゲバゲバ90分」とかは宮川泰先生の生前に出てる次のCDでも聴けますが。

THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa
THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa


 なぜか未だにオーケストラ版の『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』はCDになっていないのですが、いいかげんどこかの演奏を出してくれないかな。いや、別に川島和子のスキャットが必要だとか言いませんから。(そういえばスキャットをフィーチャーした「大いなる愛」って『幻想軌道』のライブ盤辺りで出てたっけ?)

 『交響組曲』やら『組曲』やらややこしいですが、さらに来月は待望の『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』の再演ですね。

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2009.04.09

六甲フィル/『SF交響ファンタジー第1番』

 少し古い話ですが、2月15に神戸文化ホールで開かれた六甲フィルハーモニー管弦楽団の第27回定期演奏会を聴きに行って来ました。

 六甲フィルハーモニー管弦楽団というのは、阪神大震災の後に神戸大学交響楽団のOBを中心として集まって結成された、主に神戸で活動しているアマチュアオーケストラのようです。指揮は客演の遠藤浩史。

 演奏曲目は以下の通りです。

 01. モーツァルト
   交響曲第35番ニ短調 K.385「ハフナー」
 02. 伊福部 昭
   SF交響ファンタジー第1番
 03. ブラームス
   交響曲第1番ハ短調 Op.68
 EC. ブラームス
   ハンガリー舞曲第6番ニ長調

 それでは、順番に印象などを……


モーツァルト
交響曲第35番ニ短調 K.385「ハフナー」

 ハフナーというのはザルツブルグの大富豪のこと。クラシック音楽(とくに交響曲)はベートーヴェンの時代からは市民社会での芸術音楽という側面を大きくしていきますが、モーツァルトの当時はまだ宮廷貴族や富豪向けのステータスシンボルとしての量産音楽という意味合いが大きかったので、これもそんな1つとしてハフナー家に献呈された作品ですね。

  第1楽章 Allegro con spirito

 雄々しいオーケストラで始まるソナタ形式の第1楽章。冒頭からの音の豊かさは古典時代ならではの曲って感じがしますが、どうなんでしょう。ブラスとストリングスのハーモニーが味わい深い印象です。
 主題展開部はややスローダウンしてマイナー気味に落ち込んだ感じですが、主題再提示部で再び華々しさが復活してきます。

  第2楽章 Andante

 優雅なセレナーデ風の緩徐楽章。そういえばこの曲は元はセレナードとして作られていた曲を交響曲に改作したものみたいですね。
 美しいストリングスにブラスのアクセントが入るという感じです。ストリングスの響きは非常に豊かな印象です。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが対向配置になっているので、それが効果的にハーモニーを響かせてる感じです。

  第3楽章 Menuetto

 華々しい序奏で始めるメヌエット。華々しいフレーズとおとなしめの静かに抑えたフレーズの繰り返しによる派手な主部が展開した後、ゆっくりと優雅な中間部が奏でられるのが印象的です。

  第4楽章 Finale:Presto

 出だしから華々しく派手なプレスト。ストリングスが主体でブラスは添え物って感じがモーツァルト的な感じかな。打楽器はティンパニーが目立つ程度。スピーディーながらも美しいストリングスの響き。少し控えめって感じもするけど、大きく盛り上がって終わります。


伊福部 昭
SF交響ファンタジー第1番

 オーケストラの編成が前曲から一気に大増員です。とくにコントラバスが倍増してるのって凄いですね。期待が高まります。

 冒頭、ゴジラの出現モチーフの重低音は抜群。ティンパニーとシンバルが目立ち過ぎって感じかな。続く間奏部は2拍子部分の溜めと7拍子部分のテンポアップがうまく出ています。
 「ゴジラ・タイトル」は少しテンポが速過ぎかな。原曲は速めなんだけど、この『SF交響ファンタジー』ではそれよりゆっくり気味の指定のはず。打楽器やブラスが強くてストリングス(とくにヴァイオリン)が弱い気がします。
 「巨大なる魔神」は上手く緩急が出ていますね。タムタムが強過ぎって感じだけど、逆にティンパニーはもうちょっと頑張った方が良かったですね。これ、ティンパニーの一番の聴かせどころのはずですから。
 「セレナーデ」はちょっとテンポが一定過ぎる感じ。ハープも伴奏に隠れてる感じだから、もうちょっと表に出て来た方が良いかな。全体的には音が豊かですね。
 「地底怪獣出現」はブラスの重低音が凄いですね。中盤の部分が少しテンポが速過ぎで、もう少し溜めが欲しいところです。
 「ゴジラ対ラドン」はラドンのモチーフの入るタイミングが絶妙。これ、ちゃんとスコアに書いてあるはずなのに、演奏しなれてないオケとかだと微妙に違うんですね。でも、太鼓が強過ぎって気がするし、繰り返しはちょっと拙速な感じですね。
 「宇宙大戦争タイトルマーチ」はファンファーレのテンポは良いんだけど、その後がいきなりテンポアップし過ぎ。かなり早過ぎる感じですね。でも、シンバルのタイミングがちゃんとちゃんと追い付いていってるのは良いです。
 この曲と「怪獣総進撃マーチ」は若干テンポを変えた方がメリハリが付いて良いのですが、そのまま突っ走ってる感じです。
 マーチの2回目は音がかなりボリュームアップした感じになります。「怪獣総進撃マーチ」の2回目のところでトランペットがミスっちゃってるのが残念。ま、ここの部分はとくにブラス系は過酷で、プロオケでも繰り返しを端折っちゃってる演奏がしばしばありますからね。
 クライマックスの「宇宙大戦争マーチ」はちゃんと盛り上げどころが分かってるって演奏で嬉しいです。結部の「怪獣総進撃マーチ」の締めも上手いですね。

 全体的にけっこう聴き応えのある演奏ですね。


ブラームス
交響曲第1番ハ短調 Op.68

 ブラームスは初めてですのでよくわかりません。この交響曲第1番は21年掛けて作ったということですが、これをもってチェレプニンが伊福部先生に交響曲を作り急ぐなと言ったお陰で、伊福部先生は生涯に『シンフォニア・タプカーラ』しか交響曲を作らなかったみたいですから、何とも罪作りな人です。

  第1楽章 Un poco sosutenuto-Allegro

 深刻そうなマイナー気味の出だし。沈んでいくようなストリングスのハーモニー。よく見ればコントラバスがオケの最後列で一直線に並んでるのが珍しいですね。
 哀歌のような沈痛な展開。まるで悩み深さを表すようなゆっくりとした展開。ちょっと『ゴジラ』のタイトルモチーフに似たフレーズが現れたかと思うと、大いなる苦悩って感じの激しい展開。
 ブラームスは苦悩の音楽ですか……と思ったら、後半はメジャー気味に豊かに展開していきます。

  第2楽章 Andante sosutenuto

 ゆっくりと優雅なストリングスで始まる緩徐楽章。木管のフレーズから始まる壮麗なセレナーデ風。そして、ストリングス主体でやや静かでおとなしめのバラード風に奏でられていきます。

  第3楽章 Un poco allegretto e grazioso

 ゆったりとした4拍子の舞曲風の始まり。普通、第3楽章にはメヌエットなりスケルツォなりの3拍子の舞曲が入るのですが、ブラームスはそうではないみたいです。
 徐々に盛り上がって、ファンファーレを伴った主題が現れますが、これがまた2+2+4拍子でかなり変則的ですね。

  第4楽章 Adagio-Piu andante-Allegro non troppo, ma con brio

 重々しい沈痛なストリングス。第1楽章を引いて苦悩の音楽って感じです。低音のピチカートでの盛り上がりが印象的。
 ゆっくりとした大きなブラスの大きなフレーズから、心が洗われるようなフルートの響き。非常にゆったりとした夜明けのようなイメージから、ベートーヴェンの『第九』に似たフレーズの優雅なセレナーデをストリングスが奏でます。そこから木管、さらに全体へと広がり、華々しく派手に展開していきます。
 延々と続く派手で激しい展開部。途中、ややゆっくりと優雅な部分が挿入され、単調さを避けてる感じかな。
 苦悩から歓喜や祝福へ昇華されて終わってるって感じですね。

 このブラームスの交響曲第1番は俗に「ベートーヴェンの第10番」とも呼ばれてるらしいですが、第4楽章の展開を見れば『第九』との関連性は伺えますね。ただし、ベートーヴェンの音楽はこんなに難解じゃないと思うんですけど。


ブラームス
ハンガリー舞曲第6番ニ長調

 元はピアノ曲のようですが、アンコール曲なのでプログラムには無く、誰による編曲のものなのかはわかりません。
 主部はゆったりとしたストリングス主体のワルツ風のフレーズと、派手なテンポアップのオーケストラのフレーズが繰り返されますが、このギャップが印象的です。ここがハンガリー舞曲の特徴的な部分なんでしょうか。
 中間部は堂々と大きく勇壮なフレーズと、ストリングスの小刻みなフレーズが奏でられ、最後に主部が繰り返されます。

     ☆ ☆ ☆

 かなり聴き応えのあるコンサートだったので、良かったですね。こういうのを聴くと日本のアマチュアオーケストラのレベルの高さが実感できます。逆に、下手なプロオケの演奏を聴いたら金を返せとか言いたくなりますが……プロはプロで年間何十曲とか数をこなさなければいけないから、一曲一曲に割けられるエネルギーはどうしても違ってくるんですね。

 配布されてたプログラム本体にも一般的な解説風の楽曲紹介は載っているのですが、それとは別に、ペラ紙に簡易印刷されたチラシ風の簡単なオーケストラの紹介とか演奏曲の紹介が書かれた物も挟み込まれてたのは気が利いてると思いました。
 ま、関西で無料のコンサートだから、どんな客層が来るかわかったものじゃないからでしょうが、初心者が興味を持てるレベルでの紹介というのも、客の演奏に対する集中力を喚起する上では良いと思われます。

     ☆ ☆ ☆

『SF交響ファンタジー』なんて頻繁に書いてるし、最近新譜が出たりしてるわけでもないので、CDは別に良いかとも思ったのですが、とりあえずはオーソドックスなのを。

宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー
宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー


こちらはユーズド価格がおもいっきし高くてぶっ飛びました。買うのはいろいろと冒険ですね。ま、手元に持ってるから、是非とのリクエストがあればレビューは書けますけど。

おもしろオーケストラ1/オーケストラ・イン・スクリーン~SFファンタジーの世界@〔「2001年宇宙の旅」~タイトル・テーマ(R.シュトラウス)/「スタートレック」~メイン・テーマ(J.ゴールドミスミ,編曲和田薫/他〕石丸寛/新星日本o.
おもしろオーケストラ1/オーケストラ・イン・スクリーン~SFファンタジーの世界@〔「2001年宇宙の旅」~タイトル・テーマ(R.シュトラウス)/「スタートレック」~メイン・テーマ(J.ゴールドミスミ,編曲和田薫/他〕石丸寛/新星日本o.

     ☆ ☆ ☆

 3月に引越ししたのが全然片付かないから、しばらくCDを聴いたりできません。根本的に荷解きしてCDを取り出す空間的余裕が無い……手元ですぐ取り出せるのが10年以上も前のCDばかりってのが……

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2009.03.20

冬木透 CONDUCTS ウルトラセブン

 3月13日に東京オペラシティで催された『ウルトラセブンの音楽を創った男・冬木透 CONDUCTS ウルトラセブン』のコンサートに行ってきました。

 あすかはアニメや東宝特撮映画の音楽は好んで聴いていますが、テレビの特撮番組はその対象じゃないのだけど、昔から『ウルトラセブン』だけは何か魅かれるものを感じて、キングから出ていた『ウルトラセブン総音楽集』とか、90年前後にCD化された『交響詩ウルトラセブン』とかは聴いていました。

 思えば幼少の頃にしばしば再放送されていて、ちゃぶ台の前で胡坐を組むメトロン星人とか、何か口の中で飴のようなものを鳴らしながら語ってる第四惑星のロボット長官とかの光景が記憶の奥底に染み付いているんですね。
 カラータイマーが無かったり、カプセル怪獣を使ったりすることが他のウルトラ兄弟と一線を画してるところもセブンを特に印象付けた要素でもあったでしょう。
 そんな『ウルトラセブン』のオーケストラコンサートがあると聞けば、たとえ日本の東の果てであろうとも、万難を排して聴きに行かなければなりません。

 演奏は東京交響楽団。前身の東宝交響楽団の時代から映画音楽等のレコーディングの多いオーケストラですが、『ウルトラセブン』の音楽も当時の東京交響楽団の手でレコーディングされたものらしいですね。
 しかし、1500円もする有料のパンフレットに肝心の当日の演奏の主役であるオーケストラの構成メンバーに関する記述が何も無いのは頂けません。
 指揮は作曲者の冬木透本人というのが、今回のコンサートの目玉でもあるでしょう。

 演奏曲目は以下の通り

 01. 交響曲「ウルトラコスモ」
    第1楽章 太陽をこえて
         Allegro con brio, ma non troppo presto.
    第2楽章 光をあびて
         Moderato―Andante
    第3楽章 暗黒の淵から
         Lento misterioso―Moderato―Allegro barbaro
    第4楽章 輝きの環を…
         Finale:Allegro brillante
 02. 交響詩「ウルトラセブン」
    第1楽章 ウルトラセブン
    第2楽章 怪獣出現
    第3楽章 ウルトラホーク発進
    第4楽章 侵略者の魔手
    第5楽章 さよならウルトラセブン
 03. ウルトラ警備隊の歌
 04. ワンダバメドレー
 EC. ウルトラセブンの歌


 それでは演奏の印象などを。

交響曲「ウルトラコスモ」

 この曲は円谷プロの創立30周年記念の祝典曲として委嘱されて作曲された曲とのことです。セブンに限らず、『ウルトラマン』に始まるウルトラヒーローの音楽がモチーフとして組み込まれた本格的な交響曲です。

 第1楽章 太陽をこえて
      Allegro con brio, ma non troppo presto.

 「Allegro con brio」は「生気に満ちた」、「ma non troppo presto」は「しかし急速過ぎないように」という意味です。
 スタッカート気味のバイオリンとホルンの響きから始まります。勇壮な『ウルトラマン』のモチーフが現れ、やがてブラス主体の主題が奏でられていきます。穏やかなストリングスの調べに転じ、静かな『ウルトラセブン』のモチーフが現れ、やがてシンバルの鳴動と共に激しく勇壮に展開していきます。
 最後はホルンのファンファーレに始まる勇壮な後奏で終わる感じです。

 席が左前の方だったのですが、その近くにドラがあって、それがあまり他では見られないくらいコンサートを通じてしばしば使われてるから、なんかドラばかりがやかましい感じがしたのは否めません。
 それにしても、楽章の間で拍手をするなよ。

 第2楽章 光をあびて
      Moderato―Andante

 「Moderato」は「中くらいの速さで」、「Andante」は「歩くような速さで」という意味です。
 ブラスに始まるマイナーなバラード曲。ハープの伴奏を伴ったトランペットのソロが高らかに鳴り響きます。そこにストリングスが重なってきて、やがて懐かしい感じの穏やかなメロディーが流れてきます。そして、ストリングスが、継いでブラスがバラードを大きく歌い上げていきます。
 再びマイナーに転じて不安な感じのフレーズが続きます。
 ハープとホルンが穏やかなフレーズを奏で始め、ストリングスに展開していきます。そしてトランペットのソロを挟み、ゆっくりと穏やかに、やがて大きく盛り上がって収束していきます。

 第3楽章 暗黒の淵から
      Lento misterioso―Moderato―Allegro barbaro

 「Lento misterioso」は「遅く神秘的に」、「Allegro barbaro」は「快活に競うように」という感じの意味です。
 木管と鉄琴から始まる不安でミステリアスなサスペンスモチーフ。鉄琴とストリングスがスリリングで不気味な雰囲気を盛り上げていき、ショッキングなコードが緊張を打ち破ります。
 小刻みなストリングスがスリリングな主題を奏で、そしてティンパニーとドラとブラスの不協和音が不安を煽っていきます。さらにティンパニーの連打がサスペンス感を高め、ドラが緊迫感を煽ります。
 この辺りは次第に激しくなってくる怪獣の襲撃って感じですね。

 第4楽章 輝きの環を…
      Finale:Allegro brillante

 「Allegro brillante」は「快活に輝かしく」という意味です。
 ゆっくりとしたトランペットのファンファーレに始まります。低音のストリングスから次第に盛り上がって華々しく奏でられる『ウルトラマン』のモチーフ。『ウルトラセブン』の戦闘モチーフを挟んで、再び『ウルトラマン』が奏でられます。
 ドラの連打とティンパニーの乱打から一転してピンチの音楽。そして、確かヤプール辺りの襲撃のテーマかな。静寂からミステリアスでスリリングな展開。鉄琴と小刻みなストリングス、ホルンの響きが印象的です。
 やがて『ウルトラセブン』のモチーフが復活し、低音から盛り上がるように「ウルトラセブンの歌PART2」が奏でられていきます。
 最後はいったんスローテンポに転じて穏やかな収束を見せた後、勇壮で堂々とした演奏で「ウルトラマンの歌」と「ウルトラセブンの歌PART2」が奏でられて終わります。


交響詩「ウルトラセブン」

 これは『宇宙戦艦ヤマト』から始まる70年代のアニメブームの頃にアニメ音楽の商品化が進んだ頃、過去の特撮作品の音楽にも日が当たり、『交響詩ウルトラマン』とセットで新規にレコード化されたものです。90年前後にCD化されましたが、その後は入手困難になっていたのを、昨年だか一昨年だか辺りに復刻されてたように思います。
 自分は最初にCD化された時に買って聴いたものですが、今は部屋の奥底にしまいこんでしまってるので、掘り出してくるのが困難なので、コンサートの予習とかで聴き返したりはしてません。
 これは「交響詩」とか名乗ってるけど、独立した標題曲ということではなく、当時のアニメでよく出てたシンフォニー盤とかのように、原曲をほとんどそのままオーケストレーションしてメドレーで繋いだような形の作品です。

 第1楽章 ウルトラセブン

 ティンパニーとコントラバスの重低音、鉄琴のアクセントで始まるサスペンス曲。バイオリンのグリッサンドがスリリングさを醸し出してきます。
 バイオリンのポルタメントから曲調が一転し、ウルトラセブンのOP冒頭のファンファーレが鳴り響き、メインの「ウルトラセブンの歌」が始まります。とにかくホルンが目立つ曲ですが、隠し味でマラカスが使われてたのが印象的です。

 第2楽章 怪獣出現

 フルートで始まる穏やかなセレナーデ。日常の安息という感じです。
 一転して激しいサスペンス曲。ティンパニーとドラがメインという感じで、そこにブラスの不協和音が被ってきます。この辺りは『交響曲「ウルトラコスモ」』の第3楽章でも使われてた曲ですね。
 やがてチェロとコントラバスの低音から始まるサスペンス曲に移り、バイオリンのグリッサンドが不安を煽ります。そして、次第に激しさを増していきます。

 第3楽章 ウルトラホーク発進

 華やかな「ウルトラ警備隊の歌」から始まりますが、一転してゆっくりと低音で不気味なサスペンス曲に転じます。
 ティンパニーとスネアドラムがリズミカルなスリリングなピンチの音楽が奏でられ、やがて「ウルトラ警備隊の歌」のマイナーアレンジによる寂しげな哀歌が流れてきます。そして最後は再び勇壮な「ウルトラ警備隊の歌」で幕を引きます。

 第4楽章 侵略者の魔手

 パイプオルガンをバックに、ゆっくりと幻想的に始まるミステリアスなサスペンス曲。鉄琴のアクセントと、小さく鳴り続けてるドラが印象的です。
 やがてドラをベースに、バイオリンの胴打ちがリズムを奏で始めます。そして、小刻みなストリングスが鬼気迫る激しいサスペンス曲を奏でていきます。

 第5楽章 さよならウルトラセブン

 ブラスとティンパニーから始まるゆっくりとしたバラード調の「ウルトラセブンの歌」のマイナーアレンジ。哀愁漂うストリングスによる、穏やかでもの悲しいレクイエム。
 ゆっくりとしたバラードで始まる「ULTRA SEVEN」のフレーズから、「ウルトラセブンの歌」のマイナーアレンジが続き、やがて徐々にメジャーに転じていきます。途中に挟まれるストリングスの美しいフレーズが印象的です。


ウルトラ警備隊の歌

 『大怪獣バトルNEO』のテーマ曲を歌ってる中西圭三のリードボーカルに、サウンド・アンビション合唱団のコーラスを加えての演奏ですが……やっぱし、この曲は男声コーラスでやって欲しかったですね。


ワンダバメドレー

 冬木透といえばワンダバ!……ということで『セブン』とは違うけどプログラムに入ってました。
 最初が『帰ってきたウルトラマン』のMATのテーマで、元祖ワンダバ。意外とテンポがゆっくりだったのと、木琴が使われてたのが印象的。
 続いて『ウルトラマンA』の「TACの歌」。さすがにこの曲は児童コーラスが活きてる感じです。でも、ワンダバというからには歌詞入りの歌の方じゃなくて、男声コーラス入りの劇伴の方じゃないと……
 あと1曲ぐらいあったけど、知らない曲でした。『ウルトラマンマックス』辺りだとまだ記憶にあると思うから、『ザ・ウルトラマン』とか『ウルトラマン80』辺りの曲でしょうか?

     ☆ ☆ ☆

 『ウルトラコスモ』は初めて聴いたけど、本格的な作りの曲だったので、またじっくりと聴いてみたい気がします。幸い、6月にライブ盤がでるみたいですし。それまでには『交響詩ウルトラセブン』のCDも部屋から発掘しておきたいけど、さて。そういえば数年前にでた『ウルトラセブン』の全曲CDも未開封でどこかに転がってるはずです。

 ゲストトークのところでせっかく「ULTRA SEVEN」の話題が振られていたのに、アンコールでの演奏も無かったのがちょっと残念でした。

     ☆ ☆ ☆

Amazonで取扱中の『交響曲「ウルトラコスモ」』収録のアルバム。中古品を手に入れるしかないようですが。(今回のライブ盤が出るまで待つという手もありますね)

円谷英二生誕100周年記念CD BOX - Music from the works of EIJI TSUBURAYA -
円谷英二生誕100周年記念CD BOX - Music from the works of EIJI TSUBURAYA -


近年復刻された『交響詩「ウルトラセブン」』収録のCD。残念ながらジャケットは変更されてるようですが。

交響詩「ウルトラマン」「ウルトラセブン」
交響詩「ウルトラマン」「ウルトラセブン」


原曲の劇伴をコンプリートしたアルバムはこちら

ウルトラセブン コンプリート・コレクション
ウルトラセブン コンプリート・コレクション


「ウルトラセブンの歌」とか「ウルトラ警備隊の歌」のレコードバージョンはいろいろ出てると思うから、自分で探してください。

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